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【書評/要約】投資に必要なことはすべて海外投資家に学んだ(シデナム慶子) 相場は落ちる。でも最後に負けない方法はある。個人投資家こそ「アセット・オーナー」に学べ!

【書評/要約】投資に必要なことはすべて海外投資家に学んだ(シデナム慶子) 相場は落ちる。でも最後に負けない方法はある。個人投資家こそ「アセット・オーナー」に学べ!
投資に必要なことはすべて海外投資家に学んだ」要約・感想
  • 相場は落ちる。でも、最後に負けない方法はある
    インフレ時代に何もしないと資産は目減り。本書は、市場が落ちても「最後に負けない」ための実践的な戦略を伝授
  • アセット・オーナーに学べ!
    「億り人」の真似はNG。年金基金のようなプロの「長期・分散・低コスト」戦略こそ、あなたの資産を堅実に増やす王道。
  • ライフプランで支出を押さえ、逆算思考で資産戦略を打ち立てよ
    人生にはお金が必要な時期がある。まずは、ライフプランを計画せよ。そこから逆算して、必要資金を貯める計画をせよ。

★★★★☆ Audible聴き放題対象本



目次

『投資に必要なことはすべて海外投資家に学んだ』ってどんな本?

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「相場は落ちる。でも、最後に負けない方法はある。」――

投資の世界では、市場の下落は避けられない現実です。どんなベテラン投資家でも、常に市場の動きを予測し、損失を完全に回避することはできません。しかし、大切なのは、その事実を理解した上で「最後に負けないための戦略」を持つことなのです。

今後のインフレが予想される世界において、「相場の下落が怖いから投資はしない」という考えでは、残念ながらあなたの資産は時間と共に目減りしていく一方です。デフレの時代とは異なり、何もしないことが大きな代償を払う結果になりかねません。

投資に必要なことはすべて海外投資家に学んだ』著者であるシデナム慶子さんは、20年以上にわたり海外で富裕層と仕事をし、彼らのリアルな投資行動や考え方に触れてきた人物。日本の金融教育の遅れや、金融業界の利益構造といった根本的な問題にも切り込みながら、世界トップレベルのアセット・オーナーが実践する「長期・分散・低コスト」の運用哲学を、私たち個人の資産形成に落とし込む方法を伝授してくれます。

初心者も、投資歴がある方も、現在の投資環境や投資哲学のおさらいに、よくまとまった本です。

日本の金融教育が遅れている根本原因

なぜ、日本ではこれほどまでに金融教育が遅れているのでしょうか? 本書は、その背景にある構造的な問題を鋭く指摘しています。

文化的な背景など、様々指摘がされていますが、投資に興味がある人さえ海外投資家のように資産が築けていない理由の一つが、証券会社などの金融機関の利益構造(手数料ビジネス)と、投資家の利益が相反してきた側面です。

証券会社が自身の利益を最大化するために、必ずしも投資家にとって最適な商品や取引ではない「短期売買」や「手数料の高い商品」を推奨し、結果として、投資家の長期的な資産形成が軽視されるという利益相反が常態化してきました。
海外では一般的な、運用成績が上がった分だけ報酬を支払う「成果報酬型」の投資顧問サービスが日本ではまだまだ少ないのも、この利益相反構造の根深さを示しています。

さらに、投資を促す制度の遅れも要因です。長期でまとまった資金を非課税で運用できる新NISAが始まったのは2024年からであり、iDeCo制度の利用促進も十分とは言えませんでした。

「アセット・オーナー」の運用戦略に学べ

「かせぐ」「ふやす」「ふやす」「かりる」

書店には「100万円を1億円にしたサラリーマンの投資術」といった、いわゆる「億り人」の投資手法本が溢れています。しかし、本書はこれらの手法の再現性はほぼゼロだと著者は断言します。猛者たちは、並々ならぬ努力、卓越した投資センス、そして膨大な情報と分析力を駆使しています。彼らの手法を真似したところで、日々変化するマーケットでは同じ結果を出すことは極めて難しいのです。

では、私たち個人投資家が本当に学ぶべき相手は誰なのでしょうか?

