- 2024年のミステリー賞を総なめにしたミステリー小説
このミステリーがすごい!など、四大ミステリーランキングを完全制覇 - 主人公は、普段はマイペースな高校一年生・射守矢真兎。しかし、いざ、勝負事となると圧倒的な強さ知略で勝負する
- 本作に登場するゲームは、グリコやじゃんけんなど、誰もが親しんだゲーム。しかし、ルールが追加されることで、超絶・頭脳ゲームとなる。心理戦も加わって、読者は、ページをめくる手が止まらない。天才の思考の過程が垣間見れる面白さは、普段、小説を読まないビジネスマンにも味わってほしい!
★★★★★
Audible聴き放題対象本
『地雷グリコ』ってどんな本?
『地雷グリコ』は、2024年のミステリーランキングを総なめにしたミステリーです。
- 第37回山本周五郎賞
- 第77回日本推理作家協会賞
- 第24回本格ミステリ大賞【小説部門】
- 第7回飯田賞
- ミステリが読みたい!2025年版【国内編】弟1位
- 週刊文春2024ミステリーベスト10【国内部門】弟1位
- 本格ミステリ・ベスト10 2025【国内編】弟1位
- このミステリーがすごい!2025 【国内編】弟1位
物語は、勝負事に圧倒的な強さを発揮する特異な性格を持つ高校一年生・射守矢真兎(いもりやまと)が主人公。まず最初に挑むのが「地雷グリコ」。文化祭で一番人気の屋上に出店する権利をつかむため、クラス代表として、無敵の今常勝・生徒会チームと対戦します。この勝負で見せた頭脳プレーを買われ、真兎は心理戦や騙し合いのゲームに次々と巻き込まていくことになります。
対戦するのは、「グリコ」、「だるまさんが転んだ」「坊主めくり」など、子どものころに誰もが遊んだことがある5つのゲーム。しかし、それぞれのゲームにオリジナルのルールが追加されることで、飛び切りの頭脳ゲームに!
どのゲームも、
ロジカルにゲームを解析し、勝敗の本質や、抜け道に気づけるかー
相手を心理戦を読み、それを打ち負かせるか―
が、勝敗の鍵となります。
ストーリー展開が斬新!読者は、ゲームがどう進行しているのか、戦況を頭の中で思い描くことを求められ、頭を使う必要がありますが、それでも、勝敗がどちらに転ぶのか、先の読めない展開に引き込まれていきます。
対戦の緊張感がありながらも、同じく頭脳ゲームを描く『賭博堕天録カイジ』や『LIAR GAME』と異なるのは、ゲームに「軽やかさ」があること。「命」「人生」がかかっていないので、胸が苦しくなるザワザワ感はありません。
主人公・真兎が普段はマイペースな系女子高生であり、また、勝負の目的が、「青春」しているので、軽やかに頭脳戦を楽しむことができます。
また、クセの強いキャラクターたちも魅力です。「頭脳ゲームミステリー:射守矢真兎シリーズ」として、次の展開を期待したい作品です。
私個人としては、「頭のいい人は、こんな風に物事を考えて、事を有利に進めていくのかぁ」と、頭脳者たちの思考の過程を垣間見れたことに高評価。リアルなビジネス、そして、日常生活の駆け引きの中でも、「このぐらい周到な先読み思考、真似られたら…。う~ん、私も思考力・分析力が欲しい!」と思った次第です。
娯楽小説なんて読んでも無駄と思っている「ロジカル思考のビジネスマン」に是非とも読んでほしい1冊です(多分、完敗しますから(笑))
『地雷グリコ』:あらすじ・感想
本作は、5つの短編連作。以下の頭脳ゲームが繰り広げられます。
- 地雷グリコ
- 坊主衰弱
- 自由律ジャンケン
- だるまさんがかぞえた
- フォールーム・ポーカー
兎に角、どのゲームもハイレベルな「頭脳戦と心理戦」に驚かされます。射守矢真兎の頭脳、驚異的です。
地雷グリコ:頭脳戦・心理戦の開幕戦!
