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【書評/要約】ルポ 誰が国語力を殺すのか(石井光太 著)(★5) 国語力は「人間社会を生きる基礎力」。ないとどうなるかー子供の実態に衝撃!これはあかん

【書評/要約】ルポ 誰が国語力を殺すのか(石井光太 著)(★5) 国語力は「人間社会を生きる基礎力」。ないとどうなるかー子供の実態に衝撃!これはあかん
ルポ 誰が国語力を殺すのか」要約・感想
  • 国語力とは「❶考える力」「❷感じる力」「❸想像する力」「❹表す力」の4つのからなる能力
  • 国語力は、生きる基礎となる能力。格差にも直結。これがなくては、社会に出ても使い物にならず、また、豊かな人生も築けない。
  • 国語力は、一個人の学力の問題ではない。国語力は豊かで安全な社会のためにも極めて大事。本書ではその理由が様々な現場の事例をもとに、明らかにされる。

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目次

『ルポ 誰が国語力を殺すのか』ってどんな本?

「国語力」って生きていくために必要だと思いますか?

そんなもん、いらなくない?とお持ったk多も多いはずです。

児童・学生時の私にとっても「国語」は最も苦手&嫌いな科目。毎回、テストの点数差が激すぎる博打科目だったからです。しかし、「国語なんて嫌い、勉強する必要なんてない」などと言っていられないと気づかされたのが、石井光太さんの『ルポ 誰が国語力を殺すのか』です。

文科省の定義によれば、国語力とは「❶考える力」「❷感じる力」「❸想像する力」「❹表す力」の4つのからなる能力。つまり、生きる基礎となる能力これなくしては、社会に出ても使い物にならず、豊かな人生も築けない格差に直結するのです。

過去、子どもたちの読解力の低下が騒がれたことがありました。発端は2003年のOECDの国際学力調査「PISA」。世界各国の15歳の子どもの学力を測る調査で、日本の子どもの読解力が15位まで転落したことで、日本の教育界は騒動に。学校の指導要綱を見直すきっかけともなりました(最近は改善。最新:2022年調査)。

本作は、なぜ、国語力が低下したのか、子どもたちの国語力をさせるには何が必要かー、原因と解決策に迫った1冊。学校など教育現場の取材で、子供たちの国語力崩壊の実態・諸問題も迫っていますが、学力低下の実態は衝撃的でした。

以下のような方は、是非、読んでおかれることをおすすめします。

こんな方におすすめ
  • 「国語力」不足が、人生にどのような影響を与えるか知りたい方
  • 学力、能力を改善したいと思っているすべての方
  • 子を持つ親御さん。特に、ゆとり世代の方

なぜ、国語力が大事なのか― 国語力と格差

国語力とは何か

国語力とは「人間社会を生きていく基礎となる力」です。

国語力を構成する「❶考える力」「❷感じる力」「❸想像する力」「❹表す力の能力は、以下のような能力として言い換えられます。

  • 論理的思考:自分の意見を筋道を立てて構築する
  • 情緒力  :見聞きしたものから”もののあわれ”を感じて理解する
  • 想像力  :未知のものをイメージしたり、他者の表情や動きから言外の感情を読み取とる
  • 表現力  :考えを表現する

これらの能力失くして、社会の中で健全な人間関係を築くことはできません。❶がなければ、社会で独り立ちできませんし、❷がなければ、社会は殺伐とし、紛争が起こりやすくなります。つまり、国民に国語力がなければ、健全で豊かで安心な社会を築くこともできなくなり、国力も弱まってしまうのです。

あらゆる教育の根源は「国語力」であることを、私たちは改めて自覚する必要があります。

読解力以前。基礎的な能力が不足

AI vs. 教科書が読めない子どもたち』がベストセラーになりましたが、現場の先生は「読解力以前の基礎的な能力」が欠けていると指摘します。

そういう子たちは、教科書に出てくる『ごんぎつね』が常識を持って読めません。登場人物の気持ちを想像したり、物語の背景を思い描き考える力がないからです。

昨今の子どもは、情報社会の中で情報処理能力が向上しています。しかし、それ以上に大事な力、一つの物事にじっくりと向き合い、何かを感じ、自分の思考を磨き上げていく能力を高めることがおろそかになっています。

現代人は何でも「超やばい」で説明してしまうところがありますが、罪を犯しても自分の罪をオノマトペでしか説明できない子もたくさんいます。物事を、自分の言葉で考え、想像し、丁寧に表現することができないのです。

すると、どうなるかー。勉強ができないので勉強せず、日常生活までいろんな誤解が生じ、人と衝突します。結果、「ストレス」を抱え、「問題行動」を犯しやすい子に育ってしまうのです。

