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【書評/要約】人魚が逃げた(青山美智子)SNSを騒がす王子と”人生の節目”を迎えた5人が銀座を舞台に織りなす感動作。本屋大賞2025にノミネート

【書評/要約】人魚が逃げた(青山美智子)SNSを騒がす王子と"人生の節目"を迎えた5人が銀座を舞台に織りなす感動作。本屋大賞2025にノミネート
人魚が逃げたあらすじ・感想
  • #人魚が逃げた とSNS上で「王子」と名乗る謎の青年が話題に
    そんな王子と、それぞれ人生の節目を迎えた5人の男女が銀座を舞台に織りなす、ほっこり心温まる感動作
  • 現実と幻想=ファンタジーが絶妙にクロス。ラストのエピローグで5話の現実と幻想をまるっとまとめて伏線回収。物語は最後までわからない!世界は物語(フィクション)でできている
  • 著者・青山美智子さんは、本作で5年連続5度目の「本屋大賞」ノミネート。登場人物たちの繊細な心情描写が秀逸。心に響く素敵な言葉が物語の随所に散らばる!

★★★★★ Audible聴き放題対象本

目次

『人魚が逃げた』ってどんな本?

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2025年 本屋大賞にノミネート!

青山美智子さんの小説『人魚が逃げた』は、現実と幻想が交錯する銀座の街を舞台に、人生の転機を迎えた5人の男女の物語が織りなす感動作です。2025年本屋大賞にもノミネートされ、著者は5年連続での候補入りを果たしています。

物語は、ある3月の週末に「人魚が逃げた」という言葉がSNSでトレンド入りすることから始まります。「王子」と名乗る謎の青年が銀座の街をさまよい、「僕の人魚が、いなくなってしまって……逃げたんだ。この場所に」と語ったことが、SNSで人々の関心を集めます。そんな「人魚騒動」の裏では、5人の男女が、それぞれの「人生の節目」を迎えていました。5人と王子、人魚の運命が、銀座の街で交差し、物語は意外な展開を見せていきます。

アンデルセンの『人魚姫』をモチーフに、青山美智子さんワールドが展開!王子と現実を生きる5人が、絶妙に絡まり迎えるラストは、現実世界の話でありながら、ファンタジー作品のよう。素敵なラストが、読者をほっこり笑顔にさせてくれます。

青山美智子さんは、本作で5年連続5度目の「本屋大賞」ノミネートになります。青山さんの作品は、シンプルで優しい言葉遣いが特徴で、登場人物たちの繊細な心情描写が秀逸です。本作でも、読者は彼らの悩みや喜びに共感し、心温まる読書体験ができるはずです!

銀座で働く方、そして、道路が歩行者天国になる週末、銀座にお買い物に行くことが好きな方にもおすすめです。

人魚が逃げた:あらすじ ※寸止めメタバレ

銀座を訪れた5人を待ち受ける意外な運命とは。
そして「王子」は人魚と再会できるのか。そもそも人魚はいるのか、いないのか……。

SNSでの「#人魚が逃げた」のワード拡散と共に、それぞれ「人生の節目」を迎えた5人の男女のストーリーが章ごとに展開していきます。

1章 恋は愚か:元タレントの会社員・友治(ともはる)
12歳年上の恋人・理世と交際中の友治は、彼女にふさわしい自分でありたいと見栄を張りがち。一方、理世はいつも大人。気持ちを見せない彼女のことが不安で、大人で金銭的にも余裕のある理世の知人男性に嫉妬し、焦りを感じてしまう。そんな中、元タレントの友治は、王子様の格好をした「王子」に遭遇。役になり切る王子に声をかけて…

2章 街は豊か:主婦・伊津子(いつこ)
ニューヨークへ旅立つ娘の菜緒(なお)と銀座を訪れた伊津子は、日々の生活に追われる50代の主婦。家族のために人生をささげてきてけれど、趣味さえなく過ごしてきた私の人生を思い「一体、私って…」と寂しくなる。そんな時、偶然、「王子」と遭遇。娘と王子の会話を通じて、娘の言葉に感動。そして、娘からの言葉に「自分は自分らしく生きてきたこと」に気づき、心が豊かになるのです。

3章 嘘は遥か:絵画コレクター・渡瀬昇(わたせ のぼる)
絵の蒐集にのめり込みすぎた結果、妻に離婚された渡瀬。そんな彼は訪れた画廊で「王子」と遭遇。画商とアンデルセンの話、そして、気になる絵画の商談をする中で、「運命」「人生」について考えます。

