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【書評/要約】地面師(森功) — Netflix『地面師たち』の元ネタ実話。55億円不動産詐欺の全貌 と 資産を守る「私の教訓」

【書評/要約】地面師(森功) こうして狙われる。他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団の巧妙な手口。事件が示す教訓をまとめてみた
地面師」要約・感想
  • 地面師は“天才詐欺師”ではなく、“普通の顔をした組織犯罪”
    地面師は、なりすまし・偽造・法律・口座を分業するプロ集団。
    しかも見た目はどこにでもいそうな中年男性たちで、その「普通さ」こそが最大の武器。
  • 狙われるのは「管理されていない価値ある土地」
    高齢者名義、相続放置、都心の遊休地。価値があり、管理が曖昧な不動産ほど地面師の標的になる。
    これは資産家だけでなく、不動産を持つすべての人の問題。
  • 詐欺を生むのは“人間の欲”と“制度の隙間”
    欲に突き動かされる被害者と、書類中心で脆弱な登記制度。この組み合わせが、55億円級の詐欺すら成立させる。詐欺の手口や金融に対する知識があるかが、騙されるかどうかを分ける。

★★★☆☆  Audible聴き放題対象本

目次

『地面師』ってどんな本?

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この本を読むと、
「自分の資産も、ある日突然“奪われる側”になり得る」という現実を突きつけられる!

地面師とは、他人の土地の所有者になりすまし、
書類を偽造し、数十億円単位の不動産を売り飛ばす詐欺集団です。
しかも彼らは、素人ではなく、プロの不動産会社すら騙します。

森功さんのノンフィクション『地面師』が今も読み継がれている理由。
それは、この犯罪が「過去の事件」ではなく、今も続いている現実だからです。

Netflixドラマ『地面師たち』、新庄耕さんの小説『地面師たち』シリーズをきっかけに興味を持つ人も多いでしょう。
しかし、原作ノンフィクションを読むと分かります。
ドラマより、現実の方がはるかに怖いという事実です。

なぜ積水ハウスは55億円を騙し取られたのか

【書評/要約】地面師(森功) こうして狙われる。

本書の中心となるのが、
2017年に積水ハウスが約55億円を失った、品川の一等地を巡る地面師詐欺事件です。

高齢の女性が所有していた約2,000㎡の土地。
そこに、「本人そっくりの替え玉」が現れ、完璧に偽造された書類とともに売却が進められていきます。

なりすまし。
印鑑証明・身分証の偽造。
司法書士や銀行、仲介業者を巻き込む演出。
タイミングを計算した送金。

すべてが映画のように綿密で、
しかもそれを日本屈指の不動産会社が見抜けなかったという事実。
積水ハウスは、土地の売買契約を締結し、約63億円を支払い、最終的に約55億円の損害を被りました。
この一点だけでも、本書の異常性が伝わってきます。

地面師は「個人」ではなく「組織」。多くは捕まらない

地面師は一人の詐欺師ではありません。
10人前後で構成される、完全な犯罪組織です。

ボス
なりすまし役
演技を指導する教育係
偽造書類を作る印刷屋
口座を用意する口座屋
法的手続きを担う法律屋

役割は細かく分かれ、誰かが捕まっても全体像が見えない構造になっています。
しかも多くは証拠不十分で不起訴。逮捕者の方が少ない。
お金は戻らず、犯罪者はまた次の詐欺へ向かいます。

これが、現実です。

実際に逮捕された地面師たちの顔を見ると、
キレキレの天才詐欺師という印象はほとんどありません。

むしろ目に映るのは、どこにでもいそうな冴えない初老の集団。
ドラマの俳優のイメージが強いほど、その落差に拍子抜けしてしまいます。

しかし、その「普通さ」こそが最大の武器です。
人は、怪しく見えない相手ほど警戒を緩めます。そして、その油断の隙間に、詐欺は入り込んでくるのです。

どんな物件・どんな人が狙われるのか

この本の最大の恐怖は、「自分も被害者になり得る」と実感させられる点にあります。

  • 都心に土地を持っている(誰もが欲しがる土地なのに、有効活用も、手放そうともしない)
  • 相続したまま放置している不動産がある
  • 高齢の親が名義人になっている
  • 不動産投資をしている

