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【書評/要約】22世紀の資本主義(成田悠輔)──やがてお金は絶滅する。あなたの常識は22世紀に通用しない。凝り固まった常識を破壊し、未来を拓く衝撃の書

【書評/要約】22世紀の資本主義(成田悠輔)──やがてお金は絶滅する。あなたの常識は22世紀に通用しない。常識を破壊し、未来を拓く衝撃の書
22世紀の資本主義 やがてお金は絶滅する」要約・感想
  • お金は、いずれ絶滅する
    お金が消える未来像。私たちのあらゆる行動がデータ化され、個人の「信用」が新たな通貨となる、そんな衝撃的な22世紀の経済システムを鮮烈に描き出す。
  • 常識を根底から破壊
    「お金とは何か?」「資本主義とは何か?」――お金至上主義の思考の枠を打ち破り、未来を自由に想像する思考のストレッチを促す、まさに知的興奮に満ちた一冊。
  • 新技術で変わる新経済・人間性
    AI、ブロックチェーン、ビッグデータが「価値」を再定義。生き方も変わる

★★★★☆ Audible聴き放題対象本



目次

『22世紀の資本主義 やがてお金は絶滅する』ってどんな本?

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「お金は、いずれ絶滅する」——この刺激的な副題から始まる一冊。

今あなたの財布にあるお金、銀行口座の数字、そしてあらゆる電子マネーが、やがて意味をなさなくなる未来。そんな未来を鮮烈に描き出すのが気鋭の経済学者・成田悠輔さんの『22世紀の資本主義 やがてお金は絶滅する』です。

本書は、お金至上主義に毒された私たちの「常識」を、根底から揺さぶり、叩き壊すための“社会構想の書”。

私たちが社会の基盤と信じて疑わない「お金」という概念、そして「資本主義」というシステムそのものに、容赦なく根源的な問いを投げかけます。読者一人ひとりに「凝り固まった思考をぶち壊して未来を考える」ことを促す、まさに挑戦状とも言える一冊です。

「お金」の呪縛から解放される22世紀の経済世界へ

現代社会で、お金はほぼすべての価値判断の基準です。モノの価値、人の評価、国家の力。すべてが金額で測られ、「お金を稼ぐこと」が社会的正義のように機能してきました。しかし成田さんは、その絶対的な支配が、技術の進化によって終わると断言します。

履歴データが十分に豊かになれば、誰が寄生虫で誰が功労者かがわかる。お金という媒介を通さなくても信用は判断できるようになる」と。

未来の社会で、お金に代わるもの

生成AI、ブロックチェーン、ビッグデータ。

本書が描く未来の鍵を握るのは、まさに現代を席巻する「テクノロジーの進化」です。これらはすでに私たちの生活に深く入り込み、経済のあり方を確実に変えつつあります。成田さんは、このデジタル化の波が、最終的にお金そのものを「絶滅」させるという、大胆な仮説を提示します。

なぜ、どうして、お金が消えるのか?その答えは「履歴データ」にあります。デジタル化が進んだ世界では、私たちのあらゆる行動、交流、功績がデータとして記録されます。そして、この膨大な履歴データこそが、やがて個人の「信用」や「価値」を自動的に判別する基準となるというのです。

お金を持っているか」よりも、「これまで何をしてきたか」が信用の基準になる時代がくる。

これはすでに、SNSや信用スコアが示唆する未来ですが、まるで、あなたの人生そのものが、信用評価のための「アート作品」のように機能するのです。

「一物多価」と「招き猫アルゴリズム」が紡ぎ出す社会

本書の衝撃は、お金の消滅だけにとどまりません。成田さんは、デジタル技術がもたらすもう一つの革新的な変化として「一物多価=個別最適化価格」の世界を提示します。

価格は、誰に対しても同じである必要はない——個人の履歴に応じて価格が変動する「一物多価」の社会がやってくるというのです。これは、現在の「一物一価」という経済の常識を根底から覆し、私たちの社会や価値観に大きな変化をもたらします。

一物多価」で実現する、市場による「富の再分配」

「あの人は収入が高いから高く売っても大丈夫」「この人は信用度が低いから高めの価格に」——

これはビジネスの世界ではよく見られる値付けです。

一物多価」の社会では、個人の支払い能力や過去の行動履歴に応じて価格が変動する世界も構築が可能。これは、現在の国家が行う「富の再分配」を、市場が「AIとアルゴリズム」で「自動」で担えるということすら、意味しています。

新たな経済を円滑に回す「招き猫アルゴリズム」

この新たな経済を円滑に回すのが、著者が提唱する「招き猫アルゴリズム」です。

それは、人々の「満足」「社会的制約」「公平性」をバランスさせ、あなたの過去の行動履歴に基づいて、個人が取るべき最適な行動を履歴データに基づいて計算し、推薦するシステムです。

