- 2025年NHK大河ドラマ『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』ただ見るだけではもったいない!
- 押さえるポイントは「江戸文化」と「政治」。
- 文化と政治の関係性がわかると、蔦屋重三郎の活躍は、田沼意次政治下でなければ、あり得なかったことがよくわかる。
- 江戸時代で印象がぼんやりな弟10代・家治と弟11弟・家斉の時代がよくわかる
NHK大河ドラマ『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』:江戸文化と政治の関係

2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』は、江戸時代の出版業界を舞台に、蔦屋重三郎の波乱万丈な生涯を描いた作品です。豪華なキャスト陣、リアルに再現された江戸の風景、そして、笑いと涙を織り交ぜた脚本が見どころとなっています。
ドラマの舞台は、江戸時代中期。吉原遊郭の活性化を図るために奔走する蔦屋重三郎(蔦重)の姿が描かれます。蔦重は吉原のガイドブック『吉原細見』の制作や、青本の刷新など、出版を通じて江戸の文化と人々の生活に革新をもたらしていきます。
ドラマでは、吉原遊郭や出版業界など、「江戸中期の風俗や文化」が中心に描いています。一方で、わかりにくいのが「江戸中期の政治」。蔦重の活躍の裏には、田沼意次政治があり、また、江戸幕府では将軍を中心に、田沼意次 VS 松平〇〇のバトルが繰り広げられているのですが、ドラマでは、この関係性がわかりにくい。
NHK大河ドラマは、主人公を取り巻く人間ドラマも面白いですが、ただ、面白いで済ますのはもったいない。できれば、教養につながる見方をしたいものです。
そこで、勉強を兼ねて、大河ドラマ『べらぼう』を、「江戸文化と政治」の観点からまとめてみます。
【あらすじ】べらぼう

各話のあらすじは、クリックしてご確認を。あらすじ予告は、テレビ番組案内の引用。文化・政治色が強い部分を太字にしています。
第10回あらすじ:「『青楼美人』の見る夢は」(3月9日放送)
幼なじみの花魁、瀬川(小芝風花)の身請けが決まり、彼女への恋心に気づいた蔦重(横浜流星)は落ち込む。そんな中、吉原の女郎屋の主人たちから瀬川最後の花魁道中に合わせて出版する錦絵本の制作を依頼される。調査に出た蔦重は、自分の本が江戸市中の本屋から取り扱い禁止になり、捨てられていることを知る。江戸城では、老中の田沼意次(渡辺謙)が10代将軍、徳川家治(眞島秀和)から、田安賢丸(まさまる/寺田心)の妹、種姫(小田愛結)を自分の娘にして、将来は嫡男、家基(奥智哉)と夫婦にする計画を告げられる。発言の裏には家基のある考えがあった。
第11回あらすじ:「富本、仁義の馬面」(3月16日放送)
錦絵本「青楼美人合姿鏡」が高値で売れず頭を抱える蔦重(横浜流星)は、吉原の女郎屋の主人たちから、吉原の祭りである「俄(にわか)祭り」の目玉に、浄瑠璃の人気太夫、富本豊志太夫(午之助/寛一郎)を招きたいと依頼される。蔦重は大黒屋の女将、りつ(安達祐実)たちと芝居小屋を訪れ、俄祭りへの参加を求める。過去に吉原への出入り禁止を言い渡された午之助は、蔦重を門前払いする。盲目の大富豪、鳥山検校(市原隼人)が浄瑠璃の元締めだと知った蔦重は、身請けされた瀬川(小芝風花)のいる鳥山の屋敷を訪ねる。
第12回目あらすじ:「俄(にわか)なる『明月余情』(3月23日放送)
昨年に続き吉原で行われる「俄(にわか)祭り」の企画を巡り、大文字屋市兵衛(伊藤淳史)、若木屋与八(本宮泰風)ら、女郎屋の主人の間で争いが勃発する。蔦重(横浜流星)が、30日間かけて行われる俄祭りの内情を面白おかしく書いてほしいと平賀源内(安田顕)に頼むと、〝覆面〟の戯作者、朋誠堂喜三二を勧められる。喜三二の正体は、かつて蔦重も会っていた「宝暦の色男」とも呼ばれている秋田佐竹家留守居役のあの男だった。
「宝暦の色男」とは、平沢常富(ひらさわつねとみ)。後に、蔦重にとって最高勝最大の協力者となる偽作者です。
NHKのキャスト紹介には以下のように記載があります。実在の人物です。
平沢常富(朋誠堂喜三二)(ひらさわ・つねまさ/ほうせいどう・きさんじ)(役・尾美としのり)
江戸在住の“外交官”であり当代一の“覆面”戯作者出羽国久保田藩(秋田藩)の藩士で、江戸城の留守居(いまでいう外交官)を務める。役職柄、情報交換の場として吉原に出入りすることが多く、「宝暦の色男」の異名をもつ。一方で、奇想天外な大人の童話、歌舞伎の筋書きをもじったパロディーなど洒落、滑稽、ナンセンスを盛り込んだ戯作を数多く発表し、また手柄岡持(てがらのおかもち)という名で狂歌も発表。流行作家として一時代を築く。のちに蔦重にとって最高かつ最大の協力者となる戯作者。
