- 「死」を前に考える、お金と人生の本質
経済評論家・山崎元さんが、食道がんを通して見つめ直したのは「死」と向き合う覚悟と「限られた時間で何を大切にするか」という問い。本作は、「人生とお金」を再考するプロセスを記した記録であり、最後の意思決定であり、読者へのラストメッセージ! - がん患者は、初心者投資家と同じ
がん患者も、投資初心者同様、情報に振り回される。いくら情報を集めても自分の理解力と判断力がなければ、活かせない。 ベースとなる「理解力・判断力」を積み重ねていくことが大事。 - お金の使い方・生き方を再設計する書
大切なのは「備え方」と「使い方」。がん保険の要否、人生後半の整理、生き方 等──山崎さんの実体験が、未来の自分を支える知恵となる。
★★★★★
Kindle Unlimited読み放題対象本
『がんになってわかった お金と人生の本質』ってどんな本?

『がんになってわかった お金と人生の本質』は、経済評論家であり投資のプロフェッショナルだった山崎元さんが、自身のステージⅢの食道がんと向き合いながら、「人生とお金」を再考するプロセスを記した記録です。そして、それは彼の最後の意思決定であり、読者へのラストメッセージでもあります。
「癌という病気」を自分の人生に加えた時、何を考え、どう意思決定したか―
限られた時間をどう生きるか――
この本には、死を目前にした一人の人間の、静かで力強い思考の軌跡が詰まっています。
癌患者と投資初心者は似ている──「不確実性のなかでの意思決定」

山崎さんが食道がんと診断されたのは、体調に違和感を覚えてから約2ヶ月後。もともとがん検診には消極的で、「医療の商業主義」への警戒や、近藤誠医師のがん検診や早期治療を否定する「がんもどき理論」への共感もあって距離を置いていました。
しかし、いざ病を宣告されてから、彼は経済評論家としての視点から「検診は受けるべきか」を合理的に見直していきます。
【結論】検査は受けるべき
生活の質、医療費、入院期間――。早期発見によるコストの差は大きい。
健康時には見えづらいコストの差も鑑みた上で、損得勘定の点からも検査は大事と指摘します。
この視点の転換は、私たちの健康意識にも大きなヒントを与えてくれます
そして山崎さんは、がんと投資の共通点に気づきます。
がん患者は、初心者投資家と同じ
情報が溢れる中、「何を信じて、何を切り捨てるか」。
がん治療も投資も、未来が不確実な中で「意思決定」が求められます。
がんも投資も、「情報収集」そのものに意味がない場合がある
情報を集めても、自分の理解力と判断力がなければ、活かせない。残酷だがこれが事実。
この気づきは、私自身の体験とも重なります。投資を初めて数年は、情報に踊らされ、迷い、揺れ動いてばかり。今、当時を振り返れば、「判断に必要な情報を選び取る力がまるでなかった。しかも、指針も立てられなかった」と気づきます。また、癌に関しても、過去に癌になる前の「がんもどき」が見つかり、経過観察の通院をした過去がありますが、動揺し、落ち込み、うろたえるばかりでした。
どんなに「情報」があろうが、「理解力・判断力」がないと意味なしと、腹落ちします。
「自分にとって意味のある情報」以外は遮断せよ
がんの告知を受けると、周囲から様々な情報やアドバイスが届きます。しかし、それらの大半は、自分にとっては「ノイズ」でしかありません。むしろ、判断を遅らせます。
- 情報は、「自分の理解力と判断能力に見合う」ものに絞る。
- 信頼できる医療専門家や公式ガイドラインに絞って情報を集める。
- SNSや“親切な人”の素人意見は、距離を取る。
終末期には、人生の限られた人生のリソースを無駄にしない意思決定が大事です。「情報を選ぶ」「不要な人間関係を遮断する」こともとても大事です。
がん保険は、やっぱり要らない。お金は「使い方」こそ大事

