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【書評/あらすじ】光のとこにいてね(一穂ミチ) 感動!出会いと別れ、そして再会。心を揺さぶる四半世紀の物語。9/3文庫本発売で安く読めるように

【書評/あらすじ】光のとこにいてね(一穂ミチ) 感動!出会いと別れ、そして再会。心を揺さぶる四半世紀の物語。9/3文庫本発売で安く読めるように
光のとこにいてね」あらすじ・感想
  • ふたりの女の子の四半世紀に及ぶ出会いと別れを描いた感動小説
  • タイトルの『光のとこにいてね』は、ストーリー中でも何度か登場するとても重要なセリフ
  • 出会いと別れ、そして再会。時と共に立場は変わっても、2人の間にある「心のつながり」。ただ 仲良しくしていることが、友達ではない。生きていくってこういうことかもしれないという感慨深さがある作品

★★★★★ Audible聴き放題対象本

目次

小説『光のとこにいてね』ってどんな本?

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ほんの数回会った彼女が、人生の全部だった――

人気小説家・一穂ミチさんの『光のとこにいてね』は、7歳・15歳・29歳という3つの時代を通して、ふたりの少女が出会い、離れ、再び巡り合う——その奇跡と痛みを描いた、切なくも美しい感動作です。

第168回直木賞候補作&2023年本屋大賞第3位

刊行以来、続々重版。大反響、感動、感涙の声、続々!令和で最も美しい、愛と運命の物語を是非あなたも!

光のとこにいてね:あらすじ

裕福な家庭に育ち、塾通いで予定が埋まる小瀧結珠(こたき・ゆず)。
オーガニック志向の母のもと、自由を制限されて育つ校倉果遠(あぜくら・かのん)。

何もかも違うけど、通じ合う幼い2人

ふたりが出会ったのは、古びた団地の片隅。着るものも、食べるものも、暮らし方もまるで違う7歳の少女たちが、なぜか強く惹かれ合います。それは、ふたりは、意味がわかるルールもわからないルールも、とにかくママが決めたことを守らなきゃいけない境遇がよく似ていたから。そして、ママの「好きなもの」じゃなくて、「嫌いなもの」にばかり詳しいくて、それが、毎日の暮らしに大きな影響を与えていたから。

結珠ちゃんがいなくなったら、わたしはきっと「めつぼう」してしまう。

果遠のこの言葉が、物語の核となる「光のとこにいてね」というセリフへとつながります。

それは、ただ一緒にいたいという願い。日の光が差す場所で、少しでも長く時間を共有したいという、幼いながらも切実な祈り。

しかし、運命は残酷です。それを最後に、幼いふたりは再開できずじまいになってしまうのです。

3度の再会|時を超えて変わるもの、変わらないもの

7歳での出会いのあと、ふたりは多感な盛りの15歳、そして、大人になった29歳で再び巡り合います。
進学、就職、結婚——人生の節目を経て、境遇も立場も大きく変わったふたり。
それでも、再会のたびに「光のとこにいてね」という言葉がふたりをつなぎ直します。

この作品が描くのは、「ずっと一緒にいること」が友情ではないということ。
むしろ、離れていても、心の奥で互いを思い続ける関係こそが、人生に深く根を張る絆なのです。

光のとこにいてね:感想

2人をつなげたもの:母という呪縛

ふたりの共通点は、母親との関係。

結珠は“完璧”を求める母に抑圧され、毎日の塾通い。常に母の目が光り自由がありません。
一方、果遠は“オーガニックな生活・食事”を強要する母に、おやつやもちろん、給食もみんなと一緒できない。普通の子どもが楽しむようなことは一切禁止されます。

違うようでいて、どこか似ている——つまり、自由がない。
ふたりはそんな感覚=「母の抑圧」を本能的に感じ取り、結びつきます。

特に、結珠は母との関係に大きな問題を抱え、大人になっても苦しみます。そして、同じ母親の元、一緒に育った弟・直の悲しみをも受け止め、母に抵抗し、さらに、打ちのめされます。

「贅沢な話でしょ。かわいがらなかったけど、ちゃんと世話はしたじゃない。ごはんも洗濯も掃除もひととおりやってあげたのに、まだ不満?」(略)

「結珠はいつもお利口で、聞き分けがよくて、大人の顔色を窺いながら何も言わないの。いかにも、私耐えてますって顔で黙ってるだけ。そういうところがいやだったのよね」(略)

「どうでもいい男※と結婚して、結珠を産んだ時は空しかった。この子はあの子じゃない、としか思えなかった。これから何不自由なくぬくぬく大きくなっていくんだって想像したら憎たらしかった。それでも私なりに我慢はしてたんだけどね」

結珠のお父さんのこと。職業は医師。母親は後妻

裕福な家庭に育っても、幸せとは限らない
この作品は、そんな現実を静かに突きつけてきます。
愛されること、自由であること、それらがどれほど尊いかを、読者は痛感させられます。

格好つけても仕方ない、真の自分をさらけ出せる関係

長い時を経て再会したとき、人はつい自分をよく見せようとするもの。でも、結珠と果遠は違います。

結珠も果遠が一緒にいた時間は、人生の中で長い時間ではありません。
しかし、7歳・15歳・29歳で互いに対する思いを変化させながらも、強烈に惹かれ合います。
時間を長く共有することが「友だち」ではないことを教えられます。

そのつながりは、同性愛的なニュアンスも感じられます。
けれど、それはラベルで語れるような関係ではありません。
友達以上、恋人未満——そんな言葉すら追いつかない、魂の奥で響き合うような絆。
自分をさらけ出し、つながり合う。

そんな2人の、美しくもせちない関係に、心震えました。

最後に―― 女性同士の半生を描いた珠玉の一冊

大事件が起こるわけではない。
でも、人生の中で誰かと出会い、別れ、再びつながる——
その奇跡を描いた物語は、静かに、でも確かに心を揺さぶります。

幸せになりたいと願いながら、悩み・苦しみ、それでも、自分に大切なものを手に入れよう・守ろうと生きる

人生って、こういうことかもしれない
四半世紀のふたりの女性の物語を読み終えた後、そんな感慨がじんわりと心に残りました。

とてもいい作品です。文庫本登場で安く読めるようになりました。是非、手に取ってみてほしいです。

女友だちとの人生を描く、感動作:2作品

『光のとこにいてね』が好きな方には、以下の作品も進めたい。
どちらも、「人生はこんなものしれない。でも、それでも人生は素晴らしいのだ」と思わせる力がある作品です。
人生につまづいた時、自分の人生を俯瞰したい時、これらの作品は、何か大事なことを教えてくれるはずです。

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