国語力のない子供の特徴

語彙力・国語力がない子には、次のような特徴があります。

  • 主語や目的語を省略し、テキトーに使える言葉で会話
  • 「抽象的な言葉」がわからない⇒使い方を間違え、人間関係でトラブルを起こす
  • 会話で「一般常識」にも触れる機会が乏しい⇒「極めて自己中心的な理屈」で行動

国語力の低下が招く「格差」

国語力の低下は、確実に、落ちこぼれや不登校・暴力などを生み出します。

彼らは自分の辛さを的確に表現できないので、大人も救ってあげることができません。結果、「自己責任」という言葉によって切り捨てられ、これが、結果的に「社会の分断」「格差」につながります。

「失われた30年」とも呼ばれる時代の中で蔓延していった日本の病理――コミュ障、孤立、炎上、ヘイト、陰謀論などの社会課題は、国語力の弱さなしには説明しえないのです。

「言葉をもつ者」「言葉をもたざる者」

「言葉をもつ者」「言葉をもたざる者」

校の教室にグループは、「豊かな言葉をもつグループ」と「言葉を持たないグループ」に分かれる、つまり「国語力」によって、グループが形成されると言います。

言葉を持つ者と持たざる者

言葉を持たない子のグループの会話の特徴は、「粗雑な言葉でやりとり」です。以下は、その典型的な会話です。

教員「どうして他の生徒に手を上げたの?」
生徒「あいつがクソだから」
教員「クソって?」
生徒「とにかくクソだからやった」
教員「他に方法はなかった?」
生徒「知るか、クソ」

乱暴な子供にせよ、引っ込み思案な子供にせよ、共通するのは、質問に対し、トラブルの要因を考え、筋道を立てて自分がすべきことを導き出す力の欠如です。問題は解決されないので、ストレスを感じ、場当たり的な方法で、無理やり、蓋をしようととします。その結果、現れる行動が、SNSの悪口、暴力、不登校です。

さらに、ひどくなると、怒られてもなぜ怒られているかわからない。故、刑務所に入っても反省できないのです。その現実は以下の記事で紹介しています。

経済格差ではなく、家庭格差が問題

今、日本の「中間層の国語の力」が低下による「国語力の二極化」が進んでいます。

「親が意識して多彩な学びの機会を与える家庭」と「親が共働き/育児放棄で子供が放置状態の家庭」は昭和の時代とは比較にならないほど差が拡大しています。一方で、過干渉も起きています。

教育費にいくら投じられるかは「経済格差」も問題ですが、親が子供にどう接しているのか、親がどんな振る舞いを見せているのかといった「家庭格差」の方が、子どもの国語力に与える影響の方が甚大です。家庭に会話があれば、子は自然と「語彙力」「考える力」「話す力」「聴く力」は上がるからです。

言葉が貧相な家庭では、会話に「ウザイ」「キモイ」「わからない」「無理」といった、考えなくて済む言葉が増えます。また、国語力格差が広がれば、クラスの中で「道徳の授業のディスカッション」は成立しなくなります。道徳心がない子供が増えれば、治安も悪くなり、国家衰退にもつながります。

国語力の低下の原因はたくさんある

考えるスタートラインにも立たない「話が通じない子」「何を言っても響かない子」が増えだしたのは2000年前後。家庭環境以外に、社会変化が大きく影響しています。

時代の変化バブル崩壊、新型コロナ感染
社会変化による会話量の減少家庭ゲーム機・インターネット・携帯の普及、核家族化、共働き増加
読書の量と質の低下親の読書量低下・読む本の質の低下が子供にも伝搬

幼少期には「読み聞かせ」が大事と言われますが、これは、会話に加えて、表情の読み取りや、一緒に視線を向けたり指差したりするような共同注意などがなされることで、子供の脳の新皮質(思考や創造性を司る) や大脳辺縁系(喜怒哀楽を司る) に良い影響を与えるからです。

幼児に絵本を読んであげることをないがしろにしてはいけません。

ゲーム・ネットが「国語力」に与える大きな弊害

言葉を失う大きな原因となっているのがゲームです。

対面での会話では、「① 感じる→ ② 相手の気持ちを想像する→ ③ 言葉を整理する→ ④ 発言する」という流れで会話が行われますが、ゲーム空間・ネット空間では、②~④が省略され、①の感情をそのまま言葉となります。考えるフィルターなしで、感情が垂れ流しにされます。これが、不特定多数の人間の目に留まり、様々なトラブルに発展するのです。

また次のような問題もあります。

前頭前野の機能低下ゲーム依存が進行で、前頭前野の機能が弱まり、衝動のコントロールが利きにくくなる
きっかけへの過剰反応ゲーム画像を見ただけで、前頭前野に強烈な反応が起こり、ゲームに対する欲求が過剰に起こる
報酬欠乏症激しい刺激になれて、快楽を感じなくなる
脳細胞の破壊脳の情報伝達機能を司る白質などが破壊されることで、脳の神経細胞から出される情報伝達がうまくいかなくなり、理性的な行動をとることが難しくなる

