- 消えたタピオカ屋は、変わり身の早さで「次」に乗り換え、今も儲けている。時代の変化を敏感にとらえ、ブームに飛び乗るビジネスは、商売のセオリー
- 次のブームは何か?現ブームが続くか?はわからない。大事なのは、事業のイニシャルコストを徹底的に抑えて短期で利益を回収し、いつでも撤退できるようにして、ビジネスを展開する柔軟性と俊敏性
- 「プロダクトライフサイクル」を見極め、引き際を見極めることが大事
- 本書では様々なタイプの商売の「儲けのカラクリ」がわかりやすく紹介される。なるほど!なヒント多数
★★★★☆
Audible聴き放題対象本
『タピオカ屋はどこへいったのか?』ってどんな本?
モチモチした独特の食感が特徴のタピオカ。2019年には、タピオカドリンクを飲むことを意味する「タピる」が流行語になるほどのブームを起こしましたが、至るところにあったタピオカ屋は、いったいどこへいってしまったのか?
人気税理士であり、セミナー講師・YouTuberインフルエンサーでもある菅原由一さんの『タピオカ屋はどこへいったのか?』は、街で目にする商売の疑問や儲かるビジネスの裏側を覗かせてくれる一冊。
かつて、会計というビジネスマンにも嫌煙されがちなジャンルながら爆発的に売れた会計本に『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』がありましたが、それをもっと読みやすく、かつ、令和版にした1冊です。
著者の菅原由一氏は敏腕税理士。年間10億企業からインフルエンサーまで、約1万社の「儲けの仕組み」見てきた知識・ノウハウを本書で紹介。
消えたタピオカ屋の疑問や、つぶれそうなのに潰れない店、さらに、衰退する商店街/ネットにビジネスを奪われるリアル店で利益率を上げる方法など、儲けのしくみが惜しみなく紹介されています。
本書を読むと、「そうだったんだ!」という驚きに出会えます。そして、自分の商売をお持ちの方のみならず、会社員にとっても、「ビジネスで儲けるヒント」に出会えること間違いなし!儲けに関わる仕事をするすべてのビジネスマンにおすすめしたい一冊です。
- スモールビジネスで独立・開業してみたい方
- 成功企業の視点を取り入れて今の仕事に活かしたい、営業・マーケティング・新規事業の担当者
- ビジネスをもっと身近に感じたい方
タピオカ屋は「変わり身の早さ」で儲ける
タピオカブームは3度目。なぜ流行った?
行列ができる賑わいを見せた2018年頃からのタピオカブーム。
実は、1992年、2008年に続き、ブームは3回目。LCC就航で台湾旅行の人気に火がついたことで巻き起こりました。ここに、インスタ映えするネタを探していた若いSNSユーザーたちが飛びついた!タピオカミルクティはそのおいしさよりも、「インスタ映え」するアイテムとして、ブームになりました。
一方で、3回とも、共通してその直後に経済不況が起きており、タピオカブームが景気動向の予兆を示す指標(アノマリー)ではないかとも言われていたりします。ブームがすたれるのも早いのが特徴です。
年 | ブーム | ブームの後に起きた不況 |
---|---|---|
1992年 | 第1次ブーム | バブル崩壊 |
2008 | 第2次ブーム | リーマンショック |
2018年 | 第3次ブーム | 少し時間を経て、新型コロナウイルス感染パンデミック |
時代の変化をとらえ、ブームに飛び乗るは、商売のセオリー
社会の変化を敏感に捉え、ブームに飛び乗ることは、商売のセオリーです。
ここで大事なのは、重要な社会変化、具体的には、世の中の消費行動の変化にいち早く気づいてビジネスを展開できたかかです。
現代社会で起こる「インスタ映え」をキーに起こるブームは、消費行動が「モノ消費」から「コト消費」への完全に移行していることを示しています。モノ消費が、モノの機能を重視して、多機能・高機能に価値を生み出し商品を購入するのに対し、コト消費では、モノを持ったり使ったりすることを通じた「形のない価値」を重視して商品を購入しています。もはや、モノがあふれる現代社会では、「モノの機能」に対する価値は低下しているのです。
どのようなブームにも、何らかの「社会変化」「消費の変化」があります。これらは「ビジネスで儲ける」ためには、絶対に押さえるべき点です。
爆発的なブームと衰退。その裏にあるカラクリ
では、タピオカ屋を畳んだ事業者・オーナーはどうしているのでしょうか?商売をやめてしまったのでしょうか?
