- お金の使い方は「生き方」を映す鏡
お金の使い方にはその人の価値観や人生観が表れる。偉大な経営者のお金の哲学本 - 「銭」と「お金」は別物──扱い方が人生を左右する
欲望にまみれた「銭」ではなく、他者の幸せのために善く使う「お金」こそが、運と縁を呼び込み、豊かな人生を育てる。 - 稼ぐより「善く使う」が人生の質を決める
稼ぐことよりも「いかに徳を積むか」を重視。お金は巡らせることで初めて、信頼や運として戻ってくる
★★★☆☆
Audible聴き放題対象本
『お金と銭』ってどんな本?

「どうしたら金銭的豊かさと心の幸せ感を得られるのか」
「幸せと金銭の関係とは」
「なぜ、人生において『お金と銭』が必要なのか」
誰しもが抱くお金に対する思いや疑問。そもそも、お金とは何なのか?
その問いに、明快かつ深く、人生経験をもとに答えてくれる一冊があります。
経営者・文化人としても知られる伝説の経営者・中野善壽(なかの よしひさ)さんの著書『お金と銭』です。
中野さんは、伊勢丹を皮切りに、鈴屋、寺田倉庫、ACAO SPA & RESORTなど、名だたる企業で代表・経営に携わってきた人物。数々の改革を成功させた“実務の哲人”とも呼べる存在です。
そんな彼が、40年以上のキャリアのなかで実践し、体得した“生きた哲学”が詰まった1冊。
最も大事なのは、よりよく生きるために最も大事なのは「お金の使い方」。
これが、人生の質を大きく左右するというメッセージです。
堅苦しいビジネス書ではありません。
語り口は驚くほどやさしく、あたたかい。
読むうちに、まるで人生の達人に隣で語りかけられているような感覚になります。
「お金」と「銭」は、まったく別のもの。

私たちは、お金を「稼ぐ」「使う」「貯める」という行為を通して、日々、「人生の選択」をしています。
しかし、お金は人の心を惑わす存在。知らず知らずのうちに欲や恐れがまとわりつき、心の在り方を歪めがちです。
中野さんはまず、私たちが普段一括りにしている「お金」と「銭」を明確に区別します。
お金 | 善く使うことで人や運を引き寄せるエネルギー | 「徳」となるもの |
---|---|---|
銭 | 欲望に直結し、扱い方次第で人を迷わせるもの | 「欲」心をゆがめるもの |
つまり、お金は「生き方を形にするもの」であり、“どう使うか”で人生が変わるというのが本書の主張です。
中野流・お金に好かれる7原則

- 銭と欲がつながっていることを意識する
- 善く使えばお金になり、徳を積み、運が巡る
- 貸したお金はすべて忘れる
- 財布はお金がやすらぐ「家」
- 買って感謝を伝える
- 期待と未来にお金を使う
- 簿記(数字)と感性(直感)の両輪を磨く
本書の中核には、著者が実践してきた「お金に好かれる7原則」があります。
これらは、単なる節約術や投資テクニックではありません。
お金を通じて自分を磨き、他人を幸せにし、信頼と運を引き寄せる「生き方の指南」です。
徳を積めば、自分は向上し、ビジネスは成功し、そして、お金に好かれて、運と縁が巡ってきます。
その教えには、経営者・マネージャーにも役立つエッセンスが詰まっています。
以下では、いくつかピックアップして紹介します。
お金を「誰かのために使うこと」で徳を積む
印象的なのは、中野さんが「稼ぐこと」そのものにも慎重な目を向けている点です。
それは、稼ぐことは、欲や恐れにまみれやすく、「不徳の業」を生むからです。
業(カルマ)とは、自分の行動や選択の積み重ねが、自分の将来や人生を形づくる「見えない履歴」のようなもの。
その行いには必ず結果が伴う、という因果関係があり、それが未来の運命や人生に影響するとされます。
では、「稼ぐことについてついて回るマイナスの業」を回避するにはどうするか?
答えはシンプルです。お金を他人の幸せのために使う=徳を積むことです。
誰かの笑顔のために、誰かの夢の支えのために使ったお金は、やがて自分に戻ってきます。
それが、「巡るお金」であり、「徳を積む」ということ。
善くよく使えば、善くつながり、巡り巡って、あなたに必要なお金も戻ってきます。
ビジネスにも効く、“中野流お金の美学”
経営者としての知見も随所に光ります。たとえば――
- 知るより、学べ。すぐに動く力が「稼ぐ力」になる
- 数字と感性の両輪で判断せよ
- ブランディングの核心。顧客は「機能」を買い、ファンは「意味」を買う
❷について、補足します。
経営で大事なのは「数字の流れ」。中野さんは、会社で働く若い人たちには「簿記」を学ぶことをすすめています。
それは、ビジネスを動かすための基礎知識として、会計数字を読み解く力は必須だからです。
一方で、「数字を信用しすぎるのも良くない」と指摘します。
数字はあくまで実績の記録。たとえ、AIが導き出す未来予測も、分析の根拠は「過去データ」です。
中野さんは、「未来とは予測可能なものではなく、目の前のことに集中しているある日、突然、バーン!と風景を変えてしまう」と言います。物事の始まりは、まるで宇宙のビッグバンのように、突然、変異的に変わることが結構あるというのです。
宇宙の進化も、経営の進化も非連続。だからこそ、「数字」に頼りすぎるのではなく、「感性」も大事にして考えることが大事と教えてくれます。
「運」と「縁」は、あなたの習慣から生まれる
「運は天から降ってくるものではなく、自ら育てるもの」──この視点には多くの気づきがあります。
- 運のいい人と付き合い、悪い人とは距離をとる
- 規則正しい生活が、健康と幸運を呼び込む
- 表裏のない“素直さ”を貫く
これらはスピリチュアルな話ではなく、習慣と人間関係の再構築にほかなりません。
ここでも「正しく生きる」ことが求められます。
最後に──お金は「稼ぐ」ものではなく、「巡らせる」もの
今回は、中野善壽さんの著書『お金と銭』からの学びを紹介しました。
中野さんは、こういいます。
「過去にとらわれず、未来に不安を持たず、今この瞬間を全力で楽しみたい。
そして役目を終えたら、笑ってさといなくなる。それが私の美学です。」
人生の終わりに、「ああ、いいお金の使い方をしたな」と思えるかどうか。
本書は、表面的なマネーハック本ではありません。お金を通して「どう生きるか」を問いかけてくる、生き方の本です。
お金を稼いでも満たされない人、豊かさの本当の意味を知りたい人、ビジネスや人生に「信頼と運」を呼び込みたい人は本書を読むことで、「生きる知恵」「生き方の美学」が見つかるはずです。
あなたもこの本を通して、「たくさん稼ぐ。善く使う。」その先にある、真の豊かさを探してみて下さい。