- 「増やす」だけでなく「使う」までが長期投資
長期投資は、資産を増やすことだけが目的ではない。運用を続けながら必要な分を取り崩し、資産を人生のために使っていく。「貯める習慣」と同じように「使う習慣」も大切だと気づかされる。 - 「資産最大化」と「人生最大化は違う」
資産は増やせば増やすほど安心だが、「もっと欲しい」に終わりはない。人生には期限・旬があるからこそ、将来のために今を我慢しすぎず、自己投資や経験などにもお金を使うことが重要である。 - 投資のゴールは「お金を人生に戻す」こと
投資の価値は資産残高ではなく、資産によって得られる自由や豊かさにある。「何のために資産を増やすのか」を考え、現在と未来の人生をともに豊かにすることが、本書が教える投資の本質である。
★★★★☆ Audible聴き放題対象本
『オルカン思考』ってどんな本?

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オルカン—— 正式名称は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」。
今、日経新聞の『「オルカン一択」再検討の時』(2026年8月22日)が話題になっていますが、本投信は、日本を含む世界の株式に幅広く分散投資するインデックスファンドで、NISAの開始以降、個人投資家から大きな支持を集めているファンドです。
そんな「オルカン」の生みの親である代田秀雄さんが、自身の投資哲学を一般向けにまとめたのが『オルカン思考 世界経済を味方につける「長期投資」の教科書』です。
本書は、オルカンという一つの商品を詳しく解説することだけを目的とした本ではありません。
著者が伝えようとしているのは、「世界経済の成長を、自分自身の資産形成にどう取り込むのか」という、長期投資そのものに対する考え方です。
投資を始めると、どうしても「どの商品を買えば儲かるのか」「今は株を買うべきなのか」といった短期的な問題に囚われがちです。しかし、本当に難しいのは、もっと別のところにあります。
🟢 暴落の恐怖を乗り越え、相場上昇で売りたくなる衝動も乗り越えて、長く持ち続けられるか。
🟢 何をいつ買うかより、「持ち続けられるか」。
🟢 そして、「増やしたお金」をどう取り崩して、人生を充実させるか。
個人的に特に学びが大きかったのは、「増やしたお金の使い方」——資産の取り崩しに対する姿勢でした。
日本人は、お金を使って人生を充実させることが苦手です。
しかし、長期投資を「単に儲けた」で終わらせないことこそ、人生を充実させるために大切です。
本書でいう「オルカン思考」とは、貯めたお金の使い方、つまり「出口戦略」まで含めて、世界経済の成長と自分の人生を結びつける考え方です。
資産形成を仕組み化し、長期的に資産を育てながら、それを人生のために使っていく。
本書は、この問いを改めて考えさせてくれる、オルカンの生みの親からの教えです。
『オルカン』とは?どう始め、どう続けるか
オルカンとは
オルカンは、「世界経済の成長を味方につける」という発想で作られた投資信託です。
連動を目指す指数は「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」。
各国の株式市場の時価総額に応じた比率で構成されているため、米国を中心に、先進国・新興国まで世界中の株式に幅広く投資できます。
現在は米国株が約3分の2を占め、日本は約5%。つまり、これ1本で日本以外の海外株式にも大きく分散投資できます。
「海外株式に投資したいけれど、国や銘柄を一つひとつ選ぶのは難しい」という人にとって、オルカンは非常にシンプルな選択肢です。
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どう始め、どう続けるか ——「長く持つ力」を高める
本書の中盤までで語られる、オルカンを活かした「投資のコツ」は、よくある長期投資本と大きく変わりません。
- 時間を味方につけて、複利で増やす
- 投資タイミングも分散する
- 積立投資を自動化・仕組み化する
- 途中で投資をやめず、市場に居続ける
- 値動きや口座残高を頻繁に見ず、ほったらかす
- 年齢に応じて現金比率を増やしていく
どれも長期投資を実践するうえで重要な考え方ですが、ここでは詳細には語りません。
ただ、本書には「オルカンの生みの親」だからこその思想があり、それが長期投資の説明に説得力を与えています。
私の場合は、それ以上に学びとなったのが「出口戦略」——資産の取り崩し方に対する姿勢でした。
投資は増やしながら使いなさい
資産形成を続けている人ほど、資産を減らすことに抵抗を感じるようになります。
コツコツ毎月投資し、暴落にも耐え、長い時間をかけて、その結果、1億円という大きな金額になった。
すると今度は、「この資産を減らしたくない」という心理が生まれます。
本来は「将来のため/自分のために使う」ために資産形成をしてきたはずなのに、それを使うことを躊躇してしまう。
実は、これは非常に厄介な心理です。なぜなら、その先に待っているのは、
やりたいことも欲しいものも我慢 → 老後になっても使わない/使えない → 資産を残して死亡
……そんな人生を幸せだと言えるでしょうか?
