- なぜ中東は争いが続くのか/トランプはなぜイランと対峙するのか
戦争は偶発的に起きるものではなく、思想・宗教・歴史・経済が絡み合った必然の結果。だからこそ、善悪や感情ではなく、各国の「内在的論理」を読み解く視点が不可欠。 - 「自由・平等・平和」はなぜ不安定なのか
3つは同時に最大化できないトレードオフ関係にある。その中で現代の国際社会は、「やられたらやり返す」という相互主義のバランスで成り立っている。アメリカの影響力低下でこの主義は強まりを見せている。 - 日本に必要なのは“意思あるリアリズム”
国防力=意思×能力。受動的な姿勢では国は守れない。東アジアの平和を最優先に、主体的な外交と現実主義に立った判断が求められる。
★★★★★ Kindle Unlimited読み放題対象本
『戦争と有事』ってどんな本?

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ウクライナ戦争、ガザ紛争、台湾危機、そして、イラン・米国の対立。
ニュースで日々報じられるこれらの出来事を、私たちはどこか「遠い世界の問題」として見てしまいがちです。
しかし本書で著者・佐藤優さんが突きつけるのは、その認識の危うさです。
戦争は突発的に起きるものではありません。
思想・歴史・宗教・経済・情報が絡み合った「必然的な帰結」です。
なぜ、人・国は戦争をやめられないのか ——
本書が一貫して伝えるのは、戦争を理解するには「善悪」ではなく「論理」で理解せよ ということです。
著者は、ホセ・オルテガ・イ・ガセットの『大衆の反逆』をふまえつつ問題の本質・危険を
“わかった気になって語る知識人”と、それに依存する社会構造にあると指摘します。
- 愚民は、「気分を満たしてくれる政治・リーダー」を求める
- 知識人は、専門外でも“それらしく語る”ことで世論に影響を与える
- そしてメディアがそれを拡散する
この構図が、現代社会の意思決定を歪めています。
本書は、世界で起こる戦争・紛争、そして、そこに渦巻く、各国の思惑・行動原理などを丁寧に解説。
米トランプ大統領の行動の規範になっている内容などにも触れながら、世界を見渡す視点を与えてくれます。
戦争はなぜ起きるのか。「善悪」では理解できない世界のリアル
「人」も「国家」も本質的に戦争を避けられない存在です。
精神分析学者 ジークムント・フロイトは、人間には「生」と「死」の欲動があると説きました。
このうち、死の欲動とは、破壊・攻撃衝動です。
つまり、戦争の根源は、人間の内面に存在しています。
また、日本でよく信じられている 「民主主義=平和志向」という図式も幻想に過ぎません。
例えば、たとえば「アラブの春」。
イスラム諸国にも民主化の波が広がりましたが、中東を安定させるどころか、混乱と強権化を招きました。
その背景にあったのは、
- 西洋の民主主義を支える「人権」という考え方が、イスラム圏では社会の前提として十分に根付いていなかった。
- 民衆自身が自由や個人の権利よりも、宗教や秩序を重視するリーダーを選んだ
- 👉多くの人にとって「人権」よりも「神の意志(神権)」に基づく統治のほうが、現実的で安心できた
つまり、👉 価値観の土台が異なる社会に、西洋型の民主主義をそのまま持ち込んでも機能しない
というのが、この出来事から見えてくる本質です。
世界は同じ価値観では動いていないのです。
- 西洋:人権・自由・法の支配
- 中東:神権・宗教的秩序
- 中国・ロシア:国家主導の統治
本書の真の価値
本書は個別の戦争・紛争にも詳しく触れられていますが、本書の真の価値は、個別の戦争解説ではありません。
大事なのは、次の3つの思考(視点)です。
- 善悪ではなく「構造」で見る → 感情的理解からの脱却
- 相手の「内在的論理」を読む → なぜその行動を取るのかを理解する
- 情報を鵜呑みにしない → メディアも戦争の一部である
例えば、ドナルド・トランプの行動。
日本では「奇行」に見えがちですが、そこには一貫した論理があります。
👉 それを読み取れるかどうかで、世界の見え方は一変します。
中東はなぜ戦争を繰り返すのか

本作では、世界で起こる戦争・紛争が取り上げられていますが、本記事では「中東」に限定して取り上げます。
本書は、中東問題の本質を「歴史の積み重ね」と「内在的論理」で解き明かします。
結論から言えば、パレスチナ問題は“単純な善悪”では絶対に理解できません。
簡単に歴史おさらい
- ユダヤ人の「離散」と国家なき歴史
- ユダヤ人の歴史は、ディアスポラ(民族離散)の歴史
- この状況が、「祖国を持つべきだ」という思想——すなわちシオニズムへとつながる
- 重要なのは👉 イスラエル建国は“侵略”ではなく“帰還”という論理で正当化されている点
- パレスチナ問題の火種は「イギリスの三枚舌外交」
- アラブ人へ:独立支援(フサイン=マクマフォン協定)
- ユダヤ人へ:国家建設支持(バルフォア宣言)
- 列強へ:中東分割(サイクス・ピコ協定)
- イスラエル建国と難民問題の発生
- 1948年、イスラエルが独立を宣言。パレスチナ人にとっては「祖国の喪失・難民化」に
- 以降、四度の中東戦争を経て、対立は固定化
パレスチナの歴史

