- 幸せになる=成功するではない。幸せとは、今(プロセス)が充実している状態
- 「物語思考」は、自分の理想のキャラを設定し、物語(プロセス)を楽しみながら理想の人生を手に入れる思考法&行動法
- 人は自分に勝手に「限界」を設ける。結果、「なりたい自分」が描けない人も多い。しかし、キャラを設定し、そのキャラがどう行動すると物語がおもしろくなるかを考えれば、大胆かつ面白い人生も歩める
★★★★☆
『物語思考』ってどんな本?
自分を変えたいー。そう思って、早数年、数十年という方は多いのではないでしょうか。
多くの人は、幸せになる=成功する、と考えがち。つまり、「努力・苦労の対価として成功がある」と考える。しかし、実は、幸せとは、今(プロセス)が充実している状態です。プロセスを楽しむ生き方をすれば、幸せになれます。
今回紹介する本『物語思考』は、思考の組み立て方を少し変えるだけで、人生が生きやすく、かつ、幸せなに導くアドバイス本。自分の理想のキャラを設定し、物語(プロセス)を楽しみながら理想の人生を手に入れる思考法&行動法を提案します。
多くの人は自分事には考えが慎重になりがち。自分の身の丈を鑑みて、そこそこの努力でなんとかする落としどころ考えてしまいます。しかし、これでは、人生は面白くならないし、なりたい自分には近づけません。
そこで、物語思考では、「やりたいこと」ではなく、「なりたい状態をイメージ」することからスタート。理想のキャラを設定し、「理想の物語(=人生)」を作って、物語を攻略するように行動していきます。
著者は愛称「けんすう」で知られる古川健介さん。親しみのある話口調で話が展開するので、さらっと1冊読み終えられます。
本書はよくあるモチベーションアップの自己啓発書とは大きく異なります。学びの多い1冊です。
- 「行動したほうがいい」のはわかっているけど、なかなか1歩が踏み出せない方
- やりたいことがよくわからず、将来に漠然とした危機感を感じている方
- 今は、何をどうすればいいかわからないけど、充実した人生を送りたい人
物語思考:未来の姿が、今の行動を変える
物語思考では「やりたいこと」を設定するのではなく、まず「なりたい状態をイメージ」することからスタートします。そのステップは以下の通り。
- 頭の枷を外し、なりたい状態を考える
- なりたい「キャラ」を設定する
- 「キャラ」を動かす
- 「キャラ」が活きる環境をつくる
- 物語を転がす
次からは、それぞれの項目を詳細に見ていきます。
❶頭の枷を外し、なりたい状態を考える
「なりたい状態」こそが行動に影響を与える
人は無意識に自分に上限を作ってしまう癖があります。例えば、人に「年収はいくらほしい?」と質問されたとき、「800万円/ 1000万円」など、ある程度、現実的な額を提示します。これは「頭の枷」。欲望のブレーキです。これでは、そもそも「なりたい自分」が描けません。
この無意識レベルの「頭の枷」を取り除くために実践したいのが、「10年後なりたい自分を、制限なしで100個書く=言語化する」こと。今の自分には現実的に思えないことでも、自分の理想をとにかく書き出す。多くの人は100個書き出す前に理想が尽きてしまいますが、それでも書き出すのがコツ。「こうはなりたくない」から考えてもOKです。
今がどうであろうと関係なし。頭の枷を外して自分の「なりたい状態」見つける。この「なりたい状態」こそが行動に影響を与え、今を変えます
100年のなりたい自分リストは、最初から完璧を目指す必要はありません。誰に見せるわけでもありません。また、未来を予測しても大体は外れます。まずは、ワクワクすることをとにかく書き出しましょう。
「抽象度」「解像度」を上げて、理想に近づける
なりたい状態を書き出せたら、次に行うのが「抽象度を上げる」作業。具体的には、「なんでそうなりたいんだっけ?」と、もう一段上位の理由を考えます。そうすると、「1億円がほしいのはお金の不安を持ちたくないから」といった自分の気持ちに気づけるかもしれません。
この後、具体的な目標を数値に落とし込むと、「解像度」が上がる、より、目標が現実に近づいていきます。例えば、「1億円欲しい」→「自由が欲しい」→「働かずにお金を手に入れたい」→「資産を減らさず、毎年不労所得で月30万円✕12カ月を確保したい」→「年5%運用が可能なら7200万円の金融資産があればいい」といった、具体的な解決策が見えてくるかもしれません。
❶お金、❷生活、❸モノなどに対する執着も☆で評価しておくと、自分が大事なものがわかり、解像度が上がります。
人生にコスパを求めすぎない
何をやるにも損得を考えてしまう人が陥りがちなのが、「結局、何もしない」という状態です。
人生、1年後はなんとなく予想がついても、3年後、5年後はわかりません。つまり、正解はわかりません。このような状況で、「無駄なことはしたくない」とあれこれ調べても、意味は薄い。さんざん調べて「何もしないことこそ、リスクであり、時間の無駄」です。夢・目標だって変わって構いません。
❷なりたい「キャラ」を設定する
なりたい状態がある程度言語化できたら、なりたい「キャラ」を設定を行います。多くの人が「自分が存在して、自分が動いている」と思っていますが、なりたい状態に近づくには、「そのキャラならどんな風に行動するだろう?」と考え、キャラを演じる方が、ラク、かつ、大胆に行動できます。
