- 投資もビジネスも「先の先」まで読んだ人が成功する!
目先の情報に翻弄されることなく、隔たりのない目で、目の前で起きている小さな変化を捉え、3年、5年先の未来を予見し、そして、10年後、20年後の結果を考えるという思考が大事 - 「先を読む力」=「先を読む情報を集める力」✕「思考を広げる力」
- 「先を読む力」を磨くために大切なのが、「拡大思考」「体験思考」「行動思考」の3つの思考。本作では、このプロ投資家の先読み思考が詳細解説される
★★★★☆
Kindle Unlimited読み放題対象本
『プロ投資家の先の先を読む思考法』ってどんな本?
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短期予測は難しいが、中長期の先であれば、未来を予測することはできる。
ビジネスも投資も「先の先」を読む人が成功します。ここでいう「先の先」とは、3年、5年先の未来です。そのためには、先入観にとらわれず、目の前で起きている小さな変化を捉え、3年、5年先の未来を予見し、そして、10年後、20年後の結果を考えるという思考が必要です。
『プロ投資家の先の先を読む思考法』の著者は、ひふみ投信の藤野英人さん。成長株投資をベースにしながら、独自の視点で企業を選別し投資するひふみ投信の預かり資産の増加は、藤野さんの「いい会社」を見つける確かな先読み力があってのことです。
「成長企業の発掘」+「市場環境に応じた柔軟な運用」 を特徴としながら、リスクを管理しつつ資産を増やす藤野さんの先読み力は、、投資家のみならず、未来を予測し、先を見据えて行動したいと考える全ての人にとって、有益な思考法です。
具体的に、どのように世の中を見、先を読めばいいのかー
藤野さんは3つの思考から成る「プロ投資家の先読み思考法」をアドバイスします。
拡大思考 | 情報を効率的に仕入れる、他者の思考を取り入れ、思考の隔たりを失くす |
---|---|
体験思考 | 快・不快を読み取る。学び直す 等 |
行動思考 | 考えるだけでなく、実際に行動する。「勝つか負けるか」ではなく「勝つか学ぶか」という思考を持つ |
これら思考で、流行り廃りではない「本物を見抜く目」を養う方法を見ていきましょう。
「思考」を広げて先の先を読む
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「先を読む力」=「先を読む情報を集める力」✕「思考を広げる力」
先を読む力を高めたければ、「今、起きている変化」を上手に集め、また、同時に、「5年後、 10 年後の世界がどうなっているか考える思考」を高めていく必要があります。
では、どのようにしたら、思考を広げられるのか?以下は、その方法の例です。
方法 | 方法例・詳細 |
---|---|
❶他者の視点を取り入れる | ・ツイートの定点観測で 「世の中の人が全般的にどう思っているのか」を知る ・深夜のレストランで生活者の本音を拾う ・1日の5%は他人になったつもりで考える |
❷偏らず、フラットでいる | ・他者の視点を取り入れ、ものの見方の偏りを修正 ・物事を俯瞰して見る(着ぐるみトレーニング) |
❸好き嫌いを大事にする | ・利益を伸ばす企業とは、ユーザの「好き」を集めている会社 ・好きなことをやってる集団の方が勝ちやすい ⇒・「損得」ではなく「好き嫌い」で投資先を選ぶ |
❹若い感性を取り込む | ・若い人は、中高年には見えないものを見、感じている ⇒年下と上手に付き合い、思考をアップデート |
❺読書をする | ・興味の赴くままに本を読むことが、結果的に思わぬところで役立つ ⇒一見、関係なさそうな知識が、ある時、つながる。この気づきが見方を広げる |
努力しなければ、あなたの情報や考え方は隔たります。昨今のSNS・ネットでは、あなたの思考によりカスタマイズされた情報ばかりが入ってくるようになっている故、なおさらです。その隔たりは、世の中を正確に見る目を奪います。
そうならないためにも、広い良質な情報に触れることは大事です。良質な情報の情報源として本を読む場合も、一つの分野にとどまらず、幅広い本を読むことが大事です。
先の先を読むための「材料」の集め方
