- 日本のビジネスシーンにおける雑談は「どうでもいい無駄話」
世界の一流の雑談には意図がある!「雑談」を武器化して、ビジネスの成功につなげる雑談術 - なぜ、日本人には雑談が苦手な人が多いのかー
日本人の雑談の下手さは、グローバル社会での「日本の凋落」と深く結びついている - 雑談でどんなネタを話せばいいか?ーといった雑談本は小手先のテクニックにすぎない
雑談は、ラポール=「相手との信頼関係」を築くために大切な時間。「無条件の肯定的関心」と「共感」で信頼関係を築ければ、商談もチームビルディングもうまくいく!
★★★★☆
Kindle Unlimited読み放題対象本
『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』ってどんな本?
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会議・商談の前に行われる雑談。
日本では、本題に入る前の「雰囲気作り」を重視して、天気や世間話などの「取るに足らない話」が展開されます。しかし、これは、「どうでもいい無駄話」。しかし、世界の一流にとって、雑談は「本題に入る前の単なるイントロ」ではありません。
一流にとって、雑談は戦略的な時間。雑談は相手(個人)を知ったり、スクリーニングをするための大切な時間。話す側と聞く側がお互いに信頼・信用・尊敬できる関係を構築し、スムーズに「成果」につなげるための大切な時間です。
ピョートル・フェリクス・グジバチさんの『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』は、そんな一流の雑談の使い方を紹介する1冊。本書を読むことで、雑談が「武器」になります。
「世界」の雑談と「日本」の雑談
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「日本」と「世界」のビジネスにおける雑談は、何が違うのでしょうか?
雑談:「社交辞令」か、会話に「意図」があるか
区分 | 特徴 | 目的 |
---|---|---|
日本 | 社交辞令 | 天気などの決まり文句 相手との関係を築くために必要な「相手に特化した情報」は得られない 時間の無駄・損失 |
世界の一流 | 意図がある | 相手のことを理解するための会話 |
日本の雑談は「社交辞令」「決まり文句」です。対して、世界の一流は「意図をもって雑談」を行います。
雑談で大事なのは、「雑談を通じて、相手との距離が縮められるか」。チームビルディングであれ、ビジネスであれ、お互いのことをきちんと理解し合うことが、成果を出すには欠かせません。相手を知ると同時に、相手から信用・信頼を得るには、距離を縮める会話をすることが大事です。
世界の一流は「意図」を持って雑談
世界の一流は、「雑談」を武器としてフル活用することで、仕事のパフォーマンスを上げ、成果を出すことを強く意識しています。そのために、「5つの意図」をもって雑談をしています。このために必要な準備も怠りません。
- 状況を「確認する」
- 情報を「伝える」
- 情報を「得る」
- 信用を「作る」
- 意思を「決める」
なぜ日本のビジネスマンは雑談が苦手なのか?
雑談を通じて相手と距離を縮めるに、世界の一流は雑談で「自己開示」と、相手に対する自己開示しやすい「質問」を行います。自己開示とは、プライベートな情報を含めて、 自分の「思い」や「考え方」などを相手に伝えることです。互いに自己開示ができれば、警戒心も弱められます。
しかし、日本人はこのような雑談が苦手です。その原因には以下のような複数の要素が絡んでいます。
「定型パターン」で対応 | 「考える機会」が奪われる⇒考えない |
---|---|
阿吽の呼吸 以心伝心 | 島国で、多種多様な価値観を持つ人たちが周りに少なかった ⇒人間関係を築くための積極的な「自己開示」が不要だった ⇒多様性が低く、視野も狭くなった |
自己アピールへの警戒 | 積極的な自己アピールは、「自分勝手」と見られがち⇒意見を自粛 ⇒「自己開示」が苦手に |
「自己開示」以前に必要な「自己認識」
そもそも、「自己開示」をするには、それ以前に「自己認識」が必要です。しかし、日本は、大学までは、いわゆる「成功しやすいとされる人生ルート」があり、ただ何となく大学に入学し、「自分が何をしたいのか?」「どうなりたいのか?」を真剣に考えて成長しません。結果、日本人は「自分と向き合う」しなくとも何とかなるため、自己認識がなく、また、考えないようになりました。
かつて「マネシタ、松下」という言葉がありましたが、高度経済成長期には「やれと言われたことを文句を言わずにやる、考えない人材」が重宝されました。しかし、令和の時代にそれは通用しません。これが、現在のグローバル社会における「日本の凋落」につながっています。
自己認識を高めるために大切なのは、以下の3つです。意識をもって、行動することが求められます。
価値観 | 何を大切にしているのか |
---|---|
信念 | 何が正しいと思っているのか |
希望・期待 | 何を求めているのか |
雑談を通じて「ラポール」を作る
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ラポールとは、「相手との信頼関係」のこと。ビジネスシーンにおいては、上司・部下、クライアントとの関係でラポールを築くことが極めて大事です。
ラポール構築に大切なこと
ラポール=「相手との信頼関係」を築くのに大事なのは、相手に対する❶「無条件の肯定的関心」と❷「共感」です。
無条件の肯定的関心とは、相手の話を良し悪し/好き嫌いで判断せず、「なぜそのように考えているのか?」を肯定的に知ろうとすることです。偏見、思い込みを捨て、相手の話に耳を傾ければ、相手は安心して話ができます。
この時、相手の考えや気持ちを理解・想像するだけでなく、「相手の感情に寄り添う=共感」ことができれば、より良好な関係が築けます。
相手との接し方:CtoCを大事に
世界の一流は、相手の表情や 佇まい、服装、仕草などを冷静に観察して、その場で確認の言葉を投げかけます。一方、日本人は、場の空気を読みながらも、相手の表情を見ない人が大勢います。
「場の空気」と「相手の心情」は異なります。「相手の心情」を無視しては、ビジネスはうまく行きません。もちろん、計算・打算だけではいいビジネスはできません。「CtoC」(個人と個人)な雑談で関係を築く必要があります。
- お互いに何が知りたいのか?