ゲーム・ネットビジネスは企業にとってドル箱。ユーザの不安や好奇心を掻き立て、激しく興奮させればさせるほどSNSもゲームも盛り上がり、巨額の利益を生み出すからです。企業は、たとえそれが「子供の健全な育成」の弊害を認識していても、ビジネスを手放すはずなどありません。

こうした状況下で、子供たちの言葉がどんどん荒れ、それが人間関係に悪影響を及ぼし、次々にトラブルが起きているという現状を、大人は自覚する必要があります。

「怒り」ばかりが沸き起こりやすく

会話がなく、言葉が足りないと、『悲しい』とか『苦しい』とか自分の感情を言葉にすることがなくなります。助けを請うにもそれを訴える相手もいなければ、うまく表現もできません。

また、厳しい現実と向き合い、言葉によって気持ちを深く掘り下げていくのはつらいことなので、向き合おうとしなくなります。つまり、「考えれば考えるだけ苦しむことになる」。だから、考えない。結果、自己分析の経験も積まれません。

その気持ちのやり場のはけ口となるのが、『むかつく』『殺す』『死ね』など、驚くほど簡単な怒りの感情表現です。自分の内面から目をそらし、他者に向けて放てばいいだけ気持ちは幾分晴れます。しかし、こんな言葉を発すれば、待っているのは衝突です。

かつての不良少年は、虐待、差別、貧困といったことで家庭や学校に居場所を見つけられなくなった者たちでした。しかし、彼らには「不良グループ」という「居場所」「コミュニティ」がありました。また、喧嘩するとそこにはリアルな痛みがありました。故に、少年院では、悪いことを反省する指導が行えました。

しかし、ゲーム内ではリアルな会話もなければ、血が流れることなく、簡単に人を殺せます。人を殺して咎められることはありません。その負の側面が、ひきこもり、ゲーム依存、心身の疾患を引き起こし、また、少年院では、悪いことをしたという自覚がない子を増やしています。なんとも怖いことです。

子供をどう育てるべきか:会話で語彙力を増やす育て方を

子供をどう育てるべきか

美しい夕日を見た時に、「うわっ、ヤバ。」としか表現できない子供と、自然の小さな変化・美しさを発見し、感情豊かに風景を見つめられる子、どちらの人生が豊かになるかー。答えは言うまでもありません。

最大の問題は、子供たちがコミュニケーションに必要な最低限の「語彙」を備えていないことです。人は、人は覚えた言葉によって思考力を成長させます。親は子供との会話で子供の語彙力を増やす努力が必須です。

子どもの語彙力の増やし方:3つの方法

  • 「語彙力」「一般常識」「知識」が備わるように、家庭内でいろいろな話を子供とする
  • 「様々な経験」「新しい経験」を積ませる
  • 五感を使う体験もさせる

親が子供に対して話しかける言葉の量と質が、経済力よりはるかに大きな影響を与えます。

言葉は暗記するものではありません。1つの言葉も複数の意味を持っています。言葉は、会話・経験を通じて、時間をかけて育っていくものです。

体験」は、言葉の多様な意味を体感で理解することにつながります。「新しい経験」も、興味関心を抱く対が増えて、感性をみがくことにつながります。物事の因果関係も考えるようになります。そして、「五感の刺激」は、「この思いを誰かに伝えたい」という気持ちを醸成します。自分の気持ちをより正確に伝えたいと思えば、語彙も表現も豊かになっていきます。

「国語力」の差が顕著になるのは、3~4年生です(理由は以下の記事参照)。そして、それを決めるのは、それ以前の家庭環境です。

人は、自己完結できる自己肯定感を理想としながら、どこかで自分に寄り添ってくれる他者からの言葉を欲しています。この時、支えてくれるのが「言葉」です。言葉が人との関係を築き、そして、お互いに理解できる関係を築くことで、生きることがすごくラクになります。

皆がたくさんの言葉を持ち、豊かな感受性によって他者の意見を聞き入れ、自らの言葉で的確に気持ちを表現し合える環境は、「皆が生きやすい環境」を作り、「社会をよりよいモノにする」ことにつながります。

最後に

今回は、石井光太さんの『ルポ 誰が国語力を殺すのか』からの学びを紹介しました。しかし、ここで書き記した学びは、ごく一部に過ぎません。非常に、学びの多い本でした。

この世から剝離しかけた人を、最後にこの世に繫ぎ止めるのも「言葉」です。

人は一人では生きられません。自己完結を目指しながらも、どこかで自分に寄り添ってくれる他者からの「言葉」を欲しています。皆で支え合うには「言葉」は必須。生きやすい社会を作るためにも、国語力を疎かにしてはいけません。

子育て中の方はもちろん、よりよい社会を考える上でも、多くの人に読んでほしいです

子供の教育、よりよい社会のために、合わせて読んでおきたい本も紹介しておきます。

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