- 芥川賞・直木賞は日本で最も有名な文学賞。以下の3点の「選考基準」が大きく異なる
- 選考ジャンル
- 対象作家
- 作品の長さ
- 芥川賞・直木賞の違いを知ると、あなたの読書傾向にあった本が見つけやすくなる
- どの受賞作を読めばいいのかわからない方に、読みやすいおすすめの芥川賞・直木賞受賞作を3冊づつ提案
芥川賞・直木賞ってどんな賞?違いは?
芥川賞・直木賞は日本で最も有名な文学賞です。
芥川賞・直木賞の選考会は年2回。最新発表は、2024年7月17日に発表された「弟171回 2024年上半期」です。二つの賞は別々の賞ですが、どちらも、文芸春秋を創業の菊池寛が創設した賞であり、現在はどちらも「公益財団法人日本文学振興会」が主催しています。
上半期は7月、下半期は翌年1月に行われます。前年12月~5月までに刊行された雑誌・書籍が上半期の、6月~11月までに刊行された雑誌・書籍が下半期の対象となります。
【まとめ】芥川賞・直木賞の違い
芥川賞・直木賞の違いは大きく3つあります。①剪定ジャンル、②対象作家、③作品の長さ が異なります。
芥川賞 | 直木賞 | |
---|---|---|
正式名称 | 芥川龍之介賞 | 直木三十五賞 |
創設者 | 菊池寛 ※文藝春秋創設者 | |
開催月 | 毎年1月・7月 | |
選考の違い | ||
❶選考ジャンル | 純文学 | 大衆小説 |
❷対象作家 | 無名・新人 ※新人の登竜門 | 新人~中堅 ※最近は中堅作家が多い |
❸作品の長さ | 短編・中編 | 短編~長編 |
芥川賞ってどんな賞?
芥川賞は、新人作家の純文学作品に与えられる賞です。1935年に菊池寛が直木賞とともに創設した、歴史ある文学賞で、「文學界」・「新潮」・「群像」・「すばる」・「文藝」の五大文芸誌に掲載の文芸誌に掲載される、純文学の中・短編作品の中から選ばれます。純文学の新人にとって登竜門的な賞です。
直木賞ってどんな賞?
直木賞は、新人・中堅作家による「大衆小説」の単行本に与えられる賞です。芥川賞と同じく菊池寛によって創設されました。
芥川賞・直木賞はどちらがすごい(格上)か
「芥川賞・直木賞はどちらがすごいか」、とお考えの方は多いですが、2つの賞は、そもそもジャンルや選考基準が違うで、どちらがすごい(格上)ということはありません。
両方名誉のある賞であり、どちらが凄い(好き)と感じるかは、個人の好みによります。
芥川賞と直木賞の違いを知ると、目当ての本が探しやすく
芥川賞と直木賞の違いを把握しておくと、読みたい本選びに役立ちます。以下、簡単に特徴をまとめます。
賞 | 特徴 | 特徴 |
---|---|---|
芥川賞 | ❶新人 ❷純文学 ❸短編~中編 | 「芸術性」「形式」が重んじられる 文章の美しさや表現方法の多彩さも重視される 人間とは何かを問う作品が多い 社会的な問題提起がある作品が多い 私小説、或いはそれに準ずる作品も多い 新人なので、文章がやや粗削り。そこが面白さでもある |
直木賞 | ❶新人~中堅 ❷大衆小説 ❸中編~長編 | 「娯楽性」「商業性」が重んじられる 読んで楽しい・感動するというエンターテイメント性が重視される 人の心を描く感動作品が多い 最近は中堅作家の受賞が多い。安心・安定して読める 中編~長編だが、短編集・連作集もある |
あなたへのおすすめ受賞作は?本の探し方提案
いろいろ芥川賞・直木賞を読んでみた上で、それぞれの賞のおすすめのターゲットユーザは以下の通りです。
芥川賞はこんな方がおすすめ | 直木賞はこんな方がおすすめ |
---|---|
読書初心者(長編小説は苦手) 問題提起がある本を読みたい方 深く考えさせられる本を読みたい方 人の心を深くえぐる本が好きな方 | 分厚い小説も読了できる方 長編が苦手な方は、短編集がおすすめ。短編でも深い感動あり 登場人物に心を寄せ、感動したい方 ストーリーの展開をじっくり楽しみたい方 |