一つでも当てはまるなら。あなたはすでに地面師の“狙われる側”に近いと言えます。

彼らは欲と油断を突きます。
「条件がいいですよ」
「今決めないと他に取られます」
その一言で、人は確認を怠ります。それが、数十億円を失う入口になります。

品川地面師詐欺の舞台となったのは、都内の一等地に放置された廃業旅館でした。
不動産の専門家でなくても、「なぜこの土地をこのままにしていたのか」と思わず感じるほどの、
あまりにも価値の高い遊休不動産です。
犯罪に巻き込まれた土地所有者側にも、管理が行き届いていないという大きな落ち度がありました。

価値があり、持ち主は高齢で、管理が曖昧。
地面師にとって、これ以上ないほど狙いやすい条件はないでしょう。

事件が示す教訓

正直に言えば、本書を読んでいると、手口があまりに複雑で、途中で細部を追うのが難しくなります。

しかし、本書を読み終え、「どうやったか(詐欺の手口)」よりも「なぜ起きるのか」の方が重要だと感じました。
そこにこそ、本書が突きつける本当の教訓があります。

1️⃣資産家の心得

不動産は目に見える資産です。管理されていない価値ある土地ほど、詐欺師の標的になります。

管理者が不在。
管理の実態が曖昧。
名義人が高齢、あるいは病気や認知症。
この条件がそろった瞬間、土地は「資産」から「狩場」に変わります。

不動産の手続きは面倒で、費用もかかります。
しかし「相続だから」「あとでやればいい」という放置は、ときに命に関わるリスクにすらなります。

2️⃣ 登記制度の脆さ

日本の不動産登記は、書類を前提とした所有者確認に大きく依存しています。

だからこそ、精巧な偽造書類があれば、制度そのものをすり抜ける余地が生まれます。
特に、「高齢者が所有する土地」「所有者不在の土地」の土地には、制度の弱点が集中します。

3️⃣ 犯罪者と被害者の心理

不動産は高額取引です。詐欺が一度成功すれば、振り込め詐欺とは桁違いの利益が生まれます。
だからこそ犯罪者は、人の欲を徹底的に研究し、タイミングと心理を計算して仕掛けてきます。

詐欺師は情報に敏感で、頭も切れます。
そして、巨額詐欺を実行できる人間は少ないからこそ、同じ人物が何度も事件に関与します。

さらに恐ろしいのは、被害者の親族や関係者までが、「儲かる」という欲に引きずられ、無意識のうちに詐欺に加担してしまうことがある点です。

専門家や大企業であっても例外ではありません。
内部のチェック体制にわずかな緩みがあれば、そこから何十億円もの資金が流れ出します。

警察への過信という落とし穴

巨額の被害に遭えば、警察が全力で動いてくれる。そう思いたくなりますが、現実は違います。

被害届を出しても、すぐに本格捜査が始まるとは限りません。弁護士が関与しても、警察が動く保証はありません。
また、捜査で真相がすべて解明されるとも限らず、関与した犯罪者が全員逮捕されることも、ほとんどありません。
多くは、あっさり釈放されていきます。

本当に恐ろしいのは「構造」

この本が示しているのは、単なる詐欺の巧妙さではありません。

登記制度の弱さ。不動産市場の不透明さ。法制度の限界。
それらが重なり合って、詐欺が成立してしまう社会構造ができあがっています。

そして何より、人間は金銭欲に弱い。
儲かると思った瞬間、視野が狭くなり、確認すべきことが見えなくなります。

同じ詐欺話を持ちかけられても、気づく企業と、騙される企業が存在します。
その差は、たった一度の「違和感」を無視しなかったかどうかです。

こんな方におすすめ
  • 不動産業界に席を置く方、放置したままの土地をお持ちの方、不動産投資をする方
  • 資産を守るため、詐欺の手口を知っておきたい方
  • 犯罪手法や人間心理に興味を持つ方。社会問題に興味がある方
  • 小説版、ドラマ版『地面師たち』をご覧になった方

最後に

森功さんの犯罪ノンフィクション地面師』が描くのは、
詐欺の手口、日本の登記制度の脆さ、警察が万能ではないという現実。そして、人間の欲の危うさ。

私たちはつい、「自分だけは大丈夫」と思ってしまいます。
しかし、犯罪の手口を知っているかどうかで、見える世界は大きく変わります。

資産とお金には、常にリスクが伴います。
貯蓄、投資、税金、不動産。広い知識を持つことこそが、最大の防御です。

『地面師』は、その最初の一歩を与えてくれる一冊となるでしょう。一読をおすすめします。

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