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【書評/感想】ブレイクショットの軌跡(逢坂冬馬) ——“たった一本のボルト”からすべては始まる。「このミステリーがすごい!2026」弟6位

【書評/感想】ブレイクショットの軌跡(逢坂冬馬) ——“たった一本のボルト”からすべては始まる。「このミステリーがすごい!2026」弟6位
ブレイクショットの軌跡」要約・感想
  • 些細な出来事が、人生と社会を連鎖させて動かす物語
    工場でSUVの内部に落ちた「一本のボルト」。それは、ビリヤードの最初の一打=ブレイクショットとなり、無関係な人々の運命を次々と揺さぶっていく。「このミス!2026」 弟6位
  • 現代社会を映す群像劇
    期間工、会社員、詐欺師、少年兵まで、立場も境遇も異なる人々の人生が交錯する。誰もが不安と希望の狭間で生きる、現代という時代そのものの縮図がここにある。
  • 自分の小さな選択も世界とつながっている
    ばらばらに見えた物語は、終盤で一気に回収され、一本の線となる。その瞬間、私たちは気づく。何気ない日常の判断が、遠くの誰かの運命を左右しているかもしれない、と。

★★★★☆ Audible聴き放題対象本

目次

『ブレイクショットの軌跡』ってどんな本?

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2026年版「このミステリーがすごい!」第6位した社会派ミステリー『ブレイクショットの軌跡』。

同志少女よ、敵を撃て』『歌われなかった海賊へ』で“戦争という極限”を描いてきた逢坂冬馬さんが
今回選んだ舞台は、私たちが生きる「現代日本」。
そして、物語の中心にあるのは—— 一台のSUV〈ブレイクショット〉

大量消費社会の中に合って、使い捨てとならず、持ち主を変えていく「SUV車」はまるで運命の媒介者。
期間工、富裕層、板金工、詐欺師、SNSに翻弄される若者、そして、遠くアフリカで銃を持つ少年兵まで。
この車が、持ち主を変えるたび、互いに顔も名前も知らない人間たちの人生が変化・連鎖し、社会にも影響を与えていきます。

一台の車が、人と人を、見えない糸で結びつけていく群像劇です。

『ブレイクショットの軌跡』:あらすじと感想を織り交ぜて

“たった一本のボルト”から、すべては始まる

物語の発端は、驚くほど些細な出来事。
自動車工場で働く期間工・本田昴が目撃した、SUVの内部に落ちた「一本のボルト」。

報告すべきか、黙って見過ごすか——
その日は、彼の職場の最終日。
多少の罪悪感はあっても、報告しようがしなかろうが、自分の人生には関係のない出来事。
しかし、このことが、この後にこのSUVと出会う人たちの人生を大きく変えていく。

私たちは、日々の生活の中で、見聞きしたことの大半を「自分には関係ない」とやり過ごす。
しかし、「関係のないことなど何もない」のかもしれません。

群像劇が描き出す「現代社会のありよう」「人生」

本作に登場する人たちは、仕事も境遇も異なる人たち。

  • 会社の不正に押し潰される板金工
  • 将来に希望を描くも、不幸に見舞われ夢にとん挫する若者と家族
  • 成績不振をパワハラで追い詰められる会社員
  • 投資セミナー主催者・講師
  • そして、遠くアフリカで銃を握る少年兵 など

登場人物の多くは、社会から虐げられたり、不運に遭遇した人たち。
皆、より良い未来、安定、成功、救済を求めて生きている。
しかし、ほんの偶然、ほんの不運、ほんの他人の判断で、人生は簡単に、予期せぬ方向へとねじ曲がってしまう。

SUV〈ブレイクショット〉自身も、転売、事故、さらには、悪質な事件に利用されたりしながら、果ては海外へ。
そして、車が渡り歩くたびに、誰かの人生が動き出すのです。

そこに描かれているのは、「人生は、あまりにも偶然に支配されている」という、真実です。

散らばった人生が、最後に“ひとつの線”としてつながる

本書の読みどころは、「伏線の回収」。
無関係に見えた物語。交わるはずのなかった人生。偶然だと思っていた出来事。
それらが、終盤で一気に一本につながります。

私たちの日常は、すでに“物語の一部”かもしれない

私たちは普段、自分の「小さな選択」が、誰かの人生に影響しているとは思いません。
ニュースで流れるような大事件につながっていると感じることはほぼありません。
しかし、「自分とは関係ない」ことなど、何もないのかもしれません。

たった一通のメールがきっかけで、気分を害し、
その苛立ちを無意識のうちに他人へ向けてしまう。
八つ当たりされた人は不愉快になり、その感情は、また次の誰かへと手渡されていく。

これも、些細な選択の連鎖。
こうして、不快感や怒り、不安は、驚くほど簡単に連鎖し、確実に、世の中にマイナスの影響を広げていきます。

バタフライ・エフェクト。
ほんの小さな出来事が、時間を経て、巨大な結果を生む。
SNSで情報が一瞬で広がる現代では、些細なことであっても、それは世界と地続きでつながりうる。
このことを、心のどこかでとどめておかなければならないのかもしれません。

合わせて読みたい本

本書を読了して、頭に思い浮かんだのが、平野啓一郎さんの小説『富士山』
あり得たかもしれない人生の中で、なぜ、この人生だったのか——
人生は偶然で紡がれていることを教えられる短編集です。

本作も登場人物たちを通じて

  • 人生は全くの偶然で紡がれていること
  • 一瞬の人とのかかわりが、連鎖し、世の雰囲気を作り出していく

ことを、深く再認識させられます。

著:平野啓一郎 / Audible聴き放題対象

最後に

ブレイクショットの軌跡』は、一台の車を通じて、あなたのの一つの選択も、世界に影響を与える可能性があることを示す小説でした。

「このミステリーがすごい!2026」第6位のお墨付き。
ミステリー好きはもちろん、社会派小説が好きな方も、是非、手に取ってみてください。

1/29まで:いつでも解約可能

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