読書初心者には読みやすい「芥川賞」
読書に慣れていないは読書初心者🔰は、文章が短めの「芥川賞受賞作」の方が読みやすいと思います。サクッと読みやすいので、途中で挫折する割合が減り、次の本も試したくなります。
芥川賞受賞の短編を読むと、「本の深み・読み応え」は小説の長さではないということに気づかされます。
読書慣れしている方には「直木賞」
分厚い本も読みこなせる読書上級者には「直木賞受賞作」をおすすめしたい。
長編小説では、登場人物や物語の世界観が丁寧に描かれます。そして、ストーリー展開も幅広く、ストーリーにちりばめられた伏線の回収を楽しんだり、登場人物に心を寄せたり、ストーリーに没入できます。「人の心の機微」が丁寧に描かれるので、ヒューマンドラマが好きな人にはおすすめです。
映像化作品を読みたい方は「直木賞」
直木賞には、映画やドラマになった映像化作品が多数!それだけ、一般大衆に受け入れやすく面白いものが多いということです。映画・ドラマを見た方も、小説を改めて読むと、映像では描かれていない部分が多数見つかり、より深く作品を楽しむことができます。
読了後に唸らされるのは「芥川賞」
「おもしろかった」「感動した」など、小説にはいろんな感想があります。このような読みやすい小説とは異なり、読了後に「う~む」と唸らされる作品が多いのが芥川賞です。
- ん?これってどういうこと?
- すごい違和感…
- 胸糞、わるっ!
- 登場人物に、超嫌悪感…
- このセリフ、強烈!
といった感想を持つ作品が、結構な確率で存在します。
純文学には、作品の背景に、「私とは?」「人間とは?」「社会とは?」と言ったような哲学的な問いが多いモノも多い。哲学的な作品は、人の痛いところ、弱いところ、普段から嫌悪感を感じていることなどを鋭く突いてくるものが多く、読みっぱなしにできないのです。作家が身を削っている作品も多いです。
純文学と聞くと、何だか堅苦しく、暗く、つまらなく、高尚ぶってなんかちょっとイヤと思う方もいるかもしれませんが、この違和感が純文学の魅力だと私は思います。
私は、このような違和感を感じる小説が結構好きです。読みながら、なんだこれは!と思いながらも、読書後に深く考えることが、自分のプラスになっています。これは、ビジネス書・実用書にはない小説の大きなメリットです。
読みやすく、読み応えもあるおすすめ芥川賞:3作
芥川賞のボトルネックは、小説によって人の好き嫌いが分かれるところです。逆を言えば、作品が読者を選んでしまう…以下の作品は、読者を人を選ばない作品です。面白く読めます。
推し、燃ゆ
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推しアイドルがファンを殴って炎上…そして、芸能界引退。学業も学校生活も家庭も底辺で、ままならない人生に苦しむ女子高生・あかり が、唯一、生きる原動力・心の支えの”推し”を失い、心が削られていく姿を描く。
現代社会の、生きづらさ、閉塞感を切り取る1冊。共感必至。私にとって本作は間違いなく「推しの1冊」。
作品:推し、燃ゆ
著者:宇佐見りん
むらさきのスカートの女
Audible聴き放題対象
MY書評
〈わたし〉は、公園でクリームパンを食べる変わった底辺女「むらさきのスカートの女」が気になって仕方がない。日々、彼女を観察を繰り返す。最初は「むらさきの女」が何者か知りたくてページをめくるが、次第に、あれ、〈わたし〉って新種のストーカー?〈わたし〉の方がキモイかも…と、〈わたし〉の執拗な変質者ぶりに、関心の矛先が変わっていく。〈わたし〉が何者なのかを知りたくて仕方がなくなる!