第11回あらすじ:「お江戸揺るがす座頭金(がね)」(3月30日放送)
蔦重(横浜流星)は、留四郎(水沢林太郎)から鱗形屋(片岡愛之助)が再び偽板の罪で捕まったらしいと知らせを受ける。鱗形屋が各所に借金を重ね、その証文の一つが鳥山検校(市原隼人)を頭とする金貸しの座頭に流れ、苦し紛れに罪を犯したことを知る。
一方、江戸城内でも旗本の娘が借金のかたに売られていることが問題視され、意次(渡辺謙)は、座頭金の実情を明らかにするため、長谷川平蔵宣以(中村隼人)に探るよう命じる。
【おさらい】徳川歴代15代将軍:人物像/主な功績/大河ドラマ

さて、江戸中期の政治を学ぶ最初は「徳川将軍」から。
『べらぼう』時代の将軍として押さえたいのは、弟10代・家治(いえはる)と弟11弟・家斉(いえなり)です。
以下表は、「歴代徳川将軍」と「NHK大河ドラマ」を一つの表にまとめたものです。有名将軍(水色に色付け)に対し、家治・家斉のイメージはぼんやり。実は11代・家斉は260年中60年近く将軍に在位しているのですが、日が当たっていません。
代 | 名前(諱) | 在位期間 | 人物像 | 主な功績 | 関連大河ドラマ ※主役とは限らない |
---|---|---|---|---|---|
1 | いえやす | 徳川家康1603-1605 | 江戸幕府の創始者 | 関ヶ原の戦いで勝利 江戸幕府を開く | 『徳川家康』(1983) 『どうする家康』(2024年) 『春日局』(1989) |
2 | ひでただ | 徳川秀忠1605-1623 | 実直で堅実 | 武家諸法度を制定 幕藩体制を確立 | 『春の坂道』(1971) 『江』(2011) |
3 | いえみつ | 徳川家光1623-1651 | 幕府の基盤を強化 | 参勤交代を制度化 鎖国政策を推進 | 『葵 徳川三代』(2000) ※家康~家光 |
4 | 徳川家綱 いえつな | 1651-1680 | 温厚で平和主義 | 末期養子の禁緩和 殉死の禁止 | – |
5 | つなよし | 徳川綱吉1680-1709 | 生類憐みの令で有名 | 文治政治を推進 元禄文化の繁栄 | 『元禄太平記』(1975年) |
6 | 徳川家宣 いえのぶ | 1709-1712 | 名君と評される | 新井白石を登用 改革を実施 | – |
7 | 徳川家継 いえつぐ | 1713-1716 | 幼くして将軍に | 幼少で夭折 | – |
8 | よしむね | 徳川吉宗1716-1745 | 享保の改革を実施 | 米将軍 倹約政治を推進 | 『八代将軍吉宗』(1995) |
9 | 徳川家重 いえしげ | 1745-1760 | 病弱で不明瞭な言葉遣い | 側用人政治が強まる | |
10 | いえはる | 徳川家治1760-1786 | 穏やかで温和 | 商業政策を推進 幕府財政の立て直し | 田沼意次政治時代『べらぼう』(2025) |
11 | いえなり | 徳川家斉1787-1837 | 50年強年近く在位 | 倹約令を発令 晩年は大御所政治を展開 | 松平定信『寛政の改革』– |
12 | 徳川家慶 いえよし | 1837-1853 | 西洋の脅威に直面 | 天保の改革を推進 | – |
13 | 徳川家定 いえさだ | 1853-1858 | 病弱で政治に消極的 | ハリスとの条約交渉を進める | 『篤姫』(2008) |
14 | 徳川家茂 いえもち | 1858-1866 | 公武合体を推進 | 長州征討 和宮との婚姻 | |
15 | よしのぶ | 徳川慶喜1866-1867 | 幕府最後の将軍 | 大政奉還を決断 江戸幕府を終焉 | 『徳川慶喜』(1998) 『青天を衝け』(2023) 『西郷どん』(2018) 『龍馬伝』(2010) |
※12~14代将軍は、開国に向けた幕末関連のドラマに、わき役として出てくることも多い
田沼意次政治 VS 松平定信政治
弟10代・家治(いえはる)と弟11弟・家斉(いえなり)に代わり政務をとるのが「田沼意次」と「松平定信」です。
政治 | 主義 | 特徴 |
---|---|---|
田沼意次政治 1772~1786年 | 重商主義 | 経済を活性化させることを重視 ※それゆえに、蔦重も活躍できた |
松平定信政治 1787年~1793年 | 重農主義 倹約主義 | 経済より農業を重視 いわゆる「寛政の改革」厳しい倹約令を発令 |
この二人、仲が悪い…。政治スタイルもまるで逆。『べらぼう』でも、若き日の松平定信のアンチ田沼ぶり(寺田心)が描かれています。しかし、大河ドラマでは、この関係性がわかりにくいのです…
いつの時代も、権力者は熾烈な争いを繰り広げるー
それは、「べらぼう」の時代でも….