それが、「アセット・オーナー」、つまり年金基金や政府系ファンドといった莫大な資金を運用する機関投資家たちです。彼らは、私たち個人投資家と同じように、超長期にわたって資産を増やし続けることを目指しています。短期的な高リターンを追い求めるのではなく、リスクを抑えながら着実に、そして安定的に資産を育てることに主眼を置いているのです。

以下は、世界トッププラスのアセットオーナー例。本書では、彼らの運用方法がより詳しく紹介されています。

ファンド名特徴
ノルウェー政府年金基金
GPFG
株式:15%が米国ハイテクなど。
ポートフォリオの96%を自然資本リスク評価の対象にするなど、自然・気候リスク管理を制度化
日本年金積立金管理運用独立行政法人
GPIF
国内外の株式および債券に約4分割(各25%程度)のバランス型運用
運用資産の82.3%がパッシブ運用
中国投資有限責任公司
CIC
海外の株式・不動産・PE等に幅広く分散投資
サウジアラビア公共投資基金
国家戦略と整合したハイテク・エネルギー・インフラなどへの積極投資
アブダビ投資庁
ADIA
株式・不動産・インフラ・債券などに分散。詳細は非開示だが、規模は最大級
カナダ年金制度投資委員会
CPPIB
早期から責任ある投資を構築
シンガポール政府投資公社
GIC
株式51%。AI投資を強化しつつ、プライベートクレジット市場への慎重姿勢を強調
カリフォルニア州職員退職年金基金
CalPERS
公務員年金として株式・債券・オルタナティブ資産に分散。企業ガバナンス改善を目的とした議決権行使に積極的

🖊️個人的には、この部分が最も勉強になりました。

個人投資家でも実践できる!アセット・オーナー戦略

20年以上にわたり海外の富裕層と仕事をしてきた経験から、“世界の投資家たちが当たり前にしていること”を日本人向けに伝えます。その核となるのが、以下の戦略です。

  • 長期・分散・低コスト」の基本を徹底する
  • 明確な「運用計画」を立てる
    最も大切なのは、「何のために(Why)」「どのくらいの期間(How long)」投資するのかを具体的に設定。
  • 感情に流されない「自分ルール」に基づく運用
    市場の急落時、不安から「狼狽売り」をしてしまうのが個人投資家が陥りやすい罠。事前に「保有資産が〇%下がったら追加投資を検討する」といった具体的なルールを決め、感情に左右されずに実行
  • ESG(環境・社会・ガバナンス)を意識する
    持続可能な社会の実現が長期的なリターンにつながる。社会貢献と長期的なリターンを両立できる企業やファンドを選ぶ視点を持つ

ライフプランに合わせた「運用計画」を逆算で考える

本書は、単なる投資手法の解説に留まらず、あなたの人生に合わせた「運用計画」の重要性を強調しています。その鍵は「逆算思考」。「今あるお金が将来いくらになるか」を計算するのではなく、「〇歳までに老後資金として〇〇万円を貯める」など、ライフイベントと紐づけて目標を明確化し、そこから必要な資産や投資戦略を逆算していくのです。

20代・30代は、運用期間を長く取れるという最大の強みを活かし、月々の余剰資金をコツコツと積立投資に回すことが大事。年齢が上がるにつれて積立額を増やすことも大切です。20代なら「オルカン1本」のような分散投資を長期で続けるのも有効です。

50代・60代は、運用期間が短くなるため、若い世代と同じようなリスクは取りづらくなります。「人生100年時代だから遅くない」という言葉を鵜呑みにせず、「健康寿命」を考慮の上、低リスクの資産を中心にポートフォリオを構築することが大事。また、毎月安定した現金収入(キャッシュフロー)を生み出す運用を検討するのも一つの手です。

逆算方法の例は、是非、本書で確認してみて下さい。

最後に

今回は、『投資に必要なことはすべて海外投資家に学んだ』からの学びを紹介しました。

相場の下落は避けられません。しかし、この本が示す「運用計画」と「自分ルール」を武器にすれば、あなたは「最後に負けない投資家」になれるはずです。老後の不安を抱える前に、ぜひ本書を手に取り、あなた自身のライフプランに合わせた「資産運用の設計図」を描き始めてみて下さい。

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