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【書評/要約】社会保障が国を亡ぼす(石川雅俊) “社会保障は厚いほど良い”という常識を問い直す。日本の未来を考えさせる一冊

【書評/要約】社会保障が国を亡ぼす(石川雅俊) “社会保障は厚いほど良い”という常識を問い直す。日本の未来を考えさせる一冊
社会保障が国を亡ぼす」要約・感想
  • 「社会保障=善」を疑う視点を与える一冊
    現在の社会保障制度は、すでに制度疲労を起こしている。本書は、本来「支え合い」であるはずの社会保障が、現役世代の可処分所得や経済成長を圧迫する巨大システムへと変質している現実を鋭く指摘する。
  • 医療費が増え続ける構造的問題を指摘
    低自己負担と“何でも保険適用”の仕組みが、医療費膨張を招いていると分析。胃ろうや延命医療の問題にも踏み込み、「制度があるから医療が増大する」というモラルハザードの構造を鋭く指摘。
  • 「取って配る国家」からの転換を提言
    社会保険制度への「公助縮小」「自助・共助重視」「自由化」「競争原理導入」を提言。賛否が大きく分かれる内容ではあるが、「このまま社会保障を維持できるのか?」という根本問題を読者に突きつける。

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目次

『社会保障が国を亡ぼす』ってどんな本?

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給料はは上がっても生活がラクにならない現実。
一般的には「物価高に賃上げが追いついていないから」と説明されますが、本書はそれだけではないと指摘します。

社会保障が国を亡ぼす』は、医師であり政策研究者でもある石川雅俊さんが、日本の社会保障制度そのものに切り込んだ一冊です。本書が問題視するのは、社会保障制度が“支え合い”の域を超え、現役世代の可処分所得や経済成長を圧迫する巨大システムへと変質している点です。

140兆円規模に膨張した社会保障給付費。増え続ける社会保険料。
そして、その負担が若い世代の結婚・出産・住宅購入といった人生設計を難しくしている——。

著者は、「善」とされてきた社会保障制度を、あえて逆方向から問い直します。

必要なのは、「取って配る」社会から、「取りすぎない」社会への転換ではないか。

かなり刺激的で賛否の分かれる内容ですが、将来の日本と、そこでの生活を考えるうえで非常に考えさせられる本でした。

社会保険料——給与の3割が消える「見えない税金」

健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険——。
会社員の場合、これらは給与から当然のように天引きされています。
本書でまず強く語られるのが、この社会保険料の重さです。

問題なのは、負担が年々増え続けていること。
負担は日本を支える現役世代へ集中。改革は進んでいません。
その結果、手取りは減り、若者は将来に希望を持てず、少子化も改善しないまま、経済成長も停滞する——
という悪循環に陥っている。

この現状を憂い、著者は次のように問うのです。
「社会保障は善」いう思考停止で、制度疲労を放置してきたのではないか?

日本の社会保障費はどこまで膨らんでいるのか

本書では、社会保障費の膨張について具体的な数字も示されます。
ここでは、最新データ、厚生労働省のデータで、社会保障の現状を確認してみます。

社会保障の問題点

上記、2025年の社会保障給付データから次のことが見えてきます。

  • 公的支出は 140兆円超 に膨張
    内、社会保険料収入で賄えているのは60%に過ぎない。不足分は 税金と国債(借金)
  • 国民所得に占める社会保障給付率は17.6%、租税負担率45.7% → 増加傾向
  • 👉 日本は、「低負担国家」ではなく、「巨大な再分配国家」になっている

以下、医療、年金、介護についてさらに詳細を見ていきます。

医療制度の問題点——「無制限給付」がモラルハザードを生む

日本は国民皆保険制度によって、比較的低負担で医療を受けられます。
これは日本社会の大きな強みとして語られてきました。
しかし著者は、この「無制限給付」がもざるハザードを生んでいると指摘します。

低自己負担、高額療養費制度付きで、“何でも保険が適用”されるが故、

  • 軽症でも気軽に受診
  • 安心のため不要な薬の処方を求む
  • 効果の薄い治療(「延命目的の医療」「リクリエーション中心の介護」)が際限なく行われる

胃にチューブを通して栄養を送る胃ろうは、必要なケースもあります。
一方で、回復見込みが極めて低い状態でも延命が続けられ、多額の医療費・介護費が投じられている現実があります。

結その結果、

  • 患者側は「制度があるから利用する」
  • 医療機関側は「診療報酬が入る」

という構造が生まれ、医療費膨張に歯止めがかからなくなっている——というのが著者の見解です。

年金制度の不都合な真実

日本の年金制度は大きな問題を抱えています。

  • 現役世代から高齢世代への“仕送り”
  • 厚生年金の一部が基礎年金へ流用
  • マクロ経済スライドによる実質給付減 → 若い世代ほど“払い損”リスクが高い

特に興味深かったのは、「年金シミュレーター」への指摘。政府試算では、

  • 「夫+専業主婦モデル」を前提にした政府試算
  • 企業負担分が計算に入っていない
  • マクロ経済スライドの影響が見えにくい

など、実態より有利に見える側面があると批判しています。

また、厚労省の財政検証についても、実質賃金上昇率/出生率/外国人労働者数 など、将来推計の前提条件にも疑問を投げかけています。

💡将来、「年金頼り」な人ほど、一度は読んでおく価値がある内容だと思います。

介護の不都合な真実——「老い」は保険で支えるべきなのか

著者は介護制度に対しても批判的です。
そもそも、老いは“万が一”ではありません。介護を“保険”で支えること自体に疑問を呈しています。

介護制度もまた、

  • 利用者は制度に依存しやすい
  • 事業者は利用拡大で利益が増える

という構造を抱えています。
介護職の低賃金や人材不足にも触れつつ、「制度疲労は限界に近い」と警鐘を鳴らしています。

著者が提案する「出口戦略」

日本の社会保障は“制度疲労”を起こしています。
本来は「支え合い」のはずだった制度が、若い世代が高齢世代を一方的に支える“逆再分配”に変質しています。

著者が掲げるのは、「取って配る国家から、取らない国家へ」
基本となる方向性は、「公助縮小」「自助・共助重視」「自由化」「競争原理導入」です。

  • 年金:厚生年金廃止、最低保障年金+私的年金へ移行
  • 医療:応益負担、混合診療解禁、AI診断活用、延命・軽症医療の保険除外
  • 介護:公助縮小、民間保険活用、自己負担引き上げ
  • 経済政策:社会保険料引き下げ、規制緩和、民間活力重視

非常に簡単にまとめたので、詳細は本書で確認下さい。

最後に | この本から学んだこと

社会保障が国を亡ぼす』の最大の価値は、「社会保障=善」という固定観念を崩してくれる点にあると思います。

特に考えさせられたのは次の点。

  • 給付は本当に公平なのか
  • “支え合い”はどこまで必要なのか

もちろん、現実的には反発も非常に大きいでしょう。
特に、低所得者、障害者、病気を抱える人、家族介護が難しい人への視点が弱すぎると感じる読者も多いはずです。
ただ、それでも、「このまま制度を維持できるのか?」という問題提起には強い説得力があります。

社会保障制度を“別の角度”から見直すきっかけになる一冊。読み応えのある本でした。
自分の将来を考える上でも、読んで損なしです。

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