- 日本再興の鍵は最新テクノロジー・伝統・自然関係
重要分野はAI、宇宙ビジネス、EV、教育、飲食、地方創生、不老不死、量子コンピューター。この8分野に、最新テクノロジーの対極にある伝統・自然環境との融合させることが、日本再興の鍵。 - 現実的でありながらも大胆な提言
一見すると過激に思える主張の根底には、「日本をもっと自由で生きやすい社会にしたい」という一貫した思いがある。テクノロジーと個人の可能性を信じるからこその提言が熱い。 - 本記事での取り上げ項目
未来を変える5つの注目分野(AI、宇宙、EV、量子、核融合)を取り上げ解説
★★★★☆
Audible聴き放題対象本
『ホリエモンのニッポン改造論』ってどんな本?


生成AI、宇宙開発、自動運転、核融合、量子コンピューティング――。
最先端技術の登場によって、世界はかつてない変化の波に包まれています。これらの技術は、ひとたび実用化されれば、莫大な利益を生み出し、各国間のパワーバランスにも大きな影響を与えるといわれています。それゆえ、研究開発をめぐる国際競争は熾烈を極めています。
しかし、日本はこれらの分野で明らかに出遅れており、その状況に危機感を抱く人も少なくありません。「日本に明るい未来はあるのか?」という問いに、自信を持って答えられない人も多いのではないでしょうか。
そんな中で読んでおきたいのが、堀江貴文(ホリエモン)さんの新書『ホリエモンのニッポン改造論』です。本書では、日本が再び活力を取り戻す鍵として、ポテンシャルに満ちた最先端技術と、それらを活かすための現実的なアプローチが語られています。
堀江さんが重要視するのは、AI、宇宙ビジネス、EV、教育、飲食、地方創生、不老不死、量子コンピューターという8つの分野。そして、最新テクノロジーの対極にある伝統や自然環境との融合の中に、日本再生のヒントがあると説きます。
どの提言も、現実的でありながらも大胆。「こうすれば、確実に良くなる」と思わせる説得力があります。一見すると過激に思える主張の根底には、「日本をもっと自由で生きやすい社会にしたい」という一貫した思いがあります。テクノロジーと個人の可能性を信じるからこそ、彼はこのようなビジョンを語るのです。
自らの常識や価値観をアップデートしたい人にとって、本書は多くの刺激とヒントをもたらしてくれるでしょう。
本記事では、堀江さんが提示する8つの分野の中から、次世代技術に関わる「AIテクノロジー」「宇宙産業」「EV」「量子コンピューター」「核融合」の5つを取り上げ、その要点を紹介します。
AIテクノロジーで変わる社会

まずは、目下、仕事のスタイルを大きく変えているAIテクノロジー。生成AIから。
私たちの前にあるのは、知的・事務労働の約9割はAIに置き換わっていくという現実。会議資料の作成や営業事務、メール対応といったルーティン業務に時間を費やすビジネスマンは、淘汰の対象になります。ルールに従うだけの仕事、たとえばプログラミングも、AIによって自動化される時代がすぐそこに来ています。写真家やイラストレーターなど、創造性が求められる職業すらも、AIに代替されつつあります。
その中で唯一残る価値は、「人間らしさ」や「極上のプロフェッショナル性」。これからは「お金を稼ぐため」ではなく、「楽しいと感じる仕事」にこそ価値があると、本書は強調します。
- AI時代に淘汰される人材
- 一つの仕事「しか」できない人は淘汰される
- AIが人事判断をする未来もあり得る。
- アナログな仕事や「人間の手によるもの」への需要は残る
- デジタル化が進んでも、アナログ時計がなくならないように、人の手によるアナログ仕事はなくならない
- クリエイティブな分野では「プロフェッショナル性」が差別化要因となる
また、合理的なAIと非合理な人間の融合が、新たな文明を生み出す可能性も示されています。個性という観点でまだまだ課題を抱えるAIですが、民主化と進化は着実に進んでおり、孤独を癒すメタバース空間のような新たな社会構造も見えてきています。
宇宙産業――“インターネット前夜”の熱を持つ分野
堀江さんが宇宙産業に注目するのは、宇宙がもはや特権的な領域ではなく、一般市民にも開かれた「共有資産」になりつつあるからです。
その象徴が、SpaceXの「スターリンク」。ロシアによるウクライナ侵攻で地上の通信インフラが破壊された際、スターリンクは通信手段として機能し、衛星通信の有効性を世界に示しました。
今後、通信インフラは宇宙に主役の座を譲る可能性があります。衛星通信は海底ケーブルよりも高速で、効率も良いためです。この分野において、日本は次の3点で優位性を持っています。
- 宇宙ビジネスにおける日本の強み
- 高い技術力(衛星カメラやラインセンサーなど)
- 地理的条件(島国でロケットの打ち上げに有利)
- 規制の緩さ(米国のような厳格な輸出規制がない)
こうした背景を活かし、「製造・打ち上げ・システム運用」を一貫して担う“垂直統合型企業”が現れれば、世界的な競争力を持つことになると堀江さんは語ります。宇宙ビジネスの民主化が進むほど、創造的な発想が融合し、新たな産業が次々と生まれるでしょう。堀江さん自身が宇宙分野でビジネスを行う理由もここにあります。
EV社会で再編される自動車産業

