- 人生も経営。あらゆる人間活動は「経営」によってできている
- 経営に大事な視点は、奪い合いではなく、価値創造。関係を見つめ直し、互いにハッピーになること
- 経営本には珍しい売れ筋本。多くの読者が「経営」という切り口で社会や日常生活を再評価することの新鮮さを感じる
★★★★☆
Audible聴き放題対象本
要約『世界は経営でできている』ってどんな本?
あらゆる人間活動は「経営」によってできているー
「経営」と聞いて多くの人が想像するのは、会社や組織で利益追求=お金儲けです。しかし、今回紹介の『世界は経営でできている』の著者・岩尾俊兵さんは、それは、狭い意味での「経営」でしかないと指摘します。
「経営」とは「価値創造を通じて対立を解消しながら人間の共同体を作り上げる知恵と実践」
この定義に立てば、仕事、家庭、老後など日常の多くのことは、実は経営が必要であり、日常生活の問題・悩み事も「経営思考」で解決できてしまう!このことを、自虐ネタ、ウィットな面白トークを織り交ぜながら、わかりやすく教えてくれます。
通常、「経営本」は読者が限定されるためベストセラーになりません。しかし、本書は、多くの支持を得ています。それは、多くの読者が「経営」という切り口で社会や日常生活を再評価することに新鮮さを感じているからです。時代のニーズにもマッチしています。また、難解な経営理論を語ることなく、平素な言葉と、ユーモラスを交えてまとめられている点も、他の本とは一線を画します。
読み物としても面白い、なるほど🤔納得な一冊。おすすめです。
- ビジネスパーソンから、学生、主婦まで、日常生活の問題・悩みを解決するアプローチ法を知りたい方
- 経営視点とは何か、身近な視点から学びたい方
経営とは何か
冒頭で述べたように、「経営」は企業のお金儲けのことではありません。
人生は経営
岩尾さんは、多くの人は、『自分が「人生を経営」している』ことに気づいていないと言います。
- 貧乏は経営でできている
- 家庭は経営でできている
- 恋愛は経営でできている
- 勉強は経営でできている 等
上記以外にも、虚栄、心労、就活、仕事、憤怒、健康、孤独、老後、芸術、科学、歴史 を含め、15のテーマすべてが経営でできているとして、面白おかしく「経営論」が展開されます。
経営の本質:価値創造とその実践
では、経営とは何でしょうか?岩尾さんは、経営を以下のように定義します。
経営の本来的な意味は、〈価値創造(=他者と自分を同時に幸せにすること)という究極の目的に向かい、中間目標と手段の本質・意義・有効性を問い直し、究極の目的の実現を妨げる対立を解消して、豊かな共同体を創り上げること〉
つまり、経営に大事なのは、価値の奪い合いではなく、互いがハッピーになる価値の創造とその実践です。
例えば、企業経営を取ってみても、「経営はお金儲けだ」と考えている時点で、企業は正しいサービス提供から次第にはずれ、いずれ経営に問題が生じます。顧客からお金を奪う、競合を出し抜くのではなく、「価値を創造」して、互いにハッピーになるという視点が欠かせません。
同様なことは、企業だけでなく、人間の共同体、つまり、家族、仲間、職場の人、あらゆる人間関係について当てはまります。
例えば、現代の夫婦。ダブルインカムでお金があれば、お互いに時間を奪い合い、夫のみが働いているのであれば、夫婦でお金を奪い合うことになりがちです。互いに「こっちのことを察しろ!」と解決策を放棄してしまうと仲は悪くなる一方です。
しかし、お互いの価値をすり合わせて問題を解決するという経営的思考=価値創造+問題解決マインド があれば、こうした夫婦間の奪い合いから脱出できる可能性が見いだせるのではないか、と岩尾さんは提案します。
価値は、人がいるからこそ存在する
「価値」はもともと存在しているものではありません。「金」や「ビットコイン」も、その実態は「金属」と「デジタル数字」です。しかし、人が社会に共通する価値を見出したことで価値が生まれました。
