- お金は自動的に増えることはない。投資も然り。投資で皆がハッピーになることはなく、誰かが必ずババを引く
- バブルには発生のメカニズムがある。強欲な「金融業者」が仕掛けを作り、「政府」と「メディア」が扇動。そして、「あなた(投資家)」も熱狂し、バブルの最後の急騰に加担する
- バブルはなくならない。本書は、お金の本質、バブルの仕掛け人と扇動者を明らかにしたうえで、国民全体が投資依存に向かっていることに警鐘を鳴らす。投資から手を引くかは別問題として、資本主義下で投資をするなら、知っておきたい情報が多数!ためになる!
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追記
本書は、【政府の「貯蓄から投資へ」の旗振りのもと、多くの国民が投資に夢中になっている】ことに警鐘を鳴らす1冊ですが、国民に「貯蓄から投資へ」の音頭取りをしていた岸田元首相が、NISAに加入していなかったことが判明。岸田文雄前首相、NISA加入せず(12月3日、日経新聞)
国策には逆らわないのがベター(逆らわない方が投資では儲かることが多い)。一方で、その裏にある思惑にもより敏感でいたいと感じた次第。本書は、一助になります。
『投資依存症』ってどんな本?
「投資とギャンブルは違う」と考えている人は多いでしょう。私もそんな一人ですが、私のような投資家に対し、著者・森永卓郎さんは強い警鐘を鳴らすー
政府の「貯蓄から投資へ」の旗振りのもと、多くの国民が投資に夢中になっている。それは”投資依存症”という依存症の一種だ。アルコール依存症にしろ、麻薬依存症にしろ、覚醒剤依存症にしろ、一度罹患してしまうとその治療は極めて困難だ
誰かが止めないと、日本中に 投資依存症が広がり、バブル崩壊にともなって日本中に破産者があふれてしまう。投資依存症の感染力はとても強く、いまの日本は投資依存症の「パンデミック」前夜まで来ている。
『投資依存症』は、投資の本質はギャンブル以外の何物でもないリスクを伴う行為であり、多くの人が依存症に陥っていることを強く警告する一冊。読者に対して「投資から手を引くべきだ」という強いメッセージを送ります。
投資は極めて依存性が高い。しかも、投資にはバブルがつきもの。最後に必ず誰かがババを引くことになります。そして、多くの場合、そのババを引くのはバブルの仕掛け人たちに踊らされた個人投資家です。2024年、多くの指標がバブルを示す中、個人投資家のリスク、および、被る損失を本書は明らかにします。
バブル発生のメカニズムと、バブルの仕掛け人たち(金融業者、政府、メディア)が、どのようにバブルを扇動し、投資家をが熱狂させるのか、具体的に説明している点は面白い。また、著者自身がSNS詐欺広告で利用されていることにも言及し、実際に投資家たちがどのような被害を受けているか、その実例も解説しています。
森永さんは、ガンステージ4で余命宣告を受けたことを明らかにしていますが、最後に伝えたいことがいろいろあるのでしょう。同シリーズ『書いてはいけない』『ザイム真理教』同様、誰にも忖度することなく、自説を展開しています。
投資家、特に、2024年、新NISAスタートを機に投資信託で老後資金を運用を始めた人、あるいは、これから投資を考えている人は、本書は「投資のリスク」を知る本として必読です。経済本・投資本でありながら、森永さんの人となりがにじみ出ており、親しみやすく文体で読みやすい。
本書は、自分の投資について、深く考えるきっかけを与えてくれます。すべてを鵜呑みにすることなく、森永さんの論を咀嚼し、自分の「投資スタイルを再考」しながら読むことをおすすめします。
なお、本書の構成は以下の通り。少しでも気になる内容がある方は、読むべき本です。
- お金が自動的に増えることはない
- バブルはこうして生まれる
- 強欲な金融業者――バブルの真犯人①
