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【書評/要約】生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害(岡田尊司)「何もしたくないダメな自分」を責める前に─無自覚な心の障害に気づく本

【書評/要約】生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害(岡田尊司)「何もしたくないダメな自分」を責める前に─無自覚な心の障害に気づく本
生きるのが面倒くさい人」要約・感想
  • 何もやる気がしないのは、「性格」のせいではないかもしれない
    「何もかも面倒くさい」と感じる背景に「回避性パーソナリティ障害」が潜んでいる場合が少なくない。
  • 回避傾向を強める現代社会
    「回避性パーソナリティ障害」、あるいはその傾向を持つ人は、現代において増加傾向。現代の価値観や生活様式が回避的な心理を助長しやすい。
  • 自分の「回避性」に気づいていない人が多い
    多くの人が、自身の回避的な傾向に無自覚。まずはその特徴を知ることが、自分自身を理解する第一歩になる。本書では、そうした人々が「自分らしい生き方」を取り戻すためのヒントも丁寧に示される。

★★★★☆ Kindle Unlimited読み放題対象本



目次

『生きるのが面倒くさい人』ってどんな本?

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「何もする気が起きない」「生きるのが面倒」——
そんな“漠然とした生きづらさ”を抱えている人は、決して少なくないでしょう。

その“生きづらさ”の正体に迫るのが、精神科医・岡田尊司さんの著書『生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害』です。

「何もかもが面倒」と感じたとき、多くの人は、自分を“怠け者”と責めてしまいがちです。
しかし、岡田さんは、それを「性格」や「やる気」の問題と決めつける前に、「回避性」という心のメカニズムの存在を知ってほしいと語ります。

本書では、多くの患者と向き合ってきた精神科医の視点から、「生きるのが面倒くさい」と感じる背景に「回避性パーソナリティ障害(AVPD)」がある場合が少なくないこと、そして「自分らしい生き方」を取り戻すためのヒントが示されています。

「自分はダメな人間だ」と思い込んでいる人。
「人とうまく関われない」と悩んでいる人。
日々、生きづらさを感じている方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。

読み終える頃には、「何もしない/したくない自分」に対する見方がきっと変わるはずです。
私自身、本書を通して、今まで気づかなかった“自分”を初めて知ることができました。
この本は、そんな「気づき」と「再出発」のための優れたガイドとなってくれる一冊です。

「面倒くさい」はただの怠け?——心の防衛反応だった

「何もしたくない」
その背景には、他人から否定されたくない、嫌われたくない、恥をかきたくない—— といった、対人関係への強い不安が潜んでいます。

この不安が強いために、人との関わりや新しい挑戦を無意識に避けてしまい、「どうせ自分なんて」と自己否定が募り、ますます動けなくなる——
こうした悪循環に陥ってしまうのです。

回避性パーソナリティ障害(AVPD)」とは、極端な“否定的評価への恐れ”や“拒絶されることへの敏感さ”を特徴とするパーソナリティ障害の一種。
「何もしない」「関わらない」「避ける」ことで、心がこれ以上傷つかないよう“自己防衛”しているのです。

しかしそれが、
避ける → チャンスを逃す → 自己否定が強まる → さらに避ける、という悪循環を招き、
周囲からは「やる気がない」「性格の問題」と誤解され、さらに孤立を深めてしまいます。

重要なのは、「何をするにも面倒くさい」と感じる自分を責めるのではなく、
「これは心の防衛反応なんだ」と気づくことです。

「回避性パーソナリティ障害」とは?——「面倒くさい」の正体

多くの人が、自身の「回避性パーソナリティ障害」に無自覚です。

「人と関わるのが億劫」「新しいことに挑戦するのが怖い」「どうせ自分なんて……」という気持ちは、実はこの障害のサインかもしれません。まずは、特徴を知ることが、自分を理解する第一歩になります。

回避性パーソナリティ障害の特徴

  • 他人の評価や批判に極端に敏感
  • 好かれている確信がなければ人間関係を築けない
  • 親密な関係でも心の距離を保ち、自分をさらけ出さない
  • 恥の感情が非常に強い
  • 新たな挑戦やリスクを避け、現状維持に固執しがち

他の障害との違い

  • 回避性パーソナリティ障害:本当は人と親しくなりたいが、傷つくのが怖くて避けてしまう
  • シゾイドパーソナリティ障害:そもそも人と関わることに関心がない
  • 社会不安障害:関わりたいが、緊張や不安が強く動けない(動機が異なる)
  • 自閉スペクトラム症:人との関わり方がわからない、相手の気持ちが読めない
項目回避性パーソナリティ障害 (AvPD)シゾイドパーソナリティ障害 (SPD)社交不安障害 (SAD)自閉スペクトラム症 (ASD)
対人関係を望むか?◎望んでいるが恐れている✖あまり望まない・無関心◎望んでいるが恐れている△一部は望むが独自のスタイル
回避の理由拒絶や批判されるのが怖い興味・感情が乏しい緊張・恥・恐怖心社会的な暗黙ルールの理解が苦手
主な特徴劣等感、傷つきやすさ、自己否定感情が乏しい、孤独を好む人前で強い緊張、赤面や震えなど身体症状空気が読めない、こだわり、感覚過敏など
対人関係の反応拒絶を恐れて避けるそもそも関心が薄い緊張しながらも関係を持とうとする無自覚に人を怒らせる、浮くことが多い
コミュニケーション苦手、でも本音では繋がりたい形式的・最小限苦手、でも努力する理解や表現がズレることがある
発達障害との関連二次的に出ることもある少ない自閉スペクトラムとの併存もありうる発達障害の一種(先天的)
治療可能性認知行動療法、対人関係療法が有効動機付けが少なく難しいことも認知行動療法が非常に有効環境調整・社会スキルトレーニング

