- メタ思考=「外の視点」で物事をとらえ直すこと
組織に所属することで枠にはまってしまいがちなビジネスパーソンに贈る、自分でかけていた制限を解放し、より広く・俯瞰して物事をとらえるための思考術 - 物事は考え方次第、視点の持ち方次第。よりよく・楽しく生きるには、考え方が大事
- 本書では、「思考」「俯瞰」といった説明だけではわかりにくい概念を、著者の経験など、具体的な事例をを多数を織り交ぜ、わかりやすく解説。実践的な学びの書
★★★★☆
Audible聴き放題対象本
『メタ思考』ってどんな本?
頭のいい人の思考回路をインストールする!
ルールを疑わない人は思考停止している。
正解もルールも変わる時代で、頭のいい人はどこを見て、何を聞き、どう考えているのか?
『メタ思考』は、元マイクロソフト業務執行役員である澤円さんの思考法が学べる1冊です。「メタ思考」を身につけ、自分の人生を自由にデザインし、これからの新時代を生きていく方法をわかりやすく教えてもらえます。
メタ思考とは、物事を一段から客観視する思考法。本書は、自分を俯瞰的を見て、思考の枠を取り外すことに重点をおき、「思考」「俯瞰」といった説明だけではわかりにくい概念を、澤の実際の経験や、優れた知人の思考など、具体的な内容を多数を織り交ぜ、わかりやすく解説してくれます。
「視点」が変わることで、問題解決力は高まり、時代を先読む力も自然と高まり、また、人生も幸せになります。
本書は、平易な文章と具体事例で大変読みやすい。時間の使い方、日常業務、人間関係、ストレス管理など、ビジネスパーソンには関心の高いことを取り上げて解説しているので、最後まで興味を持って読み進められます。
逆に、範囲が広いが故に、読んでいると、あれ、何の本だったっけ?と迷子になる可能性はあるかもしれません。しかし、その時は、目次を俯瞰しなおせばOK。文章を読み慣れない方にもおすすめです。
- 頭をよくしたい方、考え方をアップデートしたい方
- 「具体と抽象」は読んだけど、イマイチ、現実のビジネスシーンでも活用の仕方が分からない方
- 「型にはまった考えばかりしてしまう」という自覚症状のある方
メタ思考とは:外の視点で物事をとらえ直す
メタ思考とは、一般的には、物事を客観視する思考法です。物事を一つ上の視点から眺めてみることで、客観的に物事をとらえます。
この分野で最も有名な先生と言えば細谷功さん。ベストセラー『具体と抽象』がその内容で、当ブログでは、この手法で世界を見る目を鍛えるアドバイス本として、『フローとストック 世界の先が読める「思考」と「知識」の法則』を紹介しました。
澤さんの本では、「メタ思考」の概念そのものより、ビジネスシーンに「メタ思考」をいかに取り入れ、働き方・生き方改善するかに重点が置かれています。
「外の視点」で物事をとらえ直す
本書で最も大事なのが、【メタ思考=「外の視点」で物事をとらえ直す】 という視点です。
仕事に熱心になればなるほど、人は、狭い世界に入りがちです。例えば、一つの会社に長くい続ければ、どうしても視野が狭まります。
ここで大事なのが、「外」の視点を獲得すること。組織に属する人にありがちな、「今いる会社=自分、自分のアイデンティティ」といった狭い考えから脱出し、「社会」という大きな広場で自分の立ち位置を見出すことです。
「自分だけ一生懸命働いても損するだけ」「会社は自分を正しく評価してくれていない」なども、狭い枠の中で「身近な他者との比較」にとらわれていることに他なりません。
「外」の視点を獲得すれば、今自分がいるひとつの世界の中で他者との比較に苦しむ必要はなくなります。そして、一つの価値観に縛られずに自分が面白いと思えることに、正直に、より自由に生きることにつなげられます。
エイリアスという働き方・生き方
澤さんは、上記のような働き方を目指すことを「エイリアスという働き方・生き方」と呼んでいます。
エイリヤスはプログラマーにはなじみが深い言葉ですが、簡単に言えば、会社ではこの機能を提供している、別の場所では別の機能を提供しているといったように、自分それぞれを、「分身」としてと捉える考え方です。
「Aの会社ではプログラムが得意な人」「Bプロジェクトでは、セミナーが得意な人」「ネットでは筋トレマニアYoutuber」といったように、自分の分身を使い分けられれば、一つの仕事でうまくいかなくても、自分を必要以上に攻めることがなくなります。
この考えは、対人関係ごとに分化した自分がいると考える、小説家・平野啓一郎さんの「分人」という考えにも通じます。澤さんの「エイリヤス」はビジネス現場での働き方に役立つ思考であるのに対し、「分人」はストレスが多い人間関係に役立つ思考ではないでしょうか。
さらに自分を高める方法として、澤さんは会社や組織で定義された業務以外の部分で、「ありがとう」といわれることを心がけようとアドバイスします。ありがとうと言われることを心がけるだけで、人の行動・思考はよい方向に変わっていきます。
考え方次第!自分が勝てるルールを自分でつくる
僕、これまで失敗したことないんだよね(にこっ)ー
