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【書評/あらすじ】アリアドネの声(井上真偽)巨大地震発生。三重障害者を救えるのか― 最後の最後の”大どんでん返し”に温かな涙の災害救助ミステリー

【書評/あらすじ】アリアドネの声(井上真偽)巨大地震発生。三重障害者を救えるのか― 最後の最後の”大どんでん返し”に温かな涙の災害救助ミステリー
アリアドネの声」あらすじ・感想
  • 障がい者支援都市「WANOKUNI」で巨大地震が発生。見えない・聞こえない・話せないという三重の障がいを持つ女性を救い出せるのか―。最後の最後の”大どんでん返し”に涙の災害救助ミステリー
  • 救助隊も迎えない場所からの救助に向かうのは最新鋭のドローン
  • 災害救助 ✕ サスペンス✕ヒューマンドラマ が織り交ざり、緊張感の中でストーリーが展開。そして、ラストシーンにあたたかな涙!

★★★★☆ Kindle Unlimited読み放題対象本 Audible聴き放題対象本

目次

『アリアドネの声』ってどんな本?

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ミステリー作家・井上真偽(いのうえ まぎ)さんの「アリアドネの声」は、地下都市を舞台にした緊迫の災害救助ミステリーです。

障がい者支援都市「WANOKUNI」で巨大地震が発生。見えない・聞こえない・話せないという三重の障がいを持つ女性が、救助隊も救助に向かうことができない地下に閉じ込められてしまう。目も見えず、声も届かない救助者を見つけ、救助メッセージを送るのは困難を極める。そんな彼女を救ため、白羽の矢が当たったのは最新鋭のドローンを操る若き救助隊員。彼を含めた救助隊は、無事、彼女を救えるのか―。

災害救助 ✕ サスペンス✕ヒューマンドラマ が織り交ざり、緊張感の中でストーリーが展開していきいます。

そして、最後の最後に待つのは、大どんでん返し!ラストの展開に、うるうる涙してしまいました。

本作は、『このミステリーがすごい!2024年」の国内編で5位にもランクインした評価の高い作品です。

世界で最も地震災害の多い日本。災害の怖さを忘れないため、そして、最新の災害救援支援技術と隊員・技術者たちの苦労に触れるためにも、読んでおきたい小説です。

こんな方におすすめ
  • ミステリー小説好きの方
  • ヒューマンドラマ小説好きの方
  • 災害救助の困難さ、救助者の努力を垣間見たい方

アリアドネの声:あらすじ

本作の魅力は、最後の最後の大どんでん返し。最後のネタバレをしてしまうと、本作の魅力が台無しです。ネタバレに配慮して、あらすじを紹介をします。

物語の舞台は、近未来の障がい者支援都市「WANOKUNI」。地下に都市機能が集約された革新的なスマートシティで、バリアフリーなど障害者が暮らしやすい街が構築されています。しかし、巨大地震が発生。地下都市は、光も届かない、救助困難な地下迷宮と化してしまいます。

中でも、最も危機的状況に陥ったのは、見えない、聞こえない、話せないの三重障害を抱える中川博美(なかがわひろみ)。障がい者支援都市のシンボル的な存在の女性です。視覚も聴覚も言葉も失っている彼女は、見つけ出すことはおろか、発見後も救助法について意思疎通を図ることも容易ではありません。

救助隊員も立ち入れない場所から彼女を救い出すミッションを受けたのは、主人公・高木春生(たかぎはるお)。災害救助用ドローンを扱うベンチャー企業のインストラクターです。幼い頃、最愛の兄を目の前で起きた事故で失った経験を持つ春生は、「自分にもっと勇気があれば、自分が無理だと思わなければ兄を助けることができたのに」という後悔の念を持ち続け生きてきました。

建物の崩落、浸水の進行、そして火災の危険。地震による二次災害の危険性が迫る中、制限時間はわずか6時間。

無理だと思ったら、そこが限界」、この言葉を胸に春夫は救出の壁に立ち向かいます。しかし、博美発見後も、通常のコミュニケーション手段が一切取れない博美の救助は困難を極めます。さらに、博美の反応の仕方に、もしかしたら彼女は、障害者の街のアイドルとして活躍し続けるために「障害を偽っているのではないか」という疑念も発生。さらに、ドローン救助が必要な障害者は博美以外にもおり、博美の救助にドローンが占有されることにも意見が….

こんな状況下で、無事、博美を救い出せるのかー

サスペンスの中に、人間ドラマあり!ミステリー好きの方はもちろん、ヒューマンドラマ小説好きの方も大いに感動できます。

アリアドネの声:感想

アリアドネの声:感想・あらすじ

ミステリー作家:井上真偽

井上真偽さんは、年齢・性別など非公開の覆面ミステリー作家。『その可能性はすでに考えた』『聖女の毒杯』などが代表作です。

井上作品の特徴は、技術的✕論理的。「論理」と「奇想」を重視して描かれるので、トリックも独創的。読者の知的好奇心も刺激します。

本作でも、技術面では「最新鋭のドローン技術を駆使した災害救助」、ミステリー面では三重障害者に対する疑惑を、最後の最後で大どんでん返しで覆します。本作でも、読書は、著者の「論理力」✕「奇想力」を、十分、楽しむことができます。

ドローン救助の可能性、ハイテク化で新たに生まれるリスク

本書を読んでいて、気づかされるのが、ハイテク災害技術の可能性です。本作では、最新鋭の技術を搭載したドローンによる救助活動が詳細に描かれていきます。

災害は何が起こるかわからない場所。しかも、救助法を考える時間は限られます。技術があれば大丈夫という話にはなりません。

光の届かない地下空間、意思疎通困難者の救助など、様々な事前シミュレーションを想定しておかないと、最新鋭の技術があったとしても使いこなせません。さらには、勇気もないとどんな高い技術があろうと活かせないことを、本書を読んで気づかされました。

また、一方で、スマートシティなど、新しい技術を搭載した街は利便性もあるも、新たな危険もあり得る。これまでにはなかった問題も起こり得るという気づきになりました。

タイトル「アリアドネの声」

本書を読み終えた気になったのが、タイトル「アリアドネの声」。そこで調べてみました。

アリアドネとは、ギリシャ神話に出てくる女神の名前です。

牛頭人身の怪物ミノタウロスを退治するためにテセウスが迷宮に向かうことになった際、アリアドネは、にテセウスに糸玉を渡します。テセウスは、アリアドネからもらった糸を辿ることで、無事、迷宮から脱出するのです。

今回紹介の『アリアドネの声』も地下迷宮からの脱出。「ドローンからのばされた糸」と「救助隊員の声」が博美を救います。三重障害の博美には発音される「声」は届かなくとも、救助隊員らが救助のために交わした意見・声が彼女を救うのです。

話は脱線しますが、ミステリー小説で、よく知らないカタカナ名がタイトルにつく小説は、神・女神・偉人の名であることが結構あります。例えば、中山七里さんの小説「セイレーンの懺悔」「メネシスの使者」「テミスの剣」「ヒポクラテスの困惑」などはその代表です。

タイトルを見て、どんな小説か、自分なりに想像できる想像できる教養があったら、素敵ですよね。コツコツ、教養アップに精進したいと思います。

最後に

今回は、井上真偽さんの『アリアドネの声』のあらすじ、感想を紹介しいました。

タイトルの帯で「大どんでん返し」ミステリーとは思い読み始めましたが、まさか、これほどの感動作だったとは!

あらすじを読んでも面白くありません。是非、手に取って、感動を味わってみて下さい。

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