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【書評/あらすじ】アルプス席の母(早見和真) 甲子園を目指す母と子、それぞれに闘い。母子の絆と成長が胸を打つ感動作。スポーツする子の親に刺さる!

【書評/あらすじ】アルプス席の母(早見和真) 甲子園を目指す母と子、それぞれに闘い。母子の絆と成長が胸を打つ感動作。スポーツする子の親に刺さる!
アルプス席の母」要約・感想
  • 甲子園を目指す母と子、それぞれに闘い。母子の絆と成長が胸を打つ感動作
    スポーツする子の親になら「わかる~」の連続。心に刺さる
    情景描写・心情描写が巧みで「グラウンドの息子」と「アルプス席の母」が目に浮かぶ!
  • スポーツ小説ながら、その親に焦点を当てている点が新鮮。球児を支える親たちの知られざる戦いが超リアル
  • スポーツに限らず、高みを目指そうとするなら、子自身の能力と努力はもちろん、「親の愛・支え」が必須。いや、どんな子でも「親の愛」は深い。親に感謝!

★★★★☆ Audible聴き放題対象本



目次

『アルプス席の母』ってどんな本?

著:早見和真
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高校野球を題材にした小説は多くありますが、ここまで「高校球児の母親」に焦点を当てた作品は珍しいのではないでしょうか。

今回紹介するのは、2025年 本屋大賞にノミネートされた早見和真さんの小説『アルプス席の母』。甲子園を目指す高校球児の母・菜々子が、息子の野球進学のために引っ越した新天地・大阪で、苦悩しながらも前に向かって進む、母子の絆と成長の物語です。

本作の魅力は、単なるスポーツ小説ではない、球児を支える親の知られざる戦い。高校球児の練習の試練はさることながら、親にも、熾烈な競争や保護者同士の軋轢、理不尽なルール、お金の問題、子どもに会えない寂しさ など、様々な問題が待ち受けていることを描き出します。それら試練を、「親子の絆」「なんでも話せる友人の支え」で乗り切っていく母の姿は、読者の心を揺さぶります。

読んだ感想は、奮闘記でありながら、とても爽快。親や子それぞれの「人間としての成長」が胸打つ青春小説です。

情景描写・心情描写が巧みで、試合で真剣に戦う『グラウンドの子』、そして、その試合の行方を心が締め付けられる想い見守り応援するの『アルプス席の母』の情景が目に浮かんできます。きっと、親子のそれぞれの熱い想いに読者は心を打たれるはずです。

甲子園球児の親はもちろん、スポーツで高みを目指す子を持つ親、さらには、音楽・芸術など、自らの才能と努力で高みを目指そうとするすべての親に読んでほしい小説です。もちろん、子どもを持たない人でも、感動できます。

2025年 本屋大賞にノミネートにも納得の傑作です。

アルプス席の母:あらすじ

アルプス席の母:あらすじ・感想・書評

まったく新しい高校野球小説が、開幕する。

秋山菜々子は、神奈川で看護師をしながら一人息子の航太郎を育てていた。湘南のシニアリーグで活躍する航太郎には関東一円からスカウトが来ていたが、選び取ったのはとある大阪の新興校だった。声のかからなかった甲子園常連校を倒すことを夢見て。息子とともに、菜々子もまた大阪に拠点を移すことを決意する。

不慣れな土地での暮らし、厳しい父母会の掟、激痩せしていく息子。果たしてふたりの夢は叶うのか!?

補欠球児の青春を描いたデビュー作『ひゃくはち』から15年。主人公は選手から母親に変わっても、描かれるのは生きることの屈託と大いなる人生賛歌!

かつて誰も読んだことのない著者渾身の高校野球小説が開幕する。

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主人公の菜々子はシングルマザー。一人息子の航太郎は、将来の野球での活躍を夢みる球児。

しかし、スポーツをするには何かとお金が…。グローブ・ボールなどの道具、少年野球のチームへの所属、そして、甲子園を目指すとなれば、強豪校への入学、遠征費など、様々な出費がつきまといます。もともと親にあれこれ ねだったりしない親思いの航太郎は、負担少なく野球が続けられる、大阪の新興校に進学する道を選びます。そして、菜々子も一緒に大阪に引っ越すことを決めます。

全くの新天地・大阪に引越し、息子の夢のために全寮制の強豪校へ送り出した菜々子。しかし、そこには、華やかな甲子園の舞台の裏にある難題が待ち受けていました。

不慣れな土地での一人暮らし。
愛する息子と会えない寂しさ。声さえ自由に聞けない寂しさ。
野球部父兄会の親同士の軋轢・嫉妬。理不尽なルール
支援金の要請。
部活の厳しさに、激痩せしていく息子
息子のケガ・手術
親の期待と現実のギャップ…..

