- 行動経済学×進化心理学で読み解く「人間の本性」
「最後通牒ゲーム」などの実験を通して、人はなぜ理屈どおりに行動できないのかを、行動経済学と進化心理学の視点から明らかにしていく一冊。 - 人は「損得」状に「公平」と「評価」で動く
人間は、単純に利益を最大化する存在ではない。「不公平」「評判」に強く反応するよう進化してきた。損をしてでも理不尽を拒むのは、本能に根ざした行動である。 - 「非合理」は欠点ではなく、生き残るための武器だった
感情的・非合理に見える行動は欠点ではない。それらは、集団の中で生き抜くために身についた、生存戦略としての合理性なのである。
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『最後通牒ゲームの謎』ってどんな本?

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私たちは、自分のことを「わりと合理的な人間」だと思って生きています。
損は避けたい。
得は逃したくない。
感情より理性を大事にしたい。
……たしかに、頭ではそう思っている。でも、現実はどうでしょう。
「ここで怒ったら損だ」と分かっているのに、つい声を荒げてしまう。
「文句を言っても得しない」と分かっているのに、不満をこぼしてしまう。
時間とお金を払って、飲み会を開催し、愚痴大会となる。
冷静に考えれば、どれも“非効率”で“非合理”です。
それでも、私たちは今日も同じことを繰り返す。——なぜなのか?
この問いに、驚くほどクリアな答えをくれるのが、『最後通牒ゲームの謎』です。
人間の矛盾を行動経済学と進化心理学の視点から丁寧に解き明かします。
日本の経済・経営・会計分野の図書を対象とした書籍賞である「日経・経済図書文化賞」を受賞した、お墨付きの良書です。劇推しです。
人間の本性をむき出しにする「最後通牒ゲーム」

本書の中心にあるのが、有名な実験「最後通牒ゲーム」。
ルールはシンプル。しかし、実に泥臭い「人間の本性」を露わにするゲームなのです。
ゲームの「合理的なふるまい」とは
Aが金額を分ける
Bが受け取るか拒否する
拒否すれば、2人ともゼロ
理論上、最も合理的なのはこうです。
Aは1円だけ渡す
Bは1円でも受け取る
これが「正解」のはずでした。ところが、現実は違います。
Aは20〜50%を渡す
Bは、極端に金額が少ないと不公平だと拒否する
つまり、この実験が示すのは——
👉 そもそも人は「経済学の理論的合理主義な人(エコン)」にはできていないという事実です。
人は「正しさ」より「正しく見えること」を選ぶ
人は、様々な場面で不合理な行動をします。例えば、以下は「アノマリー(理論では説明できない行動)」の典型です。
- 最初に見た数字に影響される(アンカリング効果)
- 「並・上・特上」なら真ん中を選びやすい
- 「これ、高かったのよ」と言われると、美味しく感じる
本書は、「最後通牒ゲーム」と行動経済学の知見を通して、人間の本音を暴いていきます。
「最後通牒ゲーム」も、それを示す典型的な実験で、
このゲームに条件を加えた応用実験から、次のような 《分け与える側》の「人の目を気にする人間特性」が明確に見えてくるのです。
- 見られているといい人ぶる。
- 見られていないと自己中心的になる
- 評判のためならお金を払う
- バレないならズルをする
- 偽物の「目」にも反応する
- 奪っていいなら奪うが、全部は奪わない
- 知らなくていいなら、あえて知らない
つまり—— 人は「善人だから」分けるのではない。「悪く思われたくないから」分ける。
✔ 得したい
✔ 他人のことは、結構どうでもいい
✔ でも嫌われたくない
この間で、私たちは常に揺れているのです。
人間は、単なる合理性ではなく、「損得 × 感情 × 評判」で動く生き物。
「本当に正しくありたい」よりも、「正しく見られたい」。
読むほどに、「ああ、自分もそうだ…」と苦笑してしまいます。
なぜ私たちは「不公平」に耐えられないのか?
