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【書評/要約】人生後半の戦略書(アーサー・C・ブルックス) 成功依存からいつ・どうやって抜け出すか。野心を抱くすべての方への必読書

【書評/要約】人生後半の戦略書(アーサー・C・ブルックス) 成功依存からいつ・どうやって抜け出すか。野心を抱くすべての方への必読書
人生後半の戦略書要約感想
  • なぜ人生は「後半」が不幸になってしまうのかー。人生後半は前半のような単純な成功法則に従って生きてはいけない。人生後半戦を幸せに生きる人生の指南書。特に、野心が高い方必読!
  • 成功には強い依存性がある。一定の成果を出してきた人ほど、30~50代に襲う能力低下を仕事量で抗い、成功をつかもうと努力する。しかし、それでは人生の後半に必要なものを失う
  • 人生後半ー。諦めないといけないことを諦めることでより満足感のある、後悔のない人生を送ることができる! その人生の切替方が提示される

★★★★☆



目次

『人生後半の戦略書』ってどんな本?

人生100年時代。20・30代をガムシャラに働き、気づけば40代。それなりの地位・成果を達成していたとしても、徐々に頑張りが効かなくなり、50代~それ以降への不安・心配が頭を占有するー。

こんな風に、人生後半への不安を募らせる中高年は多いのではないでしょうか。

人生後半の戦略書』は、こうした中高年の悩みに寄り添い、人生後半をより豊かに生きる方法を教える指南書。著者は、ハーバード大学の教授のアーサー・C・ブルックスさん。成功を追い求める、野心の高い人たちに対し、「今の働き方を一生続けられますか?」と、人生とキャリアを再構築し、生き方を変えることを提案します。

なぜ、人生後半戦は、成功を追い求める続ける人生ではダメなのかー
具体的に人生の後半戦をどう生きればいいのかー

著者の教えを私なりにまとめます。

こんな方におすすめ
  • 仕事、財産、地位、名誉を手に入れようと、日々頑張っている中高年
  • 人生の後半戦を前に、自分の生き方を見つめ直し、正しい方向へ軌道修正したい方

キャリアの下降は必ず訪れる

人は「老い」を避けられません。その事実は皆認めていても、多くの人は、老いが自分の仕事に影響を与えるのはまだまだ先と思っています。しかし、「仕事&キャリアの老い」は驚くほど早く訪れると著者は指摘します。

スキル低下は30代後半から。ほぼ全職業で

本書で提示されるデータはななかなか過酷… 。高いスキルを必要とする職業はほぼ例外なく30代後半から50代前半にかけてパフォーマンスが低下。金融業のピークは36~40歳、医者・音楽家は30代、整備士・事務員も35~44歳。この数字にドキッとした方も多いのではないでしょうか。

これは脳の前頭前野の機能低下によるもので、ワーキングメモリ、実行機能、集中力などが、加齢に伴いパフォーマンス低下を起こします。

故、人は40・50代になると、若い時のように仕事で戦えません。結果、必死に頑張って仕事でそれなりの成功を手にしてきた人ほど、「自分の能力の落ち込み」に精神的ダメージをうけます。

一つの解決策

ただ、企業のトップなど、50代・60代を過ぎても、素晴らしい能力を発揮し、人から尊敬される人もいます。ここに関わるのは、脳の2つの知能「流動性知能」「結晶性知能」のうち、「結晶性知能」を有効に仕事に活かしているからです。

流動性知能柔軟な思考、推論力、新しい問題の解決力といった能力
これらは、先天的なもの。30から40代に急速に低下
フローな知能
結晶性知能蓄積した経験を活用する能力。むしろ中高年以降に向上
ストックされていく知能

加齢とともにフローな知識は衰えていきます。故、過去に学んだ経験や蓄積されたストック型の知能をいかしていくことは、幸福への近道です。この知識・知識が活かせる「実践者から指導者への転身」は有効な手段となります。しかし、残念ながら、別の大きな問題があります。

成功への依存

実践者から指導者に転身を図ることは有効です。ただ一方で、実績を評価されてきた人は「成功依存」から抜け出すことができません。「次の成功」を渇望するのです。

成功したい理由

成功したい!でもパフォーマンスが出ない! 問題を解消すべく、多くの人は、時間(努力)でスキルの衰えに抗います。つまり、さらに、仕事に精を出すわけです。

仕事依存症の彼らが求めているのは、仕事での成果そのものではありません。「成功」であり、対価として得られる「お金」あり、付随して得られる「権力・地位・賞賛」です。いわゆる、他者と比較することで満足が得られる「地位財」を求めています。

成功依存症

厄介なことに、「成功」には依存症があります。仕事での成功も、投資での資産増加も、ギャンブルでの勝利も、本質は同じです。成功している自分がたまらなない。成功し、お金も地位もあれば「無敵感」も味わえます。

