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【書評/要約】わかったつもり~読解力がつかない本当の原因(西林克彦) 表面的な理解、都合の良い解釈、誤認、思考停止の罠に陥らない「読み方」

【書評/要約】わかったつもり~読解力がつかない本当の原因(西林克彦) 表面的な理解、都合の良い解釈、誤認、思考停止の罠に陥らない「読み方」
わかったつもり ~読解力がつかない本当の原因要約感想
  • 「わかったつもり」の落とし穴
    人は「わかったつもり」になると、本当はわかっていなくとも、その背景や文脈をより深く追求・考察しようしない。これが、浅い表面的な理解、都合の理解、誤認、思考停止を引き起こす。
  • 真の意味で文章を理解するためには、「わかったつもり」状態をぶっ壊し、そこからさらに一歩踏み込む必要がある。本書では「わかったつもりの罠」から脱する手がかりが提示される。
  • 本書は、「わかる」ためのテクニック本ではない。「読解のプロセス」を学ぶ本。このプロセスを知ることが、自分がどこまで理解できているかを知る術となる。より深いレベルの「わかる」を手に入れたい人のための本。

★★★★☆ Audible聴き放題対象本



目次

『わかったつもり ~読解力がつかない本当の原因』ってどんな本?

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文章を読んで「理解したつもり」になったものの、いざ説明しようとすると言葉に詰まる…
そんな経験はありませんか?
私は、本記事の執筆 然り、書評をまとめるたびに、筆が止まり、「思ったほど、わかっていなかった」と実感します。

西林克彦さんの本『わかったつもり ~読解力がつかない本当の原因』は、私たちが「理解した」と感じる瞬間に陥りがちな「わかったつもり」が、実際の読解力や理解を妨げる大きな要因であることを指摘する1冊。

人は文章を読んで「理解した」と感じても、実際は、自分が思うほど深く理解していないことが多々。 「わかったつもり」になると、人はその背景や文脈をより深く追求・考察しようとはしません。物事の関連性の理解が不十分な状態で留まったり、無意識的に都合よく解釈し、誤った認識となることもあります。また、深く考えないため、思考停止を引引き起こすこともあります。

昨今は、何事も「時短・効率化」を重視。ネット・SNSに依存し、じっくり文章を読む機会が減っています。また、ネットでは情報がこれまでの閲覧状況に応じ、趣味・指向が合う情報が流れ込んでくる傾向にあり、「自分の都合のよい解釈・理解」に拍車がかかりやすい環境にあります。これらは、「わかったつもり」を加速する可能性があります。

本作は、この「わかったつもりの正体」「わかったつもりの罠」を明らかにした上で、「わかったつもりの罠」から脱する大事な手掛かりを教えてくれます。

なお、本書は「わかる」ためのテクニック本ではありません。「読解のプロセス」を学ぶ本です。このプロセスを知ることが、自分がどこまで理解できているかを知る術となります。より深いレベルの「わかる」を手に入れたい人にすすめたい1冊です。
(ある意味では、テクニック本が、「浅い理解」「表面的な理解」に理解をとどまらせる一つの元凶となっているともいえるかもしれないと感じた次第です。)

「わかったつもり」とは?

学ぶ機会のない「深く考える」

「わかったつもり」とは

わからない文章の間の関連性が見えない状態。
わかる部分間の関連性がある程度理解できた状態
よりわかる文章の関連性が深く緊密につながり、「なぜそうなるのか」「他の要素とどう影響し合っているのか」といった関係性が明確になっている状態。

「わかったつもり」とは、「わかる」が表面的な理解にとどまった状態です。

一度「わかった」という安定状態になると、それを壊さないと(疑問を抱かないと)「よりわかる」という状態には進めません。一方で、「わからない」は不安定な状態です。脳は不安定な状態が嫌なのでその先の探索を続けます。

しかし、いったん、「わかったつもり」になると、本当はよくわかっていないのに、それ以上の探索をやめてしまいます。真の意味で文章を理解する=「よりよく読む」ためには、この「わかったつもり」状態をぶっ壊し、そこからさらに一歩踏み込む必要があるのです。

「わかったつもり」の罠

「わかったつもり」の罠に陥ると、以下のような読み違いが生じやすくなります。

  • 表面的な理解で満足する:単語やフレーズの意味だけを捉え、全体の文脈や背景を考慮しない。
  • 先入観や思い込みによる解釈:自分の経験や知識に基づいて解釈し、著者の意図や文脈を無視する。
  • 部分的な情報で全体を判断する:一部の情報だけで全体を理解したと考え、他の重要な情報を見落とす。

