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【書評/要約】私とは何か(平野 啓一郎)  “本当の自分”はひとつじゃない。私は分人の集合体

私とは何か」要約・感想
  • 私とは何か』は、唯一無二の「本当の自分の存在」にノーを突きつける本
  • 人にはいくつも顔(分人)があり、「分人の集合体」が私を私を形作っている
  • 「自分は何者か」と悩んでいる方、人間関係に悩みを持っている方にオススメ

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目次

『私とは何か』ってどんな本?

著:平野啓一郎 Kindle Unlimited読み放題対象 / Audible 聴き放題対象
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本当の自分を知りたいー。 誰もが、人生を考えるとき、「自分探し」をした経験をお持ちでしょう。

「自分探し」をするのは、今の自分がどこか自分らしくないと考えており、本来あるべき「本当の自分」というものがどこかに存在し、「本当の自分」を追求すれば、幸せに近づくと考えているからです。

このような「自分探し」に対し、「本当の自分」という「唯一の自分」なるものは存在しないのではないか、と芥川賞受賞経歴を持つ小説家平野啓一郎さんは提言します。

キーとなるのが、「個人=individual=唯一無二の(分けられない)本当の自分」に替わる新しい概念「分人=dividual=対人関係ごとに分化した自分」という概念です。

「自分とは何か」と思っている方には、自分を見つめるヒントを、「人間関係が苦しい」と思っている方には、コミュニケーションの仕方のヒントを教えてくれる1冊です。

『私とは何か』をおすすめしたい方
  • 「自分は何者か」、アイデンティティに関する悩みをお持ちの方
  • 人間関係に悩みを持つ方
  • 組織運営、コミュニティ運営に関わる方

私とは「分人の集合体」、唯一無二の私じゃない

私とは「分人の集合体」、唯一無二の私じゃない | 【書評/要約】私とは何か(平野 啓一郎)

唯一無二の本当の自分はどこにいるのだろう―― こんな風に考え、自分探しをしてしまう理由は何でしょうか?
人は社会的な生き物です。「私」を考えるときは、社会の中でのつながりを通じて考える必要があります。

たった一つの「本当の自分」がいると思ってしまう理由

個人individual」は、「(もうこれ以上)分割できない一人の人間」です(「分ける」という動詞divide由来のdividual+否定の接頭辞 in がついた単語)。そして、その中心には、たった一つの「本当の自分」が存在し、さまざまな仮面(ペルソナ)を使い分けて、社会生活を営むものと一般的には考えられています。

それ故、人はふと立ち止まったとき、中心にある「本当の自分」とは何かと考え込んでしまうのです。

人には、いくつもの顔がある

恋人といるときの私、両親といるときの私、職場にいるときの私…
自分を偽っているわけではなくとも、それぞれの自分は異なっています。

人には、対人関係ごとに見せる複数の顔があります。すべて、「本当の自分」です。

中心に一つだけ「本当の自分」があるのではなく、対人関係・環境ごとに分化した、異なる人格があります。「分人」はこの集合体を「本当の自分」と捉えます。そして、このような考えを「分人主義」と呼びます。

「分人」は、仮面をかぶったかりそめの自分ではありません。 相手との関係性によって相手からも影響も受けて自然とできあがるものです。

「分人」とは
  • たった一つの「本当の自分」、首尾一貫した、「ブレない」本来の自己などというものは存在しない
  • 一人の人間は、「分けられない individual」な存在ではなく、複数に「分けられる dividual」な存在
  • その人らしさ(個性)は、その 複数の分人の構成比率 によって決まる
  • 分人ネットワークには中心・核が存在しない

「分人」の概念を通じて、自分を見つめ直す

私たちはこれまで、人間には「核となる個性」があり、それをオープンにして生きることが自分らしい生き方だと思い込んできました。さらに、現代社会では、「個性」を持ち、「自分らしい生き方」をするのが大事と説きます。

このため、「唯一無二の自分(私らしさ)が見つからない自分」を否定し、また、「個性がない私はダメな存在だ」と考えてしまう不幸な人をたくさん産んできました。

しかし、「分人主義」という観点から見つめ直せば、自分を全否定して苦しむ必要がなくなります。自分を受け入れ方が変わります。

自分と他者を見つめ直す

自分と他者を見つめ直す | 【書評/要約】私とは何か(平野 啓一郎) 

付き合う人が変わって、自分も変わった経験がありませんか?

