- 人との会話が困難で気持ちを伝えることができない自閉症者の心の声を、著者が13歳の時に記した、世界30カ国以上で読まれる世界的ベストセラー
- 東田さんの純粋でひたむきな言葉は、当事者や家族だけでなく、健常者の心をも深く打つ
- 人とのコミュニケーション、つながりをも深く考えさせられる
★★★★☆
Audible聴き放題対象本
『自閉症の僕が飛び跳ねる理由』ってどんな本?
重度の自閉症である東田直樹さん。
自分の衝動を抑えることもできず、人とまともに会話することもできない。しかし、ひとたび文字盤を前にすれば、並外れた豊かな表現力で自分の気持ちを表現する。そして、驚くほど、人の心を揺り動かし、人の心を打つ。
僕が跳びはねている時、気持ちは空に向かっています。空に吸い込まれてしまいたい思いが、僕の心を揺さぶるのです
『自閉症の僕が跳びはねる理由』は、東田さんが13歳の時に記した世界的ベストセラー。13歳の少年が書いたとは思えない表現豊かな言葉のオンパレードに、読者は驚き、そして、深く胸を打たれます。その言葉は、当事者や家族だけでなく、健常者の心をも深く打ってやみません。
言葉にならないもどかしさは何なのかー といった、自分ではうまく言語化できない悩みに気づきを与えてくれます。さらに、自己表現とは何なのかー、今まで考えることもなかったことにも、新たな気づきを与えてくれます。
人生観や世界の見方を変えさせられる一冊です。
なぜ、本作は、世界30カ国以上で翻訳されているのか
『自閉症の僕が跳びはねる理由』は、30カ国以上で翻訳され読まれている1冊。
なぜ、それほどまで、世界中で読まれているのかー それは、本作が自閉症の子を持つ家族・関係者に希望を与えてくれるからです。
重度の自閉症の方の”正直な”気持ちを知ることは難しいと言われます。家族が、彼らの意をくみ取ろうと努めても、彼らは自分をうまく表現できないからです。それゆえ、それは、大事な子どもが何を考えているわからず、心を痛めています。
東田直樹さんも重度の自閉症者で、通常の会話はでコミュニケーションを取ることは難しい。
しかし、文字盤を前にすると、雄弁に語り出します。本作では、健常者が自閉症の方に聞きたい58の質問に代弁。当事者にしかわからない率直な気持ちを教えてくれます。その言葉は、多くの人の胸を打ちます。
家族は、意思疎通が困難でも、見守ってくれる人たちに『愛情』を抱き、そして、『知性』を持って接していると、東田さんは語ります。この言葉に、救われた家族は非常に多いはずです。
また、健常者も「コミュニケーションとは何か」、多くのことに気づかされます。そして、自分が健常者として生まれたことがいかに幸福なことであるかを、再認識させてくれます。
コミュニケーションが苦手な方に、東田さんのアドバイス
東田さんの言葉の中には、私たちがいつもモヤモヤして言葉にならないことに対するヒントがあります。
以下では、そのいくつかを取り上げ紹介します。
なぜ、同じことを繰り返す?なぜ、うまく会話できない?
普通の人にとっては、相手からの問いへに対し、頭で考えて、言葉が口から出るまでが、ほんの一瞬です。しかし、自閉症者はそれができないと東田さんは言います。そして、だから、オウム返ししてしまうと。
僕たちは、脳の神経回路のどこかで異常が起きているのでしょうか?
僕たちが話を聞いて話を始めるまで、ものすごく時間がかかります。時間がかかるのは、相手の言っていることが分からないからではありません。相手が話をしてくれて、自分が答えようとする時に、自分の言いたいことが頭の中から消えてしまうのです。
僕たちは、まるで言葉の洪水に溺れるように、ただおろおろするばかりなのです。思いはみんなと同じなのに、それを伝える方法が見つからないのです。
僕たちは、自分の体さえ自分の思い通りにならなくて、じっとしていることも、言われた通りに動くこともできず、まるで不良品のロボットを運転しているようなものなのです。
普通に対人コミュニケーションができる人も、苦手な人を相手にすると、頭が回らず、言葉がどもって出てこないことがあります。しかし、なぜ、どもってしまうのか説明せよと言われても、多くの人は、説明できないのではないでしょうか。
本回答は、健常者にとっても、大きな気づきとなるのではないでしょうか。
なぜ、自分を見て話してくれない?
健常者は「目を見る」ことで、相手が自分の話をしっかり聞いてくれていると感じます。一方で、会話の最中、首をあちこちに動かされてしまうと、「どうして話すときに目を見てくれないのだろう」「話しているとき、どこを見ているのだろうか」と、不安になります。
しかし、自閉症の方は、対面で目を見ながら話すことが難しい。「なぜ、自分を見て話してくれない?」との問いに対し、東田さんは以下のように答えます。
みんなにはきっと、下を見ているとか、相手の後ろを見ていると思われているのでしょう。僕らがみているものは、人の声なのです。
声は見えるものではありませんが、僕らは全ての感覚器官を使って話を聞こうとするのです。
東田さんは、真剣に耳をそばだてようとすると、目に映っているものが意識できなくなってしまうといいます。だからこそ、全ての感覚器官を使って「声を見る」。彼は目を合わせないことで、相手の話を必死に聞こうとしているのです。
真剣に聞いているかどうか、どのぐらい心を寄せて相手と向き合っているかは、自然に態度に出て、それは相手にも伝わります。もしかしたら、自分の態度が、相手を遠ざけ、その結果、コミュニケーション下手になっているかもしれません。
あなたは、ちゃんと、相手の話を聞いていると自信をもって言えますか?生返事をしていませんか?
悩みが多く行動できない人へ、東田さんのアドバイス
気持ちの折り合をつけるとはどういうことか?
あなたは「気持ちに折り合いをつける」ということを、言葉で説明できるでしょうか?
東田さんは以下のように説明します。
したいことも、しなければならないことも、すぐに行動できないことがあります。やりたくない訳ではないのです。気持ちの折り合いがつかないのです。
何かひとつのことをやるにしても、僕は、みんなのようにスムーズに物事に取り掛かることができません。
気持ちに折り合いをつけるということは、どんな作業か説明します。❶まず、何をやるのか考えます。
❷次に、自分がそれをどうやるのかイメージします。
❸そして最後に、自分で自分を励ますのです。
この作業が 上手くいくかどうかで、スムーズに行動できるか、できないかが決まります。
自分がやりたいと思っても、体が言うことを聞かないと悩んでいる人は多いと思います。そんな人は、❷「自分がそれをどうやるのかイメージする」ができていません、
伊庭 正康さんの著書『結局、「しつこい人」がすべてを手に入れる』は、粘り強くやり続けて成功をつかむためのアドバイス本ですが、その中に、感情が邪魔をして「問題」と「課題」がごちゃ混ぜになって区別できない⇒動けない人が多いという記述がありました。
この場合、気持ちに折り合いをつけて前に進むとは、【感情はいったん脇において、「問題」「課題」「対策」を考えること】です。問題解決が苦手で悩みばかり考えている人は、「問題」と「課題」を切り分ける努力をしてみてください。
最後に
今回は、東田直樹さんの『自閉症の僕が飛び跳ねる理由』を紹介しました。
本当に、胸を打たれる本です。「ダメな自分への喝入れ」にも大いに役立ちます。一人でも多くの方に読んでいただきたいです。切にそう思います。