イスラエル・ハマス・イラン—それぞれの「理論」
- イスラエルの理論「生存のための戦い」
- ディアスポラ(離散)の歴史
- ホロコーストの記憶 → 他者に頼っては生き残れない
- 👉 国家存続=生存権を守るためには何でもする(世界の非難など関係ない)
- ハマスの理論「排除と殉教」
- イスラエルの存在否定(排除)
- 殉教思想(ジハード)
- 👉 戦いは、勝つためだけでなく、「意味ある死」を実現する行為
- 背景にいるイラン
- 反イスラエルで結束
- イスラム教の二大宗派の派閥を超えてハマス(スンナ派)を支援 ※イランは最大のシーア派国家
- 👉 中東は“代理戦争の構造”で動いている
なぜ米国はイスラエルを支持するのか
背景にあるのは「宗教」—— クリスチャン・シオニズム
キリスト教(主に福音派)の一部が持つ思想で、「ユダヤ人がイスラエルの地に戻り、国家を持つことは神の計画であり、それを支持するのが正しい」という信念に基づいています。
この宗教的な価値観が、アメリカ国内の政治や外交判断に少なからず影響を与えています。
イスラエルにとって最大の脅威であるイランは、
アメリカにとっても「核開発阻止」や「中東での影響力抑制」という点で警戒すべき存在です。
こうした共通の敵の存在により、
特に ドナルド・トランプ 政権以降、米国とイスラエルの関係は「同盟」を超え、“準一体”へ。
その結果、これにより、米国は、政治・外交・軍事、全ての面で、イスラエルを強く支える構図になっています。
ただし、トランプの基本姿勢はあくまで、「アメリカの国益が最優先」。
あくまでアメリカにとってメリットがある限りでの関係だという点は押さえておく必要があります。
「自由・平等・平和」はなぜこんなに不安定なのか
私たちが当たりと思っている「自由・平等・平和」。
しかし本書が強調しているのは、それらは極めて脆い前提の上に成り立っているという現実です。
- 自由 → 行き過ぎれば格差を生む
- 平等 → 行き過ぎれば自由を制限
- 平和 → 力の均衡でしか維持できない
👉3つは同時に最大化できない“トレードオフ関係”にある
世界は「相互主義」でギリギリ保たれている
アメリカの影響力が相対的に弱まったことで、世界は一極支配から多極化へと移行しています。
その結果、国際社会では「相互主義(やられたらやり返す)」の原理がこれまで以上に強まっています。
一見すると危険なルールに思えますが、実は逆です。
- 抑止(やれば返される)
- エスカレート防止(やりすぎない。全面戦争を避ける)
つまり現代の国際社会は、本気の戦争を防ぐための最低限のルールで成り立っているのです。
日本の国防と未来
国防力はこう定義されます 👉 国防力=意思×能力
日本の弱点は明確です。
- 危機意識が低い
- 主体的に動かない
- 受け身の外交
民主主義には利点もありますが、その副作用として、政治を「他人任せ」にしやすい。
しかも、日本は相対的に「平和」です。
その結果として、👉 無責任でも成立する社会 となっています。
日本の消極的な外交姿勢(強く主張しない/過度に介入しない/距離を保つ)は、
「敵を作らない」という点では合理的です。しかし、戦争のような非常時には致命的です。
ではどうやって、日本の未来を守ればいいのでしょうか。
著者が、日本が最優先で守るべきと説くのが 「東アジアの平和」です。
中国と米国が対立し、台湾有事もおさまりを見せません。
さらに、トランプ第二次政権は、ますます「アメリカファースト」を鮮明にしています。
万一の時に、これまでのように無条件で日本を守ってくれると考えるのは、現実的とは言えないでしょう。
まずは、東アジアの現状を知ることです。本書には、現状がわかりやすく記されています。
まとめ|この本が与えてくれるもの
佐藤優さんの『戦争と有事』は、単なる時事解説にとどまる一冊ではありません。
思想・歴史・宗教・地政学・経済などを横断しながら、 「世界を根本から見る視点」を与えてくれます。
読み進めるほどに気づかされるのは、私たちはいま、大きな時代の転換点に立っているという事実です。
とりわけ ドナルド・トランプ の大統領再選は、その変化のスピードを一気に加速させました。
本書の価値は、「何が起きているか」を知ること以上に、「なぜそう動くのか」を読み解く力が身につく点にあります。
ニュースの表層ではなく、その裏にある論理や構造まで理解したい人にとって、この一冊は確実に“起点”になります。
さらに本書には、「戦争と有事」を理解するための古典的名著も数多く紹介されています。
それらをあわせて読むことで、視野は一段と深まり、世界の見え方そのものが変わる感覚を得られるはずです。
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