若者に広がる「回避性」

村上春樹の『ノルウェイの森』やアニメ『エヴァンゲリオン』が、今なお支持を集めるのは、「回避性」というテーマが現代人の深層に根ざしていることを物語っています。

『ノルウェイの森』が流行したバブル期には、物質的な豊かさとは裏腹に“満たされない孤独感”が若者を包んでいました。村上春樹が描いた〈喪失・死・性〉の物語は、そんな時代に共鳴しました。

一方、『エヴァンゲリオン』がブームとなったのはバブル崩壊後。
「頑張っても報われない」という閉塞感の中で、碇シンジの〈自己否定と逃避〉の葛藤がリアルに映ったのです。

「回避型愛着」との違いにも注目。似て非なるもの

本書から得た私自身の最大の気づきは、幼少期の「早すぎる自立」によって「回避型愛着」の傾向を持っていたとわかったことでした。

「何をするにも面倒」と感じる感情の根底には、性格だけでなく、育った環境や幼少期の愛着の在り方が深く関係しています。

回避型愛着とは?

  • 幼少期、親との関係が希薄だった結果、他者との親密な関係を避けるようになる
  • 甘えたかったのに甘えられなかった経験が、愛着の形成を妨げる
  • 「早すぎる自立」により、他人を頼れなくなり、人間関係が表面的に

赤ちゃん・幼児は、周囲との関わりを求める存在です。しかし、虐待・ネグレクトなどにで、親とのスキンシップが十分でないと愛着のスイッチが入りません。気持ちを受け止めてもらえなかった体験が、人との関わりを「面倒くさい」「不快」と感じる基盤となってしまうのです。

「回避性パーソナリティ」との違い

回避性パーソナリティ愛されたいが、傷つくことを恐れる。葛藤が強く、苦しみが大きい
回避型愛着他人に期待せず、最小限の関わりで生きる。愛されたい欲求が薄く、葛藤が少ない

私は、放任主義で育ちました。物心つくと、頼る前に自分でやるのが当たり前でした。しかし、無自覚でしたが、甘えたいけれど甘えられなかった、そんな感覚が「愛着」の不全として今の自分に影響しているのだと感じます。

回避を強める現代社会の構造

「なんだか生きづらい」「自分に自信が持てない」——それは決してあなた一人の責任ではありません。

回避性パーソナリティには、約6割の遺伝的要因が関与している一方、残りの3〜4割は育った環境に起因します。
否定的な養育、いじめ、親の期待の押し付けなどが、自己肯定感を損ない、人格形成に影響を与えるのです。

特に、過干渉や支配的な親の元で育つと、自分の意思よりも他人の期待を優先してしまう傾向が強まり、自らを「価値のない存在」と感じるようになります。また、自分の意思」が育ちません。レールの上を歩くことはできても、自分で決められなくなったり、「自分が好きなこと」さえ、答えられなくなってしまうのです。

そしてその代わりに、依存行動(ギャンブル・買い物・過食など)に走りやすくなってしまいます。

回避性は“学習された反応”

  • 回避的な人は、反発よりも「諦め・服従」を選びやすい
  • 親の価値観や支配に順応した結果、「従順さ」が身につく。また、「無気力」「無感動」に陥る危険も
  • 過干渉な養育は自己決定感を奪い、「何がしたいかわからない」若者を生む

現代的要因の影響

  • 都市化や個人主義の進展が“他人に期待しない”傾向を助長
  • 情報過多により、思考力や判断力が低下し、無気力・無感情に陥る危険性も
  • 子どもの体験が画一化され、過剰な防衛や無菌環境が人間関係の構築を妨げる

おわりに:自分を責めるのはもうやめよう

今回は、『生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害』から得られた数々の気づきを紹介しました。

回避性という性格は、決して「欠陥」ではありません。
大切なのは、自分に合ったやり方で、無理なく社会と関わり、自分の人生を「自分の足で歩んでいく」ことです。

本書の最終章では、仕事・人間関係・自己肯定感・人生設計への具体的な対処法も解説されています。
本記事では割愛しましたが、回避性に該当する人には、最も大事な内容となるはずです。

是非、手に取って、考え方や行動を見直すきっかけにしてください。

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