- 扇動する政府とメディア――バブルの真犯人②
- そして、あなたは熱狂する――バブルの真犯人③
- 投資とどう向き合うか
投資はギャンブル。本質はゼロサムゲームでお金は増えない
私は、これまで。「株式は(FXと異なり)ゼロサムゲームではない」と考えていました。しかし、森永さんは、「投資はギャンブルであり、その本質はゼロサムゲームである」と強調します。
森永さんは、お金が増えるのは「働いたとき」と「他人から略奪したとき(幸運に見舞われギャンブルで買ったとき、他人を騙して奪う、胴元になる」の2つしかないと言います。
❶勝つものがいれば、負けるものもいる。さらに胴元が利益を分捕る
人はお金を増やすことを目的に投資をします。しかし、投資されたお金はタダでは増えません。むしろ、場を取り仕切る胴元の取り分がある分、分配されるお金は減ります。これは、ギャンブルも投資も同じです。そして残りが、投資家に分配されます。
では、誰が、ババを引く可能性が高いか?それは、市場・裏事情を知らない素人です。
ちなみに、宝くじ、競輪、競馬など、公益ギャンブルの胴元と、払い戻し率はいくらかご存じですか?胴元は各省庁、さらに、最悪の払い戻し率なのが「宝くじ」です。これが、宝くじが「愚者の税金」と言われる理由です。
なぜ、宝くじを買ってはいけない?各ギャンブルの胴元と習い戻し率
❷お金が増える唯一のルートは「働く」こと
お金は投資行為そのもので自動的に増えたりしません。お金が増やすには、その源泉として「労働」が必須です。
企業の収益が上がり、株価が上がるのも、「労働者の労働」が源泉です。また、現在の紙幣は国債を裏付けに発行されますが、例えば、建設国債などは、まさに、建設をするという「労働」が源泉になっています。
世は投資を煽る。しかし、投資は「皆」をハッピーにはしない
企業の収益も株価上昇も「労働者の労働」が源泉ですが、資本主義下では、上場企業は従業員より株主を大事にする傾向が顕著に。
かつての日本では、日本では景気が悪ければ、株主配当は無配になり、従業員の雇用と給与が優先されました。しかし、現在は、株主配当や経営者の報酬拡大が優先されています。割を食っているのは「労働者(の報酬)」です。
トマ・ピケティの公式:「資本収益率(r)> 経済成長率(g)」 ※rは5%程度、gは1~2%程度
フランスの経済学者トマ・ピケティは著書『21世紀の資本』で、歴史から「投資でお金が増えるスピード>労働でお金が増えるスピード」であることを明らかにしました、。この公式は、言葉を変えると、一生懸命働く人より、金融資産を保有しお金に働いてもらった人の方が儲かることを示しています。 詳細解説
❶ピケティの公式、❷政府の「貯蓄から投資へ」のスローガン(新NISA含む)、さらには、❸FIRE達成者の増加は、日本国民を投資行動へ走らせ、投資依存者を増やしています。森永さんは、このような状況を鑑み、以下のように警鐘を鳴らすのです。
- 投資=ギャンブル。依存性があり、一度、依存症になると抜け出すのは難しい
- 投資に参加する時期と投資額次第で、破産に至る
「積立投資にタイミングは関係ない。早くはじめなさい」と言われたりしますが、これは、正しくありません。投資にはタイミングがあります。「投資に参加する時期」「資産に占める投資額の割合次第」では、株価下落・暴落で大きな損失を被ることを忘れてはいけません。
バブルはこうして生まれる。バブル発生メカニズム
資本主義は強欲です。故、バブルは繰り返されます。バブルにはメカニズムがあります。
- バブル発生のメカニズム
- 先に儲けた人を見て、自分も投資せずにはいられなくなる。この連鎖がバブルを引き起こす
- 人間は、「安定」「刺激」という欲求を快楽として求めてしまう(人間の本質)
- バブルは、資本主義の宿命
- 強者は弱者から「収奪」する=誰かが最後にババを引く