明確なキャラを持っている方に矢沢永吉さんがいます。「俺は良いけど、YAZAWAはなんて言うかな」というセリフは、まさに、「スターとしてのYAZAWAならこう考える」という意味です。「YAZAWAというプロダクトに対して、お客さんが何を期待しているのか」という視点があります。相手の期待という視点により、ブレずに進むことができるのです。
まずは、「なりたい自分」を体現している「憧れの人」を見つけましょう。その方がスムーズです。
❸「キャラ」を動かす
なりたい「キャラ」が決まったら、❶でリスト化した「なりたい自分」を元に、キャラが取りそうな行動を書き出し、それを実践します。
ポイントは、自分の性格を変えるのではなく、行動を変える。理想の自分がしそうな行動ができるようになることです。
例えば、「朝起きたらゴロゴロせずにすぐ起きて活動を開始する」とか「電車に乗る時は、将来役に立ちそうな本を読む」など具体的に行動リストに落とし込んで実践することで、自然となりたい状態に近づけます。また、「話し方」を変えてみるのもおすすめです。
人は、他人の性格を「行動・発言」で判断します。、なりたいキャラのようにふるまえば、そんな人だと思ってもらえて、相手の態度も変わってきます。そして、周りからの扱われ方が変わる → 行動が変わる → 性格が変わる という好循環が回り始めます。
❹「キャラ」が活きる環境をつくる
人の運命は「環境」で大半が決まっており、「努力」で変えられる部分はかなり小さいという事実があります。ひろゆきさんも、『1%の努力』で、その事実を知ることの重要性を説いています。
国・時代が変われば、自分は変わります。また、立場が変われば性格や行動もカンタンに変わります。だから、環境を考えずに、「努力でなんとかする/できる」と考えるのは、ダメな思考パターンです。これは、川の流れに逆らってボートを 漕いでいるような状況です。
だから、「キャラ」が活きる環境をつくることはとても大事。ここで言う環境とは、「周りにいる人」のことです。自分が理想とするキャラと同質な人たちの輪に交じるだけで、自分もその人たちに近づいていきます。
自分が望む環境に入り込む方法として、コミュニティに所属するのも一つの方法です。本書では、このような環境を手に入れるためにはどうしたらいいかも、ページを割いて解説されています。
❺物語を転がす
キャラ設定も環境も揃ったら、「キャラの物語を進める」べく前進するのみ。ただし、これが結構難しい。
名場面し、「戦略」「作戦」「戦術」に落とし込む
ここで意識しておきたいのが、目標(名場面)の設定です。その目標とは、自分が作ったキャラが「どんな状況になってほしいか」、名場面をつくるようなイメージです。どんな物語ならワクワクしそうか考え、「戦略」「作戦」「戦術」に落とし込みます。
項目 | やること |
---|---|
戦略 | 「こういう方向性で戦うぞ」を決める 方向性の決め方は、「一番効果が高いところに、集中してリソースを突っ込んで、大きな成果を出す」 |
作戦 | 「戦略を具体的な行動にするとしたら」を考える 計画やスケジュール、リソースの配分など |
戦術 | 作戦に基づいて実行される具体的なタスクや行動に落とし込む |
第一歩が一番難しい、いかに攻略するか
計画を立てても「はじめの一歩」が一番難しい。これを乗り越えるために大事なのが「行動(タスク)の小分け」です。
例えば、「毎日読書」を目標としたなら、
- まずは、本を買う
- 本が届いたら、1日1分でいいから読む。本を開くだけでもOK
と言った具合に、とことん、一つの行動を小さくします。一方を歩み出すと、意外と先まで行けるものです。気乗りがしない仕事も、なんとか重い腰を上げて張り始めたら、以外と集中できた 等は、まさに「第一歩」の大事さを物語っています。
物語を転がすためのコツ5選
- 不安なことはすべて紙に書き出してみる(グダグダしないために大事)
- 尊敬する人にメールで相談するふりをしてみる
- アイデアを温めない
- 「判断」と「決断」を区別する
- リスク管理表をつくる(リスクは、避けるものではなく、管理するモノ)
特に大事だなと感じたのが❸です。「アイデアをもっとよくしてから行動」しようとすると先には進めません。そして、失敗したときのことなどを考えて、ますます動けなくなります。大体のアイデアは失敗に終わります。ベンチャー企業でも、成功するのは100社に1社です。人生をかけた事業であってもこの程度の成功確率です。アイデアは温め過ぎずに、むしろ「アイデアを量産する戦略」の方がうまくいきます。
また、❹も大事。「判断」と「決断」は全く性質が異なります。「判断」は、情報を集めて、論理的に考えたりしたうえで決めること。一方、「決断」はよしやるぞ!と決めてしまうことです。今、自分が決めようとしているのはどちらなのか、考えましょう。特に、ぐずぐず考えてしまうときは効果があります。
最後に
今回は、けんすうさんの『物語思考』からの学びを紹介しました。
私は、「成功すること」より「幸せになること」を生きるモットーにしていますが、そんな考えの人には『物語思考』は響くと思います。いわゆるモチベーションを上げることを指南する自己啓発書とは異なる、「なりたい自分の育て方」は参考になりました。
本書には、各章ごとにワークシートもついています。なかなか「行動できない人」には特におすすめ。是非、本書を参考に、自分を変えるきっかけをつかんでください。