「母としての息子を支えたい!」という純粋な愛情だけでは、到底、乗り越えられない試練の数々が押し寄せてきます。それでも、菜々子は前を向き、息子とともに成長ししていくのです。

高校野球を「母」から描く作品はとても新鮮。普通のスポーツ小説とは異なる「親子の愛」があります。そして、支え合いながら前に進んでいく「親と子、それぞれの成長」があります。

菜々子と航太郎、それぞれが、ひとりの人間として、実にいい。菜々子と航太郎の会話はとてもハートフルで、心にググっと来ます。ラストも素敵です。いい小説。文句なしの傑作小説です。

『アルプス席の母』:感想・心に残ったセリフ

早見和真さんの小説は『店長がバカすぎて』に続き2冊目。ちなみにこの作品も、2020年 本屋大賞にエントリーされました。

店長がバカすぎて』は、巷にたくさんいる「働く人」の気持ちを代弁した作品でしたが、本作も高校球児の母の気持ちをとてもリアルに描き出しています。書評家・吉田伸子さんが「この物語に救われる球児の母親がどれだけいることか。」とコメントを寄せていますが、まさにその通りな小説です。

はじめて早見和真さんの小説を読む方には、まずは『アルプス席の母』から読むことをすすめたい。以下、心に響いたセリフを紹介します。

どのセリフも、抜き出してみると実に普通のセリフ。何の飾りも、巧妙さもない。でも、これらセリフを、ストーリーの中で読むと、実に「じ~ん」と来るんです。この良さは、小説を読まないとわからない!

ステキな親子関係に、心打たれる、飾らないセリフ

「ありがとな、お母さん」

「ちょっとやめてよ。何を──」

「俺に野球をやらせてくれて。ずっと大変な思いをさせて。それを伝えようと思ってた。本当にありがとう」

わかる~と頷く親、多数!なセリフたち

息子ってよくわからないよね。グラウンドでは明るいし、ハキハキしゃべってるくせに、家に帰ってきたらふて腐れたみたいにいつも黙ってるし。そのくせ、インタビューでは一丁前に『寮に入って親のありがたみがわかりました』とか答えてるんだよ?

「結局かわいいんだよね。息子」

「まぁ、かわいいわな。ムカつくけど、かわいい。でもなぁ、母性愛ばっかりで自我がないみたいな女、私ホンマ嫌いやってんけどなぁ」

大事な試合のアルプス席で。息子が大事な試合の局面で、失敗しないかと、見ていられなくなる菜々子に、同じく高校球児の母である友が発した言葉。これも、そのまま読むと普通過ぎるセリフですが、ストーリーで読むと、とても良いセリフです。

「ちゃんと見ててあげようや」

「でも……」

「じゃなきゃ、あんたが後悔するで。私たちの子どもが甲子園に行くところや。人生でもう二度とない。ちゃんと見届けてあげようや」

前を向き頑張る、息子

エースとして活躍を期待されていた航太郎。しかし、投手の命とも言える肘を痛め、手術をやむなくされる。復帰後、やむなく野手に転向。しかし、大会出場のメンバーに入れるかどうか…といった状況。

こんな状況では、腐ってしまう高校球児も多いと思いますが、航太郎はちゃんと前を向く。「伝令」役として、ムードメーカーとなりチームの皆を盛り立てます。自分ができる最善の活躍の場を見つけていくのです。

そんな航太郎の「人間としての成長」は、読者の心を打ちます。「青春っていいなぁ」「若いっていいなぁ」と思わせてくれます。高校生にしては「人間としてデキすぎ」な感じもしますが、でも、いいんです。母ならずとも、応援したくなります。

以下、航太郎のセリフから、いくつかを抜粋紹介です。もともと関東人なのに、すっかり関西弁なのが愛らしい。息子に「おかん」と呼ばれて、う~むな気持ちな母も愛おしくなります。

俺、高校野球の監督になりたいんや。自分みたいに野球でいい思いも、しんどい思いもした人間が指導者になるのはええと思うんよな。エリートのまま監督になった人間は最悪や。

監督のことは嫌いやし、野球観も古いし、人間的には何一つ認めてないけど、このメンバーを集めてくれたことだけはホンマに感謝しとるわ。

僕自身が、僕を無視しない時間が過ごせたらいいなって思っています。ちゃんと自分に期待したいっていうか。高校時代の僕は、勝手に自分はこんなもんだって決めつけて、勝手に諦めてしまっていたので。

最後に

今回は早見和真さんの小説『アルプス席の母』のあらすじ・感想・心に残ったセリフを紹介しました。

心打ついい小説です。特に、スポーツをする子を持つ親、高校野球が好きな方、そして、かつて球児だった方は、感情移入して読めるはず。是非、本書を手に取り読んでみてください。

著:早見和真
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本屋大賞にエントリーされる作品は、本当に感動できる作品が多いです。いい作品を読みたかったら、まず過去の大賞受賞作・エントリー作品をチェックしてみて下さい。

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