- 忙しさの原因は「時間不足」ではない
長時間労働そのものよりも、「今ほしい答えだけを最短で求める思考」が、読書や趣味といった文化的な時間を奪っている。ググれは即座に答えは得られるが、読書には遠回りやノイズが含まれる。そのノイズを避ける姿勢が、思考力や視野を狭めている。 - 読書離れは労働と価値観の変化の結果
かつては教養が成功の鍵だったが、現代では即効性のある情報と行動が重視されるように。さらに、仕事は自己実現と結びつき、人々は全身全霊で働くことを求められるようになった。 - 「半身で働く社会」への提案
著者は、仕事にすべてを捧げる生き方を問い直す。読書とは、人生を豊かにする時間そのものだ。本書は、失われた余白を取り戻す視点を与えてくれる。
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『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』ってどんな本?

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「いや、そもそも本も読めない働き方が普通とされている社会って、おかしくない!?」
この問いにドキッとした人は多いはずです。
仕事に追われ、気づけば趣味も、家族との時間も、読書も後回し。
「時間がないから仕方ない」と思い込んでいませんか?
三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は、
実は「忙しさ」に慣れてしまった私たちへの警告書。
「労働」と「読書」という一見関係なさそうなテーマから、
現代人が“文化的な時間”を失ってきた構造を、歴史的に解き明かす一冊です。
「文化的な時間」とは、人生を豊かにするために欠かせない時間のこと。
スポーツを楽しむ時間、家族との団らん、旅行、英語や資格取得などの自己研鑽――
自分の人生にプラスになる時間すべてを指します。
本書は、新書大賞2025 大賞を受賞したことにも納得の一冊。
読後、自分の生き方や働き方を自然と見つめ直したくなります。
特に、以下のような方にはおすすめです。
- 仕事に追われ、趣味や家庭の時間が確保できないと感じている方
- 今の自分の働き方に疑問を感じている方
- 知識や情報が、仕事とどう結びつき、どう変化してきたのかを知りたい方
忙しさの正体は「時間の不足」ではない

著者が鋭いのは、「長時間労働=原因」と単純化しない点です。
かつて日本人は今以上に働き、なおかつ遊び、読書もしていました。
ではなぜ、現代だけが「仕事と趣味を両立できない時代」になったのか?
その答えの一つが、「必要な情報だけを、最短で欲しがる思考」です。
なぜ本は読めないのに、スマホは見続けられるのか
本もスマホも「文字を読む」行為。それなのに、疲れていてもスマホは見てしまう。
理由は明快です。
ネットは――
✔ 今ほしい答えだけ
✔ ノイズを排除した状態で
✔ すぐに与えてくれる
一方、読書は違います。自分が今求めていない情報、遠回り、寄り道、つまり「ノイズ」が大量に含まれています。
しかし著者は断言します。
そのノイズこそが、思考を深め、視野を広げ、人生を豊かにするのです。
「ノイズ」を嫌う社会が、生産性も奪っている
皮肉なことに、
「効率化」の名のもとにノイズを排除してきたはずなのに、日本の労働生産性は先進国の中でも低水準。
その仕事の効率の悪さは、OECD加盟国の生産性ランキングに見る「日本の生産性の低さ」などからも明らかです。
考えなくていい情報ばかり追い、
複雑な文脈を理解する力が衰え、
結果として仕事も人生も浅くなる――。
この悪循環を、読書史×労働史という視点から説明していく構成は圧巻です。
「ノイズ」は新しい発見の宝庫。
外山滋比古さんも『乱読のセレンディピティ』で、思いがけない発見をもたらす読書の重要性を説いています。
教養から「情報」へ――読書スタイルの変化
「今、求めている情報だけを素早く知りたい」という情報の求め方は、昔からのスタイルではありません。
極めて現代的です。
✅ 明治時代~戦後は、
教養(時間をかけて身につける知識)=成功の鍵でした。読書は、立身出世のための投資だったのです。
✅ しかし、1990年代以降、成功に求められるのは「今すぐ役立つ情報」と「即行動」に。
読書は「ノイズが多すぎるもの」として敬遠され、浅く・速く・すぐ効く自己啓発が溢れるようになります。
✅ 世の変化が早くなった2000年以降になると、
真面目に働くだけでは報われにくくなり、人々は「自分がコントロールできる範囲」で人生を変えようとします。
断捨離、ミニマリスト、プレゼンスキル、コミュ力――
深い教養ではなく、即効性のある浅いテクニックが求められる時代です。
さらに、通信の高速化が加わり、自分が知りたいことだけ知る人たちには喜ばしい「ググればOK」な環境に。
こうして、現代人の「読書離れ」は加速したのです。
なぜ、全身全霊で働く労働者が増えたのか
自己実現できる仕事こそ最高の人生―― そんな価値観が広まり、仕事がアイデンティティになりました。
さらに、「自己実現が果たせる仕事に就くことこそ、最高の生き方だ」と叫ばれるようになります。
仕事がアイデンティティになる時代の到来です。
ここに、「新自由主義」「自己責任論」「身雇用の終焉×寿命の長期化」が重なり、
将来不安に備えるため「働き続けるしかない」社会へ。
こうして生まれたのが、「全身全霊で働くことを美徳とする社会」です。
「半身で働く社会」へ――文化的な時間を取り戻す
本書の核心はここにあります。
仕事にすべてを捧げる生き方は、本当に幸せか?
忙しい自分に酔っていないか?
文化的な時間を犠牲にしてまで守るべき成果なのか?
著者が提案するのは、仕事も、人生も、半身で向き合う社会。
「本も読めない働き方が普通とされている社会はおかしくないか?」いう著者の問いは、
「仕事」と「文化的な時間」を両立する、「半身で働く社会」への転換の提唱に帰結します。
何も考えず全力で働く方が楽です。でもその先にあるのは、疲弊し、他人にも同じ犠牲を強いる社会です。
本当に忙しい人もいます。
しかし同時に、「時間がない」と思い込みながら、SNSや動画に時間を溶かしている人も少なくありません。
時間は、待っていても生まれません。意識して取り戻すものです。
本書の終盤では、頑張りすぎてしまう人が、どうやって自分の時間を取り戻すか、具体的なヒントも示されています。
最後に —私にとっての最大の気づき
三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』からの最大の学びは、
「読書は時代を色濃く映す」という気づきでした。
読書は個人の努力不足ではなく、時代の産物でもある。
だからこそ、この本を読むこと自体が、失われた文化的時間を取り戻す第一歩になります。
新書大賞2025 大賞も納得の、価値ある一冊。ここで紹介したのは、ほんの一部に過ぎません。
本書の構成自体が、あえて、結論を急がず、遠回りし、ノイズと向き合うことを求める構成となっています。
読みやすさ重視の本ばかり読んでいる人には、「結論は一体何なのよ」ともどかしいかもしれません。
しかし、そこが大事なポイントです。
是非、本書を手に取って、「ノイズのある本の読書体験」を楽しんでほしいです。
「新書大賞2025」トップ20の本も気になる方は、以下もご参考に。良書の宝庫です。
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