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【書評/要約】教養としてのアメリカ大統領選挙(神野正史) 米国政治史から米国を知り、世界の今後を予測する目を養う本

【書評/要約】教養としてのアメリカ大統領選挙(神野正史) 米国政治史から米国を知り、世界の今後を予測する目を養う本
教養としてのアメリカ大統領選挙」要約・感想
  • 世界の覇権国家・米国。「米国の国の方向性」を下す大統領選挙の行方は、米国のみならず、世界へ影響をもたらす。米大統領選挙・政治史を知ることで、世界の今後を予測する目を養え
  • 我々は、日々のニュースに囚われやすい。世の中を見る上でまず大事なのは、大きな歴史の流れ「大局」。歴史を学べ
  • 国を知るには、「現在」だけを見ていてもわからない。国の歴史と共に理解せよ。歴史視点・歴史法則を持って理解すれば、未来予測もしやすくなる

★★★☆☆

目次

『教養としてのアメリカ大統領選挙』ってどんな本?

国際情勢が悪化の一途をたどる、昨今のグローバル社会。
いつの時代においても国際情勢が不安定になるのは、その時代を牽引してきた派遣国家が弱体したとき。
つまり、現在の国家不安定の根底に「アメリカの弱体化」がある!

世界の覇権国家アメリカ。ゆえに、「アメリカの決定」を下す大統領選挙の行方は、アメリカの動向が未来を左右する一大事。目前にし迫った、2024年の大統領選挙の動向は日本にとって他人事ではありません。

本書『教養としてのアメリカ大統領選挙』は、アメリカがわかり、その結果として国際情勢についても明るくなれる大人の教養書。「27の歴史視点」から世界の今後と日米の未来を読み解きます

「アメリカの決定」を下すのが、アメリカ合衆国大統領。そして、大統領選挙の歴史は、アメリカの政治史です。国の政策の方向性を左右する大統領選挙を理解することで、アメリカが見えてきます。

2024年のアメリカ大統領選挙は11月5日が投票日。目下、ドナルド・トランプ前大統領(共和党)と、ジョー・バイデン大統領に代わって出馬したカマラ・ハリス副大統領(民主党)が激しく争っています。

この大統領のポストに誰がつくのか、どんな状況で選ばれたのかー これを押さえると、今後のアメリカの動向、そして、諸外国が受ける影響も見通しやすくなります。

世界を見る目を養うために読んでおきたい1冊です。

こんな方におすすめ
  • 政治を見るとは、どういうことか?日々のニュースに翻弄される自分を卒業したい方に
  • 世界の今後と日米の未来を知っておきたい方に
  • グローバル社会の覇者・アメリカがどんな国かを理解しておきたい方に
  • 株式や為替など、投資をする方に

枝葉末節より大局。国・世界を知るために歴史を学ぶ

【書評/要約】教養としてのアメリカ大統領選挙(神野正史)

著者は元河合塾の人気世界史講師です。米国政治の専門家ではありません。Youtubeなどでこれからの世情についても発信されていますが、著者曰く、結果的に予想の精度は高いそうです。その理由を、著者は次のように説明します。

歴史の流れ「大局」を押さえる

専門家とは、その研究テーマを一点に絞って徹底的に分析し、学問を極めんとする人たちです。事情に詳しい一方、近視眼になりがち。

グローバル経済に大きく左右されているビジネスマンや、株・為替などの投資家などは、日々の経済ニュースに敏感です。しかし、ニュースで報じられる専門家の解説をただ鵜呑みにしていると、枝葉末節にとらわれることになります。

世の中を見通すうえで、大事なのは、「日々の枝葉末節な出来事」よりも「歴史(世界史)の大きな流れ。「大局」です。「大局」を押さえた上で「枝葉末節」を把握することが必須です。大局には、「歴史的法則性」もあります。

現代社会だけを見ていても、その国は見えません。国を知るには歴史を学ぶことが必要です。本書を通じて「歴史の大河の流れ」「歴史的法則」を押さえておくことが、世界を見る目を引き上げます。

アメリカを見る目=「歴史視点」を持つ

本書は、単に現在の共和党・民主党の対立の枠を超え、”アメリカを見る目”=「歴史視点」の重要性を説きます。

アメリカの政治史を紐解くことで見えてくる、いくつもの法則。法法則通りの選挙結果となったとき、何が起きるのか、反対に、法則に反する結果のときに何が起きるのかー

イラストと説明でわかりやすく解説してくれます。

米国の政党史と世界覇者への歴史(本書の構成)

【書評/要約】教養としてのアメリカ大統領選挙(神野正史)

その国の”本質”を知りたければ、その国の成り立ち、民族の出自、歴史背景、そこから成り立つ民族性を理解することが”最初の一歩”となる。

本書のポイントを、章構成を元に簡単にまとめたのが次の表です。
アメリカを理解するに当たって、まずは、米国政党史を解説。その上で、米国の覇権の歴史を読み解くことで、世界の今後を見る目を養う、という流れになっています。

