- 読書は「量」より「質」
1冊をどれだけ深く読むかー。スロー・リーディングによって、著者の意図や作品の背景を考えながら読むことで、本は知識だけでなく、人間性や思考力を育ててくれる。 - 小説は「細部」を味わってこそ面白い
小説に速読は不向き。単語や助詞、接続詞など、一見何気ない表現にも意味が込められている。違和感を素通りせず、「なぜ、この表現なのか」と立ち止まって考えることが、小説を深く味わう読書につながる。 - 本当の読書は「読了後」から始まる
読書は読み終えて終わりではない。本の内容を自分の人生や考え方と結びつけ、問い続けることに価値がある。再読によって新たな発見も生まれる。
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平野啓一郎著『本の読み方 』ってどんな本?

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「もっと本を読みたい」「読んだ内容をしっかり身につけたい」と思う人は多いはずです。
しかし、不思議なことに私たちは「本の読み方」について学ぶ機会がほとんどありません。
誰もが自己流で本を読んでいます。
同じ1冊の本でも、人生を変えるほどの気づきを与えてくれることもあれば、ただ時間を消費しただけで終わってしまうこともあります。その違いを生むのは、「何を読むか」ではなく、「どう読むか」です。
1冊の本を、価値あるものにするかどうかは、読み方次第。
平野啓一郎さんの『本の読み方 スロー・リーディングの実践』は、「量より質」を重視した読書術を紹介する一冊。
特に、小説を深く味わいたい方にはぜひ読んでほしい本です。
私はこの本に出会って、小説の読み方が大きく変わりました。
物語を読む楽しさだけではなく、「考えながら読む」という読書の奥深さを教えてくれた一冊です。
スローリーディングとは
平野さんが提唱する「スロー・リーディング」は、速さや冊数ではなく、読書の質を高めるための方法です。
速く読もうとすると、人は自然と短くて読みやすい本を選ぶようになります。
一方、時間をかけて読む読書は、これまで気づかなかった発見や学びを与えてくれます。そして、時間をかけて読むに値する本を求めるようになるのです。
「量」の読書から「質」の読書へ
出張で訪れた町を2時間でさっと見て回るのと、1週間滞在して地図を片手に歩き回るのとでは、得られるものはまったく違います。読書も同じです。
本当の読書とは、知識を得るだけではありません。人間性に深みを与え、自分の考えを育てる営みです。
そのために著者が勧めているのが、「書き手になったつもりで読む」という読み方です。
著者は、一語一句に意味を込めて文章を書いています。作品の構成や表現の工夫を意識して読むだけで、これまでは見えなかったものが見えてきます。
現代は、電子書籍の普及によって、いつでも安価に本を手に入れられる時代になりましたが、100年前と比べて、私たちが特別に教養を身につけたわけではありません。昔の人は、限られた本を何度も読み返し、自分の血肉としました。
現代人に必要なのは、
- 「量の読書」から「質の読書」へ
- 「今日のための読書」から「5年後・10年後のための読書」へ
という読み方のシフトです。
| 速読 | 今日、明日のための読書 | 目的が短期的。今欲しい情報を得るための読書。新聞に近い。 |
|---|---|---|
| 遅読 | 5年後、10年後のための読書 | 即効性はない 長い目で見たときに、間違いなく、その人に人間的な厚みを与える 教養を授けてくれる |
「考える読書」が人を成長させる
書き手の主張を正確に理解しようと努めながら読むと、必然的にさまざまなことを考えるようになります。
「自分ならどう考えるだろう?」
「なぜ、この表現を選んだのだろう?」
こうした問いを持ちながら読むことは、自分自身と向き合う時間でもあります。
また、相手の主張を正確に理解しようとする習慣は、仕事や議論の場でも役立ちます。
読書は、単なる知識のインプットではなく、「考える訓練」でもあるのです。
小説は速読に向かない

私は以前、小説を読むのに時間がかかるのは、単に読み慣れていないからだと思っていました。
しかし、本書を読んで、その理由がよく分かりました。
小説は、「ストーリー」だけでできているわけではありません。
- 単語の選び方
- 接続詞や助詞、助動詞
- 何気ない会話
- 違和感のある表現
- 伏線となる描写
こうした細部が積み重なって、作品の魅力を生み出しています。
「なぜ、この場面でこんな言葉を使ったのか?」
そうした疑問を素通りせず、一度立ち止まって考えてみること。
これこそが、小説を深く味わうためのスロー・リーディングなのです。
印象に残った読書術
本書では、多くの実践的なテクニックが紹介されています。その中でも印象に残ったものを紹介します。
「しかし」に注目する
著者は「しかし」「だが」「けれども」に印をつけることを勧めています。
なぜなら、その後ろに著者の主張が現れることが多いからです。
また、事実を列挙する「第一に/第二に」「一つに/また一つに」「そもそも/加えて」「まず/それに」などにも注目すると、論理構造が見えやすくなり、理解度が大きく向上します。
速読のデメリットを知る
速読では趣旨の7割程度は理解できます。しかし残りの3割に重要な論点が含まれていることが多々あります。
速読のデメリットは、助詞・助動詞がおろそかになることです。
例えば、「私はリンゴが好きである」と「私はリンゴが好きではある」といった文章のニュアンスを見過ごしてしまうのです。動詞や名詞を生かすも殺すも、助詞、助動が握っているのです。
また、人間のワーキングメモリは小さく、忘れます。
おや?と思ったり、分からなくなったら前のページに戻る。それだけでも理解度は大きく変わります。
「より先に」ではなく、「より奥に」
私が本書の中で最も好きな言葉です。
読書とは、次の本へ次の本へと読み進めることではありません。
一冊の本を深く読み込めば、その背後にある哲学や歴史、文学の世界へとつながっていきます。
一冊をじっくり読むことは、十冊、二十冊を流し読みすること以上の価値を持つことがあります。
私が書評を残すのも、こういう深さに触れるためです。
再読にこそ価値がある
若い頃にはつまらないと思った本が、10年後に読み返すと、涙が出るほど素晴らしい本に感じられることがあります。
それは、本が変わったのではなく、自分自身が変わったからです。
読書は一期一会ではありません。大切な本を5年後、10年後に読み返してみることで、自分自身の成長を実感することができます。
傍線や書き込みは、当時の自分の関心を残した記録。見返すことで、自身の成長を実感できます。
最後に
『本の読み方 スロー・リーディングの実践』は、単なる読書術の本ではありません。
「本とどう向き合うか」「どう考えながら読むか」を教えてくれる一冊です。
読書の質を一段引き上げてくれる名著でした。
本が好きな人はもちろん、「最近、本を読んでも何も残らない」と感じている人は、是非、手に取ってみてください。
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