- 数字は「考える道具」である
数字で考えるとは、ただ数字をいじることではない。思考を深めるためのツール。本書では数字で考える技術と思考の型を具体的に学べる。 - 数学で考える = 定義 × 計算 × 論理思考
問題を定義し、計算し、そして、筋道を立てて考えること - 「数字で考える」の9割は計算の前にある
ビジネスで使う計算は基本的に四則演算で、実際の計算は1割に過ぎない。仮説が大事であり、数字は思考を補助し、意思決定を助ける“補助線”
★★★★☆
Audible聴き放題対象本
『徹底的に数字で考える。』ってどんな本?
「なぜ、あの人の話は説得力があるのだろう?」「どうして自分の提案は通らないんだろう?」
そんな悩みを抱えるすべてのビジネスパーソンにおすすめしたいのが、ビジネス数学の専門家・深沢真太郎さんの著書『徹底的に数字で考える。』です。
本書が教えてくれるのは、“数字”をただ扱うスキルではありません。数字という「論理の武器」を使って、考えを整理し、相手を動かす力を身につける——そんな〈思考の型〉を身につけるための実践書です。
使うのは、小学生レベルの四則演算だけ。高度な数学知識は不要。
「数字で考える」を習慣化し、「意思決定に『数学を道具として活用する』方法」をわかりやすく教えてくれます。
数字が苦手な人でも、読み進めるうちに“数字で考えること”の楽しさと有用性に気づかされるはずです。
「数字で考える」は、仕事ができる人の共通スキル

「私は数字が苦手だから…」という人は多いかもしれません。でも、それは本当に「数字」への苦手意識でしょうか?
本書を読めばわかります。
あなたが苦手なのは、数字ではなく「問題を構造的に考えること」かもしれない、と。
「数字で考える」とは、“考えること”そのものだ
たとえば「売上アップ」と聞いて、何を思い浮かべますか? ここで思考停止してしまった方ー
「売上=単価 × 数量」「利益=売上 − コスト」──ただこれだけの式を使って、課題の正体が見えてくる。
難しく考える必要はありません。大事なのは「分けて考える」こと。
数字は、思考をシンプルに分解し、見えなかった選択肢を浮かび上がらせてくれます。
ビジネスで使う計算は基本的に四則演算(+-×÷)くらい。
「数字が苦手」と「数学で考えることが苦手」は全く違います。
数字は思考の「補助線」。思考を整理し、よりよい意思決定をするための「道具」です。
数学で考える = 定義 × 計算 × 論理思考 ⇒ 定義し、計算し、そして、筋道を立てて考えること
「数字で考える」ことの3つのメリット
- 問題解決:状況を構造的に分解し、正しく判断できる
- 説得力:感情論ではなく、数字に裏打ちされた仮説が立てられる
- 信頼感:ファクトベースで話せるため、周囲の信頼を得られる
この3つは、「ヒト・モノ・カネ」を動かすための基盤です。
そして、❶~❸を手に入れるために大事なのが「数字を使った仮説」です。
ぼやっとした仮説でなく、数字という論拠があることで、論に説得され、その人を信頼します。
数字で考える力を養うことで、「仕事ができる人」への階段を上ることができます。
問題解決力が高いとは、「仮説立案」「解決」の2つができること
「問題解決力が高い」とは、単に問題を解くことが得意なことではありません。
「問題を自ら作り」「解決する」 の2つができることです。
ビジネスでは、問題が顕在化しているとは限りません。問題を顕在化させる手段として、仮説を立てたりしながら問題を自ら作り、それを解決していくことが大切です。
「数字で考える」の9割は数字を触る前にある

数字で考えるー
実は、「数字で考える」の9割は数字を触る前にあります。残りの1割が四則演算です。
「正解のない問い」を数値化する思考法:アサンプションベース思考
ビジネスにおいて多くの課題は、「何が問題かすらわからない」という状態から始まります。
そんなときこそ必要なのが、「数字を使った仮説思考(アサンプションベース思考)」。
正解が見えない状況でも、「まずはひとつ仮説を立てて、数字で検証していく」——
これこそが、成果に直結する最短ルートです。
恋愛や日常の会話も、実はこの思考法と同じ構造を持っています。仮説→試す→反応を見る→次へつなげる。
この繰り返しが、ビジネスでも通用するのです。
仮説に大事なこと
仮説を立てられない人に足りないことはたったひとつ。
「正解がどうかわからないけれど、”えいやっ”とひとつに決める勇気」です。
最も重要なのは、「どの数字を使い、どの数字を捨てるか」を見極める判断力
この「前さばき」が、成果を左右する。
✅ やることは
- 今から何をするかを定義
- そのために必要なデータを特定し、他は捨てる
- 必要なデータだけを読み解き、成果物を作る ←数字を触るのはこれだけ
✅ データ取扱いのコツは、「分ける」こと
- 掛け算で分解し、足し算で分類する
- 「傾向」と「異物(異常値)」を探す ←データのビジュアル化で見えやすくなる
【実践】数学で考えるを習慣化するヒント