- バブルの歴史
- 繰り返される(「オランダ「チューリップ・バブル」、イギリス「南海泡沫会社事件」)
- 投機の対象は実物商品から金融商品へ。
- 史上最大の金融バブル崩壊は、1929年米国ウォール街大暴落
- バブルが再び起こってしまう大きな理由の一つは「世代交代」
- 現役で恐怖を経験した人が減り、新参者が再びバブルに飲み込まれる
- 過去のバブルを学ぶことはとても大事
- 株価の理論価値はゼロ
人間はおろかな生き物です。資産を守るためにも、バブルの実態を知っておくべきです。
バブルの仕掛け人
金融市場にはバブルが続けば続くほど儲かる人が存在します。彼らはバブルを起こした方が儲かります。バブルを仕掛けるのは、「金融業者」「政府」「メディア」です。
強欲な金融業者
- 金融市場でバブルが続くほど儲かる人たち
- 胴元:手数料収入
- 外資投資銀行:バブルをはじけさせて、巨額の富を築く。破産につながる金融商品も次々開発
- 稼ぐためには何でもやる!投資銀行の3大業務
- ❶企業の乗っ取りと乗っ取りの手助け
- ❷先物、オプション、レバレッジなどの金融技術を活用したインチキ金融商品、仕組み債の開発・運用
- ❸空売りを活用した相場操縦
- レバレッジは投資家を破産に導く。しかし、規制どころか、構造的に投資に組み込まれる方向に(投資家はそれを知らずに投資している可能性)
以下は、強欲金融業に携わった人たちの暴露本です。
扇動する政府・メディア
- 政府とメディアはバブルを扇動する
- 2021年11月 岸田政権下で「資産所得倍増プラン」を発表
- (それより前に)老後資金2000万円不足問題 が世の中に浸透
- 2024年1月~ 新NISA。多くの人は、貯蓄から投資へ
- iDeCoの改革も扇動
- 政府の行動は、不安をてこにして、国民全体を投資依存症に陥れるような側面がある
- 大阪・関西万博の裏にも、隠された目的が…
今、市場では、生成AIはじめ、新しい技術がメディアなどで騒がれ、関連企業の株が驚くほど上昇していますが、どんな企業も「的技術優位」を維持し続けることはできません。また、一つの新技術に市場が集中ということは、裏を返せば、世界は新産業のネタに窮していることも知っておくべきです。
そして、あなたも熱狂する:投資依存症のメカニズム
バブルの仕掛け人らにより、あなたも熱狂に陶酔するようになります。そして、投資依存症になるのです。
- 多くの投資家は株価が上がると熱狂。「我も投資せねば!」と資金を投入する
- 安楽と快楽。人を虜にするのは「快楽」。人は刺激を求める。一度強い快楽を味わうと忘れられなくなる
- 儲けがもたらす快楽。やがて、立派な投資依存者へ
- 借金(信用取引、レバレッジ取引)は禁物なのに、利用を始めるとやめられない
- 投資参入が遅かった投資家ほど、バブル末期に投資活動に熱心。そしてやられる
SNSでは「夜も眠れない」「もう無理」といった悲愴な書き込みがあふれる
- 多くの投資家は、値上がり相場時は、利益を再投資。結果、バブルがはじけると利益は吹き飛ぶ
- 株式や投資信託への投資は、始めることよりも、やめることもほうがはるかに難しい
- 「運用」とは「運」を「用いる」と書く。投資がうまく行くかどうかは運
では、どうすればいいのか?森永さんの主張は「投資から撤退し、預貯金に戻せ」。
この意見については、賛否両論あるでしょう。ちなみに私も本書を読んでも積立投資は辞めていません。淡々と毎月一定額を投じています。人の意見に左右されるのではなく、「自分の投資の軸」を持っておくことが大事というのが私の考えエス。
【現状を確認】2024年の投資環境
まずは、本書で森永さんが述べる現在の投資環境をまとめてみます。森永さんの意見に対し、(青字)内で私の意見を加筆しています。
- 2024年時点、相場はバブルの様相。バブルの「満期」に近い(??)
