- 陰謀論は「特別な人の問題」ではない。誰でも陥る
不安や剥奪感が強まると、人は複雑な現実を“単純で分かりやすい物語”で理解しようとする。その心理が陰謀論を自然に受け入れやすくする。 - SNSが“もう一つの現実=パラレルワールド”を作り、信念を強化する
同じ物語を信じる仲間が集うことで強い共同体が生まれ、孤立感が癒やされる。だがその一体感が現実社会との断絶と分断を深めていく。 - 陰謀論は民主主義を揺るがす実在の脅威であり、“軽視”が最大の危険。
信念が行動を正当化し、暴力や社会的混乱につながる。必要なのは、情報の正誤だけでなく、孤立や不信を減らす“社会の土壌“の回復だと本書は示す。
★★★★☆ Audible聴き放題対象本
『となりの陰謀論』ってどんな本?
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SNSを開いた瞬間、突拍子もない話が「真実」のように語られ、
気がつくと家族や友人まで“それらしい情報”に影響を受けている——。
そんな光景は、いまや珍しいものではありません。陰謀論は、米国トランプ政権下で広まったQアノンのように、政治や社会を揺るがす現実的な力へと変貌しています。
烏谷昌幸さんの『となりの陰謀論』は、陰謀論が人間の心理や社会構造に根ざした“身近な問題” であることを、現代社会の事例も提示しながらわかりやすく解説する1冊。心理・社会・政治という3つの側面から、陰謀論がどのように生まれ、広がり、暴走していくのかを丁寧に解き明かします。
読み進めるほどに怖くなるのは、陰謀論が決して「バカげたデマ」ではなく、
現実の暴力や民主主義の危機に直結する力を持っているという事実。
無視・軽視していては、社会そのものが動かされてしまう——そんな危険性が本書からずしりと伝わってきます。
本書は、陰謀論を頭ごなしに否定するのではなく、
「なぜ人はそこに惹かれるのか」
「なぜ社会はそこに向かってしまうのか」
を、じっくり掘り下げます。読後には、自分自身の日常の“情報の見え方”が確実に変わるはずです。
陰謀論とは何か
陰謀論というと「荒唐無稽な噂」であり、特定の人たちがハマるというイメージがあります。
しかし、誰もがハマりうるものであり、また、陰謀の背景には「意図的な悪意ある集団」が存在します。
陰謀論は誰でも陥りうる
- 複雑な現実に直面すると、人は不安を覚える。
- その不安を「単純で筋の通った物語」で解消しようとする。
- そこに陰謀論が入り込み、安心感を与える。
特に「奪われている」という感覚=剥奪感は、人々を陰謀論へと引き寄せます。
社会的地位や経済的安定を失った原因を「誰かの陰謀」に求めてしまうのです。
陰謀論は、誰もが陥りうる心理的傾向。
私たちの心には、幼少期から「世界を裏で操る悪役」という物語がしっかり根付いています。
陰謀論は社会そのもののゆがみを映す「症状」。
陰謀論を信じる人を切り捨てるのではなく、社会全体の課題として捉えるべきなのです。
陰謀論が作る「パラレルワールド」
本書のもう一つの重要な視点が、陰謀論が“もう一つの現実=パラレルワールド”を生み出すという指摘です。
ネット上には、同じ陰謀論を信じる人々が集まり、互いに支え合うコミュニティが存在します。そこでは共通の物語を信じることで強い一体感が生まれ、現実で感じる孤独や疎外感を埋めてくれる“居場所”となります。
しかし、このパラレルワールドは、現実社会との断絶を深め、分断を加速させ、やがて現実を脅かす力へと成長していきます。
- SNSで同じ陰謀論を信じる人々が集まり、共同体意識が強まる(インプットされる情報が隔たる)。
- 現実社会での孤立感や剥奪感を癒すと同時に、その感情を加速させる役割を果たす(考え方がますます偏る)。
- → 現実との断絶を深め、社会の分断が加速する。
陰謀論と政治
政治は人々の不満や不安を吸収して支持を集めます。
一方、不安や不満が高まるほど、人々は“敵の存在を示す単純な物語”を求めます。
それを政治家が利用。「敵のせいだ」というわかりやすい物語を提供し、強烈な支持を生みだすのです。
その典型がトランプ政権下で拡大したQアノン。
日本でも、社会不安が広がるたびに「メディアや政府が真実を隠している」という言説が広がります。
こうして、陰謀論は社会の分断を加速させ、民主主義の基盤を揺るがしてしまうのです。
著者の警告:陰謀論を過小評価してはならない
陰謀論は笑い飛ばして済ませられるものではありません。
軽視すればするほど地下で広がり、やがて社会の表層に噴き出します。
2021年のアメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件はその象徴。ネット上の「選挙不正」という陰謀論が、現実の暴力へと直結しました。
そして陰謀論は、民主主義が成立する前提——“共通の事実認識” を破壊してしまう。
事実が共有できなくなった社会では、対話は不可能になり、分断だけが残ります。
陰謀論者を断罪したり、事実の正誤を正す以前に、孤立や不信を減らす“社会の土壌づくり”が必要 ——
著者はそう指摘します。
✅ 読み終えたときに得られた学び
- 陰謀論は「切除」ではなく「治療」が必要な社会の症状
- 誰もが陥りうる心理的傾向であり、特定の人だけの問題ではない
- 陰謀論は孤立感や剥奪感を癒す共同体を作るが、社会の分断も加速させる
- 民主主義を守るためには、情報の正誤だけでなく「孤立の解消」「信頼の回復」が不可欠
まとめ
政治、SNS、経済不安、人間関係—— 現代社会の多数の要素が絡み合い、陰謀論を支えています。
『となりの陰謀論』を読了し、
陰謀論は“特定の人の問題”ではなく、社会そのものの問題であり、自分もいつでも当事者になりうる
という現実を突きつけられました。
いま「話が通じない人が増えた」と感じる背景には、単なる情報格差ではなく、世界観そのものの断絶がある——。
本書は、その断絶がどのように生まれ、人がなぜそこに引き寄せられるのかを丁寧に示してくれました。
陰謀論に囚われる人を嘲笑するのではなく、
その背後にある不安や孤独、社会の歪みに目を向けること。
それこそが、現代を生きる私たちが最初に取り組むべき姿勢だと教えてくれます。
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