本書でフォーカスされているのは、「お金の貯め方」ではなく、「がんへお備え方」と「お金の使い方」です。
山崎流 お金の貯め方
山崎さんは、経済評論家として長年、次のような資産運用を勧めてきました。
- 資産運用には合理性が重要。思い入れを持たず、感情に左右されないことが大切。
- 投資スタイルはリスク許容度と金額で決まる。
結果的に、長期・ドルコスト平均法が多くの人にベターとなるが、ベストとは言い切れない。 - 世界株インデックスファンド1本で十分
- 値動きしても一喜一憂しない金額を投資したら、あとは「資産運用以外で自分がどう稼ぐのか」を大事にせよ
この投資スタイルは、癌になっても何ら揺らぐものではありません。私の投資スタイルも、山崎さんに影響を受けるところが極めて大きいです。
昨今の、若い人が極端な節約でFIREを実現する『守銭奴型FIRE』は否定。能力や人間関係等への投資もケチる姿勢は、人的資本を痛めるバランスが悪いと生き方だと指摘します。就職初期は貯蓄よりもスキルアップ・人的資本への投資を優先すべきと、本書でも念を押しています。
がん保険はやっぱり要らなかった
「がん保険はいらない」――山崎さんはその持論を、自身の治療体験を通して実証します。
実際にかかった費用は、個室などの贅沢分を除けば約75万円。高額療養費制度を使えば、公的保険で十分に対応可能だったと明かします。
- 最大のコストは「働けなかったことによる機会損失」
- 筆者は個室を使うことで仕事を継続(個室代は仕事の継続性を保つための投資)
- がん保険は「不安だから入る」ものではない
- 保険会社は商売。保険の設計上、加入者は平均的に損をするのは自明
- 保険とは「損だけど必要かどうか」で判断すべきもの。
(火災保険や自動車保険のように、滅多に起きないが起きると破滅的なリスクに対する保険は合理的)
200〜300万円の現金、もしくは積立投資で備えれば、多くの人にとってはそれで十分。「保険に入らないリスク」よりも、「毎月保険料を払い続けるコスト」の方が重いと冷静に分析しています。
ちなみに、私は、山崎さんの教えと、『いらない保険』(後田亨 著)をお師匠さんとして、医療保険を完全に辞めました。今は、払い済みのお宝保険は保有していますが、毎年の民間保険会社への払い込みは0円/年です。
お金は「使い方」こそ大切
お金は貯めることが目的ではありません。「お金」は使い方こそ大事です。
本書では、『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス著)に触れ、「楽しめるうちに、経験にお金を使うことの大切さ」を説きます。
- 真に価値あるお金の使い道は「経験」
- 「仕事が面白い」はお金を使わない言い訳にならない
山崎さん同様、『DIE WITH ZERO』も私の大事なお師匠さん。『資産ゼロで死ぬ』を目指して、自由に脳をワクワクさせながら生きることは「私の信条」です。
がんになってわかった、「どうでもよかった」もの

がんによって死を意識したことで、山崎さんは「どうでもよかったこと」を手放し、「本当に大切なもの」に向き合います。
「どうでもいいこと」に気づき、手放す
髪型、持ち物、収入、付き合い、仕事――。
元気なときには膨大なエネルギーを注いでいたものが、実はそれほど重要ではなかったと気づきます。
- ヘアスタイルへのこだわりは、「他人からどう見られるか」社会的同調圧力とマーケティングの産物
- 誰も気にしていないことにかけるお金&時間コストとしては過剰。合理的ではない。
- 本当に必要な持ち物は非常に少ない
- 物欲を手放し、地位財競争から降りることで、生活が軽く、心も楽になる。
- 「どうでもいいこと」を一つづつ手放そう ーコストと時間の最適化
- 病気でできなくなることをきっかけに、「実はどうでもよかったこと」を手放そう。
- 人間関係も仕事も例外ではない。「注ぐべきエネルギー」を見直そう。
最晩年の「住まい・介護・お金・弔い」のリアルと合理的対策
人生の終盤には、「住まい」「介護」「お金・相続」「弔い」といった現実的な課題が立ちはだかります。
山崎さんは、いずれ訪れるその時に備えて、終末期の準備を、自分なりの合理的な方法で整えていきます。その考え方や方法が「一つの事例」として語られます。
参考になる方は多いはずです。個人的に参考になった一例が、「お墓の手じまい方」。
お寺との縁を切り、墓を手放し、散骨・仏壇撤去・先祖の写真を飾る「新しい供養のかたち」です。
私の場合、私が死ぬと「墓を引き継ぐ人」がいません。後期高齢者の年齢になったら、信仰なし・感謝ありの合理的で心ある弔いに切り替えることも考えたいです。
おわりに
今回は、山崎元さんの『がんになってわかった お金と人生の本質』からの学びを紹介しました。
本書を通じて、私が最も強く心に残ったのは、「癌患者と投資初心者は似ている」という洞察でした。
未来の見えない中で、情報に振り回されながらも、意思決定を繰り返していく──。
それは、がんに限らず、人生そのものの縮図なのかもしれません。
つまり、私たちが今からできる備えとは、
- 自分にとって価値ある「死」に備える情報を集めながら生きること
- その中で、「どうでもよいこと」に気づき、手放していくこと
- 過剰な欲望も手放していく
- それでも残る「大事なこと」にエネルギーを注いでいくこと
読書は、❶の実践に最適。そこで得られる気づきで、❷~❹が極まっていき、より幸せに生きられるはずだと信じています。そうすれば、「今日も1日ありがとう」と思える毎日が重ねていくはずです。
この本との出会いに、心から感謝しています。
多くの“気づき”をくれる一冊。ぜひ、あなたの手で読んでみてください。Kindle Unlimitedで読み放題です。
\対象者限定で2か月99円/
解約はいつでもOK