これは、澤さんのかつてのチームメンバーのひとりの言葉です。多くの人は思った通りの結果にならなかったことを「失敗」と考えますが、彼は、「予想と現実が違っていただけに過ぎない」と考えます。
つまり、「解釈」が違うだけです。この考え方で、彼は、何度もトライ&エラーを繰り返しながら、目標へ向かって最適化した道を進んでいます。これは、幸せな生き方です。
人は失敗すると、再び失敗するのではないか/次は失敗できないという恐れ・警戒心で動けなくなりがちです。また、会社という組織の中にいると、知らないうちに「会社のルール」に従い、失敗しないように自分の行動を狭めます。
しかし、人生は、世の中が「一般常識」と考えているような考えに縛られて生きる必要はありません(犯罪につながる考えは除く)。人生のルールは、自分が勝てるように勝手に作ってもいいのです。自分にとって都合よく勝てる目標で人生は明るくなれます。
本書では、このような「思考を変える方法」が以下の章立てで詳しく解説されます。「ルールに縛られる」のも「正解にとらわれる」のも、思考の仕方次第です。
- ルールに縛られない発想力
- 正解にとらわれない観察力
- 思い込みから自由になる思考法
- 課題を発見していく認知力
- 新時代のマネジメント作法
- 視野を広げる人間関係術
- ストレスをなくすシェア力
枠の中にはまった思考しかできないと自覚症状のある人は、是非とも読むべし。自分の思考の枠を外すのに大事な方法が、丁寧に解説されています。
【実践!メタ思考】具体的アドバイス
以下では、上記、本の構成に関わらず、私の心に刺さった内容をピックアックして紹介します。
恐れをなくすにはまず「知る」こと
自分の思考・行動を狭めてしまう「恐れ」。これを、どう克服したらいいのかー
最上位の格闘技選手にとってもっとも重要なことは、「情報量」だそうです。フィジカルの強靱さや、動きの俊敏さはもちろん必須ですが、最上位の選手では、相手について「知っているか」が勝敗を分けると言います。
「外」の世界に踏み出すために大事なのも、「情報」です。恐怖・不安を克服するだけでなく、最大限に自分の能力を発揮するためにも、情報量を増やすことから逃げてはいけません。
議題を共通の話題になるように抽象化する
うちは特殊だから―
クライアントへの提案の場で、クライアントが提案に難色を示す差によく聞く言葉です。体のいい断りの場合もありますが、一方でよくあるのが「特殊と思っているのはクライアントの思い込みに過ぎない(プロから見れば特殊でも何でもない)」というケースです。「具体と抽象」の「抽象」のレベルが低いクライアントに起こりがちなことです。
このようなとき、提案者側がしなければならないのは、「議題をみんなの共通の課題になるように抽象化」すること。つまり、その課題の解決が、自分の利益となる「自分ごと」と捉えられるように「具体と抽象」をうまく取り入れ、話してあげることです。さすれば、相手も興味を持ち、拒絶ではなくて逆に質問をされるかもしれません。
会議で、参加者にイマイチ話が伝わっていないと感じるときも、同じようなことが起こっている可能性があります。あいは、メンバーから「面倒感・拒絶感」が伝わってくるときも同じです。人間には現状維持バイアスがあるので、新しいことをすることを嫌がります。こんな時、課題を抽象化して共通の課題であることを説明したり、主語を換えたりするだけで、みんなが受け入れやすくなる可能性が高まります。
これも、物事は何も変わっていないのに、「認知のあり方やその範囲」が変わる例です。
「具体と抽象」は「俯瞰してみる」の基本。うまく説明できていないかも…と感じた方は、以下の本で学びましょう。
理不尽で消耗しない。自分でコントロールできることに集中
世の中は、個人の力でコントロールできないことが圧倒的多数です。会社に叙属すれば、理不尽なことも多い。
このような理不尽で消耗しないために大事なのは、「自分がコントロールできることに集中する」ことです。
自分がコントロールできない領域のことに期待するのは、宝くじのようなもの。がっかりもするし、腹も立ちます。これでは、心が消耗します。人間関係においては、「自分と他者は違う」と認識して、他人に対して過剰に期待し過ぎないことです。
そのうえで、できる限りいい人間関係を構築する」というマインドセットを持って行動すれば、自分もよりよく変わり、周りにいい影響を与えることもできます。人間関係にも「メタ思考」はとても役立ちます。
最後に
今回は、澤円さんの『メタ思考』からの学びを紹介しました。
細谷功さんから学んだ、一歩上から俯瞰してみることの大切さ(具体と抽象)。
そして、平野啓一郎さんの、「自分は分人の集合体」という考え方。
私にとっては、澤円さんの『メタ思考』は、これら2つの考えを、より抽象度を高めてとらえ直す本となりました。
そういえば、先日読んだ速読本『らく速読』の中には、自分を俯瞰して読書する「メタ読書(オープンマインド・リーディング)」という読書術もありました。まだまだ、「メタ」の使い方は広がりそうです。
いい部分は、どんどん、取り入れていきたいと思います。