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【書評/要約】この国の冷たさの正体(和田秀樹)—なぜ日本はこんなに冷たい国になったのか《自己責任・弱者叩きの源流》

【書評/要約】この国の冷たさの正体(和田秀樹)—なぜ日本はこんなに冷たい国になったのか《自己責任・弱者叩きの源流》
この国の冷たさの正体 一億総「自己責任」時代を生き抜く」要約・感想
  • 日本の“生きづらさ”は変質した社会構造にある
    「迷惑をかけるな」という国民的価値観が歪んだ形で強化され、“支援を受ける人=怠け者”というレッテルが蔓延。SOSを出すことすら責められる「頼れない社会」へと変質した。
  • 異様な社会構造——弱者が弱者を叩く
    自分の不安や弱さを他者を攻撃することで紛らわせる“弱者叩きの連鎖”が社会をさらに冷酷にしている。
  • せめて自分の人生だけは、冷たくしないための方法
    日本特有の“いやらしい自己責任論”から距離を置き、せめて自分の人生だけは冷たくしないための方法を本書は示してくれる。

★★★☆☆ Audible聴き放題対象本

目次

『この国の冷たさの正体』ってどんな本?

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貧困、孤独、SNS炎上——
いまの日本社会には、かつてよりも確実に「生きづらさ」が広がっています。

困っていても支援を求められない。
周囲も助けようとしない。
最終的に投げつけられるのは、決まり文句のような「自己責任」。

精神科医・和田秀樹さんによる本書『この国の冷たさの正体 一億総「自己責任」時代を生き抜く』は、この“冷たい社会”がなぜ生まれたのか、私たちはどう向き合うべきかを、鋭く、しかし温かい視点で解き明かしていく一冊です。

2016年に出版された作品ですが、むしろ今の日本のほうが深刻さを増しており、内容はより重い現実味を帯びています。

冷たさの正体はどこにあるのか

本書が描く“冷たさ”は、単なる「人が冷淡になった」というレベルの話ではありません。
背景には、社会構造・価値観・心理メカニズム の複雑な絡みがあります。
自己責任論が個人・組織・国家のレベルで浸透し、社会全体を殺伐とさせています。

とくに和田氏が問題視するのが、以下の3つです。

  • 迷惑をかけることを極度に恐れる国民性
  • 弱者切り捨て型の「自己責任」論
  • 弱者が弱者を叩くという倒錯構造

「迷惑をかけるな」が国民精神になった異常

日本では、「他人に迷惑をかけない」ことが美徳です。
ですが小泉政権以降、この価値観が過度に強まり、次のように変質しました。

  • 「国に迷惑をかけるな」
  • 「助けを求めるのは甘え」
  • 「支援を受ける人=怠け者」

困ったら助け合う、という本来の社会的機能が失われ、
“頼れない社会・救われない社会”へと変わってしまった のです。

その結果、困窮してもSOSを出せず、孤立が深まっていく。著者は、この価値観の変質を「異常」と断じます。

現代日本に蔓延する異様な構造——弱者が弱者を叩く

現代日本の最大の歪みはここです。
本来守られるべき弱者が、さらに弱い人を叩く。
その常態化こそが、日本社会の最大の歪みだと和田さんは指摘します。

  • 「自分は生活保護に頼らず頑張ってるのに、あいつは怠けてる」
  • 「自分も苦しいのに、障害者や妊婦だけ優遇されてずるい」
  • 「外国人が得をしている」

特に生活保護受給者、障害者、外国人などが標的になりがちです。

これは、「自分より弱い誰かを叩くことで、自分の弱さから目をそらしたい」という心理から生まれます。
しかし、この “弱者叩きの連鎖” は、社会そのものを殺伐とさせるだけです。

努力教と自己責任論の落とし穴

行動遺伝学が示す事実は、人の成功や強さの大半は、努力ではなく “遺伝と環境” に左右される。

にもかかわらず日本では、「努力すれば必ず報われる」「うまくいかないのは努力不足」「助けを求めるのは甘え」という”努力教“がが強く根づいています。
そして、「努力しなかった人を助ける必要はない」という論理が、弱者切り捨てを正当化する道具として使われてしまっている のです。

日本の自己責任論は「いやらしい」

和田さんが繰り返し強調するのは、「個人が冷たくなった」のではなく、“冷たくならざるを得ない社会” に追い込まれているということです。

低賃金、物価高、将来不安、働き方の過酷化、競争の激化。これらが、みんなの“心の余裕”を奪っています。
その結果、人は「自分のことで手いっぱい」になり、他者を助ける余裕を失います。
つまり冷たさの正体は「社会構造の劣化」にあるのです。

しかも、日本の「自己責任論」は海外のそれと比べて “いやらしさ“があります。

アメリカなどでは、新自由主義的な制度改革の一環(福祉制度縮小など)として自己責任が語られる側面が強い。
一方で日本は、以下のような構図があります。

  • 制度的には福祉を大きく縮小していなくとも、
  • 社会規範として自己責任を強調し、
  • 弱者を“道徳的に”断罪する

つまり、制度よりも“世間の空気”で弱者を追い詰めるという点が非常に日本的なのです。

人は本来「迷惑をかけ合う」存在

著者は「人間は本来迷惑をかけ合う存在」であり、「互いに支え合うことが社会の基盤」だと指摘。

強さも成功も、じつは運と環境の積み重ねにすぎない。
だから、他人を断罪する必要も、自分を責める必要もない。

本書後半では、冷たい社会を変えるための提言だけでなく、「せめて自分の人生だけは、冷たくしないための方法
を丁寧に教えてくれます。

最後に

この国の冷たさの正体』は、“自己責任”という便利な言葉の裏に隠された、日本社会の深い病理を可視化する一冊です。

「自己責任論にモヤモヤする」
「日本社会の生きづらさの正体を知りたい」
という人にとって、本書は大きな指針になるでしょう。

冷たさに飲み込まれないために、そして “自分の人生を冷たくしない” ために——是非、読んでみてください。

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