とにかく、先が知りたくて、ページをめくる手が止まらなくなる。独特の世界観に、読者は引き込まれること必至!
作品:むらさきのスカートの女
著者:今村夏子
コンビニ人間
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MY書評
大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目の36歳未婚女性、古倉恵子。これまで彼氏なし。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は「恥ずかしくないのか」とつきつけられる。
「普通」でないと息苦しい現代社会。異質を排除する「普通圧力」の存在を、コンビニを舞台に軽やかに描き出す。読者は「普通とは?」「自分らしい働き方・生き方とは?」を問われる!
作品:コンビニ人間
著者:村田沙耶香
読みやすく、読み応えもあるおすすめ直木賞:3作
直木賞は長編がネックですが、以下で選んだ作品は、どれも映像化された作品で興味を持ちやすい。さらに、『鉄道員』は短編、『鍵のない夢を見る』は短編集で1話は長くありません。
何者
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MY書評
「何をするか、何者になるのか」が過剰に求められる現代社会。大人になると「あなたは何をしているのか?」と問われ、何者にもなれなかったものは、努力不足だと愚者のレッテルを暗に貼られてしまう。
「あなたは何者なのか」を問われる、人生最初の試練ともいえるのが就職活動(就活)。そんな就職活動戦線真っ只中でもがく、「何者かであろうとする就活生たち」のリアルをあぶりだす。
作品:何者
著者:朝井リョウ
鍵のない夢を見る
わたしたちの心にさしこむ影と、ひと筋の希望の光を描く傑作短編集。5編収録。
・誰もが顔見知りの小さな町で盗みを繰り返す友達のお母さん
・結婚をせっつく田舎体質にうんざりしている女の周囲で続くボヤ
・出会い系サイトで知り合ったDV男との逃避行
・念願の赤ちゃんだけど、どうして私ばかり大変なの──
普通の町に生きるありふれた人々に、ふと魔が差す瞬間、転がり落ちる奈落を見事に捕らえた作品が並ぶ。
現代の地方の閉塞感を背景に、五人の女がささやかな夢を叶える鍵を求めてもがく様にあなたは何を感じるか?時に突き放し、時にそっと寄り添う作品。
作品:鍵のない夢を見る
著者:辻村深月
鉄道員
鉄道員として生涯を捧げた男の人生とその心情を描いた、日本文学の中でも特に感動的な物語の一つ。
主人公の佐藤乙松は、北海道の小さな駅で駅長を務める鉄道員。真面目・誠実で、家族よりも仕事を優先し一生懸命に職務を全うするも、時代の流れとともに鉄道は衰退し、駅は廃止されることに。駅の閉鎖の日、乙松は最後の業務を終え、駅を去る決心し、家族への気持ちとともに旅立つー。
誠実に生きる鉄道員の人生と、家族への愛ー。人生の価値や人間の本質に触れる素晴らしい感動作!
作品:鉄道員
著者:浅田次郎
【読書のコツ】自分に合わないと思ったらサクッとやめる
読書は無理にすると、読書が嫌いになります。故、読み始めてなんか違うかも…と思ったら、一旦止めた方がいいと思います。一回挫折した本でも、然るべきタイミングが来ると、ずきゅんと心にハマります。
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【読書のコツ】小説を読みっぱなしにしない、名著を武器にする読書術
ただ読むだけではもったいない。名著を武器・パートナーにする読み方を教えてくれる本が、秋満吉彦さんの『「名著」の読み方』。この本では名著をより深く読む方法がいろいろ紹介されています。
小説をより深く読めるようになります。小説が好きな方は、是非、参考にしてみてください。
最後に:芥川賞・直木賞おすすめ作品&受賞作一覧
以下の記事では、芥川賞・直木賞の私のおすすめ作品、および、過去の受賞歴一覧を紹介しています。いろんな意味で面白い作品がいろいろあるので、是非、参考にしてください。
サラリと読みやすい本をお探しなら、「本屋大賞」作品もおすすめです。おすすめ作品・過去受賞作については、以下をご確認下さい。