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【書評/要約】母ふたりで“かぞく”はじめました。(小野春) 結婚の自由をすべての人に、LGBTQカップルの20年

【書評/要約】母ふたりで“かぞく”はじめました。(小野春) 結婚の自由をすべての人に、LGBTQカップルの20年
母ふたりで“かぞく”はじめました。」要約・感想
  • 母2人子ども3人の“かぞく”を作り上げるために、どのような社会的な壁と立ち向かわなければならなかったかー。同性カップル家族のリアルな姿を描いたエッセイ
  • セクシャルマイノリティの苦悩を通じて、普段考えることのない「人権」の大切さを改めて認識
  • 社会が非道なのは知らないから。やさしさの半分は「知ること」から始まる

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目次

『母ふたりで“かぞく”はじめました。』ってどんな本?

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同性カップルの法的に結婚する権利を求める訴訟「結婚の自由をすべての人に」裁判をご存じでしょうか?

同性婚を認めないことは、日本国憲法第14条(法の下の平等)および第24条(婚姻の自由)に違反しているとして、2019年2月14日、日本各地で複数の同性カップルが結婚する権利を認めるよう日本政府に訴えた訴訟で、LGBTQ+の権利擁護における重要な訴訟です。

今回紹介のエッセイ『母ふたりで“かぞく”はじめました。』の著者小野春さんも原告の1人です。エッセイでは、苦悩なしでは語れないLGBTQ+の20年を赤裸々に、しかも、ユーモラスも交えて、笑いあり、涙ありで描かれます。

  • 春さんが、どのように自分がセクシャルマイノリティであると気がつき、
  • 同性パートナー 麻ちゃんと出会い、
  • 同性パートナーと共に人生を歩む決意するに至ったたか
  • 母2人子ども3人の“かぞく”を作り上げるために、どのような社会的な壁と立ち向かわなければならず、
  • 自分、そして、同じく同性カップルの悩みを抱える人のために、国を相手に訴訟を起こすに至ったかー

LGBTQ+の権利、家族の多様性に考えるきっかけを与えてくれる作品です。そして、「人権」を勝ち取るために立ち上がる姿は、単に感動するだけでなく、大きな気づきを与えてくれます。

この本をおすすめしたい方
  • 同性カップルやLGBTQ+の関心者
  • 家族の多様性、ジェンダー問題に関心のある方、教育や福祉の仕事に携わる方
  • 再婚、養子縁組など血のつながらないステップファミリーで、子どもとの付き合い方に悩みをお持ちの方

優しさの半分は「知ること」から始まる

優しさの半分は「知ること」から始まる | 【書評/要約】母ふたりで“かぞく”はじめました。(小野春)

私が本書を読んで最も強く気づかされたのは、「やさしさの半分は知ることから始まる」ということです。

知らない人・自分と異質な人に対して、人はやさしくありません。困っていても見て見ぬをします。批判し、遠ざけようとします。しかし、リアルでつながれば、血も涙もない「非道な人」ではいられません。

私も、一般常識として「LGBTQ+の人権を尊重することは大事」だとはわかっていました。しかし、それは単に一般常識としての認識であり、そこに彼らに対して血を通わせる「温かな気持ち」はなかったことに気づかされました。

非道なのは知らないからです。やさしさの半分は「知ること」から始まります。

「知る」ことが他者を尊重する第一歩となることを本書に教えてもらいました。

LGBTQ+のリアル に学ぶ

LGBTQ+のリアル に学ぶ  | 【書評/要約】母ふたりで“かぞく”はじめました。(小野春)

今まで自分が知らなかったLGBTQ+のリアルは、多くのことを気づかせます。3点ピックアップして紹介します。

知ることで変わる「社会」の見え方

マイノリティの家族は、日常生活で困ることだらけです。

同性カップルの同居は、周囲から見れば、「仲のいいシングルマザー二人が共に住んでいる」状態。二人の気持ちとは裏腹に、「家族」だとは認めてもらえません。カミングアウトしなければ、社会と合わせるために、嘘をついたり、ごまかしたりすることを余儀なくされます。