タイトルポイント・歴史の流れ
弟1章二大政党制の成立「連邦派」と「半連邦派」を経て、「共和党」と「民主党」へ
・変質したモンロー主義
・中国に目を向ける合衆国。正論の裏に潜む本音
弟2章覇権国家への野望中立主義から帝国主義となり、第一次世界大戦で飛躍
・口では中立主義を訴えながらも、帝国主義であった合衆国
・世界初の総力戦「第一次世界大戦」に便乗し、覇権国家を目指す
・口では平和主義だが、死に物狂いで参戦口実を探す
弟3章覇権国家への道イギリスを追い落としつつ、合衆国に都合のいいルールを作成
・戦後の国際秩序をけん引する覇権国家を目指し、風呂敷を広げる
・都合が悪くなるとルールチェンジ
弟4章狂騒の20年代「日本潰し」を徹底しつつ、世界大恐慌から第二次世界大戦へ
・戦後の新国際秩序の権威に失敗した合衆国はアジア太平洋地域に覇を唱えんとす
・1920年代の絶頂を経て、1930年代に破綻
・ここから、戦後特需で経済復興を遂げる
弟5章冷戦時代時勢による一定の法則を持つようになった大統領選挙
・第二次世界大戦後米ソが覇権を争う時代に
・「冷戦」という新しい戦争形態が誕生
・長引く冷戦が米ソ共に経済を逼迫。事態打開に向けて緊張緩和向かう
・二度にわたる冷戦でソ連は滅び、合衆国もまた「双子の赤字」に悶絶
弟6章ポスト冷戦短い「一強時代」を終え、ついに覇権国の座を降りる
・アメリカ一強の新時代
・中国の台頭
・リソースを外部から内部へ、対中国へ
弟7章そして現代「 死に至る病 」に取りつかれた 合衆国の暗い未来

世界大戦で、イギリス・ドイツ・日本をたたき、戦後の冷戦でソ連を打ち負かした米国。

歴史を見れば、覇権国の力が衰えると、世界を統治する警察機能が失われ、戦争が起こりやすくなります。今、世界では、ソ連・ウクライナ、イスラエル、中国・台湾などが有事の事態にあります。このことは、かつての大英帝国の覇権の座を奪われたイギリスがそうであったように、アメリカも衰退に向かっていることを示唆しています。

歴史、時代を読む力をつける歴史視点

【書評/要約】教養としてのアメリカ大統領選挙(神野正史)

「歴史視点」を持って、物事・世の中を見る力は大事です。そのために役立つ視点をいくつか私なりにまとめ直して紹介します。

米国という国

  • 「合衆国が正義、敵は悪の帝国」という虚構をでっち上げる
  • そのためなら、アメリカは、捏造・印象操作・国際ルールの改変、どんな悪行非道(挑発・因縁・誘導・演出・捏造・国民の犠牲)も厭わない。

米大統領選挙

  • 戦前まで「平時の共和党、戦時の民主党」。戦後は「緩和の共和党、緊張の民主党」とする
  • 現職大統領の途中降板により、副大統領から昇格した大統領は、ほぼ全員無能(大統領選挙という「大きな戦」を勝ち抜く人物でなければ務まらない)
  • 大統領選挙の結果は過去3年間の実績より、最後の1年のs詠歌に大きく左右される。最後の年に大きな成果を上げれば現職が勝ち、失態を演ずれば負ける
  • 戦後「2期8年ごとに政権政党が交替する法則」は、それを維持するだけの大統領資質に欠けた人物が現れると乱れが生じる
  • 歴史が時代の転換期に入ると、生き残りをかけた政策は限られる。結果、「共和党」「民主党」の政策の違いはなくなる。

上記については、以下の記事もご参考に。

民族性・歴史法則

  • 欧米は自分たちが自分たちの都合で作ったルールを異文化圏にも強要してくるが、それが自分たちにとって不都合になると平然とルールを改変または破棄する。
  • アジア(孫子)は完全包囲の愚を戒める。、欧米(クラウゼヴィッツ)は敵をいかにして完全包囲、殲滅するかを目的とする。
  • 国際会議によって構築された「国際秩序」が崩れた時に起こるパターンは2つ
    • そのまま大戦争へと転げ落ちていくパターン
    • 一国で国際秩序を支える時代を20年ほど挟んでから大戦争に向かうパターン

歴史の見方・捉え方

  • 「1回」しか起こらないものは「例外」として処理すればよい。一方、同じようなことが連続して起きたときは、大きな変化が起きていないかよく分析する必要がある。水面下の変化に注意
  • 歴史の本に書かれる知識は丸暗記しても意味なし。歴史から生きる知恵を学び取れるかが大事

最後に

今回は、神野正史さんの『教養としてのアメリカ大統領選挙』からの学びを紹介しました。

大統領選挙は来月。世の中の動きをつかむための視点を本書から学んでおきましょう。

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