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【書評/感想】ありか(瀬尾まいこ) 親子の愛と居場所の大切さに心震える | 本屋大賞ノミネート、心温まる物語。読書初心者も読みやすい

【書評/感想】ありか(瀬尾まいこ) 親子の愛と居場所の大切さに心震える | 本屋大賞ノミネート、心温まる物語。読書初心者も読みやすい
ありか」要約・感想
  • 何気ない日常に宿る「親子の愛」を丁寧に描いたハートフル小説
    シングルマザー・美空と娘ひかりの、ささやかで温かな日々を通して、特別ではない毎日の中にある「本当の幸せ」を静かに伝えてくれる。
  • 母と娘の関係が問いかける「親の愛」の難しさ
    実の母との歪んだ関係を描くことで、「親に愛されるとは何か」「親になるとはどういうことか」を読者自身に深く考えさせる。
  • 「ありか(居場所)」の大切さ
    傷や抱えながらも、娘とともに生きる道を選ぶ美空の姿は、読む人に勇気と希望を与えてくれる。血縁を超え、信じ合える誰かの存在が、人生を支える「生きる力」になることを強く教えられる。

★★★★★ Audible聴き放題対象本

目次

『ありか』ってどんな本?:あらすじ

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瀬尾まいこの『ありか』は、2026年本屋大賞ノミネートに選ばれた作品です。
親子の絆、何気ない日常の尊さ、人と人とのつながりを、優しい筆致で描いたハートフル小説です。

そして、バトンは渡された』をはじめ、家族をテーマにした物語で多くの読者の心をつかんできた瀬尾まいこ。
本作『ありか』でも、その真骨頂ともいえる“温もりある物語”が、読者の心をほっこりさせます。

主人公は、26歳のシングルマザー・美空
5歳の娘・ひかりを育てながら、工場でパートとして働く毎日を送っています。

朝9時から夕方6時まで、単調な流れ作業をこなす日々。
娘には、贅沢も習い事も簡単には与えてやれない。
それでも、美空はひかりの笑顔を何より大切にし、娘のために全力で生きています。

そんな、彼女の周囲には、温かな人たちがいます。
別れた夫の弟である義弟の颯斗は、同性愛者というコンプレックスを持ちながらも、自然体で美空やひかりに寄り添い、困ったときにはそっと手を差し伸べる存在。
職場の同僚やママ友も、できることを無理のない優しさで支えてくれます。

しかし——
そんな穏やかな日常を曇らせるのが、美空の母親です。
「育ててやった恩を返せ」と生活費を要求し、自分本位な言動で美里を追い詰めます。

美空は戸惑いながらも、ひかりと仲間たちに支えられながら、
「娘への愛情」と「温かな暮らし」を大事に、日々を生きるのです。

📌以下感想には、ネタバレも含みます。

感想1 |何気ない日常にこそ、「最高の幸せ」がある

これ以上に私を満たしてくれるものも、これ以上に私を満たしてくれるものもない。
ひかりがいない人生なんて考えられない。
私のすべてだ。と間違いなく言える。ひかりのためならなんだってできる。

これは、物語の導入で語られる美空の言葉です。

私には子供はいません。
そんな私でも、心に刺さるのが「子どもへの愛」と「平凡な日常生活にある飛び切りの幸せ」です。

起床・朝食・保育園への送り迎え、ひかりと交わす何気ない会話……。
こうした “何でもない平凡な日常”の中にこそ、「かけがえのない幸せ」なのだと、物語は教えてくれるのです。

読んでいるだけで、自分の日常まで愛おしく思えてくる。そんな不思議な温かさに包まれます。

以下は、そんな朝の一コマ ※親子の会話のみ抜粋
親子のやり取りは、まるで映像を見ているかのように生き生きしています。

「ひかり、起きて起きて」
「えー朝?」
「そうそう、朝」
「朝かー。くうちゃん※を起こさないと」
「くうちゃんはいいから、まずは、ひかりがさっさと着替えて」
「じゃあ、お着換え会場まで泳いでいくね」
「お着換え会場って。泳がなくていいから、ほら、パジャマ脱いで。早く早く早く」
「早く早くばっかり言わないでよね。本当にママは」
「わかった。ママ、朝ごはん用意してくるから、それまでに着替えるんだよ。いい?」
「はいはいさっさー」