❶の地雷グリコは、じゃんけんでかったら階段を上がって、先に最上段にゴールしたものが勝者となる「グリコ」がベース。しかし、ここに独自ルールが加わることで、勝負が、俄然、知能戦にー。
- 各々、事前に、階段の3か所に事前に「地雷」を仕掛ける
- じゃんけんでその地雷段に止まってしまったら、ペナルティで10段下がらなければならない
階段の段数は46段。さて、このルールで勝者になるには、どんな手が有効なのか――。
単純にじゃんけんに勝てばいいということにはなりません。つまり「運勝負」ではありません。相手がどこに地雷を仕掛けたかを、先々の回まで予測して、グー・チョキ・パーを出すか考えないと、勝てません。さらに、会話の中で、自分の戦略を見え隠れさせながら、相手の出す手を誘導しながら、相手を「地雷」に誘導するという高等な心理戦が必要となります。
勝利のヒントは、「3の倍数」と「10段」です。あなたはどう戦えばいいかわかりますか?
真兎は、提示されたルールを素早く理解。相手の思考も考えながら、巧みな作戦を組み立てていきます。とにかく頭脳戦が高等!「えっ、そんなことまで考えるの!?」と感嘆しまくりでした。
坊主衰弱:嘘を見破る目と記憶力。仲間との連携も
2つ目の対戦は、カフェを出禁になったかるた部を救うために、真兎がカフェマスターと「坊主衰弱」で勝負します。
「坊主衰弱」は、「百人一首坊主めくり」に「神経衰弱」を掛け合わせたゲーム。100枚の百人一種の絵札を使ったゲームで、「姫」「天皇」「殿」を絵合わせてめくっていきます。ただし、「坊主札」を引くとアウト。ゲームには、札の位置を覚える記憶力が求められます。
真兎にとっては初めてのゲーム。一方、マスターはイカサマ勝負で常勝者。このことに早々に気づいた真兎は、カフェに一緒に出向いた仲間を高等なテクニックで巻き込み、マスターの勝利寸前で、圧倒的な負けから、一気に勝ちを奪い取ります。真兎の策士ぶりは圧巻です。
自由律ジャンケン:手の内の推察力
頭脳明晰さを買われた真兎。強烈な個性を持つ佐分利錵子(さぶりにえこ)都立頬白高校 生徒会長から生徒会に入るよう誘われますが、これを拒否。佐分利は、自分が買ったら生徒会入りを承諾する代わりに、負けたら、射守矢の中学時代の同級生・雨季田絵空(うきたえそら、星越高校)と真剣勝負をさせてやると提案。真兎は勝負を受け入れます。
「自由律ジャンケン」は、グー・チョキ―・パーに、両プレイヤーが独自考案した手を加えた5種で勝ち負けを争うゲーム。しかし、考案手の手の内(勝ち負けの効果)は事前に公開されません。ルールの全貌を知る審判から、勝ち負けを判定されます。
相手の考案した手の効果をどう見破るかー。超ハイレベルなじゃんけんと、心理戦は驚異的です。
だるまさんがかぞえた:知力・体力・瞬発力、既成概念の打破
4話では他行が登場。学校外に流出したSチップを賭けて他校の生徒会と勝負することにー。
「だるまさんがかぞえた」は、「だるまさんがころんだ」のアレンジ版。通常の「だるまさんがころんだ」では、鬼は「だるまさんがころんだ!」と掛け声を唱えている間、目隠し&静止が必要ですが、本ゲームでは、鬼がいつ振り向くかは事前<入札>次第。
このゲームでは、知力・体力・瞬発的な判断が求められます。このゲームで、真兎は奇想天外の方法で対戦者を破ります。発想を豊かにすれば、思わぬ方法で勝てる!既成概念にとらわれない思考の大切さを学ばされる対戦です。
フォールーム・ポーカー:記憶力・推理力・心理戦
「自由律ジャンケン」で雨季田絵空との勝負を手に入れた真兎。高校間の巨額なお金が絡む「フォールーム・ポーカー」で戦うことになります。
フォールーム・ポーカーは、カード3枚でロイヤルストレートフラッシュなど、「強い役」を作っていく独自ルールのポーカーです。トランプはハート・スペードなどの4つの柄ごとの部屋に設置されており、そこからカードを引いて強い役を作っていきます。
ゲームの勝利に必要なのは、記憶力・推理力。さらに、超・高度な心理戦も制する必要があります。5つのゲームの中でも最も難易度の高いゲームで、相手を出し抜くテクニックは、そうきたかぁ…と感心するばかりです。
なお、5話を通じて、登場人物の人間ドラマも徐々に明らかにされていく点も面白いです。なぜ、真兎は超高度な頭脳をもつのかー、なぜ、雨季田絵空との対戦を望んでいたのかーなども是非楽しんでください。
最後に
今回は、2024年のミステリー大賞を総なめにした『地雷グリコ』のあらすじ・感想を紹介しました。
この面白さは、本を読まなければわかりません。是非、本書を手に取り読んでみてください。