- 京都を舞台に描かれる、成瀬の新たな挑戦
京都大学に進学した成瀬あかりが、新しい環境の中でも“自分らしさ”を貫きながら成長していく姿を描いた、シリーズ完結編。 - 変わらない自分軸と、しなやかな成長
空気を読まないマイペースさはそのままに、人との出会いを通して学び続ける成瀬の「ぶれない強さ」が物語の核となっている。 - 母の視点とラストが生む、深い余韻
母・美貴子が語り手の章が成瀬の原点を浮かび上がらせ、母の愛に静かな感動を覚える。最終話はシリーズ全体を包み込む温かな感動で締めくくられる。
★★★★☆ Audible聴き放題対象本
『成瀬は都を駆け抜ける』ってどんな本?あらすじ

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「成瀬あかりに、また会える」——。
『成瀬は都を駆け抜ける』は、2024年本屋大賞を受賞し、社会現象にもなった「成瀬シリーズ」の完結編。
舞台は滋賀・大津の膳所から京都へ。
京都大学に進学した成瀬は、新たな環境でも変わらぬ“成瀬らしさ”を発揮しながら、大学生活へと踏み出します。
入学式から全開のマイペースぶり。
やがて彼女は、
- 謎のサークル「達磨研究会」への参加
- 簿記系YouTuberとの出会い
- 友人たちの恋や挫折への関わり
など、次々と出来事に巻き込まれていきます。
本作も、過去2作同様、物語は連作短編形式で進み、章ごとに語り手が変化。
さまざまな視点から描かれる成瀬の姿が、少しずつ重なり合い、成瀬の成長物語を形づくっていきます。
前半は、とにかく軽快でユーモラス。
後半は、これまでの「成瀬の生き様」を総括するような深い話が展開していきます。
前半は軽快でユーモラス。
後半は、これまでの歩みを総括するような、静かで深い展開へ。
とくに、母の視点から描かれる章は、静かな感動。
そして、最終話は、シリーズ全体を包み込むような温かさを残し、幕を閉じます。
笑って楽しめるエンタメ性と、人生にそっと力をくれる読後感を併せ持った一冊です。
感想|「淡々」と「熱さ」が共存する、成瀬らしい完成形
本作において、成瀬あかりというキャラクターは、一つの完成形に到達しています。
突拍子もなく、マイペースで、空気を読まない。
それでいて、誰よりも誠実で、自分に嘘をつかない。
「淡々」としているのに「熱い」。
成瀬の魅力は、「変わらないこと」にあるのではありません。
むしろ、「自分軸をしっかりと保ったまま、学び、成長し続けている点」にこそあります。
大学という、これまでよりも広い社会に身を置いても、成瀬は自分を見失いません。
多くの若者が、環境の変化の中で少しずつ自分を削り、無難な形に収まっていくなかで、成瀬は削られない。
他人と比較して優位に立とうとしたり、評価を気にして立ち回ったりすることも一切ありません。
「好きだから」「やりたいから」—— ただそれだけの理由で、堂々と前に進む。
彼女は、「自分の信じた道」にただ盲信しているわけではありません。
人と出会い、価値観に触れ、そのたびに自分を更新し続けています。
彼女は、「自分の信じた道」を盲目的に信じているわけではありません。
人に出会い、自分と異なる考えに触れながら、自分で選び直し続けています。
逃げない強さ。
ごまかさない誠実さ。
自分を裏切らない覚悟。
それこそが、成瀬あかりという存在の核なのだと感じました。
母の視点がもたらす、もう一つの感動
本作で特に心に残るのが、母・美貴子の語りの章です。
幼いころから、無表情。
話す言葉は淡々としていて、周囲とのズレも大きい。
集団生活では「扱いにくい子」と見られても不思議ではありません。
ママ友の目や、教師の評価を気にすれば、多くの親は、子どもを“直そう”とするでしょう。
しかし、美貴子は違いました。
小学校の三者面談では、教師から「協調性がなさすぎる」と厳しい言葉が投げかけられます。
さらに、「お母さんからも、ちゃんと言ってください」と念を押されてしまう。
しかし、その場面で美貴子は教師にこう放ちます—— 「そういう子なので」
一見、冷たい言葉です。しかし、それは、言い訳でも開き直りでもありません。
むしろ、「それがこの子らしさなのだ」と、娘の個性を丸ごと引き受ける覚悟を秘めた言葉だと感じました。
子育てに、迷いも、不安も、きっとあったはずです。
それでも、母は娘を「普通」に押し込めませんでした。
世間の物差しではなく、我が子の物差しを信じる。
その揺るぎない「親の信頼」が、今の成瀬を支えているのだと、胸に響きました。
最後に|ユーモラスと静かな感動
『成瀬は都を駆け抜ける』は、成瀬あかりという圧倒的な存在感を放つ主人公に元気と勇気をもらえる1冊です。
成瀬は、これからもきっと走り続けるでしょう。
他人の評価に振り回されず、無理に取り繕うこともなく、自分の足で、自分の道を。
この物語は、「こう生きなさい」と教える類の本ではありません。
ただ、「このままの自分でもいいのかもしれない」と思わせてくれる一冊です。
自分に仮面をかぶって生きている人。
周囲に合わせることに疲れてしまった人。
自分を信じきれずに立ち止まっている人。
そんな人ほど、ぜひ手に取ってほしい。
読み終えたあと、少しだけ心が軽くなる——
そんな読書体験が、ここにあります。
私はAudibleで読みましたが、聴いて読むと、成瀬の個性(淡々とした話し方)などが、際立って面白いですよ。
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