徳川家は「次の将軍の座」を巡って、幕臣の間では「次の政治の実権者の座」を巡る攻防が繰り広げられています。
実は、結構な血みどろです。暗殺も起きます。
NHK大河ドラマ「べらぼう」キャスト:徳川家・幕臣
歴史はビジュアルがあった方が理解しやすい。以下は、NHK大河ドラマ「べらぼう」徳川家と幕臣の人物相関図です。

画像:NHK

画像:NHK
2025年3月のドラマ放送時点で描かれている政治の確執は「田沼意次(役・渡辺謙)」VS「田安賢丸(寺田心)」。田安は後の「松平定信」です。
また、
・10代・家治の嫡男・家基(いえとも、役・奥智哉)の18歳という若すぎる死
・田安家(田安賢丸/寺田 心)・一橋家(一橋治済/生田斗真)など 御三卿間の牽制
なども、波乱要因となります。
ここでわかりにくいのが、将軍家と「御三卿」の関係。御三卿とは「田安家」「一橋家」「清水家」のことで、尾張・紀伊・水戸の「御三家」とは異なります(詳細は後述)
ここまで抑えた上で、次は、「田沼意次の政治」から「松平定信の政治」への政治の交代劇、および、それぞれの政治の特徴を見ていきます。
田沼意次の政治:重商主義で経済を活性化

画像:Wikipedia
蔦屋重三郎(役・横浜流星)がメディア王になれたのは、10代将軍・徳川家治(役・眞島秀和)の時代に老中として活躍した田沼意次(役・渡辺謙)の政治があったからこそです。
田沼政治というと、汚職の温床となった「賄賂政治」でダメ政治の印象が強いですが、実は、経済発展の功績が極めて高い!
「米本位の経済」から「貨幣経済・商業重視」への転換を図り、お金が巡るシステムを確立し、ひっ迫していた幕府財政を安定化させました。
- 重商主義的政策 … 株仲間(ギルド)を公認。商人の力を利用した経済発展を推進
- 冥加金制度 … 商人に特権を与える代わりに税を取るシステム
- 蝦夷地の調査・開拓…アイヌの人はシベリアなどに行き交易。これを受けて、蝦夷地調査を実施
- 印旛沼開拓…吉宗から引き継いだ農地開拓。田沼は利根川~江戸への海上流通網の構築を目指すも洪水でとん挫
田沼政策の第一の政策は、初めて「幕府の行政制度の中に予算制度が確立」されました。現代では当たり前ですが、従来がそうではなかったのです。この政策により、事前に予算を組み、増え続ける支出を抑制。しかも、民生部門の予算を優遇する一方、将軍の身の回りや大奥などの予算を大幅に削減しました。
第二の政策は、「流通税」をの導入。このころは商品流通経済=貨幣経済が勢いよく発達していたのにも関わらず、幕府の経済は、農民から米を徴収する直接税方式。商業には税をかけない考え方が主流でした。商業利潤に税をかけるという発想は当時としては画期的。ここから株仲間が誕生し、冥加金などの納税を義務付けたことで、幕府財政が潤いました。
第三の政策が、「通貨政策」。商品流通が全国規模となるも、東日本では「金」、西日本では「銀」が通貨として使われ、経済発展の障害となっていました。これを改めた通貨を発行しました。
以上の通り、農業より商業。低迷した経済を復活させた業績は大きいです。
経済が豊かになったことで生まれた江戸文化&蔦重の活躍

画像:Wikipedia
意次政権下で花開いた「江戸文化」
意次の政策により、10代・家治の時代は、全国的に豊かな時代となりました。自由で開放的な空気が流れた結果、花開いたのが、江戸文化です。江戸は様々な才能を伸ばす場となり、この文化が全国へも広がりました。
- 平賀源内:エレキテル
- 鈴木晴信:浮世絵というと思い浮かべる多色で刷られた精巧な木版画『錦絵』誕生に決定的な役割を果たす
- 杉田玄白・前野良沢:『解体新書』の翻訳
- 本居宣長:『古事記』の研究 他
蔦重の活躍
✅ 蔦屋重三郎
生年:1750年~1797年(江戸中期:寛延3年~寛政9年)
職業:版元(出版業者)、書籍商、文化プロデューサー