この時、脳は、快楽物質ドーパミンで満たされ、とにかく気持ちがいい。しかし、ドーパミンによる快楽は、持続時間しません。結果、次の成功を求めることになります。これは、薬物依存、アル中とと変わりません。

仕事依存症の人は、自分の求める成功を実現するには14時間目の労働が必須だと言じ込んでいます。しかし実際には、その時点になると、生産性は極端に下がる可能性が高いです。経済学の研究では一貫して、1日あたりの労働時間が8時間もしくは10時間を超えると限界生産性が低下する、という結果が出ています。

FIREして、仕事依存を辞めても、投資に傾倒してしまっては、同じ、ドーパミン中毒から抜け出すことはできません。

成功を追い求める代償

成功を求めて仕事でガムシャラになることには、代償が伴います。人生の大事な時間を仕事に全投入することで、配偶者・子供・友人と共に幸せに過ごす時間、人生の後半に重要な趣味への時間などがなくなります。

ハーバード大学の75年に及ぶ研究は、高齢者の幸福度を最大限に高める要素は人間関係であることを証明しています。孤独は楽しさだけでなく、健康、認知症などにもマイナスの影響を及ぼします。特に、仕事をやめた独身男性は、孤独化しないように注意が必要です。

猛烈に仕事を頑張った挙句、老後、一日誰とも話さない人生・テレビをみることしかやることがない人生なんて不幸すぎやしませんか?

成功には終わりがない。こんな生き方をしてはいけない

「成功」には終わりがありません。これを追い求めてがむしゃらに続けても続けても、最終的に報われることはありません。ではどうしたらいいでしょうか?

人生後半に向け、生き方を乗り換える

死の間際で「もっと働けば良かった」「最後の日も投資で儲けたかった」と後悔する人はいないことを知るべきです。

人生後半戦は、仕事中心からの転換が必須です。

著者の考えを私の考えを含めて表現し直せば、
仕事・お金・地位・名声など他者と比較ことで満足が得られる「地位財」の追求から、
主観的に満足が得られる自由、愛情、健康、良質な環境などの「非地位財」を求める人生にシフトすべし
ということだと思います。

人生後半に向け、自由な生き方、家族と共に過ごす穏やかな生活、趣味、趣味を通じた人間関係など、意識的に行うことが大事です。著者は、過去の友人との関係修復も行ってみてはとアドバイスしています。

新しい生き方を踏み出すためのアドバイス

今まで成功を追い求めてきた人が、それを辞めろと言われてもなかなかできないものです。しかし、人生のピークを過ぎたら、新しい生き方を選択する勇気が必要不可欠です。著者は、次のように人生を改めることをアドバイスします。

  • 変化や衰えを拒否して、今まで以上に頑張って働こうとすることをやめよう
  • 若い頃と同じ成功を求め、足し算して生きていく人生を続けるのはやめよう
  • 幸福になることよりも、特別な存在になることにこだわるのはやめよう

人生後半ー。諦めないといけないことを諦めることでより満足感のある、後悔のない人生を送ることができるのです。

人生後半戦は、自分の弱さをさらけ出してもいい。その方が、他者から信頼を得られる場合も少なくありません。若い時にもっていたような「弱さを見せることへの抵抗感」も減っているはずです。

これらは、頑張ってきた人ほど受け入れがたい事実ですが、受け入れた方が幸せになれます。

人との絆も大切に

人との強い絆があると、第二の曲線に乗り、成功しやすくなります。そもそも、人は一人では生きていけません。どんなに内向的な人でも、健全で親密な人間関係がなければ充実した老後は望めません。既婚者の場合も、配偶者がいるからと安心せず、配偶者と恋愛と友愛を共にはぐくむことが、成功の鍵となります。

友情はスキルであり、そのスキルを磨くには、練習と時間と根気が必要です。老後、時間ができたから..と思って、育めるものではありません。仕事中毒の人は、仕事上の人間関係はあっても、仕事がなくなったとき、どうでしょう?仕事仲間も確かに大事ですが、仕事での友情は、「共に大義を共有」している間だけのもので、本当の友情の代わりにはならないことを、理解しておくべきです。

最後に

今回は、アーサー・C・ブルックスさんの『人生後半の戦略書』から、私が重要と思った点を、私の意見も交えて紹介しました。

幸福になりたければ、自然な本能と戦わなくてはならないときもある。当たり前のことをなのですが、心に残りました。本能と闘わず、楽を選択し、いろいろ失敗してきたなぁ… と。

本文では紹介しませんでしたが、「人生後半では宗教などスピリチュアルなものを受け入れられるようになる」とも指摘されています。

私は、あまりスピリチュアルという言葉が好きではありません。多く本は、いいことは書いてあっても、イマイチ納得感に欠けるからです。しかし、最近、量子力学的にスピリチュアルを解説する本『死は存在しない』を読んで、スピリチュアル的なものと言われること/ものの捉え方が変わりました。

非常にいい本!こちらも合わせて読んでみてください。

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