- どんな関係性を作りたいのか?
- その関係性は短期か長期なのか?
- 相手は何を理解すれば納得するのか?
上記を認識していれば、相手との接し方は変わります。雑談の準備・方向性も見えてきます。
「グローバル」な視点と「トランスナショナル」な考え方
国によって、文化や価値観は大きく異なります。その違いをどう乗り越えて信頼関係を築き、ビジネスで成果を出すには、「グローバル」な視点と国の枠組みを超えた「トランスナショナル」な考え方が必須です。
世界で求められる雑談は「リベラルアーツ=教養」。雑談を学びの場と考え、 お互いの人生を豊かにするための知識や情報を「やりとり」です。今、日本で主流になっているような「ファスト教養」ではありません。
武器としてのビジネスの雑談
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ビジネス現場で雑談を「武器化」するには、雑談の目的、犯しやすいミスを抑える必要があります。
ビジネスにおける雑談の4つの「目的」
- 「つながる」 相手との距離を縮めて信用を作る
- 「調べる」 最新の動向や現状に関する情報を収集する
- 「伝える」 自社の意向や進捗状況などを報告する
- 「共有する」 最新の情報を相互に認識する
雑談の最初のミッションは「確認作業」です。① 相手の状況の確認、② ビジネス状況の確認、③ 新たに必要となる情報の確認 を意識して行うことが大事です。日本人は、ここで2つのミスを犯しがちです。
ミス❶ 早い段階で相手企業の「意思決定」の流れを確認しない
日本のビジネスマンは、相手に遠慮して、❶相手がどんなプロセスを経て決定するのか、❷誰が予算を握っているかを知らないまま、ビジネスを進めがちです。これでは方向を見誤ります。
意思決定のプロセスと共に、「何が意思決定の決め手になるのか?」 「意思決定の障害になる要因は何か」、早い段階での確認は必須です。
ミス❷ 相手と「上下関係」を作ってしまう
日本の営業マンは自ら「クライアントが上、自分は下」という関係を作りがち。相手がクライアントであれ、築くべきは「対等な人間関係」です。できるビジネスマンは、お互い共通する「趣味」「体験」「考え方」を共有して、対等なCtoC関係を構築します。
日本人は、表面的な学歴や出身地を共通の話題にすることが多いですが、それよりも「実体験」や「考え方」を共有する方が、はるかに距離は縮まります。
相手を知る7つの質問
日本では、雑談本が多数存在しますが、「どんなネタを話せばいいか?」とか、「お互いが話に詰まったら、どうすればいいか?」という 小手先のテクニックの話です。雑談の目的は何とかその場を「乗り切る」ことではありません。お互いの関係性を築くこと、雑談を通じてラポールを作ることです。
相手とラポールを築くために必要なのは、相手が大事にしている「価値観」「信念」「希望・期待」を知ることです。
以下は、ラポールを築くための「7つの質問」でし。相手の核心に触れる質問であるが故、表現を工夫してさりげなく聴く技量が求められますが、それも、一流になるために必要なことです。
ラポールを築く7つの質問 | わかること |
---|---|
① あなたは仕事を通じて何を得たいですか? | 「価値観」や「信念」 |
② それはなぜ必要ですか? | |
③ 何をもっていい仕事をしたと言えますか? | 「仕事の基準」や「モチベーション」 |
④ なぜ今の仕事を選んだのですか? | |
⑤ 去年と今年の仕事はどのようにつながっていますか? | 「自分の成長」 |
⑥ あなたの一番の強みは何ですか? | 「仕事の進め方」や「協力体制」 |
⑦ あなたは今どんなサポートが必要ですか? |
強いチームをつくる「社内雑談力」
強い会社、強いチームを使うためには、お互いのことをきちんと理解し合うことが必須。しかし、チームミーティングや上司との個別面談では、相手の「ホンネ」は出にくいものです。だからこそ、大事なのが、日常業務時間におけるちょっとした「雑談」です。
「雑談をするチームは生産性が高い」ということはエビデンスで明らかになっています。そもそも、雑談や笑い声が聞こえないオフィス・会社は人間関係や会社方針に何らかの問題を抱えています。
声のかけ方・聴き方については、以下の本が参考になります。相手を感動させる・感嘆させるスキルを身につけることは簡単ではありませんが、聴き方は今日からでも変えられます。即効性のあるスキルです。
最後に
今回は、ピョートル・フェリクス・グジバチさんの『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』からの学びを紹介しました。
本記事で紹介した内容はごく一部。「避けるべき雑難」など、すぐに役立つ情報がたくさん紹介されています。本書には、日本人の雑談に関する認識を大きく転換してくれる学びが満載です。是非、本書を手に取って、読んでみて頂けたらと思います。