- 読書は「人生」を広く深くする
読書は単なる知識の吸収ではなく、思索し、感情を動かし、自分の内面を深めていく人格形成の営みである。その読書体験で、人生が広く・深くなる。 - AI時代こそ教養が武器になる
情報検索が容易な時代に求められるのは、断片情報ではなく、深く考える力と多角的な視点。リベラルアーツが思考の土台となる。 - 本を読む人と読まない人では、見えている世界の“奥行き”がまるで違う
読書をするかどうかで、「意見の深さ」はもちろん、「人としての深み」も変わる。「浅い人」と「深みのある人」の差は、突き詰めれば“教養の差”
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Kindle Unlimited読み放題対象本
『読書する人だけがたどり着ける場所』ってどんな本?
「本を読まなくなった」のではない。もはや私たちは、“本が読めない”状態に陥っているのではないか──
そんなショッキングな問いかけから始まるのが、齋藤孝さんの『読書する人だけがたどり着ける場所』です。
スマホでニュースを読み、SNSを無意識にスクロールする毎日。
「本がなくてもネットで十分」と感じている人も多いでしょう。
しかしそれは、“読む”というより、ただの“流し見”。
情報を次々と消費するばかりで、記憶には残らず、心にも届きません。
じっくり考えることもなく、向き合うこともないため、理解は浅いままです。
さらには、考えるために必要な集中力もますます奪われていく──そんな現実を示すデータもあります。
読書とは「情報の消費」ではなく、「人生の体験」です。
著者の思考に触れ、物語の主人公とともに歩むプロセスは、人生観や人間観を深め、想像力を育て、人格を養います。
読書は、自分自身と向き合い、深めるための、かけがえのない「対話」であり「旅」。
読むことで、私たちの目に映る世界の“深さ”が変わる。そして、その変化は人生そのものをも変えていくのです。
人生を深く味わいながら生きていきたい。
そう願うあなたにとって、この本はきっと心に響く1冊になるはず。
「本を読まない時代」にこそ、読んでおきたい一冊です。
読書は「人生」を深め広げる──ネット時代にこそ、本を手に取る意味

「ネットで十分」と思っている人が見落としていること
ネットの情報と読書の決定的な違いは、「向き合い方」にあります。
本を読むとき、私たちは“読者”ですが、ネットでは“情報の消費者”です。
「ネットで事足りる」と思っている人ほど、実は有益な情報にあまり触れていない──それが現実です。
ネットでは、多くの人が「流し見」で、断片情報に触れているだけ。一時的に「なるほど」と思っても、すぐに忘れます。深く考えることもないので、大量の情報に触れていても、知識として積み重なりません。
SNSもネットも確かに便利。素晴らしいツールです。否定する必要はありません。
ただ、そこに偏りすぎるのは、「ホモ・サピエンス=知性ある人間」として、あまりにももったいない。
「インターネットの海」と言われますが、ほとんどの人は浅瀬で貝殻を拾っているようなもの。
本当の知の世界は、深く潜った先にあります。
情報過多の時代、失われる「集中力」「深く考える力」
現代では一つのコンテンツに向き合う時間がどんどん短くなっています。マイクロソフトの調査によれば、現代人の集中力は、2000年の平均12秒から8秒へと減少。これは金魚(平均9秒)をも下回る数値です。
SNSや動画、通知に囲まれた日常の中で、一つのことに深く集中する時間はますます短くなっている。
その結果、思考が浅くなり、自分と向き合う時間も減っていく──。
情報過多の社会は、知らず知らずのうちに、私たちから「深く考える力」を奪っているのかもしれません。
読書は「情報消費」ではなく「人生体験」
そんな時代だからこそ、読書の価値が際立ちます。
読書とは、ただ情報を得る行為ではなく、「著者との対話」であり、「物語の追体験」です。
登場人物に感情移入し、知らない世界を生きるような体験は、想像力を養い、人間としての幅を広げてくれます。
私たちが実際に経験できることには限りがあります。
しかし本を読めば、遠くの国の文化、異なる人生観、過去の偉人たちの知恵に触れられる。
それはまさに“人生を広げる装置”です。読書によって、「より深く生きる」ことが可能になるのです。
齋藤孝が語る「読書でたどり着ける場所」
齋藤さんは、読書を通して得られる最大の価値は、「人生の舞台が広がること」だと語ります。
遠い国の歴史に触れたとき、自分の世界が一気に広がったように感じたことはありませんか?