EVの登場は、かつて世界を席巻していた日本の自動車産業に大きな変革を迫っています。
ガソリン車の開発には熟練の技術が必要でしたが、EVはシミュレーションで設計が可能であり、開発のハードルが大きく下がります。
EV時代に重要なのは、ハードではなくソフト技術。日本はこの「ソフト」に弱く、これはかつてガラケーがスマートフォンに取って代わられたときの構図を思い起こさせます。
- EV時代の本質
- EV開発ではエンジン技術が活かせず、日本メーカーの優位性が崩れる
- トヨタのプリウスの成功が、EV移行の遅れを招いた
- EVは「一人乗りモビリティ」など新しい形に進化する可能性がある
- 対応できなければ、日本の自動車産業の554万人の雇用にも影響が出る可能性
未来の自動車の姿を見据え、既存の常識を手放すことが求められています。
量子コンピュータと核融合――未来を切り拓くインフラ

量子コンピュータと核融合は、「未来のインフラ」とも呼ぶべき重要分野です。これらの技術で主導権を握れるか否かは、国家の未来を左右します。
量子コンピュータは、従来のコンピュータでは手が出せない膨大な組み合わせ最適化問題を、高速かつ並列に解決できる技術。これにより、暗号技術やブロックチェーンが無効化されるリスクもあり、「耐量子暗号」の開発が進んでいます。
一方、核融合は放射性廃棄物を出さないクリーンな無尽蔵エネルギー。海水を燃料とできるこの技術は、資源に乏しい日本にとって最適なエネルギー源です。
さらに、AIが進化するためには膨大な電力が必要であり、核融合技術はAI社会の基盤にもなります。
- エネルギーとAIの相互関係
- AIの進化には膨大な電力が必要
- エネルギー制約が解消されれば、AIはスーパーヒューマンに
- 核融合はAI社会のインフラとしても極めて重要
堀江さんは、たとえば小型原子炉を海上に設置するなど、現実的な提案も提示しています。これは冷却の面でも安全性が高く、実現性のあるアプローチです。
最後に
今回は、堀江貴文さんの新書『ホリエモンのニッポン改造論』からの学びをご紹介しました。
本書は、単なるテクノロジー解説にとどまらず、「社会に希望を見出すための羅針盤」としての視点、そして「個人がどう生きるか」への具体的な示唆にも満ちた一冊です。急速に変化する未来を、自分自身の問題として捉えるためのヒントが詰まっています。
今回は、AI・宇宙産業・EV・量子コンピュータ・核融合という、次世代技術の要素が高い5分野を中心に紹介しましたが、本書では、これらと対極にある“伝統文化”や“自然環境”をどう活かすか、教育や老後といった“人間の生き方”をどう変えるかについても、鋭く掘り下げられています。これらの章にも、日本の未来を変えるヒントが数多く散りばめられています。
かつて、日本は世界を驚かせるイノベーションを次々と生み出してきました。その力を再び取り戻すために必要なのは、「個人の幸福」と「社会課題の解決」の両立です。そしてそのためには、未来を見据えた賢者の視点に耳を傾けることが、きっと力になります。
“世界と日本のより良い姿”を考えるうえでの強力なヒントがここにあります。ぜひ、本書を手に取ってみてください。