「カミングアウト」するとしても、子ども・両親・知人・学校など、段階を経ながら、丁寧に話をし、相手に理解を求めなければなりません。さらに、周囲から認められたとしても、普通の人がもつ社会的権利が認められないなどの問題に遭遇します。

「世間・社会の壁」と対峙しながら、LGBTで子育てをしている人がいる
リアルを知ると、社会の見え方が変わります。

「常識」が自分を苦しめている可能性

春さんは、ご自身がバイセクシャルであると明確に自覚したのは、男性と結婚し、子どもを持った後だったと言います。異性を意識するのが小学生・中学生であるとすれば、随分、遅い目覚めです。その理由を春さんは次のように分析します。

  • 家族がクリスチャンで同性を好きになることは「罪」だという考えがあった。そのため「女の子が好きかも」という自分自身の感情を直視するのは難しかった
  • 「誰とつきあっても、しっくりこない」という焦りが、いつしか「早く結婚して『普通』になりたい」という思いにつながっていった

私たちは日常生活において知らず知らず「一般常識」に毒されています。そして、集団から排除されないように「普通」であろうとします。このせいで、本当の自分がわからず苦悩する…

「何かおかしい・違和感を感じる」と思ったとき、それから逃げてはいけない。原因は、今まで疑うことのなかった「一般常識」のせいにあるかもしれません。

1人で悩まない。つながりを大事にする

春さんに見習うべき点は、「自分の悩みを自分事として内に閉じ込めない」ことです。同じ悩みを抱えていく人たち/コミュニティをネットで探し、リアルでつながっていく。人に言えずに抱えていた気持ちを吐露し、否定することなくみんなで聞き合う。春さんは、そんなつながりを大事に人脈を広げていきます。

パートナーとなる麻ちゃんとの出会いもその過程で得られたものです。そして、日常生活で困ることが多いからこそ、何かを決めるときも、母二人、子ども三人、お互いを尊重した話し合いが基本です。

さらに、人とのつながりを大切にする姿勢が、LGBTの方々とその周囲をつなぐコミュニティ「にじいろかぞく」の運営や、同性愛に関する集団訴訟などにつながっています。

人との出会いが、人生を変えていく
一人では弱いからこそ、誰かとつながり生きていく

どんな本でも「人とのつながりを大切にせよ」と書かれています。しかし、本書のような血の通った本からそれを教わると、大切さが心に染みます。

NHK『理想的本箱:母親が嫌いになった時に読む本でも選書

NHK『理想的本箱:母親が嫌いになった時に読む本』でも選書   | 【書評/要約】母ふたりで“かぞく”はじめました。(小野春)

本作は、NHKの番組『理想的本箱 君だけのブックガイド』で、「母親が嫌いになった時に読む本」の1冊として取り上げられた本でもあります。

オリジナルな家族を作るという難しい階段を一歩一歩力強くのぼってゆく同性カップルの子育てを通し、ステップファミリーの母子関係を見つめるエッセイとして紹介されています。

ステップファミリーとは、再婚やパートナーの変更、養子縁組によって、異なる家庭から来た親とその子供たちが新しい家族を形成する家庭のことを指します。


母というのは、実は一人の不完全な女性なのではないか…?互いへの複雑な愛がからみあう、娘・母・祖母三代を描いたコミック。


子育てに少し戸惑っているお母さんや、これから母になる人の心のよりどころになりそうな一冊。母たちを、温かく励ます書。

最後に

今回は、小野春さんの『母ふたりで“かぞく”はじめました。』からの学びを紹介しました。

LGBTQ+問題を超えて、本当に大事なことを教えられる本です。家族とのつながりをよりよくしたいとお考えの方も、是非、本書を手に取ってみてください。何か、ヒントを頂けるはずです。

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