いい本との出会いを応援!

【書評/感想】殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス(五条紀夫) 笑って読めるエンタメミステリー。大胆な再構成で予想の斜め上を行く

【書評/感想】殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス(五条紀夫) 笑って読めるエンタメミステリー。大胆な再構成で予想の斜め上を行く
「殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス」要約・感想
  • 『走れメロス』×本格ミステリーの融合が秀逸
    原作へのリスペクトを失うことなく、密室殺人や推理要素を巧みに組み合わせた異色作。パロディでありながらミステリーとしても完成度が高く、最後まで謎解きを楽しめる。
  • 笑いながら読めるのに、原作のテーマもしっかり継承
    次々と事件に巻き込まれるメロスの奮闘はコミカルだが、その根底には『走れメロス』の「友情」「信頼」というテーマが流れている。エンタメ性と文学性を両立した一冊。
  • プラトンや古代ギリシャ史を絡めた知的な面白さ
    暴君ディオニス王と哲学者プラトンを結びつける発想が秀逸。歴史や哲学の知識がなくても楽しめるが、知っているほどニヤリとできる仕掛けが満載。

★★★★☆ KindleUnlimited読み放題 Audible聴き放題対象本

目次

『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』ってどんな本?

【Audible】無料体験で500円分のクーポンもらえる🔥(6/12まで) 
【Kindle Unlimited最初30日間体験無料
※どちらもいつでも解約OK

暴君に処刑を宣告されたメロスが、親友セリヌンティウスを救うために走る——

走れメロス」といえば、友情と信頼を描いた太宰治の名作。
しかし、今回紹介の『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』は、その名作を大胆に再構築した笑えるエンタメミステリーです。予想の斜め上を突き進みます。

物語の主人公はもちろんメロス。
しかし今回は親友のために走るだけではありません。なんと、行く先々で殺人事件の容疑者になってしまい、犯人捜しをすることになってしまう。さらに、嵐や山賊にも襲われ、暴君の元に戻れば今度は新たな展開が。とんでもない展開に思わず吹き出してしまう。

シリアスなはずの状況が次々と笑いへ転化されるテンポの良さは抜群。
しかも単なるパロディでは終わらず、人間の正義や友情、歴史の見方にまでさりげなく切り込みます。
笑いとミステリーが絶妙に融合した、エンタメ小説の快作!

息つく暇もないドタバタ劇と、五条紀夫さんならではのキレのあるユーモアが秀逸なエンタメミステリーです。

『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』あらすじ

原作同様、暴君ディオニス王に処刑を命じられたメロスは、妹の結婚式に出席するため、親友で石工のセリヌンティウスを身代わりとして王のもとに残し、3日以内に首都へ戻ることを約束する。

ところが故郷に到着したメロスを待っていたのは、殺人事件だった。

婚礼前夜、新郎の父親が何者かに殺害される。
しかも現場は、メロスと妹しか開けられないはずの羊小屋。
完全な密室状態で起きた不可解な事件に、メロスは容疑を掛けられる。

本来なら一刻も早く首都へ戻らなければならない。
しかし事件を放置すれば結婚式どころではない。親友の命の期限も迫る中、メロスは自ら犯人探しに乗り出す。

さらに首都への道中でも、メロスを待ち受けるのは困難の連続。
山賊の死体が発見される殺人事件、激流の川で起きた不可解な溺死事件——。
行く先々で新たな謎に遭遇し、メロスは次々と事件の真相解明に追われることになる。

さらに、なんとか約束の期限内に辿り着いた首都では、さらなる衝撃が待っていた。
王の側近が何者かに殺害され、その犯人として親友セリヌンティウスが処刑されようとしていたのだ。

なぜ事件は起きたのか。真犯人の狙いは何なのか。

やがてメロスは、一連の事件の背後で国家を揺るがす巨大な陰謀が動いていることに気づく。
友情と信頼の物語として知られる『走れメロス』は、壮大だけどおちゃめなミステリーへと姿を変えていくのです。

『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』感想

古典文学パロディとして非常に完成度が高い

本作が秀逸なのは、「走れメロス」の世界観を徹底的に活用している点。
原作の友情や信頼というテーマをしっかり土台に据えながら、その上に本格ミステリーを大胆に積み上げます。

読者は「あのシーンがこうなるのか」と何度も笑わされます。
ただのネタ作品ではなく、原作への深い理解と敬意があるからこそ成立する作品です。
ちなみに、太宰治や代表作『人間失格』もパロディで登場します。

ミステリーとしての完成度も高く、謎解きそのものも楽しめます。
一方で、トリックや事件の背景に独特のユーモアを盛り込み、シリアスになり過ぎないところが絶妙です。

「次は何が起こるのか」「犯人は誰なのか」と気になり、気づけばページをめくる手が止まらなくなっていました。

暴君と哲学者・プラトンの交わり方が面白い

個人的に特に面白かったのが、暴君ディオニス王と哲学者プラトンの描かれ方です。

『走れメロス』といえば、人間不信に陥った暴君ディオニス王の存在が強く印象に残ります。
一方、本作ではそこに古代ギリシャを代表する哲学者・プラトンが登場し、物語に独特の奥行きを与えています。

プラトンは、師ソクラテスの処刑をきっかけに「正しい国家とは何か」「正義とは何か」を問い続けた人物です。
そして、『国家』で説いた「哲人王(最も賢い者が国を治めるべきだという思想)」によっても広く知られています。

そんな理想国家を追い求めた哲学者と、人間を信じられず恐怖によって国を支配する暴君。
この対極にある二人をどう結びつけるのかと思っていたら、その発想が実に巧みでした。

古代ギリシャ史やプラトンについて少しでも知識がある読者なら、「なるほど、そうくるか」と思わず膝を打つはずです。歴史上、プラトンは実際にシラクサの王家と関わりを持った人物でもあり、その史実を下敷きにしながら大胆なフィクションへ昇華している点に作者のセンスを感じます。

なお、物語は全く堅苦しくありません。
理想国家を語るはずの哲学者プラトンが、行動力にあふれた”マッチョな策士“として登場!
暴君を相手に繰り広げる策略はシリアスな場面であるほど笑いを誘います。本作屈指の読みどころです。

まとめ

殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』は、太宰治の名作『走れメロス』を大胆な発想でミステリー化したユニークな作品でした。

優れた歴史小説や文学作品には、読者を別の本へ導く力があります。本作もまさにその一冊でした。

プラトン著の『ソクラテスの弁明』を読んだことがありますが、プラトンについてはほとんど知りません。
いつか読みたいリストに入っている、『国家』『メノン』『饗宴』などにも手を伸ばしてみたくなりました。

ミステリーとして楽しめるだけでなく、太宰治、古代ギリシャ史、哲学といった幅広い世界への入口になってくれる。あなたにとっても、そんな一冊となってくれるのではないでしょうか。

【6/12まで】 ※解約はいつでもOK

よかったらシェアしてね!

目次