そして、この新しい経済でお金の代わりとなる「アートークン」。100円は誰にとっても100円といった普遍的な価値ではなく、個々人の過去の貢献や信用が社会基盤となり、それがデータ化&蓄積され、価値となっていきます。

たとえば、誰かに親切にしたとき、それがデータとしてトークン化され、それが他の誰かとの取引に使われる。アートのように唯一無二の価値を持つこのトークンが、未来の経済の潤滑油になります(「信用の贈与経済」の実現)。

この未来ではあらゆる取引が「資格(来歴)」によって決定されます。そして、特定のサービスやイベントへのアクセスも、あなたの「来歴データ」に基づいて判断されるようになります。つまり、お金があれば何でも買える社会ではなくなるのです。

未来は、絶望か、それとも希望か?

貯金と投資なんかで夢見てる場合じゃない。凝り固まった思考を叩き割る社会構想の誕生を目撃せよ。

この成田さんの一節は、私たちがいかに「お金」の呪縛に囚われているかを痛烈に突きつけます。

ここまでの内容に、お金のない世界が怖くなった方もいるかもしれませんが、成田さんの描く未来は、決してディストピア一辺倒ではありません。むしろ、人間的な活動が経済成長の駆動力となる、新たな豊かさに満ちた社会の可能性を示唆しています。

なぜ、社会を構想し直す必要があるのか

成田さんは、行き過ぎた資本主義が生み出した「競争」「格差」といった問題点、そして、お金では測れないが故に軽視されてきた「価値」の存在に目を向け、アートークンが流通する経済社会で、社会を次のように再構成すべきと考えています。

  • お金以外の価値を重視する社会
    金額の多寡ではなく、個人のユニークな貢献や多様な才能、人とのつがりといった、お金では測れない価値を重視する社会。
  • 行き過ぎた競争へのストッパー
    アートークンは量産できず、数えたり比較したりすることが難しい特性を持つ。
    →画一的な競争ではなく、個々の「スタイル」に目が向けられる経済が生まれる。
  • 贈与的な経済
    「贈与」や「助け合い」を基盤とした、より人間的なやりとりを促す

稼ぐより踊れ

稼ぐより踊れ」——。成田さんは、こんな印象的なメッセージを投げかけます。

お金の支配が薄れる世界では、「感動」や「共鳴」が経済のコアになり、働いてお金を稼ぐよりも、“踊ること”が社会的に評価されるというのです。

お金の呪縛から解放されたとき、私たちは何に価値を見出し、どう生きるのか?

私個人は、現在の資本主義が抱える問題(格差・階級、国家の腐敗と無駄、共同体の閉塞感・束縛)の先に、新しい世界が生まれるかもしれないという希望が、本書から感じられました。とは言うものの、同じような環境が整うと、ユヴァル・ノア・ハラリさんが指摘するようなディストピアもあるのですが… う~む🤔

SFではない、現実味を帯びた未来

ここまで読んでも「それってSFの話でしょ?」——そう思うかもしれません。
しかし、しかし、ビットコインのような「モノのない資産」に兆円単位の価値が付き、AIが人の仕事を自動化し、個人の信用がスコア化される——そんな未来は、もう目の前にあります。

アートークンについても、このようなトークンは、ブロックチェーンやDAO、非代替トークン(NFT)といった技術によって実現可能なところまで来ています。

まとめ|今こそ、あなたの常識をアップデートする時

今回は、成田悠輔さんの『22世紀の資本主義』から、私が印象的だと感じたポイントを紹介しました。

本書は、来るべき変化に柔軟に対応したいと考える人、是非ともお勧めしたい。あなたの凝り固まった思考をストレッチし、経済や社会、そして私たち自身の存在に対する根本的な問いを突きつけてくれるはずです。

誰もがこの資本主義社会の中で、「働く意味」「稼ぐことの正義」に悩みながら生きています。そんな私たちにとって、「お金に縛られない社会」があるかもしれないという示唆は、一筋の光のようにも感じられるはずです。

私が非中央集権という「ビットコインの設計思想」に強い興味を持ったのは2017年でした。当時ビットコインは10万円以下。それから、世界の暗号資産市場全体の時価総額は4兆ドルまで膨らみ、また、日々の支払いは、現金からほぼキャッシュレスに代わりました。これらを考えると、「お金の形が変わる」ことは自然のことです。

新しい気づきを得るための本として、是非、本書を読んでみることをおすすめします。

以下の本とセットで読むとより、理解が進みます。どちらも、Audibleで聴き放題。こちらも刺激的な本です!

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