資産を増やすことを人生の目的にしてはいけません。お金は自分の幸せのために使うべきものです。
本書がここで示してくれるのは、「老後まで待ってから使う必要はない」という考え方です。
運用を続けながら、必要な分を取り崩していく。それでいい。
もちろん、資産運用にはリスクがありますし、必要な生活資金まで投資に回すべきという話ではありません。
「○歳までひたすら貯めて、それから取り崩す」と最初からガチガチに決める前に、「増やしながら使う」という柔軟なスタンスを持つことが大切なのです。
「とにかく“節約”で人生を生きてきた人は、老後になってもお金が使えない」——
この著者の言葉は、かなり考えさせられます。
投資や健康が習慣であるように、お金を使って人生を豊かにすることも習慣なのです。
「いつか使うため」に貯め続けるのではなく、今しかできないことには今お金を使う。
将来のために資産を育てながら、現在の人生にも適切にお金を振り向ける。
そう考えると、資産の取り崩しは「資産を減らす行為」ではなく、資産を人生の価値へと変換する行為とも言えます。
「資産を減らさないこと」を絶対的な目標にするより、「人生を幸せに過ごすこと」のほうが大切。
本書を読んで、改めてそう考えさせられました。
『オルカン思考』を自分の投資にどう取り入れるか
「資産最大化」と「人生最大化」は違う—— 本書の後半を読んで、特に考えさせられたのが、この違いです。
資産形成では、「もっと増やしたい」という欲求に終わりがありません。
資産を増やすこと自体は悪いことではありません。
しかし、「資産を最大化すること」と「人生を最大化すること」は同じではありません。
人生には期限や旬があります。
20代の1年間と、60代の1年間では、その価値が同じとは限りません。
また、金融投資ではなく自己投資をしたほうが、その後のリターンが大きくなったり、人生そのものが豊かになったりすることもあります。
私は「脳が喜ぶ暮らしをする」ことをモットーにしています。
嫌なことはやらなくていいように策を考える。
一方で、楽しい、ラク、便利、豊かだと感じることには、比較的お金を使ってきた方だと思います。
ところが、昨今のインフレもあり、店頭価格を見て購入を手控えることが明らかに増えました。
もちろん、無駄な消費、人生にプラスに働かない消費は積極的にやめればいい。
しかし、買い控えが増えたことで、消費によって得られる「心の豊かさ」まで小さくなっていると感じます。
だからこそ、今、「我慢しすぎて、現在を犠牲にすぎてはいけない」と思うのです。
現在の人生も、未来の人生も、どちらも豊かにする。
私は子供もいないので資産を残す必要もありません。「資産ゼロで死ぬ」も目指しています。
消費による豊かさのバランスが崩れた今、改めて、「資産最大化」ではなく、「人生最大化」について、考えてみたいと思います。
投資の本当の価値は、証券口座の数字ではなく、その数字が人生に与える自由。
そして、投資のゴールは「お金持ちになること」ではなく「お金を人生に戻すこと」です。
私は子供がいません。お金を残す必要もありません。
改めて、「資産最大化」ではなく、「人生最大化」について、考えてみたいと思います。
より具体的な考え方は、本書にてご確認下さい。
日経新聞「オルカン一択」で言いの科へのオルカン生みの親の回答
日経新聞が2026年8月22日の記事「『「オルカン一択」再検討の時』」では、次の点で「オルカン一択」を問い直しています。
- 債券が含まれない
- 米国比率が高い
- 円高になると円ベースのリターンが下がる
- 巨大テックへの偏り
- シニア世代の取り崩し
これに対しての、オルカンの生みの親・代田秀雄さん本人の結論をまとめると次の通り。
「全財産をオルカン一択」にするのは違う。
一方で、「長期でリスクを取る資産の中核をオルカンにする」のは合理的。
「オルカンに債券がない」は欠点なのか?
