- 理不尽な悲劇から始まる物語
父の殺害、母の失踪、妹の死——。主人公・美桜は、人生の中で何度も大切なものを奪われながら生きてきた女性。事件の裏側にあるものは?単なる謎解きでは終わらない、心をえぐるサスペンス。 - 予想を裏切り続ける、大どんでん返しの連鎖
登場人物たちは皆、何かしらの「闇」を抱えている。誰もが疑わしく、誰もが怪しい。隠された顔が明らかになるたびに、さらに深い“裏”が現れ、物語は何度も覆されていく。 - 「奪われた心」が生む狂気と怨み
テーマは、理不尽に奪われた者が抱える哀しみ・怒り・怨み。これに囚われると被害者と加害者の境界が揺ぐ。人間の弱さや歪み—読後に重く残る、心理サスペンスとしての深さが印象的。
★★★★★ Audible聴き放題対象本
『レモンと殺人鬼』ってどんな本?

家族、居場所、信頼、そして「普通の幸せ」。
たった一つの事件が、その後の人生を、次々に狂わせてしまうことがある。
もし、こんな理不尽が次々と降りかかったら——私は、生きていられるだろうか。
そんな思いを、容赦なく私に突きつけてきた作品が、くわがきあゆさんの『レモンと殺人鬼』
「このミステリーがすごい!大賞」受賞作として注目を集めた本作は、
単なる謎解きでは終わらない、心をえぐるサスペンス。
「大切なものを理不尽に奪われた者」と「奪った者」を軸に、物語は高い緊張感の中、展開していきます。
最大の魅力は、“真実”が明かされるたびに、物語の前提そのものが覆されていく「大どんでん返し」の構成。
ひとつの謎が解けたと思った瞬間、登場人物たちの隠された顔が浮かび上がる。
そして、その先には、さらに深い“裏”が待ち受けている。
さらに物語は、理不尽に奪われた哀しみや怒りに囚われた人間が、
いつしか被害者と加害者の境界を踏み越え、狂気へと近づいていく過程も描き出します。
“どんでん返し”の中で、本作ほど、人間の歪みや弱さ、醜さをむき出しにする作品は、そう多くありません。
待っているのは、単なる犯人探しではありません。
派手なトリックよりも、人間の歪みと狂気を描くサイコミステリー。
「どんでん返しがすごい」と評される理由を、読者は身をもって体感することになるはずです。
『レモンと殺人鬼』あらすじ—— すべては、10年前の悲劇から始まった
派遣社員として大学の事務で働く小林美桜(こばやし・みお)。
彼女の人生の歯車が大きく狂い始めたのは、10年前のある事件でした。
洋食屋を営む父親が通り魔に殺害される。その後、気がおかしくなった母親も失踪。
小学生だった姉妹は別々の親戚に引き取られ、安心できる居場所もないまま、孤独な日々を送ることに。
やがて大人になり、再びつながった姉妹。
しかし、それもつかの間、妹・妃奈が遺体となって発見されという、あまりにも残酷な形で断ち切られます。
しかも、彼女には、“保険金殺人疑惑”までかけられるのです。
ネットやメディアによる容赦ないバッシング。
被害者であるはずの妹は、いつの間にか“疑惑の人物”へ。
妹は本当にそんな人間だったのか。 それとも、誰かが意図的に妃奈を貶めようとしているのか——
美桜は妹の無実を信じ、真相を追い始めます。
大学生の渚、施設職員の桐宮。協力者と出会いながら、少しずつ浮かび上がってくる妹の過去の断片。
しかし、明らかになる事実は、美桜を救うどころか、さらに深い苦しみへと突き落としていきます。
真実を追うほどに、謎は深まっていく。
近づくほどに、遠ざかる“妹の本当の姿”。
やがて、母もまた殺害されていたという衝撃の事実が判明し、物語は思いもよらぬ方向へと転がり始めます。
そして、美桜自身の過去や、本性までもが暴かれていく——。
すべてがつながったとき、物語は読者の想像を超える結末へと突き進んでいくのです。
感想|読み終えた後、心に残る“ざらつき”
※ネタバレに注意願います。
止まらない“どんでん返し連鎖”、見事な伏線回収
本作を語るうえで欠かせないのが、圧倒的な展開力です。
一つの謎が解けたと思えば、その裏に、さらに別の真実が現れる。
「そういうことか」と思って、先に進んむと、再び、すべてがひっくり返される。
特に後半の展開は圧巻。途中で、ページをめくる手を止めることができなくなります。
そして、全てが明らかになった後、もう一度読み返したくなります。
私はすぐに再読しましたが、伏線の張り方と回収は、まさに職人技。
後から振り返ると、「あの場面も、この一言も、すべて意味があったのか」と唸らされます。
ミステリー好きなら、間違いなく快感を覚える構成です。
登場人物、全員が「怪しい」
読み進めるうち、誰もがこう思うはずです——。「……この人も怪しい」
正直、ほぼすべての主要人物が「裏の顔」を持っています。
- 被害者であるはずの家族
- 優しそうな協力者
- たまたま、生活圏に存在していたように見える人
- そして主人公自身
誰もが何かを隠し、「大きな闇」を抱えています。
「どこにでもいそうな普通の人」が、裏の顔を見せ、少しずつ狂気をにじませていく様に、恐ろしさを感じずにはいられません。
「奪われた者」が抱える、消えない闇
物語の底に流れているのは、「理不尽に大切なものを奪われた者が抱く、消えることのない怒りと怨み」です。
- 奪われた、幸せな家庭のぬくもり
- 大切にされることなく、厄介者として育った孤独
- 周囲からの無理解と、社会からの排除
- 人前で自然に笑えなくなるほどの傷
そうした積み重ねは、人の心を歪ませ、やがて「狂気」へと変えていきます。
主人公・美桜もまた、被害者であると同時に、「危うさ」「加害性」を抱えた存在です。
事実、彼女は、白い歯を見せて無邪気に笑うことができない「深い闇」を抱えています。
しかも、その闇は、家族4人で過ごしていた頃にまでさかのぼります。
タイトルにある「レモン」もまた、すべての悲劇につながる“禍根”として、物語の中に深く刻まれています。
最大の被害者である主人公さえ、単なる「かわいそうな人」では終わらない。
この禍根の正体が明らかになっていく過程こそが、本作を単なる娯楽ミステリー以上の作品へと押し上げています。
まとめ|心がざらつくのに止められない読了感
『レモンと殺人鬼』は、
✔ どんでん返しが好き
✔ 伏線回収型ミステリーが好き
✔ サイコサスペンス要素に惹かれる
✔ 一気読みできる本を探している
そんな人に、強くおすすめできる作品です。
人間の歪みや弱さ、醜さがむき出しになる後半の展開に、読者はきっと息をのむはずです。
心はざらざらする。けれど、ページをめくる手は止まらない。
——この面白さは、読んだ人だけが味わえるものです。
ぜひ、一度体感してみてください。
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