「わかったつもり」の罠に陥るわけ

『瞬読』とは?他の高速読書法との違い

本書を読み進めると、いかに自分が「テキトー」に文書を読んでいるかを思い知らされます。「小学校の文章すらちゃんと読めてないじゃん…」とショックを受けます。

本書では、なぜ、そのような事態に陥るかが詳しく解説されますが、その中からいくつかを紹介します。

「部分間の関連性」が曖昧

文章を読めることと、その内容を正しく理解することは違います。単語がわかっても、文全体の関係を誤解すると意味を取り違えます。

文章は単語や文、段落といった部分が関連し合って意味のネットワークを形成しています。 しかし、この関連性を適切に捉えられないと、文章の理解が途切れ、「わかったつもり」状態に陥ります。そして、この 部分間の関連性が曖昧なまま読み進めると、だんだん、矛盾や誤解が生じて、よくわからなくなってきます。

無意識に適用してしまう経験・既知識に基づく意味補完

人は文章を読むとき、無意識のうちに過去の経験や知識、仮定を用いて意味を補完しています。 これは自然なことですが、その「補完」が誤った方向に働くと、「わかったつもり」の状態に陥ります。

人は自分の中に既に存在している知識の枠組み「スキーマ」を使って意味を補完しています。会話している時も、文脈から「なんの話か」を把握し、そこから該当するスキーマを発動させ、その意味を関連づけて「わかった」という状態にもっていきます。

この時、補完された内容が正しければ問題ないですが、思い込み先入観などで、補完してしまうと、発信者の意図を取り違えてしまいます。

文脈がわかっていない

人の会話はかなり「いい加減」です。私たちは、突然、今までと全く異なる話をされても、多くの場合、会話が成立します。しかし、相手から、「あのさぁ。何のこと言ってるんだかわからないんだけど…」と指摘されることもあります。これは、文法や単語はわかるのに「わからない」という状態です。

このような時にボトルネックとなっているのが「文脈」です。以下の❶でつまづいた状態です。

  • 文脈がわからないと「わからない」。
  • 文脈がスキーマを発動し、文脈からの情報と共同してはたらく。
  • 文脈がそれぞれの部分の記述から意味を引き出す。
  • 文脈が異なれば、異なる意味が引き出される。
  • 文脈に引き出されたそれぞれの意味の間で関連ができることで文がわかる。

文章を読む際は、単語や文の意味だけでなく、その背景や状況、前後の流れといった「文脈」が理解を左右します。 同じ文章でも、文脈が変わるだけで解釈が変わることがあります。 これは、書き手の意図や読み手の立場、読み取る状況が異なることで起こります。

例えば、「彼が冷たい」という文も、単文では「物理的に冷たい(凍えている・死んでいる)」のか、「態度が冷たい」のか判断できませんが、前後の文脈によってその意味が明確になります。

詳細は本書にゆだねますが、本書を読んでいると「分脈」と「スキーマ」は意外と曲者だとわかります。

「わかったつもり」を脱する

「わかったつもり」の状態は誰にでも起こり得ます。むしろ、理解のほとんどは「わかったつもり」かもしれないと、い…というのが、私の本書を読んだ感想です。

より深い読解力を手に入れるために必要なのは、「わかったつもり」を一度壊すこと。意識的に読み方を変えて、「文章の本質を捉える力」を高める努力が必要です。

以下のような読み方は、「わかったつもり」を脱するために役立ちます。

  • 「わかったつもり」の状態を自覚する
    • 文章を読んで「わかった」と感じたとき、本当に理解できているか自問する。
    • 文脈や論理の展開を把握しているか、適宜、意識し確認する。
    • 「なぜこの主張が成り立つのか?」「どんな前提があるのか?」「矛盾がないか」を意識する。
  • 異なる視点で読み直す
    • 著者の視点:自分の知識や経験ではなく、著者の意図を意識して読む。
    • 別の立場の視点:賛成・反対、異なる背景の人の立場で考えながら読む。
    • 時間を置いて再読:しばらく経ってから読み直すと、新たな発見がある。
  • 多様な解釈を受け入れる
    • 文章の解釈は一つではない:異なる立場や背景を持つ人が読めば、別の意味が見えてくる。
    • 柔軟な思考を持つ:固定観念を持たず、他の解釈にも目を向ける。

「わかったつもり」から「わかった」に理解が昇華しても、その上には、さらに高みの「わかった」があります。人が一生で知れることなどたかが知れています。それでも、「わからない」⇒「わかったつもり」⇒「よくわかった」のループを回し続けることが、「賢くなる」ことであり、「よりよく幸せ生きる」ことにつながるのだと思います。

最後に

今回は、西林克彦さんの『わかったつもり ~読解力がつかない本当の原因』はからの学びを紹介しました。

正直、「わかったつもりを脱する」でまとめ事柄を常に意識して読むことは簡単ではありません。しかし、「意識して読む」だけでも、文章から得られるものは変わってくるはずです。これらの意識を続ければ、「自分の思考の癖」を知ることにもつながるはずです。

また、「異なる視点を持つ」という観点から、いろんなジャンル・作者の本に触れることは意味があります。

今後も、ジャンルに問わられず、時に、良かった本の再読などもしながら、「わからない」⇒「わかったつもり」⇒「よくわかった」のループを回し続ける読書生活を続けたいと思います。

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