- 忙しさに疲れた心に寄り添う“心のごはん小説”
毎日の仕事や人間関係に心がすり減ってしまった人へ。温かな料理と人とのふれあいが、癒しと再生をもたらしてくれる物語。 - 業務的な職場と心のこもったビストロの対比が響く
効率重視の職場と、想いを込めて料理を提供する「キッチン常夜灯」。その対比が、仕事の意味や自分の在り方を問い直させてくれる。 - 自分を取り戻せる“サードプレイス”の価値
家庭でも職場でもない第三の居場所=サードプレイスの大切さ。自分にとっての”常夜灯”が欲しくなる!
★★★★☆
Kindle Unlimited読み放題対象本
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『キッチン常夜灯』ってどんな本?

「おいしいごはんと、ちょっとのやさしさがあれば、人生はきっと大丈夫。」
そんな気持ちにさせてくれる、あたたかな物語に出会いました。
長月天音さんの小説『キッチン常夜灯』は、日々の忙しさに心がくたびれてしまった人にこそ届けたい一冊です。
「ひとりごはん」「人生のつまずき」「静かな再出発」——
そのすべてが、じんわりと心に沁みてくる、“心のごはん小説”であり、
大変な仕事にも、「明日を乗り越える力」が湧いてくる“お仕事小説”です。
『キッチン常夜灯』あらすじ

舞台は夜にだけ灯る、路地裏の小さなビストロ
物語の舞台は、午後9時から朝7時まで営業する、路地裏の隠れ家ビストロ「キッチン常夜灯」。
手間ひまかけた本格フレンチを提供し、朗らかな女性ソムリエと、少しクセのある常連客たちが集うその店は、まるで“傷ついた心の避難所”のような存在です。
主人公・みもざは、ファミレスチェーン「シリウス」で働く女性店長。
やりたくもない店長業務を任され、連日の長時間労働。
バイトのシフト調整やクレーム対応に追われ、心はどんどん擦り切れていきます。
料理を「早く」「大量に」「効率よく」出すことが求められる業務。
スタッフのやる気のなさに挟まれながらも、自分だけは気を張り詰めて働き続ける……
「もう限界かもしれない」と思ったときに、彼女がふと辿り着いたのが「キッチン常夜灯」でした。
心をほどいてくれるのは、手作りのごはんと、やさしい言葉
グラタン、栗のポタージュ、おにぎりと味噌汁の朝ごはん——
素朴ながら心と身体に沁み渡る料理の数々。
そして、「お疲れさま」といった、さりげない言葉たち。
それらが、みもざの疲れた心に静かに染み込み、
彼女の中にあった“自分を大切にする感覚”が、ゆっくりと息を吹き返していくのです。
この物語には、劇的な事件も涙を誘う演出もありません。
でも、だからこそ、リアルで、そっと心の奥に残る。
誰にでもある「仕事のしんどさ」や「人間関係の葛藤」に、優しく寄り添ってくれる物語です。
『キッチン常夜灯』:感想

業務的なファミレス vs 心を込めたビストロの対比が沁みる
読んでいて胸に迫るのが、みもざが働くファミレスと「キッチン常夜灯」の対比です。
ファミレスでは「効率」「コスト」「スピード」ばかりが重視され、人の心が置いてけぼりになりがち。
一方、常夜灯では、たとえ一皿でも、ていねいに作られた料理と人の想いが込められています。
このコントラストが、私たちの働き方・生き方を問うように響いてきます。
- 自分の仕事に、心がこもっているだろうか
- お金や効率に追われるあまり、大事なものを見失っていないだろうか
そんな問いを、自然と自分自身に投げかけたくなる——。
そして読後には、「明日は少しだけ、自分にも人にも優しくしよう」と思わせてくれるのです。
“サードプレイス”としての「キッチン常夜灯」
この物語のもう一つの大きな魅力は、「キッチン常夜灯」という空間の存在です。
そこは、家庭(ファーストプレイス)でも、職場(セカンドプレイス)でもない“サードプレイス”。
気を張らず、無理せず、ただ「いられる場所」です。
常夜灯にやってくるお客さんたちは、それぞれ悩みを抱えながらも、静かに癒しを求めて店を訪れます。
心のこもった料理と、さりげない会話に癒され、少しずつ前を向いていく姿は、読者の心にもそっと火を灯してくれるようです。
ワイワイ、仲間との食事を楽しむだけが、レストランではない。
自分のサードプレイスとしてのカフェ・レストランを見つけたくなるはずです。
✅ サードプレイス=第三の居場所 の重要性
- 心をリセットできる場所
家庭や仕事は「役割」や「責任」がつきまといますが、サードプレイスでは何者でもない自分でいられる。
ストレスを手放し、心をリフレッシュする時間は誰にとっても大事です。 - 多様な人とゆるくつながれる
サードプレイスがあれば、職場や家庭とは異なる「ゆるやかなつながり」が持てます。
それが、孤独感の軽減、刺激や新しい視点が得られる場になってくれます。 - 自分を再発見できる
本を読む、自分の趣味を楽しむ、知らない人と対話する——
これが、自分の興味や価値観を再確認することにつながります。
そして、環境が変わることでアイデアが生まれたり、見方を変え、前向きに生まれ変わることを促してくれる場所でもあります。
あなたの“常夜灯=第三の居場所”を見つけませんか?
あなたには、サードプレイスがありますか?
読後、「ああ、わたしにも“常夜灯”がほしいな」と素直に思いました。
何も話さなくていい。頑張らなくていい。ただ、いてもいい場所。
もしかしたらそれは、近所のカフェかもしれないし、古い本屋かもしれません。
そうした“居場所”の存在が、どれほど人を救ってくれるのかを、この作品は丁寧に描いてくれます。
最後に ーこんな方に読んでほしい
今回は、長月天音さんの『キッチン常夜灯』を紹介しました。
この小説を読んで、「ただのごはんの時間」が少し特別なものに変わりました。
疲れているときこそ、温かいごはんと、やさしい言葉が効く。
それだけで、人はもう一度、前を向けるのだと、改めて気づかされました。
ぜひ『キッチン常夜灯』を読んで、あなたの心にとっての“ごはん”と“やさしさ”を思い出してみてください。
そして、あなたにとっての「常夜灯」になるような、サードプレイスを探してみてください。
本書はシリーズもの。主人公を変えて、それぞれのキッチン常夜灯が展開されます。
合わせて読んでみて下さい。
シリーズ3冊中、『キッチン常夜灯』『キッチン常夜灯 真夜中のクロックムッシュ 』はKindle Unlimited読み放題対象です。