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我々は毎日多忙の中に生きています。限られた時間の中で、より多くの材料を集めるためには、工夫が必要です。
情報を成熟させ、気づきにつなげる
本書には、藤野さんの情報の集め方が様々紹介されています。これを私なりにまとめると、「様々な情報を同時並行で集め、一度じっくり考えたら、解き放って、情報を熟成させて力にする」ことです。
- まずは、多彩な方法で情報収集
- 人との会話、趣味など、日常の様々なことを通じて、関心事を増やす
- 運動しながら読書するなど、同時並行で情報収集する
- 初めて学ぶことは、集中的に学び、成長カーブを立ち上げる
- 情報を成熟させる
- 一度じっくり真剣に考える
- その考えをそのまま脳の奥に眠らせる(意識下で多くのことを同時に考え続ける)
- 会話、様々な体験・趣味などをトリガーに、意識下の情報をつなげ、価値ある情報にしていく
全く同じく同じことを語っているのが嶋浩一郎さんの本『アイデアのつくり方』。この本の中では、アイデアには、「情報収集」「情報の熟成」「化学反応」の3ステップが欠かせないと解説されています。
「アイデアが下りてくる」には、そのもととなる情報のストックが必須。また、それを成熟する経て、ある時突然アイデアがおりてきます。「先の先を読む」にも、同じ3ステップが必要というわけです。
先を読む情報を集める際に気をつけること 4つ
藤野さんは先を読む情報を集めるに当たって大事なことを、4点挙げています。
- 完璧主義にならない
- 自分をアップデートし続ける
- 快・不快への想像力を高める ※次節で補足
- 積み重ねる一方で、「アンラーニング」を行う
【❹の補足】
学び続けることは大事ですが、これまで身につけた思考の癖がさらなる学びを阻害することがあります。この状態を回避するのが、「アンラーニング」。思考のクセを直し、「新しく学べる状態」に自分を整えることが大事です。
今この時代に「伸びる会社」の共通点
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投資では、「短期」の株価を読むことは困難です。しかし、「3年後の株価なら、ある程度予想」と藤野さんは言います。だと言います。
株価の「先の先を読む」方法
株価(時価)=PER(株価収益率)✕ EPS(1株当たりの純利益)
PER:金利や為替、市況などの外部要因やその銘柄の人気によって大きく変動
EPS:企業の工夫・頑張りによって決定づけられる数値
上の式で大事なことは、株価は短期的には外部要因や人気などに左右されるものの、中長期で見ればEPSにほとんど連動するという点です。上図のチャートからも「日経平均株価と予想EPSの推移」が概ね連動していることがわかります。
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この事実は、株式市場は、冷徹なまでに「企業業績にコミット」することを物語っています。別の言い方をすると、「個別銘柄の株価は、その企業が未来に対してどのように付加価値を提示できているのか」 で決まるということです。
故、将来、利益を伸ばすであろう会社は、短期では市場の影響を強く受けても、中長期では利益に応じて株価が上昇することになります。これが、中長期ならば株価は予想できる所以です。藤野さんの投資で株価の「先の先を読む」の一つです。
成長する企業・経営者は「なぜ」を考え続ける
藤野さん曰く、成長する企業とは、「Why(なぜ)を考え続ける会社」 です。なぜやるのか、なぜ今なのか、なぜ私たちがやるのかといった「Why」を無限に問いかけ続けている会社は伸びます。
企業の持続性「サスティナブル」も、「否定し続け、アップデートし続ける」ことによってこそ、実現します。投資においても、投資先がWhyを問い続けている企業・経営者かを見極めることはとても大事です。
日本企業はWhyを考え続けることが苦手です。完璧主義的思考がWhyを問うことを邪魔しています。しかし、これでは企業は成長しません。日本が競争力を失った大きな原因もここにあると藤野さんは指摘します。
今後は、ウェルビーイングを追求する企業が成長する
これまで企業経営においては、「儲け」「効率」が重視されてきました。経済を発展させること、金銭的に豊かになることが大事でした。しかし、今後は、人・社会のウェルビーイングを追求する企業、人間の幸福度を高められる会社が成長するはずだと藤野さんは言います。