4章 夢は静か:作家・日下部伸次郎(くさかべ しんじろう)
銀座のカフェで文学賞の選考結果を待つ日下部。SNSの「王子騒動」を知り、同じく作家のアンデルセンに思いを馳せ、自分の創作活動について考えていたところ、童話から飛び出したような「王子」に出会う。王子に話しかけてフィクションとリアルを行き来するような感覚に…

5章 君は確か:高級クラブのママ・理世(りよ)
1章の友治の恋人である理世は、高級クラブのママ。前回、気まずい別れをした理世は、今日の電話での誘いに「きっと別れ話を切り出されるに違いない」と気持ちがざわつく。ひと回りも歳が離れる友治はいずれ去っていくだろうと、心にプロテクターをかけて付き合っていた理世。そんなところに、「彼とお別れしました」と告げるかつての後輩ががやってきて…

銀座、特に歩行者天国となる週末の銀座は、ちょっと煌びやかで非現実感があるファンタジーな世界。
そんな中で繰り広げられる、小さな偶然の出会いがステキ。
各章は独立したストーリー。しかし、5人の登場人物が意外な形でつながります。

そして迎えるエピローグ。フィクションとリアル、5話の虚構と現実をまるっとまとめて、伏線回収してくれます。

世界は物語(フィクション)でできている」最後までわからないものなのです、物語というものは!

人魚が逃げた:感想

本作には、「虚構と現実」に関する素敵な言葉が溢れています。そんな言葉をいくつかピックアップ。
ピックアップした言葉を読み返してみると、本作のテーマ「世界は物語(フィクション)でできている」という言葉がより深みを持って感じられます。

嘘とニセモノ

噓と、ニセモノは違うのです。
私たちは、噓に助けられながら、遥かなる虚構を生きている。 噓の本当というものがあるんです。

人生には、嘘という虚構も必要です。「他人に対する優しい嘘」、そして、「自分に対する嘘」。共に必要です。

私たちの夢もファンタジー

言葉なしで相手の気持ちを理解するなんて、とても難しいことです。
でもだからこそ、目や仕草が表しているその人の想いを、見逃してはいけないのかもしれない。

他人の人生なんて全部虚構のような気がする。全員が全員、自分ひとりにしか見えない世界を生きているのだ。

あなたが書いた一行で人生が変わる人がいるかもしれないんでしょう?

自分に対する虚構の代表は「夢」ではないでしょうか。自己実現の「夢」も、最初は、想像力が作り出す虚構=ファンタジーです。しかし、自己実現の物語を細部まで、言葉で描ける人が、コツコツと階段を上るように、虚構を現実にし、「大きな夢」をも「現実」に変えていきます。

普通の人は作家のように、誰かのためにファンタジーを書く必要はありません。しかし、「自分の思い描いたフィクションで、自分の人生を変える」姿勢はとても大事ですよね。私ももっと、緻密にファンタジーを描ける作家である必要があるんだなぁ…と、本書評を書きながら、思い至ったのでした。

芝居はね、観客席からが一番よく見えるものだよ。舞台に立っている我々演者には、まったく見えないことばかりだ。

自分の人生を演じる役者であることは大事だけど、一方で、人生の主役である「自分」には、芝居の役者と同じで「自分の人生がうまく見えない」。点検しながら、進みたいですね。

その他、人生をよりよくしてくれる素敵な言葉たち

人が見ていないときにやってしまうこと、それが本当にやりたいこと。(略)そこにいない家族を思ってしまうことも、やっぱり、私のやりたいことなのだ。私はちゃんといた。菜緒がそう教えてくれた。

『‪✕‬』って書いてバツイチっていうけどね、バツじゃなくて掛けるって読めばいいんだよ。失敗のペケじゃない、経験の掛け算さ。これからもっともっと、味わい深い人生になる。

いい部屋に住みなさい。人っていうのはね、毎日見ているものがそのまま心と体に出るのよ。気持ちいいものに囲まれて、美しいものを見なさい。

最後に

今回は、本屋大賞2025年のノミネート作品に選ばれた青山美智子さんの小説『人魚が逃げた』のあらすじ・感想を紹介しました。

ラストまで知ったうえで、再読したくなる一冊。本当に、素敵な言葉が溢れる本だと、二度読みして改めて思いました。是非、この、ほっこりやわらかな感動作を手に取ってみてください。

作品が気に入ったら、以下の青山作品も合わせて読んでみて下さい。優しい気持ちになれますので。

青山美智子:本屋大賞ノミネート作

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