- 「考えない」は過酷な社会で生きる人生戦略
インドのような過酷な社会では、悩んでいては生き残れない。「悩まない」は複雑、かつ、不条理な社会で生き残るための人生戦略。 - 「自分のために生きる」ことを肯定する本
自分の利益を考える、楽をする、人を頼る——。それは怠けでもわがままでもなく、自分の人生を守るための合理的な選択である。
★★★★☆ Audible聴き放題対象本
『インド人は悩まない』ってどんな本?

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相手の気持ちを想像し、失敗を避け、周囲との関係を壊さないように振る舞う日本人。
これは、日本人の長所であり、慎重に考え、行動すること自体は悪いことではありません。
しかし、その「慎重さ」が、自分自身を苦しめてしまうこともあります。
考えても答えが出ないことを何度も考え、
他人の反応を先回りして想像し、
失敗する可能性を散々考えた結果、結局何も行動できなくなる—— こんな方、多いのではないでしょうか。
『インド人は悩まない——「考えすぎ」から解放される究極の合理思考』は、そんな日本人の「考えすぎ」を、かなり強烈な角度から問い直す一冊です。
著者のインド麦茶さんは、インドでの駐在や事業活動を通じて、インド人の仕事、生活、人間関係を観察してきた方です。そのなかで著者自身が「超戸惑った」のが、日本人とは大きく異なる、
- 悩まない
- まず動く
- 自分の利益を優先する
- 欲しいものは欲しいと言う
- ダメでも簡単には引き下がらない
といった思考様式でした。
日本人から見ると、彼らの「規格外の行動力」や「抜け目のなさ」は、正直、迷惑この上ないと感じることもある。
ところが著者は、それを単なる「インド人の国民性」として片付けません。
人口14億人を超える巨大国家、多宗教・多言語社会、歴史的に根付いたカースト制度、そして極端な経済格差。
そんな厳しい社会のなかで生き抜くために培われた「生存戦略」なのだと考えます。
だからこそ、そのなかには日本人が取り入れるべき思考がたくさんある。
本書を一言で表すなら、「心の中にインド人を一人置いておくことで、悩みすぎる自分から解放される本」
「もっと自分のために生きてもいい」。そんな感覚を取り戻させてくれる一冊です。
「悩まない!」インド式合理思考の背景
そもそも、なぜインド人は、「悩まない」のでしょうか。
その背景にあるのは、インドという国が抱える「複雑さ」と「不条理」です。
自分のすぐそばにある「複雑さ」と「不条理」
インドは人口14億人を超える巨大国家です。
多宗教・多言語社会であり、歴史的に根付いたカースト制度も存在する。
さらに、地域、宗教、言語、経済状況による違いも大きく、上位1%が富の40%を独占するという極端な経済格差も存在します。
つまり、誰もが同じルールのもとで、同じ価値観を共有して生きている社会ではありません。
さらに、いともたやすく人が生まれ、そして死んでいく世界でもあります。
そんな環境で生きていくためには、「周囲がどう思うか」を気にしすぎていては、自分の利益や生活を守れません。
だからこそ、本書で描かれるインド人の思考には、徹底した「自分のため」という軸があるのです。
「自分のため」は、生き抜くための合理的な思考・行動
日本人から見ると、インド人の行動は相当に厚かましい。
しかし、圧倒的に人が多い社会では、
「自分が何をしたいのか」よりも「周囲がどう思うか」を優先していたら、チャンスを逃してしまう。
「自分には無理かもしれない」と慎重になっていたら、誰かに先を越される。
「こんなことを言ったら嫌われるかもしれない」と遠慮していたら、自分の要求を通せない。
だからこそ、「まず自分の利益を確保する」
それは、厳しい環境のなかで生き抜くために培われた、合理的な戦略なのです。
日本人が取り入れたい「インド人思考」
では、具体的にどんな考え方を取り入れればいいのでしょうか。
本書で紹介される考え方のなかから、特に印象的なものを挙げてみます。
- まずやってみる
- 悩んでもしょうがない → まず動く「DO文化」 (日本は「GUESS文化」)
- やってみる。駄目だったら、そのとき考える。
- 未だ起こっていないことを悩んでいる暇などない
- 「ハッタリ」「外ズラ」も一つの戦略
- 見た目も実力のうち
- ナイスな体(マッチョ、豊かな体格)、ぜいたく品で身を飾れ
- 「根拠なき自信」自信は「生き抜くための武器」
