- 筋肉×潜入取材の異色ミステリー
筋トレ初心者の記者が“フェイク筋肉”の真相を暴くため、疑惑のアイドルが運営するジムに潜入。
体を張った取材が、笑いと緊迫感を呼ぶエンタメミステリー。 - 予想外すぎる展開とラスト
筋肉捜査にとどまらず、恋人の狂気、隠された秘密、そして衝撃のラストへ。
予測不能な展開が読む手を止めさせない。 - 筋肉は裏切らない、人間は裏切る?
肉体の変化を通じて成長する主人公と、フェイクにまみれた現代社会を対比。筋肉を通して“本物とは何か”を問う。
★★★★☆
Audible聴き放題対象本
『フェイク・マッスル』ってどんな本?
たった3ヵ月のトレーニングで、人気絶頂のアイドル・大峰颯太がボディビル大会で上位入賞――。
「あの筋肉はフェイクだ」「ドーピングに違いない」
SNSは炎上し、真偽不明の筋肉論争が渦巻くなか、大峰本人は動じるどころか、六本木に“会いに行けるパーソナルジム”を堂々オープン。疑惑を嘲笑うような行動に、世間の視線はますます過熱していく。
第70回江戸川乱歩賞 受賞作『フェイク・マッスル』は、“筋肉”をテーマに「フェイク」と「真実」を描く異色のミステリーです。
主人公は、文芸志望で入社したはずが、週刊誌『週刊鶏鳴』に配属された新米記者・松村健太郎。彼が命じられたのは、たった3ヵ月でボディビル大会で入賞を果たした大峰颯太の“筋肉”の真偽を暴く潜入取材でした。
しかし、この取材——甘くない。
筋トレも知らなければ、ジム通いも未経験。文字通りゼロからのスタート。
それでも松村は、己の肉体を使って検証を開始。捨て身でジムに潜入し、筋肉を鍛え上げ、なんと本人のパーソナルトレーニングを受けるところまでたどり着きます。だが、大峰は巧妙に疑惑をかわし、核心に迫らせてくれない…。
あの肉体は本物なのか、それとも虚構なのか?
真実を暴くため、松村が考えた“手段”とは――。
嘘がまかり通るこの時代に、信じられる「身体」と「言葉」はあるのか。
フェイクに覆われた世界に一石を投じる、異色の筋肉ミステリー。
筋トレと潜入取材を組み合わせたユニークな設定が、読者を新たなエンタメ✕筋肉読書体験へと誘ってくれます。

筋トレで、笑って、燃えて、驚く、本格エンタメミステリー

本作の魅力は、何といってもそのユニークさとテンポの良さ。
筋トレという硬派なテーマに、ユーモアとスリルが絶妙に混ざり合い、読む手が止まらなくなります。
筋トレの“キ”の字も知らないド素人・松村健太郎の“捨て身の筋トレ潜入捜査”が、なかなか根性あり!
最初は頼りなかった彼が、筋トレを通じて肉体的にも精神的にも変化していく様子が描かれます。
松村健太郎。まさかの“自分の肉体で検証”!
3か月でボディビル大会で上位入賞できるほど、短期間に筋肉はつくのか?
筋トレど素人は、疑惑の大峰颯太のジムに潜入。自分の肉体で3か月の筋トレ検証を始めます。
取材というより、もはや人体実験。そして出した結論は、「ムリ。無理すぎる」。筋肉なんてそんな簡単につかない!
疑惑が深まるなか、ボディビルダーにも取材をすると、「あれは薬を使わなきゃできない身体だ」との指摘。
一方、疑惑の本人・大峰と接触する唯一の方法は、彼のパーソナルトレーニングを受けること。
何とかトレーニングを受ける機会を得るも、大峰は核心をうまくかわし、まったく尻尾を出さない!
貴重なチャンスをものにしようと、「とにかくどんな方法を使っても筋肉をつけたい」と懇願し焦った結果、
「ドーピングとか、絶対しちゃダメですよ」と逆に注意される始末です(笑)。
ここまでやるか!?笑える執念調査
さらには、とにかく、証拠を集めようと、松村はトイレに、採尿トラップを仕掛ける作戦に出る!
なかなか涙ぐましい万全の準備、完璧な段取りで、採尿に成功するも、検査結果は…. まさかの陰性。
現代のドーピングは検査に引っかからない「デザイナードーピング」が主流なのだとか。なんてこった!
そこで次は、ジム内で急にムキムキになった人たちを調べ上げては、
「ねぇねぇ、何でそんなにムキムキなの?薬とか使ってるの?」とインタビューを始める。
もはや、周囲から見れば怪しい人。
挙句の果てに、ある人物から、「ナンバーナインってバーに来れるかい?」と声をかけられ…。
いや、なかなか、涙ぐましい調査が展開されます。
大峰颯太と同じマンション住む彼女!?――その実態は、“危険すぎる女”
もう一つの軸として描かれるのが、大峰の恋人・竹中彩佳の視点。
大峰の恋人・竹中彩佳。優しそうな彼女は、部屋の掃除中に謎の注射器を発見してしまう。
それが何かを察した瞬間から豹変。
「この秘密、絶対に誰にも渡さない」
彼女の狂気と執念が、物語を予測不能な領域へと導いていきます。
彼女の行動は、松村の潜入捜査より、よこど危険で衝撃的。
まさかこんな展開になるとは…という衝撃が、あなたを待っています。
感想:ぐいぐい読ませる!筋肉×ユーモアい✕ミステリー。意外性のあるラスト

ラストの展開は、思わず「そう来たか!」と唸る意外性。
そして、どこかジンとくる“いい話”に着地します。
笑えて、ハラハラして、最後には胸を打つ。そんな読書体験がここにあります。
意味深なレベルで、本作をまとめると…
- 最後の1/4は、「えっ、そうなる!?」の連続
- 筋肉は裏切らない。人の体だけでなく、精神も成長させる。
- 筋肉と異なり、人間は裏切る、欺く。
- 恋人?の執念は、あらゆる常識を超えてくる。
- フェイクに満ちた時代でも、信じられる“何か”がある。
筋肉✕ユーモア✕ミステリーでぐいぐい読ませてくれる筋肉小説です。
『フェイク・マッスル』は、筋トレマニアだけでなく、筋トレに1ミリも興味がない人にもおすすめできます。
ぜひ、あなたも“筋肉の真実”を見届けて下さい。
読めば、ジムに行きたくなる。いや、プロテインぐらいは買いたくなる!(かも)