- 「マジで辞めてやる」と思ってしまう出来事が軽快に描かれるお仕事小説
- 2020年本屋大賞ノミネート作。ビジネスマンなら絶対に経験あり!共感必至
- 「好きなことを仕事に」の難しさを私なりに考察
★★★★☆
Audible聴き放題対象本
『店長がバカすぎて』ってどんな本?:あらすじ
谷原京子、二十八歳。吉祥寺の書店の契約社員。超多忙なのに薄給。お客様からのクレームは日常茶飯事。店長は山本猛という名前ばかり勇ましい「非」敏腕。人を苛立たせる天才だ。ああ、店長がバカすぎる! 毎日「マジで辞めてやる」と思いながら、しかし仕事を、本を、小説を愛する京子は――。
全国の読者、書店員から感動、共感、応援をいただいた、二〇二〇年本屋大賞ノミネート作にして大ヒット作。
Amazon本紹介
『店長がバカすぎて』、2020年本屋大賞第9位の作品です。舞台は書店。文芸好きの契約社員・京子の目線から、書店内で中で起こる「ふざけんな!」な出来事を、軽やかに面白く描いています。ストーリーは全6章からなり、店長を含む6人のバカのお話を通じて一つの作品となっています。
尊敬する先輩、かわいい後輩。愛すべき本たち。しかし、どうしても許せないバカいる。
長い朝礼、かみ合わない会話、書店員にも拘わらず本の知識不足、空気を読まない言動…
とにかく、店長の一挙手一投足に腹が立って仕方がない。
おまけに、理不尽な客。夜遅くまで働いても契約社員で薄給。給料日前にはお金が尽きる…
もうふざけんな!
こんな京子に自分を重ねてしまう人も多いのではないでしょうか。
本屋の書店員さんが選ぶ本屋大賞を意識して、現場で働く書店員さんからの共感を狙った作品ではありますが、そのような狙いがあったとしても、ストーリーが面白い!
最初から最後まで、面白く読むことができました。本が好きな人は、本や作家への愛などでも共感できると思います。
- お仕事小説、ビジネス小説が好きな方
- 本好きで、本屋が大好きな方
- 軽快なストーリーを楽しみたい方
『店長がバカすぎて』:感想(ネタバレ含む)
※以下感想は、はネタバレを含んでいます。未読の方は注意して下さい。
どんな職場にも、腹の立つ奴はいる
本書の舞台は書店です。しかし、どんな職場でも「腹立つ人物」はいるものです。しかも、全く尊敬できない「こいつアホか」と思う上司だとしたら、もう、朝から一挙手一投足に腹が立つ。こうなると、仕事にもやる気がわかないので仕事のパフォーマンスも落ちます。
私も、会社員時代同じような経験があります。当時の不健全なメンタルを思い出し、苦笑しながら読みました。
店長は本当にバカなのか
この作品の最大の争点は、「店長は本当にバカなのか」という点だと思います。
「バカ」という言葉は一般的に否定的な意味で使われることが多いですが、その種類やニュアンスは様々です。中には愛情や親しみを込めて「バカ」と言うこともあります。
バカの種類 | 特徴 |
---|---|
愚か者バカ | 言葉通り、「愚かなバカ」。基本的な知識や常識に欠けている人 |
楽観的バカ | 陽気なバカ。何があっても楽観的で、あまり深く考えずに行動する人 周囲に迷惑をかけることもあるが、その明るさが魅力にもなる |
お調子者バカ | 人に褒められると調子に乗りやすい人。周囲に利用されやすい |
無鉄砲バカ | 考えなし、リスクを全く考慮せずに行動する人 |
感情的バカ | 感情に任せて行動し、後先を考えない人 |
知識偏重バカ | 特定の分野は非常に詳しいが、それ以外のことに無知で、常識的な判断ができない人 |
頑固バカ | 自分の考えや意見を固持し、他人の意見や新しい情報を受け入れない人。自分が間違っていることに気づかない |
迷惑バカ | 自分の行動が周りにどれだけ迷惑をかけているかわからない人 |
自虐的バカ | 自分の欠点や失敗を自虐的に笑いに変える人 |
愛すべきバカ | 不器用で失敗が多いが、その純粋さや一生懸命さが周囲に愛される人 |
本作に出てくる店長は、上記の中では「愛すべきバカ」に当たるかと。
確かに、日常業務の中では、空気が読めないため、的外れな言動も多く、また、お調子者的な立ち振る舞いもありますが、そこに悪意はありません。的外れで、空回りはしますが、社員に対して向き合う努力をしています。
ストーリーが進むにつれ、「店長は、実は有能な上司なのかもしれない」と思われる言動もあります。あなたは、どう読みますか?要チェックです。
愛するヒト・モノがあるからこそ、続けられる
京子は、毎日「マジで辞めてやる」と思いながらも、働き続けます。もちろん「生活の糧を得るため」もありますが、やっぱり続けているのは、「大好きな本」「尊敬する先輩」「かわいい後輩」「頼ってくれる本好きのお客さん」など、愛するモノ・ヒトがいるからです。
自分が紹介した本、自分が手掛けた本のポップで、「私の人生が変わりました!」などと言われたら、嫌なことがあっても、続けたいと思っちゃう この気持ちは、コツコツ書評を書いている身としてはとても共感できます。
本記事もそうですが、こんなブログの1記事でも、見てくれる人がいて、そして、記事が縁で本を読んでもらえたりするととても嬉しいのです。自分の学びが誰かのためになったら嬉しいんです。こうして、私は、ブログを続けています。
「好きなことを仕事に」の難しさ
本書読了後、本の興奮が冷めてから京子の言動について考えてみたこと。それは、「好きなモノには思い入れがある。それゆえ、こうありたい/こうすべきという理想が高くなる。結果、自分の理想とかけ離れるものに対し、苛立ちを感じてしまう」ということです。
これが「好きを仕事に」の難しさ ではないでしょうか。思い入れが強いと「頑固バカ」になりやすい。この辺の自覚があると、もう少し苛立ちが和らぎ、別の視点で物事が見れるのではないかと思った次第です。
最後に
今回は、早見和真さんのお仕事小説『店長がバカすぎて』のあらすじ・感想を紹介しました。
私は、終始、京子の視点で共感しつつ読み、続編も読みたくなりました。店長の視点で読んだ方は少し感想が違うかもしれません。あなたはどんな風に読むのでしょう。是非、試してみてください。