演劇・芸術も、自分よがりに作品を作るだけではダメで、皆に見てもらって、評価されて、価値が生まれます。
価値は、自分以外の人々が存在するから存在します。だからこそ、相手のこと、世の中のことを考えることなしにうまくいくことはありません。
奪い合いの末路
「奪い合いの末路」を考えるうえでわかりやすいのは「歴史」です。歴史は、お金・覇権の奪い合いです。その末路が「戦争」です。奪い合いでは人は幸せになれません。
世の中に対して多くの価値を提供できる人ほど、その人自身も世の中から価値を得ることができます。私たちは、社会の一員として、何かしらの価値を提供しながら生きることが大事なのです。
【具体的に経営を考える例】「貧乏」は経営からできている
本書は、一貫して、「経営すること」の大切さを、つまり、「価値創造」の大切さを説きます。
ただ、概念的な話ばかりでは、イマイチ、ピンとこない方もいるでしょう。そこで、「貧乏も経営でできている」を具体的に見てみることにしましょう。
貧乏にも種類がある、金持ちにも貧乏はいる
外見や住む場所にお金をかけて一見裕福層に見える人。彼らの一定数は、支出も多いため、生活はカツカツです。どんなに収入が多くとも、出ていく支出が多ければ、誰でも「貧乏」になります。
では、お金を一切使わなければ貧乏にならないのかというと、そうではありません。
世の中には、生きるのに必要なお金以外は一切使わないおぞましいまでの倹約家が存在します。ケチケチ生活で膨大な資産を残して死ぬのは全く持って愚かな行為です。人生の目的はお金を貯めることではありません。自分の経験を増やしたり、誰かと幸せな時間を過ごしたりする方が価値があります。資産が残っているなら、生前贈与で喜んでもらった方が、年老いた自分を愛してもらえる可能性も高まります。
お金を貯めることに執着する人も存在しますが、働き過ぎて人生に余裕がなかったり、健康を害しては本末店頭です。
貧乏とは
「貧乏」とはお金に加え、時間、知識、信頼など様々な資源の収入と支出のバランスが崩れた状態です。
厄介なのは、これらの資源は、どれか一つでもバランスが崩れてしまうと、他のバランスも崩れる性質を持っている点です。
「お金貧乏」になれば、生活の多くを仕事に回さなければならず、「時間貧乏」になります。自己投資もできないので「知識貧乏」になります。さらに、「時間貧乏」は、他人との交流の時間を奪い「信頼貧乏」をも誘発します。
このように、バランスが崩れると、貧乏が連鎖してしまうのです。
貧乏を回避するには
「貧乏」を回避するには、何をするときにも「自分は何をしたいのかを自問自答する」ことが欠かせません。
- 自分は何のために、最新機種のスマホを買うのか
- 何のために生活をギリギリまで切り詰めるのか
- 今の若者は「老後のため」といって、支出を絞る人が多いですが、本当にそれは適切か?
❶「何のためか」を自問自答すること、そして、❷目的に対して、用いる手段が適正かを考えること。これで、無駄づかいや、間違った優先順位を回避できます。
これは、自分の人生に対する「価値の創造」に他なりません。
具体的に「どう考えるか」は、以下の本がとても参考になります。合わせてチェックしてみてください。
一方で、「貧乏を回避する手段」を知る必要もあります。お金の勉強は大事です。
最後に
今回は、岩尾俊兵さんの『世界は経営でできている』からの学びを紹介しました。
今回は具体例として『「貧乏」は経営からできている』のみ取り上げましたが、本書を一冊読めば、家族・恋愛といった個人的なことから、科学・歴史に至るまで、全て、経営でできていることに腹落ちすることでしょう。
人生は、「人との間の価値創造」という視点があれば、違った生き方になるはずです。私も、経営視点で日常の諸所の問題解決を考えてみたいと思います。