そもそも、ブームにのる事業家たちは「世の中の流れに敏感な人たち」です。タピオカ屋の後は、唐揚げ、マリトッツォ、といった具合に、次のブームにいち早く乗り換えて儲けています。
イニシャルコストを徹底的に抑えて短期で利益を回収し、ブームが去ったらすぐに見切りを付けて撤退するというビジネスモデル(短期回収型のビジネス)で、世を渡り歩いているのです。
何がブームになるか、ブームがどれくらい続くを完全に予測することなどできません。大事なのは、商品にはプロダクトライフサイクル=寿命があることを前提に、以下のように、いつでも撤退できるようにして、柔軟性と俊敏性を持ってビジネスを展開することです。
- ブームビジネスに大事なのは、柔軟性と俊敏性
- いつでも撤退できるようにして、ビジネスを展開する
- 少資金、省スペースなど、開業にかかるイニシャルコストを徹底的に抑え、短期で利益を回収する
- ブームが長続きするようなら追加投資
- ブームの途中でも次の事業機会を探す
- ブームがピークアウトしたと感じたら、撤退を考える
- ブームが去ったらすぐに見切りを付けて撤退する
「プロダクトライフサイクル」を見極め、引き際を探る
画像:電通マクロミルインサイト
ブームやトレンドを事業機会とする場合に大事なのは、どんな商品にも寿命があることをふまえることです。
プロダクトライフサイクルを意識し、製品の売上と利益を、4つの段階(導入期・成長期・成熟期・衰退期)に分類して考えておけば、それぞれの段階において取るべき戦略が見えてきます。ブームの継続予測とこのサイクルを鑑みて、複数のシナリオを想定しておけば、ビジネスの引き際での失敗を減らせます。
もう一つ、プロダクトライフサイクルと併せて意識しておきたいのが、「イノベーター理論」。
イノベーター理論では、いち早くサービスを受け入れ購入する「イノベーター」から、新しいものに対する興味・関心が薄く、なかなか取り入れようとしない「ラガード」まで、普及の過程を5つのフェーズに分類。現状の普及状況、そして、各段階の消費者に対して適切なアプローチを行うことを意識して、ビジネスを展開することが大事です。
なお、昨今は、消費者のニーズも多様化。一つの製品に対する「飽き」が早くなっています。プロダクトライフサイクルが短期化しているので、引き際の見極めは益々大事になっています。
いろいろある!儲けのカラクリ
ここからは、本書で紹介される身近な儲けのカラクリの一部を、一言で簡潔に紹介していきます。
閑古鳥を行列店に変える集客テク
- 商売のヒントは「スナック」にあり
- 出店と運営のコストが安い(駅から遠くてもOK、狭くてOK)
- 1対Nの顧客対応で人件費も安い(キャバクラとかは×)
- 会社帰りにふらっと寄ることができ、財布に負担をかけずに息抜きできる⇒サードプレイスに
- 衰退する商店街の店はどうやって稼いでいるのか?
- 「お店」以外に、安定的な太い収益をもたらす「事業」を持っている
- お肉屋さんがコロッケを1個80円で販売できる理由は、BtoB事業が主な収入源だから
- BtoC事業より、BtoB事業の方が事業規模は大きい
- ネットショップに食われるリアル店舗。どう売る?
- 「安さ」だけではない売り方がある
- 大事なのは「人」「コミュニケーション」
- ご当地ラーメン店はを流行らせるには?
- 人やお金などのリソースが限られている中小企業や小規模店舗は、専門店タイプのほうが成功しやすい
- ターゲットが広いとコストがかかる。ターゲットの広げ過ぎは逆効果
- 提供する料理の種類を絞り込めば、食材の仕入れが単純化。やらなければならないことが減る。人も不要
- 「小さな市場」で勝ち抜くことを考える
- 「弱者が勝つための5つの戦略」
- 戦う場所を限定する
- 相手を限定して一騎打ちに臨む
- 広域戦ではなく接近戦にする
- 一点集中で戦う
- 陽動作戦で競合相手の裏をかく
利益倍増の価格戦略
- 1個2万円のメロンの売り方
- メロンをメロン以外の商品として捉える。千疋屋のメロンは「贈答品」
- 旅行代金はなぜGWに爆上がりするのか?
- 需要と供給のバランスを見た「ダイナミックプライシング」
- 売れやすい価格を精度高く予測できれば企業の利益率。また、売れ残りと売り切れと対策ができる
- 儲かっていない会社ほど「赤字になる安売り」をしている
- 「赤字覚悟の在庫処分」で、商品やサービスを叩き売るために人や機械を動かしてはいけない
- カップ麺を定価の4倍の値段で売る
- 場所や環境が変われば価格が変わる。場所や環境次第では高くても買う人がいる
- 貴重な体験は高くても売れる
- 便利なら多少、高くても売れる(コンビニ)
- 至れり尽くせりの発想から離れる
- 「生活に密着したニーズ」はなくならない。遊・休・知・美を通じて文化的に暮らすことが多くの人の普遍的なニーズになっている
- 普遍的ニーズでは、至れり尽くせりは必要ないケースもある。シンプルで簡素なサービスを求める人もいる(1000円カットなど)
- コストを減らせば、利益は上がる
収益アップにつながる消費者心理の掌握術
- 高級寿司店はなぜ予約でいっぱいなのか
- 消費者は自分の判断を正当化したい。予約の取りづらさが逆にありがたみや満足度を高める
- SNSがこの現象を後押しする(確証バイアス)
- 通販番組の商品はなぜ個数が限定されているのか
- 入手困難であることが価値になる(スノッブ効果)
- インフルエンサーマーケティングはなぜこれほど注目されているのか
- 流行りに乗りたいという心理を刺激(バンドワゴン効果)
- 大手企業はなぜ巨額な費用を使いテレビCMを打つのか
- 信用されるほど売れる
最後に
今回は、菅原由一さんの『タピオカ屋はどこへいったのか?』からの学びを要点を絞って紹介しました。
本書には、今回取り上げた以外にも、多数の事例が掲載されています。本書には「儲けのヒント」が色々掲載されており、ビジネスマンなら、「なるほど!」と思うビジネスのカラクリも多いはずです。是非、本書を手に取り、ビジネスに最も大事な「儲けのカラクリ」をつかんでみてください。