その体験こそが、齋藤さんの言う“たどり着ける場所”の一歩であり、読書で開かれる人生の可能性です。
読書は、知識を得るためだけのものではありません。
自分が育ってきた環境や偏見から一歩引き離れ、他者の視点を生きることができる。
それが、本書の大きなメッセージのひとつです。
AI時代に必要なのは、リベラルアーツの「知の土台」
「ググればわかる時代」にあっても、幅広い教養(リベラルアーツ)はますます重要になっています。
なぜなら、複雑化する社会課題や技術の進化には、一つの専門知識だけでは太刀打ちできないからです。
多角的に考え、柔軟に捉える力――それを支えるのが、リベラルアーツという知の土台です。
AIがどれだけ発展しても、「多角的、かつ、深く考える人間」の価値が失われることはありません。
人として「浅い人」と「深みのある人」の違いも、突き詰めれば“教養の差”。深みを作るのにも読書が必要です。
知識はもちろん、文学や哲学に触れることで深まる「人間理解力(複雑な感情を読み取る力)」「表現力(言いたいことを伝えられる力)」は、思考だけでなくコミュニケーションに効きます。
「AIに負けない人間になる」のではなく、「自分の人生を、どこまで深く生きられるか」――。
読書を通じて、その問いと向き合うことが、本書の真髄なのです。
「読書力を深める」ための実践ガイド

齋藤さんはこう語ります――「読書とは、思索であり、反芻である」と。
ただ文字を追い、情報をなぞるだけでは読書とは言えません。
本の世界に没入し、読み取ったものを咀嚼し、自分の中で再構築していく。
そこにこそ、読書の本当の快楽があります。
ここからは、本書で紹介される、読書術を「読書力を深める実践ガイド」としてまとめてみます。
大事なのは、単なる文字情報として終わらせるのではなく、自分という人格を育ていく読書です。
情報として読む/人格として味わう
読書には、「情報を得るための読書」と「人格を養うための読書」があります。
たとえば、「重力波」を理解するために読む科学新書は、情報収集型の読書。
一方、自分の過去の経験と重ねながら小説を読むとき、それは自己を深く耕す読書となります。
たとえば齋藤さんは、夏目漱石の『こころ』を読んで、「人間の複雑な感情のひだに触れた」と語ります。
小説を読むことで、人間の奥行きにふれることができる――このような体験は、単なる知識取得を超え、「人格形成」にまで影響を及ぼします。
実際、物語に感情移入しているときの脳の働きは、実際に体験しているときと近いとも言われています。
現代人に欠けがちな“内面の奥行き”を与えてくれるのが、読書の真の効力なのです。
なお2つの読書は、完全に分けられるものではありません。
科学的発見や歴史の叙述の背後にも、必ずその人の「まなざし=人格」がある。
人格があって、事実や歴史の捉え方がある。そう考えることで、「情報」にも深みが感じられるはずです。
読書は「映像化」する力を育てる
本を読むとき、脳はただ文字を追っているわけではありません。
風景を想像し、登場人物の声を聞き、感情をともに味わっています。この想像力こそ、人間らしい知性の根幹です。
アニメや映像作品も素晴らしい文化です。しかし、相手からイメージを受け取るのと、自分の頭の中で世界を描き出す行為とでは、脳の使い方がまるで違います。
子どもに本の読み聞かせが大事なのは、この「映像化」の力を伸ばすためです。
抑揚を込めて語りかけることで、子どもたちは音と言葉の間にあるイメージを自分の中で育てていきます。
「著者の目」で世界を見てみる
読書とは、異なる視点を手に入れることでもあります。
著者の目線に立ち、そのまなざしで世界を見ようとする。そこに、多角的な思考が育ちます。
たとえば外国人による日本文化論(ルース・ベネディクト『菊と刀』やオイゲン・ヘリゲル『弓と禅』)は、私たちの文化を客観的に捉える助けになります。また、井筒俊彦の『イスラーム文化』のように、異文化に学ぶことで自文化を再発見する視点も得られます。
「著者月間」を設けてみる
齋藤さんは、一人の著者の作品を集中的に読む「著者月間」を提案します。
たとえば、谷崎潤一郎の世界に浸っていると、不思議な陶酔感を覚える。
それは、著者の背景にある膨大な知識や精神文化の蓄積に触れているからです。
ある分野を深く掘り下げることで知識が「点」として蓄積され、それが別の「点」とつながることで「面」となり、やがて世界観を形づくっていく。これが、あなたの人生の深さ・広さにもつながっていきます。
感情を動かす読書が、思考を深める
また、読書によって思考を深めるには、「感情をのせて読む」ことが大切です。
心を動かされた部分には、自分との何らかのつながりがあるはずです。
それを無視せず、メモや線を引いて残すことで、自分の中に読書体験が定着していきます。
読書感想文にその人の思考の深さがにじみ出ます。
単なる要約+最後の段落だけ「面白かった」や「反省」で終わる感想文には、深みはありません。
私には読書の楽しみを教えてくれた師匠がいますが、その方と本の話をすると、話の端々に溢れる知性に毎度尊敬を感じます。
「対話」と「アウトプット」が、知性を育てる
読書の価値は、誰かに語り、共有し、言葉にしてはじめて開花します。
本について語ること、感想を交わすこと、レビューを書くこと――
それが、思考を動かし、定着させるための「対話」となります。
本を読んでいるとき、人は孤独ではありません。
物語の登場人物と、過去の思想家と、著者と……心の中で対話しているのです。
私が「孤独感」をほとんど感じることがない理由も、ここにあるかもしれません。
この「内なる対話」こそが、読書する人にだけがたどり着ける世界。
そしてその対話を通して、人は静かに、自分自身の価値観や生き方を変えていけます。
齋藤さんは、カントやニーチェといった哲学者たちの本を読む中で、自らの「考える筋肉」が鍛えられたと語ります。
読み継がれる哲学書など「骨太の読書体験」は、人生の軸をつくり、「生きる力」となります。
最後に──読書は、あなたの人生の旅。あなただけの場所に行ける
今回は、齋藤孝さんの『読書する人だけがたどり着ける場所』からの学びを紹介しました。
読書は、自分という人格を育て、文化や他者との関係性を深めていく営み。
という言葉は、私の心に響きました。
自分の足でページをめくり、自分の頭で考え、自分の感情で味わう。
「自分だからこそたどり着ける場所」に到達するべく、読書を積み重ねたいと思います。
読書が苦手な方は、まずは、本書で「本を読むことが、どれほど豊かな人生につながるのか」、確認してみて下さい。
そして、読書好きの方は、斎藤先生のディープな読書の世界を味わってみて下さい。
本書には、深い読書を助ける良書が多数紹介されています。その量、そして、その読書の深さは圧巻です。