蔦重は、出版業者(版元)であり、町人文化の育ての親ともいえる人物です。浮世絵や洒落本(しゃれぼん)、黄表紙(きびょうし)などを出版し、江戸文化の発展に大きく貢献しました。彼の支援によって、喜多川歌麿、山東京伝、恋川春町など、『美人画』を中心とする浮世絵文化が花開いたのです。
このような文化が花開いたのも、田沼意次政権下だったからこそです。
蔦重が「農業!倹約!」の時代の8代将軍・吉宗の時代の人だったら、ビジネスは成功しなかったでしょう。吉宗の政治は、財政立て直しのための税の取り立てが厳しく、農家は生活がままならず、子どもの間引き(殺害)する人が後を絶たなかったほどで、それが、それまで続いていた「日本の人口増」をストップさせたほどでした。
【文化】江戸時代の出版物の種類と特徴
長編小説から、絵本、アダルトまで。江戸時代の出版文化は非常に発展しており、多種多様な出版物が流通しました。べらぼうでもいろんな本の種類がでてきますが、なじみがなくよくわからない…そこで調べてみました。
浮世絵(うきよえ)
- 概要:絵を主体とした版画作品。初期は墨一色の「墨摺絵(すみずりえ)」だったが、多色刷りの「錦絵(にしきえ)」が主流に。
- 代表的な作家:菱川師宣、鈴木春信、葛飾北斎、歌川広重、東洲斎写楽
- 代表的な版元:
- 蔦屋重三郎:東洲斎写楽や喜多川歌麿の浮世絵を出版
- 西村屋与八:歌川広重の『東海道五十三次』を刊行
- 伊勢屋利兵衛:葛飾北斎の作品を多く手がける
洒落本(しゃれぼん)
- 概要:吉原などの遊郭などを題材にした風刺や洒落のきいた読み物。享保~寛政期(18世紀後半)が最盛期。
- 代表的な作家:山東京伝、朋誠堂喜三二
- 代表的な版元:
- 蔦屋重三郎:山東京伝『通言総籬(つうげんそうまがき)』などを出版
黄表紙(きびょうし)
- 概要:江戸中期に流行した、挿絵入りの娯楽本。大人向けの滑稽な内容が多い。
- 代表的な作家:恋川春町、山東京伝
- 代表的な版元:
- 鱗形屋孫兵衛:恋川春町『金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』を出版
これ以外にも以下のようなものがあります。
青本(あおほん) | 子供向けの読み物で、赤本の次に登場。物語性が強い。 |
---|---|
赤本(あかほん) | 江戸時代初期~中期にかけて広まった、童話や軍記物語など。 |
草双紙(くさぞうし) | 赤本・青本・黒本・黄表紙などを総称する絵入りの娯楽本。 |
読本(よみほん) | 挿絵が少なく、文章主体の長編物語。 上田秋成『雨月物語』、滝沢馬琴『南総里見八犬伝』など。 |
人情本(にんじょうぼん) | 江戸後期に登場した、恋愛をテーマにした小説。 |
天災発生で意次失脚。松平定信が「寛政の改革」時代へ

画像:Wikipedia
「農業立国」から「商業立国」へ
田沼政治は、これまで幕府が推進してきた方向を大きく軌道修正するものでした。しかし、残念ながらその時代は長くは続きません。新しい時代を嫌う幕臣・官僚たちに引きずり降ろされます。
10代・家治死去により田沼失脚
新しい政策を嫌う幕臣・官僚というものはどの時代もいるものです。しかも、意次は良家の出ではありません。第9代将軍の徳川家重の小姓から、メキメキ頭角を現し、老司に上り詰めた人物です。生まれながらの良家の育ちのモノから見ると下賤にうつります。
さらに、天候にも見放されました。日本史上最大級の飢饉とも言われる「天明の大飢饉」(1782年~1788年)、さらに「浅間山大噴火」(1783年)が冷夏に追い打ちをかけます。異常気象の結果、飢饉は東北地方を中心に全国的な被害をもたらし、餓死者は数十万人に達したといわれています。
こうなると、経済は混乱。天変地異も「政治が悪いから」と反田沼感情が高まります。生活苦に苦しむ農民たちは、打ちこわしや一揆をおこすように…。
意次の嫡男であった若年寄・田沼意知(おきとも、役・宮沢氷魚)も佐野政言(まさこと、役・矢本悠馬)に切り殺されます。佐野政言は、幕府からは、ルールで切腹を命ぜられますが、庶民からは「世直し大明神」と称されるほど、田沼への反感が強まっていました。