- 会議では意見を通すため目にしゃべれ。
- 発言は「中身」より「回数」と「場の支配」。大きな声で、断定しろ
- 「他人からどう見られるか」より「自分が何がしたいか」
- 「他人の評価」を必要以上に気にするな
- お金の交渉も、恥ずかしいと思うな
- 他人を活用して「楽をする」
- 資本主義は「他人を使うこと」
- 「しんどい」を全て引き受けるな、アウトソースしろ
- 一人でできることはたかが知れている
- 家族・親類もどんどん使え
- 「それでも自分は悪くない」という強さを持て
- すべてを自分のせいにするな
- 日本人は、配慮と自己犠牲を区別せよ
- 「疑う」ことで自分を守れ
- インド社会は嘘が横行する社会。「疑う」ことが大前提。
- 「本当にそうなのか?」と立ち止まれ
ただしです。インド思考は「毒にも薬にもなる」
重要なのが、「用法・容量」を守ること。
本書では、この点がわかりやすく&詳細に解説されています。
本書から学んだ「悩み」を減らす6つの考え方
ここまでの内容を、日常生活で使える形にまとめると、次の6つに整理できます。
- 「楽をする」ことをもっと肯定していい
- 「自分の利益」を考えることは悪ではない
- 「考えてから行動」ではなく「行動しながら考える」
- 「嫌われない」より「納得できる」を優先する
- 「疑う力」は、悩むためではなく守るために使う。健全な猜疑心を持つ。
- 「言い訳」に撃ち負けない、反撃力を身に着ける
以下では、これまで触れていない➏について追記します。
「要求」「言い訳」に撃ち負けない、反撃力を身に着ける
日本人は人の眼を気にします。また、ディベートのように、相手と論点を戦わせることにも、あまり慣れていません。
そのため、上司や知人から「嫌なこと」を依頼されたとき、明確に断ることができない人も多いでしょう。
しかし、意見できないことで損をするのは、結局、自分や家族です。
「負けを認めると貧困が訪れるインド」では、反撃力がなければ生き延びられません。
だからこそ、インド人のコミュニケーションには、ビジネスでもプライベートでも役立つ考え方があります。
言い訳の種類と対応策
不当な要求や言い訳に流されず、自分の立場を守るためのコミュニケーション力のコツは、「言い訳の種類」を見極め、適切に対処することです。
- 責任転嫁:問題の原因を別のところへ持っていく言い訳
この場合は、相手の論理に乗ってはいけません。
「誰が悪いのか」という話に引きずられず、「できないという事実」に絞って、淡々と詰めていくことが大事 - 相殺消去:あなたに落ち度のある別の問題を持ち出して、おあいこを狙う言い訳
この場合も、話を混ぜないこと。ブレずに、相手側の責任を問うことが大事 - 話題転嫁:全く関係のないことを、さも原因・理由かのように使う言い訳
この場合は、感情的に言い返すと終わらなくなる。
何が起きたのかを記録しておくことで、話を本来の論点に戻せる。 - 解決消去:あくまで非を認めない言い訳
問題が達成できても、「解決したから、それでいい」という態度は改めさせる。
「自分の人生を取り戻す」ということ
先に挙げた❶~➏はすべて、「自分の人生を取り戻す」ことにつながっています。
日本では、「ラクする」が否定されがちで、「自分でやること」「苦労すること」「頑張ること」が美徳とされやすい。
しかし、「楽をする」の反対は「怠ける」ではありません。
人に頼る。
仕組みを使う。
ツールを使う。
外注する。
自動化する。
こうしたことにもっと貪欲になっていい。こうした方法によって、自分の時間を生み出すことができるからです。
この発想を持つうえで、インド人思考は大いに役立ちます。
最後に
インド社会にはインド社会の問題があり、日本社会には日本社会の良さがあります。
本書『インド人は悩まない』から受け取るべきメッセージは、「日本人らしい良さを持ったまま、インド人の良さを取り入れ、もう少し自分中心に生きていい」ということです。
本書は、インド人の生き方を知る本であると同時に、「自分はなぜ、こんなに悩んでしまうのだろう」と考え直す本でもあります。
読み物としても非常に面白い。
インド社会の「規格外」の行動に驚きながら、その背景にある合理性を知る。
そして最後には、「自分も、もう少し自分勝手に生きてもいいのでは?」と思わせてくれる。
悩んでばかりな人ほど、本書を読むと、、これまで悩んでいたことが、少し違って見えてくるかもしれません。
読む価値が大いにある一冊です。