ウェルビーイング(well being)とは、心身共に「Well(よい)状態」を目指すな姿勢です。そして、これを考えるうえで大事なのが、5要素・PERMA(パーマ)です。
【P】Positive emotion | ワクワク・楽しいといった ポジティブな感情があること |
---|---|
【E】Engagement | 没頭するなど、 物事に積極的に関わっていること |
【R】Relationship | 他者とよい関係性を築いていること |
【M】Meaning | 自分の人生に意味を感じられること |
【A】Achievement | 達成感を持てること |
これら視点を持って、ひふみ投信の投資先を確認・考察してみて下さい。そうすれば、あなたの投資の目も養うことに役立ちます。
投資の基本はシンプルなのに、投資家が株式投資で勝てない理由
投資家が株式投資で勝てない理由は単純で「安く買って、高く売る」ができないからです。メンタルコントロールができていないからです。しかも、目先の情報に惑わされます。
人は、株価が安い時はまだ下がるのではないかと怯えて買えず、市場が活況になり皆が勝っていると、高値に関わらず欲しくて買ってしまう生き物です。株式投資で成功したければ、人間の心理を逆手にとって投資ができない限り、投資での栄光はありません。
先を読むことと同じぐらい大切なこと
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先の先を読む力を高めても、行動が伴わなければ、未来を読む意味はありません。
「先の先」を読む思考力を身につけるだけでなく、「先の先」に向けて一歩踏み出す行動力も併せ持つ必要があります。
「失望最小化」で生きる人、「希望最大化」で生きる人
人の生き方には、大きく2種類あります。
失望最小化戦略 で生きる人 | 失望を最小化したいと考え、「できるだけ失望しないこと」を優先する価値観を大切にする生き方 |
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希望最大化戦略 で生きる人 | 希望最大化したいと考え、「できるだけ希望増やすこと」を優先する価値観を大切にする生き方 |
残念ながら、 今の日本には「失望最小化戦略」を選ぶ人の方が多いです。これが日本の今の停滞を生む一つの要因です。「投資より貯金」と考える人が多いことも、それを物語っています。しかし、少なくとも金銭的に幸福になれるのは「中長期で先を読む投資」を選んだ人です。
「希望最大化」を判断基準に持つために大事な思考は、サティスファイサー(満足人間)に思考。対して、マキシマイザー(最大化人間)は効果を最大化しようとする人ですが、このタイプは、石橋をたたいて渡る(たたいて渡らない)タイプになりがち。悩み、不安が増えやすく、生きにくくなるのでやめましょう。
「勝つか負けるか」ではなく、「勝つか学ぶか」
人生とは、思い通りには進まないものです。起きた事実を変えることはできません。しかし、失敗したり負けても、必ずそこには「未来の成功に一歩ずつ近づく学び」があります。「何もやらない」では学びは得られません。
ミスすることは、あなたが新しいことや難しいことをしている証です。以下を実践すれば、失敗や負けは大きな意味を持ちます。起きたことの意味づけは、将来の行動によって変えられます。
社会に対して責任を果たし(responsible)、
革新的であり続け(innovative)、
それが本当なのか、答えを疑い(Question the answer)、
なぜかを問い続ける(Why ask why)。
最後に
今回は、藤野英人さんの本『プロ投資家の先の先を読む思考法』から、「先の先」を読む思考力をつけるために必要な習慣・考え方・見方を学びました。
最終章で藤野さんが述べているように、未来予測して「どうするか」を決めるのは、自分自身。「未来予測」と「好き嫌い」は切っても切り離せません。未来予測をするには、「自分はどういう人間で、何が好きで、何が嫌いなのか」も予測とセットで考えることがとても重要になります。
未来を予測する目を養うとともに、自分自身についても深く探求していきましょう。