では、《分け与えられる側:Bさんの行動》はどう説明できるのか。
この答えもシンプル。
人間は、本能レベルで“不公平”が嫌い だからです。
公平になること、格差が縮まること自体が快感 なのです。
自分より恵まれた人が失敗すると、うれしくなる(シャーデンフロイデ)といういやらしい側面があるのも、
この理論でうなずけます。
人の脳では、強い不公平を見ると、敵や危険に反応する 古い脳である「扁桃体」が反応します。
つまり脳は、不公平=危険・敵 として扱っているのです。
子どもですら、以下のようにふるまいます。
- 4歳頃:自分が損するのが嫌
- 7〜8歳頃:自分が得しすぎるのも嫌
- 「努力に応じた配分」「公正なルール」でないと、わめく
- でも、「仲良し」なら多少の不公平は我慢する
皆さん、身に覚え、ありますよね。
私たちは、生まれつき「公平センサー」を持っているのです。
人間は「集団で生きるため」に進化してきた
なぜ、ここまで公平に敏感なのか。
それは、人類がずっと「小さな集団」で生きてきたからです。
協力して狩りをする。食料を分け合う。危険から守り合う——こうした環境では、「信頼」が何よりも重要でした。
ズルをする人がいたら?裏切りが横行したら? 👉 社会はすぐ崩壊します。
一方で、石器時代・狩猟農耕時代では、一人ぼっちになれば、生きていけません。
だから私たちの脳は、こう進化しました。
- ズルを見抜く
- 裏切りを許さない・忘れない(噂でひろめもする)
- 評判を異常に気にする
- 協力者を好む
つまり—— 不平等に敏感なのは、協力社会を維持するための能力。
「最後通牒ゲーム」に見られた、損をしてでも公平を守るのも、この脳の特性ゆえ。
感情的な弱さではなく、生存戦略だったのです。
📌この視点は、目からウロコが落ちます。
「非合理」なのではなく、「別の合理性」で生きている
従来の経済学は、人間を「合理的」「霊性」「計算高い」と描いてきました。
でも現実は違う。
人間は「合理的」より「公正志向」
評判を気にし、不公平は本能的に許せず、感情的になる存在です。
本書はこれを「間違い」だとは言いません。
アンカリング効果や中間選好など、行動経済学が発見してきた多くの「不合理な行動=アノマリー」も、
それは、「間違っている」のではなく、「別の合理性で動いている」のです
非合理に見えて、合理的—— と本書は教えてくれます。
📌この視点を得るだけでも、本書を読む価値があります。
この本がくれる、3つの大きな贈り物(読む価値)
- 「自分は非合理だ」という自己否定が減る
- 「また感情的になった…」「自分はダメだ…」と思わなくてよくなる
- 「自分は弱いから」のではなく、「人間として正常だからそうなる」と自分を認められる。
- 人間関係が見えるようになる
- 職場の対立/夫婦の衝突/SNSの炎上 ほとんどは「不公平感」から生まれている。
- 構造が分かると、冷静になれる。トラブル回避に役立つ。
- 社会のストレスの正体がわかる
- 私たちの脳は石器時代仕様。対して、現代社会は超高速。
- このズレが、様々なストレスの原因
本書の教えは、ビジネス現場では、交渉・ビジネス・評価・報酬設計にも直結します。
👉 公平さを無視すると、人は協力しなくなる。
👉 正しさより“納得”が成果を生む。
という事実が、実例とともに理解できるはずです。
📌読み終えたあと、きっとこう思います——「人間って、よくできてるな」と。
怒る理由も、悔しがる理由も、すべてに意味があると、腑に落ちます。
最後に | 読後、世界の見え方が変わる
『最後通牒ゲームの謎』は、
「なぜ人は合理的になれないのか」ではなく、「なぜ、この形で合理的なのか」がわかる本。
✔ 経済学の本であり
✔ 心理学の本であり
✔ 人間理解の教科書でもある
一冊でした。
- 合理的に生きたい人
- 人間関係に疲れている人
- 社会に違和感がある人
すべての人に刺さります。
間違いなく、読後に“世界の解像度”が一段上がります。強くおすすめします。