さらにー。1786年には田沼意次の最大の後ろ盾であった10代・徳川家治が死去。家治の息子は病死しており、直系で将軍を継げる人もいませんでした。こうして、意次は失脚してしまうのです。
一橋家出身の家斉が11代将軍に。松平定信が「寛政の改革」を実施
11代将軍の座に就いたのは、一橋家の家斉(いえなり)。15歳で将軍となり、50年にわたり将軍の座に居座ります。将軍に就いたばかりのころ、若き家斉に代わって、実権を握ったのが、徳川御三卿・田安家の松平定信(まつだいら さだのぶ、役・寺田心)です。
「徳川御三卿」は「徳川御三家」とは別物です。始祖、位置づけが異なります。
項目 | 御三家 | 御三卿 |
---|---|---|
始祖 | 初代将軍・徳川家康 | 8代将軍・徳川吉宗 ※吉宗は紀州藩出の将軍。将軍直系ではない |
家 | 将軍家に後嗣が絶えた時に養子を出す大名家 尾張・紀伊・水戸 | 将軍家の血統を守るために生まれた将軍家のバックアップ部隊 吉宗直系:田安家・一橋家・清水家 |
領地 | それぞれ藩を持つ | 江戸城内に屋敷 |
役割 | 将軍候補になれる | 将軍のおそばにいる後継者候補 |
田沼意次には、「賄賂政治家」のイメージがつきまといますが、これは、意次を嫌っていた松平定信が流布したところが大きい。田沼政治を悪く言うことで自己の政治を確立していったからです。
松平定信は、『寛政の改革』(1787年~1793年)の推進者。意次とは政治思想が正反対。倹約と質素な生活を重視 。田沼の商業政策を否定し、重農主義に転換します。
「歴史は成功者によってつくられる」と言われますが、歴史は勝者の視点で語られます。歴史は必ずしも客観的な事実の記録ではなく、権力者・支配者・成功者に都合の良い形で残されることが多い という認識は持っておきたい。
「寛政の改革」は失敗
松平定信の、「質素倹約」と「農村復興」を重視するあまり、都市経済や商業の発展を軽視したことが大きな失敗要因となります。結果、松平定信は6年ほどで老中を辞任されました。失敗の要因をまとめると次のようになります。
- 厳格すぎる政策による反発
- 贅沢を禁止。武士や町人の生活に過度な制約を与え、不満を招く
- 「七分積金」制度(江戸町民の町費節約策)
- 「棄捐令」(旗本・御家人の借金帳消し)は、特に商人からの強い反発
- 農村復興策の限界
- 「社倉・義倉(米の備蓄制度)」の設置、「帰農奨励(農民に農村へ戻ることを推奨)」を進めるも、都市に出た農民が簡単に農村に戻ることはなく、効果が限定的
- 経済政策の矛盾
- 商業活動を制限し、流通経済の発展を妨げる結果に。商人・庶民に悪影響
- 米価の安定化調整を行うも、米価の下落が藩の財政悪化を招く
- 学問統制と思想弾圧
- 「寛政異学の禁」により、朱子学以外の学問を禁じ、自由な学問研究を抑圧
- 幕府の権威を保つ意図がありましたが、反発を生み、知識人層からの支持を失う
『寛政の改革』の不満は、将軍にも悪影響を,,,。徳川家斉はド派手、贅の限りを尽くす生活をし始めるのです。
一方、江戸の街では、松平定信によって抑圧されていた本や歌舞伎などの娯楽が復活。そして、十返舎一九、葛飾北斎、歌川広重などの美術作品が続々と生まれるのです(化政文化)。
江戸中期の政治をみても、「経済政策」の大事さを、「締め付け」の悪影響を再認識させられますね。
最後に
さて、今回は、NHK大河ドラマを『べらぼう』を「江戸文化」「江戸中期政治」の両面から面白く見る・学ぶための基礎知識を紹介しました。
今年も、昨年に続き、NHK大河ドラマをただ楽しかっただけで終わらせない読書をしていくつもりです。また、お面白い関連書籍など、あったら紹介していきます。
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