代田氏は、オルカンに債券が含まれていないこと自体は認めています。
しかし、「だからオルカンは不十分」という話ではない としています。
理由は、オルカンは「資産全体を1本で完成させる商品」ではなく、リスク資産の中核として使う商品だからです。
資産全体を、以下の2つのポケットに分けて考える。
- 安全資産:預金・個人向け国債など
- リスク資産:長期的な成長を期待する資産
そのうえで、リスク資産の中核にオルカンを置く。
つまり、「オルカン1本で全部」ではなく、「資産全体をどう設計するか」が大事と述べています。
「米国」「巨大テック」への隔たりについて
米国比率6割超であることは事実ですが、それは、「米国に賭けているから」ではありません。
世界の上場企業の時価総額に占める米国企業の割合が大きいからです。
「巨大テック」への隔たりも、時価総額加重という仕組みの結果であり、「今後も巨大テックが勝ち続ける」と予想しているわけではありません。
市場の変化に合わせて、オルカンそのものが構成比率を変えていくわけです。
ここにも「未来を予測しない」というオルカンの思想があります。
円高へのリスク
円高になれば円換算のリターンが下がるのは事実です。
ただし、ここでも「だからオルカンはダメ」という結論にはなりません。
なぜなら、長期投資で重要なのは、「将来の為替を当てること」ではなく、円で使うお金と、長期で増やすお金を分けることにあるからです。これも先の「安全資産とリスク資産を分ける」という考え方につながっています。
❶~❹の内容は、本書の書評では割愛しましたが、こちらについても、しっかり「オルカン思考」の中で解説されています。
「シニア世代」の取り崩し問題
これは、まさに、本書で私が最も学びとなった内容です。
「オルカンを持ち続ければいい」とは言っていません。
運用を続けながら必要なお金を使う、ここまで含めて「オルカン思考」なのです。
まとめ――『オルカン思考』は「生き方」を考える本
オルカンの生みの親である代田秀雄さんが、『オルカン思考』で述べているのは、
世界経済の成長を長期的に取り込むこと。
短期的な相場の変動に振り回されないこと。
投資を仕組み化して、長く続けること。
そして、資産を増やすことを人生の目的にしないこと。
私は最初の3つについては、すでに仕組み化して実践しています。だからこそ、刺さったのは4つ目でした。
投資そのものに人生を支配されるのではなく、投資を人生を豊かにするために「増やしながら使う」こと。
資産形成を「増やすところ」で終わらせず、「使うところ」まで含めて考える。
そのためには、「自分はどんな人生を送りたいのか」という問いに、自分なりの答えを持っておく必要があります。
資産1億円を目指すことも、その数字だけを見れば単なる目標にすぎません。
しかし、その1億円によって「働き方を変えられる」「家族との時間を増やせる」「やりたかったことに挑戦できる」と考えれば、意味は大きく変わります。
投資とは、未来のために現在のお金を運用する行為です。
だからこそ、投資の最終目的もまた、より良い未来の人生を作ることであるべきなのでしょう。
そんな問いを改めて考えたい人にとって、本書は非常に示唆の多い「長期投資の教科書」となってくれると思います。
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