- 日常×パン屋×ミステリーの温かい世界観
パン屋を舞台に、大学生バイト・小春が日常の小さな“違和感”を解き明かしていく連作ミステリー。パンの香りや商店街の風景が五感に届く、心地よい読み味が魅力。 - 謎と人間ドラマのバランスが絶妙
大事件は起こらない。小さな事件や、友人・お客さんのちょっと奇妙な行動・不可解な発言から人間ドラマに迫る。 - 読後の余韻が“ほんのり甘い”作品
難しすぎず、軽すぎもしない“ちょうど良いミステリー”。ラストでは「ああ、そう繋がるのか」と優しい納得感が得られる構成。
★★★☆☆ Audible聴き放題対象本
『謎の香りはパン屋から』ってどんな本?

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パン屋から漂ってくる、あの甘くて温かな香り。ふっと心が軽くなる瞬間、誰しも経験があるのではないでしょうか。
土屋うさぎさんの『謎の香りはパン屋から』は、そんな“日常の幸福の香り”を入り口に、パン屋という小さな世界で起こる“ちいさな謎”をそっとひもといていく連作ミステリーです。
新人作家の発掘の公募作品から選ばれる 第23回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した本作は、
ふっくら焼けたパンのように軽やかで親しみやすいのに、読み進めるほどに
人の心の奥にある秘密や葛藤が、じんわりと香り立つように明らかになっていきます。
ラストではきちんと真相が回収され、柔らかい余韻を残してくれる満足度の高い一冊です。
大学生アルバイトの小春が、焼きたてのパンの香りに包まれながら、
お客さんや仲間たちが抱える“ちょっとだけ切ない謎”を解いていく──
それは本格推理とは少し違う、じんわり美味しい読書体験。
私自身も大学時代にパン屋でアルバイトをしていた経験があり、
ページをめくるたびに「パン屋バイトあるある」が蘇り、懐かしさと楽しさで一気に読了しました。
『謎の香りはパン屋から』あらすじ
舞台は大阪府豊中市にあるパン屋〈ノスティモ〉。
漫画家志望の大学一年生・市倉小春はここでバイトをしながら、“ほんの少し気になる謎”と向き合います。
1️⃣「焦げたクロワッサン」
ライブビューイング当日、突然のドタキャンをした親友・由貴子。
小春は彼女の行動パターンを思い返すうちに、胸の奥に隠された“本当の理由”に気づいていく。
友情の微妙な揺らぎを丁寧に描いた物語。
2️⃣「夢見るフランスパン」
何でも器用にこなす先輩が、、フランスパンの仕上げである「クープ(切れ込み)」だけがどうしても苦手。
その不自然さに小春が気づき、先輩の想いと背景が少しずつ浮かび上がる。
先輩の心の闇に触れる物語。
3️⃣「恋するシナモンロール」
常連客の“ヒョウ柄のおばちゃん”との騒動をきっかけにする青春ドラマ。
野球部の道長君と幼馴染・美桜の関係が、シナモンロールのように甘く変化する。
4️⃣「さよならチョココロネ」
チョココロネ好きの小学一年生・凛ちゃん。
人気低迷で販売中止が決まった矢先、彼女と母親が事件に巻き込まれる。
パン屋の事情と子どもの純粋さが胸にしみる物語。
どのエピソードも、大事件ではなく“日常に潜む違和感”をきっかけとして、人の内側にある思いや葛藤がそっと開いていきます。
『謎の香りはパン屋から』感想
この作品の魅力は、なんといっても
パン屋という温かい世界観 × 心のドラマ × 小さな謎
この3つが絶妙なバランスで溶け合っているところです。
✅ 五感で読む物語
ページをめくるたびに、パンの香りや、店内の賑わい、そして、人間模様がふわっとと感じられます。
✅ 人間ドラマが優しく響く
謎を解くことが目的というより、その裏にある“人の気持ち”が物語の中心。
キャラクター同士の掛け合いも自然で温度感があり、軽やかに読めるのに、心に残るエピソードばかりです。
✅ ラストの余韻が心地いい
「ああ、あれがここにつながるのか」という発見がじんわりと心に灯る。
ミステリー好きにも、ヒューマンドラマ好きにも刺さる結末です。
難しすぎず、軽すぎもしない。このバランス感覚が魅力の作品です。
ちょっと寄り道:なぜ焼きたてパンの香りは魅力的なの?
パンの香りが人の心をつかむのには、ちゃんと理由があります。
1️⃣化学反応が作る“おいしい香り”
- メイラード反応:糖とアミノ酸が反応し、香ばしい香りと焼き色のもとに。
- カラメル化:加熱された糖が甘く香ばしい香気を生み出す。
- 発酵の豊かなフレーバー:イーストの働きで生まれた成分が、複雑で深みのある香りを作る。
イースト発酵で生成されるアルコールや有機酸が、焼成時に揮発して複雑な香りを加える。
2️⃣ 香りは記憶と結びつきやすい
- プルースト効果
嗅覚は脳の感情・記憶を司る部分へダイレクトに届く→ 懐かしさや安心感を呼び起こしやすい!
だから、パンの香りを嗅ぐと吸い寄せられるようにお店へ入ってしまう── 本能には逆らえません!
最後に:読み終えたら、きっとパン屋に寄りたくなる
『謎の香りはパン屋から』は、パン屋 × 日常 × 小さな謎 という組み合わせが生み出す、あたたかくて、ほの甘いライトミステリー。
ミステリー初心者でもすらすら読めて、読後には優しい気持ちがふわっと広がります。
パンが好きな人。日常の謎が好きな人。温かい物語に触れたい人。
どんな読者にもすっと寄り添ってくれる一冊です。読後にはきっと、近所のパン屋に足を運びたくなるはず!
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「このミステリーがすごい!」について
紛らわしいですが、「このミス」には2種類あります。
1️⃣『このミステリーがすごい!』
毎年発表の「ミステリー小説ランキング本」。既に刊行済みの国内外の作品を対象に、評論家や作家の投票で決定。
2️⃣ 『このミステリーがすごい!大賞』
「公募新人賞」。未発表の原稿を募集し、受賞作は書籍化される。未来のベストセラー作家を発掘する場。
※今回紹介の本は2️⃣ の大賞作
1️⃣のこのミス歴代ランキングは以下👇で紹介しています。次に読むミステリー探しに