- CAPEレシオ、バフェット指標などが、バブル末期を示す(これは事実。後述)
- 株価が割高を示しても、専門家が警鐘を鳴らさないのは仕事を干されるから(だから、投資家は自分で投資判断をするスキルが必要)
- 資本本主義は息詰まる4つの理由(マルクスの予言)(??)
- ①許容できないほどの格差拡大
- ②地球環境破壊
- ③少子化
- ④ブルシットジョブの蔓延
- ⇒資本主義が終焉するなら、暴落後もバブルが発生しなくなる
- ⇒だから、株式投資から撤退せよ(疑問。ただし注意は必要)
「資本本主義は息詰まる4つの理由」について、ここでは詳細は省きますが、「資本主義下で生きる」ためには、大事な教えが記載されています。本書を手に取り、読んでおいた方がいいでしょう。
株価の割高指標①:CAPEレシオ(シラーPER)
- ノーベル経済学賞受賞のロバート・シラー教授が考案
- 株価の割高・割安を計る指標
- 株価の割安・割高を判断するPER(株価収益率)の考えを応用したもので、物価変動の影響を補正した上で10年間の利益の平均額を使って、PERを計算する
- S&P500の「CAPEレシオ」が25倍(緑の線)を超える期間が一定期間続くと、株価は下落する傾向がある
- ITバブル時79カ月、 リーマンショック時は52か月継続でバブルが崩壊した
- 2024年11月現在、CAPEレシオは約38倍、さらに25倍を超える期間が長期間継続している
株価の割高指標②:バフェット指数
- 著名投資家ウォーレン・バフェット氏が注目している指標
- 株式市場の時価総額は長期的にその国の経済成長に収斂する、との考え方を基にして算出
- バフェット指数=株式市場の時価総額÷名目GDP×100
- 2024年11月現在、数値は約200。2倍の高値を示す。
もし、投資依存症なら、改善すべきこと
世界は200年の間に70回以上のバブルを経験してきています。この事実が示すのは、バブルは決してなくならず、そして、そこには、立ち上がれないほどの資産の痛手を被ってきた人もたくさんいるという事実です。
もし、あなたが日々、投資で一喜一憂しているようなら「投資依存症」の疑いがあり、「アルコール依存症を断つにはアルコールを完全に断つ必要があるように、投資を断つ必要があるかもしれない」ということです。
穴にはまっていると気付いた時、一番大切なのは、掘るのをやめることだ by ウォーレン・バフェット
誰にも株価のピークはわかりません。以下を、心に刻んでおきましょう。
- 今後下落するかも…という気持ちが頭をよぎっても、売却をできなくするのがバブル
- 株価下落局面で、「損を取り返そう」とポジションをさらに大きくするのは愚策
- 苦しい局面で起死回生を狙ってリスクの高い大勝負を仕掛けるのは、醍醐味でも成功の秘訣でもない
- 人生は長い。損を取り返すチャンスはこの先何度でもある
- 勝てる確率の高い局面で、満を持して大勝負を仕掛けるのが、成長株投資の醍醐味
最後に
今回は、森永卓郎さんの『投資依存症』からの学びを紹介しました。
「今、投資をやめるべきか」は別の問題として、資本主義、投資に関して非常にためになる内容を含む本です。同シリーズ『書いてはいけない』『ザイム真理教』ほどの売れ行きではありませんが、投資家なら、『投資依存症』の方が、学びが多いと思います。もちろん、投資家なら、『ザイム真理教』もよんでおきたい1冊です。
是非とも、一読をおすすめします!