付き合う人が変わると、分人の構成比が変わり、自分が変わる

付き合う人が変わると、自分の中の「分人の構成比」が変わります。より親密な相手ほど、構成サイズは大きくなり、かつ、最新状態に更新されます。そして、自分の中の複数の分人同士も相互に影響を及ぼし、結果的に、自分が変わっていきます。

いい影響力があるAさんと付き合うと、自分が変化し、Bさん、Cさんとの付き合い方にも微妙によい変化が現れたりしますよね。私という存在は、常に他者との相互関係のなかで影響を及ぼし合って存在しているのです。これが、「いい影響を及ぼす人と付き合え」「悪い影響を持つ人と付き合うな」の根本です。

1人でいるときの自分は、誰なのか

私という存在は、ポツンと孤独に存在しているわけではありません。1人静かに内省している私も、常に他者との総合関係の中にしかありません。

この指摘を読みながら、思い出したのが、マーク・トウェインの著書『人間とは何か』の以下の記述です。

人間というものは、外部からの影響力のみにより作られる。人間が自分で生み出すものは何一つない。一つの意見、ひとつの考えさえ生み出すことはできない。

自分の意見はもちろん、他者からの影響を受けていますし、新発明ですら、複数の技術の掛け合わせ=コピーであり、人からの影響を受けています。

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「分人」とコミュニケーション

平野さんは、「分人」には段階があり、どの段階の分人をどの程度持てていると「自分として心地よいか」は人によって変わると指摘します。

  1. 社会的な分人   :親しくない人や公的な場面においての分人
  2. グループ向けの分人:❶からある程度分化した、特定の属性の集団に対しての分人
  3. 特定の相手への分人:❷を経て、さらに関係が深まり一対一の関係において生まれてくる分人

自分にとっての心地よい分人構成比は、外交的・内向的な性格に影響を与えるように思われます。多分、外交的で人気のある方は、これらの分人バランスに優れているのでしょう。

一方、外交的でも「八方美人」は嫌われます。八方美人は、誰に対しても、同じ調子のイイ態度で通じると高を括って、相手ごとに分人化しようとしない人です。

人は、他の人とは違った私だけに対する接し方をしてくれることに感動します。親密になるということは、相互に配慮しつつ、無理なくカスタマイズされた状態す。現代技術のロボットに、イマイチ親しみを感じないのも、ロボットは「分人化」できないからです。

自分を好きになる方法

先に「分人」の概念で自分を見つめると、自分を全否定して苦しむ必要がなくなると述べました。では、どうしたら、自分を好きになれるでしょうか。

平野さんは「自分の分人を一つずつ、考えてみよう」とアドバイスします。自分の中の分人から、好きな分人を探してみるのです。好きな分人が一つずつ増えていけば、その分、自分に対しても肯定的になれます。

例えば、一つの人間関係の形である「愛」とは、「その人といるときの自分の分人が好き」ということです。「あの人といるときの自分が好き!楽しい!」と思うことがありますが、これは、「誰かのおかげで自分を愛せるようになる」ということです。これは「他者を経由した自己肯定」です。

自己愛と言うと、ナルシストで気持ち悪く思われがちですが、幸せに生きるために、辛い時を乗り越えるために、「自分を愛する」ことは大事です。

異性愛に限らず、同性でも同じような手法で自己分析すれば、自己肯定できる部分が見つかり、これをもとに、人間関係の仕方を見直せば、よりよい人間関係の構築にもつながるのではないでしょうか。

最後に

今回は、平野 啓一郎さんの『私とは何か』からの学びを要約して紹介しました。

本書は、「本当の自分」の幻想から離れ、自分の分人を見つめるきっかけとなるはずです。

本記事では割愛しましたが、「愛・死と分人」の考察、「分人の理解につながる小説/作家」の紹介も面白いです。

ちなみに、平野さんは小説を書くことを通じて、「分人」の概念と発展を考えてきたと、語っています。

テーマ:自分の分人をデザインする

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テーマ:好きになれない分人がある

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映画化された『マチネの終わりに』、『ある男』も、「分人」という人間観を基本に、ストーリーが作りこまれています。私は、過去、数冊、平野さんの小説を読了していますが、このような人間観があると知って、小説を読むと、新たな小説の読み方ができそうです。

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