明日から使える!ファクトベース思考の13の質問
ファクトベースで仕事をする場合、本書では、以下の質問を自らに投げかけてみることをすすめています。
数字を思考の「補助線」とするために役立つ質問です。
- あなたが改善したいことは何でしょう?
- それは数字で把握できるものでしょうか
- YES であれば、 改善されたことを示す数字Aはなんでしょう?
- その数字 Aがいくらになれば「改善された」と定義できるでしょうか?
- その数字Aはどんな読み方が妥当でしょう?
- その数字Aを増やすためには、どの数字Bを増やすのが現実的に可能でしょう(仮説を立てる)
- その数字Bがいくらくらい増えることを目指しますか?
- それが達成できたとき、あなたが定義する「改良された」を実現しますか?
- 数字Bを増やすために具体的に何をしますか?
- それは誰が、いつ、どのように実行しますか?
- 実行した結果も数字Cとして手元に残る環境があるでしょうか?
- 数字Cを評価し、次のPDCAサイクルを回う責任者は誰が決めていますか?
- この仕事を進めるに当たり、直面する「めんどくさい」に負けない強い意志はありますか?
「正解のない問い」を数値化する思考法:アサンプションベース思考
ビジネスの多くの課題、「何が問題かすらわからない」という状態に立ち向かう思考法が、「アサンプションベース思考(仮説思考)」。事実に基づき仮説を立てる「ファクトベース思考」と共に大事な思考法です。
アサンプションベース思考は、簡単に言えば、「そんなもん、知らんがな」という問題への対処法です。
例えば、「髪の毛の本数は?」と聞かれたら、「知らんがな!」と思いますよね。
でも、1cm×1cmに生えるをザクっと想像し、また、頭の表面積もザクっと見積もることで、直感的な仮説を元に、ざっくり計算することは可能です。
「知らんがな問題」の解き方
- 数字にできそうな概念で定義する
- 直感的な仮定
- 計算 →知らんがな が定量的に表せる
知らんがな問題を解く頭を作る良書と言えば、「地頭力」ブームを巻き起こしたベストセラー「地頭力を鍛える」。
使えるようにはかなり訓練が必要ですが、なるほど~と思う内容、満載です。
数字で考える「頭」の作り方:思考パターンを持つ
数字で考えるためには、思考法のパターンを知っていることが大事です。
「この問題なら、この方法で説く」という頭を作っておけば、一気に答えに近づけます。
- どのくらい上昇していくかを数値化→相乗平均
- どれくらい価値があるかを数字化→現在価値、将来価値の算出
- どれぐらい増やせるかを数字化→ AB テスト
- どれくらい影響するかを数字化→感度分析
- どれくらいリスクがあるかを数字化→標準偏差
- どれくらい関連がありそうかを数字化→相関係数
- どれくらい必要かを数字化→単回帰分析
- どれぐらい安全か(危険か)を数字化→損益分岐点分析
本書では、上記の使い方もわかりやすく解説されています。
シンプルに考える
計算が得意でも、問題解決が苦手な人は、複雑に考えている可能性もあります。シンプルに考えましょう。
馬鹿な奴は単純なことを複雑に考える
普通の奴は複雑なことを複雑に考える
賢い奴は複雑なことを単純に考える by 稲盛和夫
最後に
今回は、著書『徹底的に数字で考える』から、なぜ、数字で考える必要があるのか、数字で考えることを習慣化するために大切なことを紹介しました。
数字は、あなたの思考を補助し、意思決定を助ける“補助線”。そしてそれは、誰でも引けるものです。
本書を読み終える頃には、「数字アレルギー」だった人も、「数字を使って考えるって、面白い!」と感じているはずです。
あなたの“考える力”そのものを磨き、ビジネスのあらゆる場面で成果を出せる人材へと変えてくれる一冊。
是非、手に取って読んでみて下さい。