- 「その場所」に触れた者は消える――
記事・掲示板・証言が交錯するモキュメンタリー形式で描かれる、現実と虚構が地続きになった戦慄のホラー体験。 - じわじわ侵食する恐怖の新感覚
血や怪物に頼らず、日常の違和感から迫る“侵食型ホラー”。読後も抜け出せない呪いのような余韻が残る。 - 本・映画・Audibleで迫る多層の恐怖
小説は心を侵食し、映画は視覚を直撃、Audibleは耳を震わせる。形を変えて忍び寄る“その場所”の恐怖。
★★★★☆
Audible聴き放題対象本
『近畿地方のある場所について』ってどんな本?
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あなたの町にも“その場所”があるかもしれない――。
「怖すぎる」「読んだら後悔する」――SNSで瞬く間に話題沸騰。
小説投稿サイト「カクヨム」で異例の2,300万PVを記録した怪作――『近畿地方のある場所について』。
この作品、読者の“日常”に忍び込み、じわじわと、確実に、心を侵食してくるホラーなのです。
「怖いもの見たさ」で手を伸ばした者の心を、じわじわと確実に“侵食する”作家――それが背筋。
血や怪物に頼らず、日常生活の中ー例えば、ネット掲示板、廃墟、都市伝説といった“冗談半分で語られるもの”を、”背筋が凍る現実”へと変えていきます。
従来型のホラーとはちょっと違うホラーを体験したい方に、是非、すすめたい1冊です。
あらすじ:その場所に関わった者は、必ず消える
物語は、ライター背筋と編集者・小沢が手がけるオカルト雑誌から始まります。
ふたりが目をつけたのは、複数の怪談に共通して登場する「近畿地方のある場所」。
だがある日、小沢は「現地に行ってみる」と告げたまま――姿を消してしまうのです。
残された背筋は、失踪の謎を追い、
少女失踪事件の週刊誌記事、不気味な掲示板投稿、正体不明の読者からの手紙など、
断片的な情報をかき集めていきます。
やがて見えてきたのは――「その場所に触れた者は、例外なく消える」という戦慄の事実でした。
恐怖の構造:モキュメンタリー形式が生む “虚構と現実との地続き感”
本作は、雑誌記事、インタビュー・掲示板などを組み合わせたモキュメンタリーホラー。
読者は「フィクション」と知りながらも、まるで実際の事件記録を読んでいるかのような錯覚に陥ります。そして、そのリアリティが、じわじわとボディーブローのように、心を不安・恐怖で揺さぶるのです。
読了感(恐怖感)は、一般視聴者らが体験した恐怖・心霊体験を再現ドラマと取材・検証で構成した昭和のTV番組『あなたの知らない世界』に重なります。しかし、土地に根付いた作品によくある従来型ホラーの香りが全くしないのがみそ。この感覚に、これまでのホラーとは異なる新しさを感じました。
舞台が「近畿地方のある場所」と曖昧にされていることも不気味さを増幅。「自分の近くにもあるかもしれない」という恐怖となって襲ってきます。
映画版との違い:視覚の恐怖 vs 内面のざわめき
2025年8月8日公開の映画版(白石晃士監督)は、”映像のリアルさ・インパクト”で観客を恐怖に陥れます。
一方、小説の恐怖は“侵食型”。大きな絶叫ではなく、違和感・不安感がじわじわと心を蝕み、気づいたら「戻れない場所」まで引きずりこまれます。
映像では一瞬で過ぎ去る場面でも、小説ではその余韻がずっと残る。
映画俳優と一緒に“あの場所”に足を踏み入れるのではなく、小説では、“あの場所”の方から読者の心に忍び込んでくる感じ。
映画が「一瞬で心臓を止める恐怖」なら、
小説は「読後も抜け出せない呪い」のような、心がいつまでもざわめく恐怖、じとっとした読了感が残ります。
Audible版の恐怖:音が、あなたを襲う
私は本作を🎧Audible版で体験しました。
Audible版では、地名が「ピー音」で処理されているのですが、突然鳴り響く「ピー音」はかなり恐怖😱。
それは、まるで“警告”のよう。私は、夜、暗闇の中でベットに横たわりながら本作を聞いたので、怖さ倍増。突然、ボリュームを上げて鳴り響く「ピー音」に、何度も、心臓を撃ち抜かれました。いやはや、心臓に悪いです…
さらに、付属のPDF資料が“現場にいる感覚”を補強。音声と資料が絡み合うことで、まるで自分が登場人物と共に、事件の真相を追い、恐怖する錯覚に陥ります。
これから作品を味わう方にーー 怖さを最大化する「読書提案」
恐怖を最大化したいなら―― 次のような読書体験はいかがでしょう。
- 夜、明かりを落とした静かな部屋で読む.
- Audible版をイヤホンで体験。→ 恐怖が耳元にまとわりつく。
- PDF資料を手元に置き、調査者の一員として没入する
怖さが増すはずです。
最後にー「禁忌」への恐怖、知りたい願望に引き込まれる
今回は、背筋さんの『近畿地方のある場所について』を紹介しました。
ホラーとは不思議なものです。怖いのに、なぜか知りたくなってしまう。
「行ってはいけない」「知ってはいけない」と言われるほど、逆に惹かれてしまう――。
死、異界、狂気など、ホラー小説でおなじみのテーマは、いずれも、人間の根源的な好奇心を刺激します。
本書を読みながら、人とは、危険、ヤバイ!とわかっていても 未知への好奇心が抑えられない生き物なのだなぁと改めて感じた次第です。
背筋さんの小説がはじめての方も、映画で震えた人も、小説でしか味わえない“じわじわと侵食してくる恐怖”を体験してみて下さい。