- 「あなたの仕事を教えてください」 と言われて、「自分の会社・役職・部署」を答えてしまう人は、「伝え方がうまくない人」。質問から相手の意図を読み取っていない
- 「伝える」と「伝わる」は全く異なる。言わなくてもわかるだろはNG。自分の脳と相手の脳が見ている世界は異なる。しかも、人はすぐに忘れる。「伝える量」「伝える質」の両方が大事
- 本書では、わかりやすく伝えるためのコツが多数紹介される。太字、イラスト、話口調など、本全体を通じて、わかりやすく信頼をされる伝え方を教えてくれる
★★★★☆
Audible聴き放題対象本
『バナナの魅力を100文字で伝えてください』ってどんな本?
「あなたの仕事を教えてください」 と質問されたとき、あなたは何と答えますか?
もし、あなたが「自分の会社・役職・部署」を伝えてしまう場合は、おそらくあなたは「伝え方がうまくない人」です。それは会社での役割であって、仕事そのものではありません。相手の意図をくみとり回答していません。大企業名や部署をで本人は悦になっても、相手にとっては「だから何?」です。
伝えたつもりなのに、相手に伝わっていないミスコミュニケーションが起こるのは、「伝える」と「伝わる」は全く異なるからです。「伝える」は自分が主体であるのに対して、「伝わる」は 相手主体。 まずはここを理解することから始まります。
柿内尚文さんの『バナナの魅力を100文字で伝えてください 誰でも身につく36の伝わる法則』は、「伝える」ではなく、「伝わる技術」を教えてくれる本。
「相手に伝わる」ことを教える本なので、太字・イラストなどが効果的に用いられ、また、親しみやすい話口調による説明で、著者への親しみ・信頼もわくよう構成されています。本全体を通じて、「伝わるノウハウ」を学べる1冊です。
- ミスコミュニケーションが多い方
- わかりやすく、親しみのもたれるコミュニケーションを目指している方
- マーケティング・営業など、商品の訴求の仕方がを学びたい方
人は、正しいかどうかではなく「伝わったこと」で判断する
ミスコミュニケーションはなぜ起こるか?
まず最初に認識すべきは、「伝える」と「伝わる」は全く異なるという事実です。
言わないとわからない
ベストセラー『人は見た目が9割』は、「第一印象」が大事、つまり、視覚が圧倒的にものをいうことを解説する本です。これは、 心の中など、 見えない部分は判断材料になりにくい =「伝わりにくい」 ということを示しています。
「言わなくてもわかるだろう」「伝えなくても当たり前だろう」との考えでいる限り、相手にはあなたの考えはわかりません。
見えている世界は人それぞれ異なる
そもそも、自分の脳と相手の脳が見ている世界は異なります。違うことを前提に話さないとミスコミュニケーションが起こります。
「コミュニケーションスキルが高い人」は、人それぞれ考えは違うことを前提に、相手で話し方を変えます。『「解像度が高い人」がすべてを手に入れる』(権藤悠 著)では、「話のピントをあわせる力」と表現されています。相手の理解度に合わせて「具体⇔抽象」を調整して話ができるかがポイントです。
人は基本的に話をあまり覚えていない
「一度伝えたから…」という考えもやめるべきです。人は基本的に話をあまり覚えていません。もしくは、最初から聞いていません。覚えていたとしても最初の1時間後には半分忘れます(エビングハウスの忘却曲線)。
何度も同じことを伝えるとクドくて嫌がられそうと思ってしまいがちですが、人は忘れます。少しずつ表現を変えながら「繰り返し伝えること」が必要です。
「伝える量」と「伝える質」は分けて考える
伝えたい、わかってもらいたいのであれば、頻度を高めるとともに、伝え方を工夫し、質を上げることが大切です。
多くの人は、「伝え方の質と量の課題」を分離せず、ごちゃまぜにして考えています。
量の問題=伝えるが不足 | 伝える頻度(回数)が足りない |
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質の問題=伝え方が下手 | わかりにくい、抽象的すぎる、つまらない |
「伝わる」は7階建て構造
何かを身につけるときには、まず構造を理解することが大事です。
構造がわかれば、全体像や本質が理解できます。 これは「伝え方」にも当てはまります。
「伝わる」の構造は7段階
私たちは、「伝え方」というと、「どう話すか」「どう伝えるか」というアウトプットに意識がいきがちです。
しかし、伝え方に大事なのは「うまく話すこと」とは限りません。聴く力、親近感も「伝わる」の大切な要素です。
回数 | 内容 | 「営業」でモノを売る場合の視点 |
---|---|---|
1階 | ゴール設定 | モノを売る |
2階 | 納得感 | 相手が理解する、腑に落ちるように、 ・「相手ベース」で語る ・相手の頭の中にイメージを「見える化」する |
3階 | 相手ベース | |
4階 | 見える化 | |
5階 | 聞く力 | 商品を売り込むのではなく、相手の話をとにかく話を聞く 相手にとって自分たちの商品のどこに必要性があるのかを見つけ出す |
6階 | 親近感 | 相手ベースで話をしているうちに、相手との間に親近感⇒信頼が生まれる |
7階 | 信頼感 |