※「くうちゃん」はいつも隣りで一緒に寝ているくまのぬいぐるみ

年長さんになって、口達者に。しかし、行動は遅いまま。
そんな5歳児のリアルが、たまらなく微笑ましく、愛おしい。

この温かさが、物語の最後までずっと続きます。読みながら、何度も自然に笑顔になってしまいました。

感想2|「ありか(居場所)」の大切さ

美空は完璧な母親ではありません。
寝坊もするし、料理も簡単なものばかり。余裕がある生活もできません。

それでも、彼女は必死に、誠実に、娘と向き合っています。
その姿がとても人間らしく、愛らしいのです。

そして欠かせない存在が、義弟・颯斗。
美空が同性愛者である事実を自然に受け止めてくれたことで、深く信頼を寄せるようになった彼は、
毎週のようにひかりを迎えに行き、夕飯を作り、二人の生活を支えてくれます。
ひかりも颯斗のことが大好きです。

血縁よりも深く信頼できる関係がある──颯斗は、そんな関係があることを、読者に教えてくれる存在です。

人は一人では生きられない。
信じてくれる誰かの存在が、どれほど人生を支えるのか——本書は静かに教えてくれます。

愛はここにある。幸せはここにいる。
そう感じることができるのも「ありか(居場所)」があってのことです。

感想3|親の愛とは何かを問いかける物語

美空の愛と優しさに満ちた日常の中で、唯一、心に影を落とすのが「母親との関係」です。
美空の母は、娘への思いやりよりも、自分本位な言動が目立つ人物として描かれています。

子供ができたら親の恩が痛いほど分かる
美空は、幼い頃から何度もこの言葉を聞かされて育ち、自分もまた、そう信じてきました。
そして、大人になった今、母親は「育ててやった恩を返せ」と金銭を要求。愚痴をぶつけ、生活を侵害してくることに胸を痛めています。

しかし、美空はひかりの寝顔を見つめながら、いつも思います。
「(ひかりとの)この日々の、いったいどこに“恩を感じさせる”要素があるのだろう」と——

目の前に、自分ひとりでは何もできない小さな命がある。
ただ健やかに育ってほしいと願い、そのために体は自然と動いてきた。
それは“義務”でも“見返り”でもなく、親として自然に湧き上がる想いから生まれた行動でした。

工場作業の中で、「もしも」の人生を思い描くこともあります。
結婚していなければ、離婚しなければ、違う進路を選んでいたら—— もっと違う未来があったのではないか、と。
けれど、美空が最後にたどり着く答えは、いつもひとつです。

今とは違う人生を歩んでいたら、ひかりには出会えていない。ひかりのいない人生など、考えられない——

一方で、母があれほどまでに「育ててきた」と強調していたのは、
自分は愛される存在ではなかったのではないか—— とも思ってしまうのです。

本書を読み終え、あらためて冒頭に描かれた美空の「問い」と「哀しみ」に立ち返ったとき、
両親への思いが一気にあふれ、思わず涙がこぼれました🥲
生活費を求めるどころか、近隣のニュースを見るたびに「大丈夫か」と連絡をくれる親。
大学で家を出るまで、干渉されすぎることもなく、自由に育ててもらいました。
一方で、親に反発し、距離を置いた時期もあった自分を思い出し、胸が痛くなります。

『ありか』は、母と娘の複雑な関係性、そして親子の愛の難しさを、
丁寧に、しかし重くなりすぎることなく描き出します。
決して特別な問題ではなく、多くの人がどこかで向き合ってきたテーマだからこそ、胸に響きます。

親に十分に愛されなかったと感じる経験は、誰しもが少なからず抱えるものです。
そしてそれは、ときに人生に消えない傷を残します。
しかし本作は、その傷を無理に癒そうともしないし、母を変えようともしません。
ただ、「そのまま抱えて生きていい」のです。

美空は、母に振り回されながらも、娘への愛を貫く道を選びます。
なぜなら、ひかりこそが、彼女にとってかけがえのない「ありか(居場所)」だから。

その姿は、迷いながらも前に進もうとする強さに満ちており、読者の心を温かく、そして熱く揺さぶります。

最後に | 読書習慣のない方でも読みやすくおすすめ

『ありか』は、 「自分の居場所があれば、平凡な日常も幸せで溢れる」ことを教えてくれる、とても優しい小説でした。文章はやさしく、読みやすく、自然とページが進みます。読書習慣がない方でも、非常に読みやすい1冊です。

  • 自分の居場所わからない
  • 日常生活の中で、幸せを感じられない
  • 親との関係に悩んでいる
  • 子育て中・子育てを終えた方

本作は、多くの人の心を温かくしてくれる作品です。

ひかりの無邪気さ、美空のまっすぐな愛情は、神レベル
ぜひ一度、この温かな物語を手に取ってみてください。
読み終えたあと、きっとあなたの「日常」が、少しだけ輝いて見えるはずです。

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