人間が話していて「楽しい」と思うときは、「自分」がよくしゃべり、相手が気持ちよく聞いてくれている時です。まず相手の話を聞いて距離を縮め、親近感を生み出すことが大事です。
信頼感の構造
最終的に大事なのは「信頼感」を得ることです。信頼感を得るには以下が大事です。頻度も重要な要素です。
①誠実さ・素直さ | 相手に対し、丁寧に、しっかりと対応 |
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②スキル・能力 | 成果や価値をちゃんと伝えないと気づいてもらえない可能性があるもの |
③結果・成果 | 同上 |
④接触頻度 | 頻度を上げる |
⑤モラル | 折に触れ自分の真摯な考えを伝えることで生まれる |
伝わる技術
「伝える技術」ではなく「伝わる技術」には様々な法則があります。
「ビリギャル」「お、ねだん以上」など、CMキャッチフレーズにはとても印象に残るフレーズが多いですが、非常に参考になることが多いです。
①比較の法則 | 比較しないと人は魅力がなかなかわからない |
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②フリオチの法則 | 話を面白くする「フリ」と「オチ」 意外性、驚き、新奇性、憧れで、人の関心や興味を生み出す 例)ビリギャル |
③ファクトとメンタルの法則 | ファクトとメンタルを上手に使う |
④脳内チューニングの法則 | 相手との認識の不一致は多い。頭の見える化を |
⑤言いかえの法則 | 「言いかえ」でマイナスをプラスに。言葉の効力は絶大 |
⑥たとえの法則 | 「たとえる」は伝わる技術のホームラン王 |
⑦ネーミングの法則 | 「名前をつける」とスペシャルなものに。愛着もわく |
⑧間の法則 | 「間」をとり、相手に考える時間を与える |
⑨数字の法則 | 「数字」は頭の中をくっきりハッキリさせてくれる |
⑩読点の法則 | 読点は伝わる強度を上げる。体言止めも効果高 例)春よ、来い |
⑪外部力の法則 | 自分の言葉に自信がないときは「外部力」を借りる |
⑫相手メリットの法則 | 「相手メリット」でイエスを引き出す ※「相手への興味、関心」が本当にないと逆効果にもなるので注意 |
⑬3つのグッドの法則 | 自分・あなた・社会の3つにとってグッドな話か |
⑭文脈の法則 | 「伝わる文脈」を作る! |
⑮結論の伝え方 | 基本は結論ファースト ・「論点の確認 → 結論 → 理由」の流れで、結論を前に論点の確認 ・相手の成熟度(原因や背景などの理解度)が低い場合は、結論ラストがベター |
上記から、いくつかピックアップして解説します。
③ファクトとメンタルの法則
ファクトとメンタル、「論理(データ)」×「感情」 「機能的メリット」×「共感」 「機能を伝える」×「気分」などを上手に掛け合わせると、相手に伝わりやすく、フレーズも残ります。以下はすべて、この法則に基づいています。
- ニトリ「お、ねだん以上」
- カルビー かっぱえびせん「やめられない、とまらない」
- 日清食品 チキンラーメン「すぐおいしい、すごくおいしい」
④脳内チューニングの法則
「自分が言ったこと(伝えたつもりのこと)」と「相手が受け取ったこと・思っていること」の不一致はしょっちゅう起こります。わかりあいたい相手とは「脳内チューニング」「頭の見える化」が必要です。脳内チューニングでは ホワイトボードなどに書き出すのは効果的です。
チューニングは質問で行いますが、質問をする場合は、以下に注意をしましょう。
- 相手を追い詰める質問 →×
- 二者択一の質問 →×
- 自分の意見に誘導する質問 →×
- 相手の意見を聞きながらの質問 →〇
- 相手に興味を持って質問をする →〇
ネーミングの法則
名前をつけるとスペシャル感が出たり、愛着がわきます。「ご当地グルメ」もその一例です。以下はネーミングのコツです。
- 伝えたい相手の「自分ゴト」になるように
- 「新しい発見、気づき」と「共感」を入れる
- 「キーワード」を入れる
- 意味がわかりやすく伝わりやすい
- テンポ&リズムがいい
- コンパクト
- 少しベタ
- 流行りの言葉などとかけあわせる
- 魅力をまとめてみる
- たとえる
- 頭文字などを使って造語にする 例)GAFA
文脈の法則
世の中には、文脈を読み取れなかったり、早合点したりする人が少なからずいます。
また、「おまえ、バカじゃないか!」というセリフも、見下しての発言だけでなく、「そんなことできるなんてすごい!」といういい意味もこともあります。
文脈を読むのが苦手な人はが良く行うのは「単語ひろい」。言葉の中の「単語」に過敏に反応してしまい、文脈がスルーされてしまいます。こんな人には、表情で示すなど、文脈以外のアピールも試みると、伝わる可能性が高まります。
最後に
今回は、柿内尚文さんの著書「バナナの魅力を100文字で伝えてください 誰でも身につく36の伝わる法則」からの学びを紹介しました。本全体を通じて、多くの学びが得られる1冊でした。書を実際に手に取ることで、高い学びを得て頂けたらなと思います。
なお、伝えたくないのにすぐ伝わってしまうこともあります。それは、「イライラ」「不機嫌」です。これが伝わると益々伝えたいことが伝わらなくなるのでご注意を!